あらすじ
“好き”の気持ちに、国境はない。
はっぴいえんど『風をあつめて』。
村上春樹『海辺のカフカ』『ノルウェイの森』。
岩井俊二『リリイ・シュシュのすべて』。
ゆらゆら帝国『バンドをやってる友達』。
台湾・台北で暮らす少女・緑(リュ)は、
日本の文化を通じて新しい世界と出逢う。
見たことのない景色。初めての感情。
そして不思議な少年と夢に。
まるで、風に吹かれるように。
これは音楽を愛し、
物語に救われたひとりの少女と、あなたの物語。
『猫を棄てる 父親について語るとき』(著・村上春樹)で、
装・挿絵を担当した台湾在住の漫画家が贈る、初連載作品。
世界が私を待ってる。
初めての物語、初めての音、初めての夢が、
私と出逢う、その時を。
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Posted by ブクログ
「風をあつめて」は聞いたことがなかった。
「ノルウェイの森」は読んだことがなかった。
ゆらゆら帝国は聞いたことがなかった。
でも私にも楽しめた。
コマごとに構図に変化がつけられていて、その写実的な絵柄とあわせて、まるで映画を見ているよう。それも場面場面を写真のトレースでつなぎ合わせたようなカクカクした感じではなく、緑や南峻などの登場人物の心の動きとのシンクロが緻密に計算されているかのように自然な感じで読み進められる。だから私が知らない台湾の風景や、緑や南峻の部屋の中などの描写が、まるで訪れたことがある場所のように瞼の裏に広がっていく。それはまさに「風をあつめて」を聞き通したときに感じた“風”のよう。
それと著者は私よりかなり若く、その若い感性を私のような年代の者でも触れられたのがうれしかった。同じ内容でこれが小説ならば、場面や情景を自分の頭の中で変換して読まなければいけないので、正直に言ってかなりつらかったはず。でも漫画ではビジュアルとしてそのままの形で受け入れられた。それに私にも若いときはあったしね(笑)。
私が好きな場面を紹介したい。
1 泣いていた緑を南峻が「いい所に連れていってあげる」といって、自転車の後ろに乗せて河川敷まで走って「風」を感じさせる場面。「風」は、緑が高校生の時に偶然聞いた「風をあつめて」の記憶につながるものだし、男の人に知らないところへ連れていくと言われたときの緑の期待と不安とが混じる微妙な心理がこまやかに描かれているのもいい。
2 南峻の部屋に招かれた緑は、彼が飼っているピーターという名前の黒猫と対面する。2人の会話の途中に、2人の表情は描かれずにあくびするピーターなどのコマが挟み込まれているページがある(P162)。私は映画「ドラゴンへの道」で、ローマの闘場で空手技を応酬するブルースリーと対戦相手のアップに続き、闘場に迷い込んだ猫のカットが挟み込まれていたのを思い出した。そのネコの1カットが二人の緊張感が連続する場面で一種のアクセント効果をもたらしているのと同様に、ぎこちなくなりがちな緑と南峻との2人の会話を読み流されないように工夫されている。
3 南峻が緑に、かつて日本で細野晴臣のソロライブを見たときの話をするシーン(P228)。ライブが始まると細野と矢野顕子がステージに出てきて「恋は桃色」を歌ったが、実は2人とも前座のモノマネ歌手で本人ではなかったと笑いながら南峻は話す。これって、矢野顕子さんのモノマネはどう考えても清水ミチコさんでしょ?たぶん。南峻も「僕はてっきり本物だと思って興奮して拍手したよ」と話しているし。さすが清水ミチコさん(笑)。
Posted by ブクログ
音楽をやっている知り合いから貸してもらったのだけど絵のタッチが凄く繊細で柔らかくてとても良かった。(全然違うけど浅野いにお先生みたいな感じ)
細野晴臣など、とてもいい所をついていて感動した。
ストーリー性もとても素敵で、貸してもらっていたけど自分で買いたいと思う。
下巻も楽しみ。
Posted by ブクログ
台湾の作家によるマンガ作品「緑の歌」の上巻。
本作は、下記のように紹介されている。
【引用】
はっぴいえんど『風をあつめて』、村上春樹『ノルウェイの森』『海辺のカフカ』・・・。台湾・台北で暮す少女・緑(リュ)は、日本の文化を通じて新しい世界と出逢う。見たことにない景色、初めての感情、そして不思議な少年と夢に。
【引用終わり】
主人公の少女・緑は、台北近郊の街から、大学入学のために台北にやってくる。そして、多くの新しい経験をする。バンドをやっている少年に出会ったり、少年の影響で日本に旅行に出かけたり、はっぴいえんどに続き、細野晴臣に出会ったり、村上春樹の小説を読み始めたり。とても瑞々しく緑は描かれている。それは、緑の感情や行動もそうだけれども、マンガのトーンがとても瑞々しい。
Posted by ブクログ
出張の際に表紙と帯に惹かれて上下巻で買ったもの。若い時にしか描けない瑞々しい感性が詰まっている作品。音楽や文学は国境関係なく共鳴できるものだなぁと改めて。人物より風景や物などの描きかたが好みだった。
Posted by ブクログ
・よかった。
・題材は現代だが、所謂オッサンホイホイ。
・村上春樹もそりゃ好きになるわ。
・登場する本や映画や音楽や、サブカル者には刺さりまくり。
・に加えて、悪しき萌え豚としては、主人公の焦っている姿(絵的にも汗っている)に妙なエロスを感じてしまう。
・なんとなく岩明均「風子のいる店」を連想。
・抜群に絵が上手いと思う。
Posted by ブクログ
遠くて近い、近くて遠い台湾の若者たちの物語。
日本のサブカルに思いを寄せるのは、自分のむかしを見る様で、心がきゅっとなった。いや、私よりも東京や音楽に対してずっと真摯だ。汚れのない、綺麗な目で時の流れを見てて心が洗われる感じ。
小説のようなうつくしい漫画。
Posted by ブクログ
緑ちゃんがはっぴいえんどのアルバムが台湾に無くて、YouTubeで聞いたりしないで自分の足で日本まで探しに行ったのがちゃんと音楽への愛情を感じた。NJへの愛情かもしれないけど。
Posted by ブクログ
2018年のZINEに衝撃を受け、コミック化を心待ちにしていた作品。主人公らが興味を持つ日本のカルチャーが、日本人の「界隈」が好むものと鏡写しなのがおもしろい。(サブカル哈日族とでもいうのだろうか…、彼らははっぴいえんどやゆらゆら帝国が好きだ)
それらへの愛と同時に、常に影をまとっているような、静かでひりひりとした余韻を感じる良作だが、プロトタイプのZINEが荒削りながら詩的で素晴らしかったので星3つ。(1番好きだったシーンが本編では夢扱いされててちょっとがっかりしてしまったのだ)