吉川凪のレビュー一覧

  • 絶縁

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    社会情勢が個人に与える影響は大きい。それをそのまま写し出すのか、ほんのり匂わせるのか、全く別の形として書き出すのか、作品ごとに異なる。
    「穴の中には雪蓮花が咲いている」青年の現在と過去の、寂しさ、微笑ましさ、やるせなさが牧歌的な映像を通して感じられる。幼い2人のやりとりが可愛くて切なかった。

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    2024年09月22日
  • 記憶書店 殺人者を待つ空間

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    目の前で妻と娘を殺されたユ•ミョンウ教授。15年経った今もその凶悪犯は捕まっていない。犯人の手がかりは、「古書に異様な愛着を持っている」ということのみ。
    警察など当てにできないユ教授は犯人を誘き寄せるために古書だけを扱う『記憶書店』を開店する。そこに現れたお客さんのうち、犯人候補が4人に絞られ…。
    ユ教授の復讐の物語。


    設定が面白いと思い、また他であまり見かけたことが無かったので、ふらっと立ち寄った書店で即購入しました。

    韓国文学を読むのは2冊目。文化が似ているところがあるからか、韓国に詳しくない自分でも違和感無く読めました。それに読みやすい訳だったように思います。

    殺人の描写が狂気じ

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    2024年08月28日
  • となりのヨンヒさん

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    SFということで身構えていたが、弟のために進路を諦めたり、家賃を気にしたりと、共感できるポイントがいくつもあって、読みやすかった(女性で男嬉って名前は嫌だよね)。「アリスとのティータイム」と「となりのヨンヒさん」が特にお気に入り

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    2024年08月27日
  • となりのヨンヒさん

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    軽やかで日常的で、sci-fiというより「すこしふしぎ」の方が合いそうな短編群には、共通してどこか寂しさ、寄るべなさ、喪失の痛みが感じられる。個人的には、間違った世界に存在してしまったことで親からすら存在を忘れられてしまう少女と、それを見抜き、世界の「チャンネル」を合わせようとする教師の作品がとても印象的だった。

    韓国の女性作家の作品を読むと、ああ同じ痛みだ、と感じることが多い。もちろん、異なる歴史的記憶(そしてその中にある日本はもちろん加害者である)、異なる社会制度、異なる痛みの方が多いのだが、やはり文化・思想的土壌の近しさとそのなかに生きる人、女性、として、確かに同じ感覚を私たちは共有し

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    2024年08月24日
  • 世界でいちばん弱い妖怪

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    ショートショート。
    面白いけどワンパターン気味で、最初に結末が読めてしまうものもあった。
    この作者は悪魔とエイリアンが好きなんですね。大いなる力に人間の欲望がむき出しにされる、みたいなのが好きなのかな。

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    2024年07月27日
  • 絶縁

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    流石の村田沙耶香。「無」
    ますます筆が冴える。これからは、このくらいの毒が吐ける作家でなくてはね。

    「産んでしまった後は私が家畜だった。夫にとって私は古くて汚いけれど性欲処理ができて、放っておけば家事をしてくれる肉性機械道具だった。娘は私で性欲処理をすることはないが、いくら成長しで当然のように私を使いつづけた。でもいつか、未来では娘が私たちの道具になる、それだけが心の支えだった。」

    痺れる〜!

    ラシャムジャ「穴の中には雪蓮花が咲いている」
    悲しくもふっくらした短編。これはこれで、好きだなあ。このふっくらした感じは人柄なのか、チベットという国が持つものなのか。

    チョン・セラン「絶縁」

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    2024年07月23日
  • 絶縁

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     アジアの女性作家九人によるアンソロジー。しかもテーマは「絶縁」。「しびれるテーマ」と村田沙耶香は言ったそうだが、確かに「しびれる」。なかなか、こんな本が存在するというだけで意義深いような、圧がある。ある特定の層には熱い支持を受けそうな一方、この価値観、というよりはこれに「しびれる」感覚って、普遍性ないかもしれないな…とも思う。
     Audibleで聴取。朗読は、どの作品も独特の色が浮かび上がり、とても良かった。ただ終盤は私の集中力/モチベーションが枯渇してきて実はちゃんと聴けてない。いつかちゃんと読み直したい。

    ■村田沙耶香(日本、一九七九〜)『無』
    うん。絶縁だ。村田沙耶香の絶縁だ。
    ■ア

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    2024年06月05日
  • 言の葉の森――日本の恋の歌

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    韓国人翻訳者が日本の萬葉集や古今和歌集などから取り上げた和歌と自身のエッセイを交えた読み物。
    まず、外国人が日本の古い和歌に興味を持っていること。とて嬉しい。

    「ながらへば またこのごろや しのばれん うしとみしよぞ 今は恋しき」P74
    辛いことがあっても、生きていればいずれ過去になる。そんな時、振り返ってみれば、懐かしく思えるようになっている。いつの間にか。

    これは好きな歌。


    P110
    「はるかなる 岩のまざまに ひとりいて 人目思はで もの思はばや」
    里から遠く離れた岩の間で身を隠し、人目気にせず物思いにふけりたい。

    とても分かる。この気持ち。
    ドキドキした恋ごころを1人でこっそ

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    2024年03月09日
  • となりのヨンヒさん

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    チョン・ソヨンさん
    初読みの作家さんです
    と言っても、韓国文学自体をまだまだ読んでいないのでほとんど初読み作家さんですが…

    本作は、SFやファンタジー、フェミニズムにLGBTを扱った十一の短篇と四つの連作短篇が収録されている

    いくつか簡単に紹介してみると
    「となりのヨンヒさん」
    となりの部屋に住んでいる異星人を少しずつ理解し、友情を育んでいく話

    「最初ではないことを」
    中国に留学した友人が得体の知れない伝染病にかかり、前例のない手術を受ける過程を見守った話

    「跳躍」
    身体も管制もサイボーグに変わっていく人の気持ちを描いた話

    「アリスとのティータイム」
    パラレルワールドを描いた話
    (こ

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    2023年09月16日
  • 記憶書店 殺人者を待つ空間

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    ネタバレ

    海外でもアジア圏だからか読みやすい。違和感のない文章に比喩も気にならない。15年かけて犯人に復讐する準備をした教授は犯人と思しき人物の特定をし、疑いのあるyoutubeに犯人特定するための尾行をお願いする。そこから教授ではなくyoutubeの尾行録となる。
    どんでん返しを読むのが初だと驚きもあるが読み慣れてくると感動はなくなってしまう。
    YouTubeが犯人と思しき人は児童虐待と殺人愉快犯、いずれも法を犯している人で同時に逮捕されてしまう。

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    2023年09月15日
  • 記憶書店 殺人者を待つ空間

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    ネタバレ

    ・ミステリーのなかでも、謎解きというよりはスリラー要素が強い
    ・韓国文化に関心があり読んだ。

    ■韓国っぽさを感じたところ
    ・冒頭から、「女性安心帰宅サービス」。日本で検索するとALSOK=企業のサービスが一番上にヒットする。日本の夜道の方が安全!とまでは言えないが、公的サービスが求められるレベルなんだな。
    ・「半地下」。日本なら、珍しい物件だね〜倉庫があってイイネ〜とポジティブな捉え方をされるのではないかしら。映画『パラサイト』でもあったように、韓国だと狭くて暗い、怪しさの象徴なんだなあ
    ・「脱北傭兵」。日本の小説では、公安だのFBIだのの方が頻出のような。
    それ以外は日本に置き換えても読め

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    2023年09月03日
  • 記憶書店 殺人者を待つ空間

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    純粋で力強い復讐劇! 妻子の命を奪われた大学教授が古書店を開いて殺人鬼を待つ… #記憶書店

    ■あらすじ
    大学教授でありテレビのコメンテーターとしても活躍中の主人公は、かつて殺人鬼に妻と子の命を奪われていた。その事件で犯人は、主人公と格闘した結果、貴重な古書を残して逃走することになったのだ。
    犯人をおびき寄せるために大学教授を引退して古書店を開くことに。古書店にはいかがわしい客たちが訪問してきて…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    復讐劇であり対決もの、プロットしては比較的シンプルで優しい文章、読みやすいですね。そして背景やら小道具は現代風なものが使われているにもかかわらず、古書や古文書というア

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    2023年08月30日
  • 絶縁

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    アジアの作家たちの共作ということで読んだ作家だけをメモ。
    村田沙耶香「無」
    アルフィアン・サアット「妻」
    韓麗珠「秘密警察」
    ラシャムジャ「穴の中には雪蓮花が咲いている」
    グエン・ゴック・トゥ「逃避」
    チョン・セラン「絶縁」

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    2023年08月23日
  • 絶縁

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    面白いのも、そうでないのもあったが、色々な国の色々な作家の作品が読めたのは楽しかった。
    文学は政治や社会の状況と密接に繋がっているのだと改めて感じた。

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    2023年08月07日
  • 絶縁

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    ネタバレ

    絶縁をテーマに九つの話からなるアンソロジー。海外小説はどうも頭に入らず途中リタイア。残念。原文で読めれば違ってくるのかなぁ。でも村田沙耶香さんの「無」は読み応えあった。「完璧な無」に生きてる意味はあるのだろうか。でも「無」の生き方に憧れる気持ちもあるな。そういう境地に私はなりたい、気もする。

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    2023年05月13日
  • 絶縁

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    「絶縁」という同じテーマでアジアの9都市9作家がそれぞれ物語を描いたら…面白いなぁ~と、しかも村田沙耶香さんだぁ…と思い手にしました。村田沙耶香さんの作品「無」は、楽しめました!「無」になりたい…とは思ってもなかなか難しいもんですね…。「無」が崇め奉られる…スゴい世界っ!!しかも「無街」が各地にできるって…ちょっと怖い世界っ…でも村田沙耶香さんらしい作品でした。

    他の作家さんが描く作品も読み応えありました。ただ、やっぱり日本とは全く違うなぁ…って思うと、なかなか深く読み込めなくって…私には難しい作品を選んでしまったのかもしれません…。

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    2023年04月22日
  • 絶縁

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    村田沙耶香さんは凄まじく村田沙耶香さんだった。各国の背景や歴史を知っていたらもっとたのしめたんだろうなぁという作品もいくつかあって残念だった。ほろ苦い後味。

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    2023年04月12日
  • 絶縁

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    9人のアジアの作家による短編集
    村田沙耶香の「無」や郝景芳の「ポジティブレンガ」は社会の薄気味悪さを感じ、チョンセランの「絶縁」はやり切れない男社会の蛮行に傷つきながらも少し光がさしているように思った。どの作品も(そうで無いような作品もあるが)暗い現実の先に、何らかの希望が垣間見えるのが救いだ。

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    2023年02月16日
  • 絶縁

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    絶縁がテーマの短編集。
    期待していた村田沙耶香さんの短編も良かったが、意外に他の作家さんの短編が気に入った。

    幼なじみの少女と結構良い仲だったのに、結局その少女とは結ばれることなく、小さい頃の少女との会話を思い出す主人公の話(「穴の中には雪蓮花が咲いている」)は、自分の思う通りには世の中は進まないということ、あともう一歩踏み出せていたらという後悔などの主人公の気持ちが押し寄せてくる。ただただ切ない。

    「絶縁」では、仲の良かった先輩夫婦と主人公が、ある出来事をきっかけに疎遠になるという話。そんなことで人は袂を分けてしまうものなんだな…と思うが、譲れない思想は皆それぞれ持っている。それがたまた

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    2023年02月15日
  • 絶縁

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    村田沙耶香さんの作品が読みたくて手に取ったのですがこの本を手に取らなければ一生縁がなかったなと思う素敵な作家さんがたくさんいて、そのお国柄が出ててとても面白かったです

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    2023年02月12日