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彼女と出会った。僕の日常は変わった。
純度100%! 小説現代長編新人賞受賞作。
売れない作家だった父が病死してから、越前亨は日々をぼんやり生きてきた。亨は、最後まで家族に迷惑をかけながら死んだ父親のある言葉に、ずっと囚われている。
図書委員になった彼は、後輩の小崎優子と出会う。彼女は毎日、屋上でくらげ乞いをしている。雨乞いのように両手を広げて空を仰いで、「くらげよ、降ってこい!」と叫んでいるのだ。いわゆる、不思議ちゃんである。
くらげを呼ぶために奮闘する彼女を冷めた目で見ていた亨だったが、いつしか自分が彼女に興味を抱いていることに気づく。
自分の力ではどうにもできないことで溢れている世界への反抗。本への愛。父への本当の想いと、仲間たちへの友情。青春のきらきらがすべて詰まった一作。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
わたしたちは日々迷惑をかけたりかけられたりして生きています。ただ一口に迷惑と言っても、色々な種類(あるいは背景)があり、様々な形式、レベルでの「許し」「償い」が必要とされます。本書の主人公は、迷惑が何かが分からなくなり、すべての迷惑を同質な「迷惑」で片付けようとし、それを単に「かけるべきではないもの」「かけられたくないから避けるもの」として退ける生活を送っています。一見クールで合理的に見えますが、そのことによって他人への興味を失っている状態となっており、本書によれば、それはすなわち「優しさ」を欠いた状態ということに他なりません。この背景には幼い頃に売れない小説家の父が最期の病床で「迷惑かけてごめん」という一言を放ったことに起因しています。この迷惑の意味がわからないまま、より正確に言えば、迷惑の意味がわからないという事態が何かがわからない、という中でもがき苦しむ主人公の青春に読者は寄り添うことになります。本書はその対応する許し・償いを探す物語です。
この死は幼い主人公にとっては突発的であり理不尽ですが、世の中には、様々な迷惑に対応する様々な理不尽が転がっています。理不尽が起きると、それに抵抗する形で迷惑が生じる。読者は主人公とともに、世の中に転がる様々な理不尽とそれに対する抵抗に直面し、迷惑の意味について考えていくことになります。
※ ※ ※
例えばトランスジェンダーに生まれるということは、誰が自分をそうしたとかではなく、相手のいない「迷惑」を受けていることです。わたしたちはそれに苦しむ。理不尽だ。したがってそこには抵抗が生まれる。相手がいないので、仕返しをすることもできないし、苦しみを屈曲させて犯罪を犯すことも許されません。それは迷惑の連鎖を生むからです。そこで、主体が非局在化した形で(誰がやったのかわからない形で)、客体も非局在化した形で(すべての人にあまねく)迷惑をかける行為を想定しなければなりません。著者がそこでテーマに選んだことが「クラゲ乞いをして空からクラゲを降らせる」ことだった。現実世界ではなんにあたるでしょうか。それは、本書で図書委員である登場人物からたくさんの小説が紹介されていることから示唆されているように、「書く」ということなのかも知れません。
Posted by ブクログ
小説とクラゲと反抗のYA
この物語には、いろんな要素が含まれていると感じた。
総じて、気持ちの良いYAだと思う。
1.小説
登場人物の多くが読書家だ。実在する作家や作品の名前が多数登場し、それらに対する愛が語られる。
明治の文豪から、現代の作家まで。ジャンルを問わず、様々な作家や作品が紹介される。
もしここで気になる作品に出合えたなら、ぜひ実際に読んでみるといいだろう。
2.高校生がクラゲを降らせる
ここだけちょっとファンタジー。中盤から終盤にかけて、クラゲ乞いへの情熱が加速していく。
やっていることは奇妙だけど、仲間を増やしながらクラゲ乞いに取り組む姿は、まさに青春の1ページ。
3.主人公の成長
父親との過去の因縁がきっかけで、斜に構えて周囲の人との距離を取っている亨。
でも、いろんな出来事を経て、人とのかかわり方を見つめなおしていく。
特に、図書委員の矢延先輩は、さっぱりしていてかっこよく、亨を導いてくれる。好きなキャラだ。
4.反抗
本作では、世界・環境・大人などへの反抗が描かれる。
そして、それがクラゲの話題に直結するのだ。うーん、やっぱり奇妙かも笑
Posted by ブクログ
もしかして窓を開けたらクラゲが降ってるんじゃないかと透明感あって、伝えたい物語のメッセージ性も好きな作品だった
高校生活、SF?敵は世界?そんなどこかワクワク感がありつつ、ぐはーってきた
誰しもがクラゲを呼んでみたい、呼ぶべきだと思ったことがあると思う、そんな不思議ちゃんにもそこには理由があって真っ直ぐでいいキャラ
主人公は自分の性格と似てて嫌気が…今更だけど学生時代をやり直して、あの時声を掛けてあげれてたらと思わずにはいられんかった
いろいろ登場する純文学の作品も少し読んでみたくなったし、プラネタリウムの何とかて作品も気になった
好きなフレーズ引用
夏の深い青は底のない海のようだった 雲ひとつなく 世界を呑みこもうとしていた 上下が逆さまになって僕は天空へ向かって落ちていく
優しさの本質は他者への興味だ
ひとりは凍えそうで息苦しくて最も近くにいる気軽にやってくる地獄なんだ
Posted by ブクログ
p13「春の空は柔らかく、引きちぎられた綿菓子のような雲が青の半分を占めていた」
とても良い表現!好き。空をこんなにきれいに表す言葉、初めて。
p182「無関心である事は、人に優しくできないという事だ。自分勝手である事は、感情の矛先を間違えるということだ。優しさの本質は他者への興味だ。」
先輩が読書家で、よく本に出てくる言葉を言うシーン。本好きな人って、語彙力高そうで憧れる。
p246「小説は現実に影響を及ぼすよ。人の考えを変える力がある。」
p285「小説はいいよ。真っ白な紙にインクで文字を写しただけなのに、人の心を動かす。魔法みたいなものだ。生み出される意味があるものだよ。」
p333「あとは、ほら自分がぐんと広がる気がするでしょ。視野が広くなる。登場人物を追いかけながら、そんな考え方もあるんだなあって。」
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