高妍のレビュー一覧
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『隙間』第4巻(最終巻)です。最終巻では、沖縄戦を辿るヤンを通して、未来への希望を見出していきます。台湾出身の若い漫画家・高妍さんから、台湾の歴史のみならず、沖縄の歴史まで学ばせてもらいました。若い世代のたくましさを目の当たりにし、うれしさを覚えます。
直前に読んだ『エレガンス』の戦時の理不尽さに抗う姿、『台湾漫遊鉄道のふたり』の日台関係の複雑さ、深沢潮さんが描く在日韓国人の葛藤、大分前に読んだ『宝島』(最近映画で話題?)の沖縄の苦悩などを思い出し、重なる部分があるなとも感じました。
やはり、外に出て知見を広げ、物事を俯瞰して観ることで、自らのアイデンティティの捉え方も変わるのでしょ -
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『隙間』第3巻です。ヤンは、沖縄での仲間との交流で大学生活を謳歌するなか、自分が過去に囚われいつも過去に生きていたことに気づいていきます。
と同時に、かつて台湾と琉球が交流し、台湾の事件で琉球人にも犠牲があったことを初めて知り、互いに悲しみを共有している事実に気づくのでした。そして、間もなく帰る台湾の未来を案じてしまいます。
高妍さん自身が沖縄に留学した2018~2019年が、そのまま作品の舞台になっています。高妍さんと主人公のヤン、現実と虚構が交錯していき、人と人、さらには個人を遥かに超越した複雑で割り切れない関係性を描いていきます。まさにタイトルの『隙間』は、とても深い意味合いをも -
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『隙間』第2巻です。第1巻では、介護していた祖母を亡くし、諸々のしがらみを断ち切るように沖縄へ交換留学した当初が描かれました。新たな出会いと並行して、いじめられ暴力を振るった記憶、自分が受けてきた教育への疑問や台湾の現状、上手くいかない恋愛…、様々な記憶がフラッシュバックします。怒り・悲しみの感情が根幹にあるようです。
第2巻では、さらに主人公ヤンの内面が揺さぶられる描写が続きます。同じ留学生との価値観の違い、LGBTQ+や台湾の独立、言論の自由などのテーマが巧みに融合し、自分にも何かできると思えるようになっていきます。
自分も含め、日本人には平和ボケ、事なかれ主義、無関心が蔓延して -
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久しぶりに良質な漫画と出会い、心動かされました。漫画は久々の登録。作・画とも高妍(Gao Yan)さん(台湾出身29歳)で、台湾と日本で活動中とのこと。全4巻の印象・感想の概略を記します。
主人公の楊洋(ヤンヤン)は、肉親を失い恋愛に行き詰まり、台湾から沖縄へ留学します。様々な葛藤を抱えながら、自分や周囲の人、台湾と沖縄の歴史や国家と向き合い、成長していく物語です。
高妍さんの経歴を見ると、実体験を脚色しているようですが、主人公のヤンには自身を色濃く投影している気がします。ヤンと台湾の孤独がリンクし、ヤンの心情を追うことで台湾の歴史の理解につながります。
また、絵も個性的で(好み -
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この漫画を読んで、本当に良かった。(1巻〜4巻)
主人公は台湾で暮らすヤン、22歳女性。交換留学で1年間、沖縄の芸大へ。
彼女は、心の支えとしていた祖母を亡くしている。恋人との関係も微妙であり、学校ではいじめにあったことも。
こんな心の傷を抱えながらの沖縄での生活。友人との関わりの中で、頑なな心が和らぎ、沖縄の歴史に心を寄せるようになる。そして、過去の自分と向き合い、前向きに自分の人生を歩いていこうという希望を見いだす。
各巻ごとに漫画の後に文章が添えられており、台湾についての理解を深めるのに役立った。
台湾の主権問題、民主化の道筋について新たに知ることの方が多かった。台湾の歴史を知 -
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この本を読むにあたり、押さえておくべきポイントがある。作者は女性?それとも男性?
「高妍」という台湾の方の名前を見ただけでは、日本人の私には判別がつかない。まあ女偏がつく字の使用とか、主人公の緑の描き方からうすうす想像はつくが、下巻の末尾にある「あとがき」に答えがあった。作者の性別くらいならばネタバレにならないと思うので、以下に書く。
作者は女性だった。
それに気づいて改めて下巻を読み直してみると、私は本当に鈍感だった。だって、作者が女性だと示唆する材料は数多くあるから。
代表的なものは人物の髪の描き方だ。台湾の街並みやライブハウスの室内とかならば、写真をトレースすればある程度のリアルな画は -
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「風をあつめて」は聞いたことがなかった。
「ノルウェイの森」は読んだことがなかった。
ゆらゆら帝国は聞いたことがなかった。
でも私にも楽しめた。
コマごとに構図に変化がつけられていて、その写実的な絵柄とあわせて、まるで映画を見ているよう。それも場面場面を写真のトレースでつなぎ合わせたようなカクカクした感じではなく、緑や南峻などの登場人物の心の動きとのシンクロが緻密に計算されているかのように自然な感じで読み進められる。だから私が知らない台湾の風景や、緑や南峻の部屋の中などの描写が、まるで訪れたことがある場所のように瞼の裏に広がっていく。それはまさに「風をあつめて」を聞き通したときに感じた“風” -
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ネタバレ何度見ても、一巻からずっと、なんと美しい本なのだろうか。280ページの大作、表紙カバー折り返し紙質にもこだわりあり。全て細かくガオさんのセンス、趣味、美意識で固められていて税抜価格880円て、ありえないと、この本に似つかぬことをいいたくなるくらい。
圧巻の完結。
同じ地球上で同じ空気を吸ってるわけだが、だいぶ前とはいえ同じように20代を過ごした私と、このヤンちゃんのストレートさ、緻密な勉強、研究。
全ての言葉、表情、一コマ一コマ、ぺーじごとに、今、この腐れ切った日本社会にポーン、ポーンと大きなカーブ描いて沖縄から台湾から、カラフルな七色のボールとなって投げ込まれて欲しい。
Jというクソ男 -
Posted by ブクログ
6/23の慰霊の日を意識することもなく、のんびりと暮らしてきた自分。必ず被害者の立場と加害者の立場がある。丸木夫妻の絵を必ず死ぬまでに見たいと思った。
知らずにこれまでの人生を過ごしてしまった→これから知ってあとの人生を生きることができる。
と読み替えて。
なんでタイトルが隙間なのか。
主人公の想い人の顔がずーっと思い出せないのはなんでか。
人生において怖い夢を時々見るのは何故か。
多様性など回収しきれないテーマはもちろんある。選ぶ勇気、変わる勇気、認める勇気。
それはきちんと違うことはNoといい、わからないことはわからないと言い、でも提供できる心を愛を持って伝え続けることなのかもしれない -
Posted by ブクログ
ネタバレ父の心に長いあいだ重くのしかかってきたものを-息子である僕が部分的に継承したということになるのだろう。人の心の繋がりというのはそういうものだし、また歴史というのもそういうものなのだ。その本質は〈引き継ぎ〉という行為、あるいは儀式の中にある。その内容がどのように不快な、目を背けたくなるようなことであれ、人はそれを自らの一部として引き受けなくてはならない。もしそうでなければ、歴史というものの意味がどこにあるだろう?【P63】
たとえば僕らはある夏の日、香櫨園の海岸まで一緒に自転車に乗って、一匹の縞柄の雌猫を棄てにいったのだ。そして僕らは共に、その猫にあっさりと出し抜かれてしまったのだ。何はともあ