吉川凪のレビュー一覧
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目の前で妻と娘を殺されたユ•ミョンウ教授。15年経った今もその凶悪犯は捕まっていない。犯人の手がかりは、「古書に異様な愛着を持っている」ということのみ。
警察など当てにできないユ教授は犯人を誘き寄せるために古書だけを扱う『記憶書店』を開店する。そこに現れたお客さんのうち、犯人候補が4人に絞られ…。
ユ教授の復讐の物語。
設定が面白いと思い、また他であまり見かけたことが無かったので、ふらっと立ち寄った書店で即購入しました。
韓国文学を読むのは2冊目。文化が似ているところがあるからか、韓国に詳しくない自分でも違和感無く読めました。それに読みやすい訳だったように思います。
殺人の描写が狂気じ -
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軽やかで日常的で、sci-fiというより「すこしふしぎ」の方が合いそうな短編群には、共通してどこか寂しさ、寄るべなさ、喪失の痛みが感じられる。個人的には、間違った世界に存在してしまったことで親からすら存在を忘れられてしまう少女と、それを見抜き、世界の「チャンネル」を合わせようとする教師の作品がとても印象的だった。
韓国の女性作家の作品を読むと、ああ同じ痛みだ、と感じることが多い。もちろん、異なる歴史的記憶(そしてその中にある日本はもちろん加害者である)、異なる社会制度、異なる痛みの方が多いのだが、やはり文化・思想的土壌の近しさとそのなかに生きる人、女性、として、確かに同じ感覚を私たちは共有し -
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流石の村田沙耶香。「無」
ますます筆が冴える。これからは、このくらいの毒が吐ける作家でなくてはね。
「産んでしまった後は私が家畜だった。夫にとって私は古くて汚いけれど性欲処理ができて、放っておけば家事をしてくれる肉性機械道具だった。娘は私で性欲処理をすることはないが、いくら成長しで当然のように私を使いつづけた。でもいつか、未来では娘が私たちの道具になる、それだけが心の支えだった。」
痺れる〜!
ラシャムジャ「穴の中には雪蓮花が咲いている」
悲しくもふっくらした短編。これはこれで、好きだなあ。このふっくらした感じは人柄なのか、チベットという国が持つものなのか。
チョン・セラン「絶縁」
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アジアの女性作家九人によるアンソロジー。しかもテーマは「絶縁」。「しびれるテーマ」と村田沙耶香は言ったそうだが、確かに「しびれる」。なかなか、こんな本が存在するというだけで意義深いような、圧がある。ある特定の層には熱い支持を受けそうな一方、この価値観、というよりはこれに「しびれる」感覚って、普遍性ないかもしれないな…とも思う。
Audibleで聴取。朗読は、どの作品も独特の色が浮かび上がり、とても良かった。ただ終盤は私の集中力/モチベーションが枯渇してきて実はちゃんと聴けてない。いつかちゃんと読み直したい。
■村田沙耶香(日本、一九七九〜)『無』
うん。絶縁だ。村田沙耶香の絶縁だ。
■ア -
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韓国人翻訳者が日本の萬葉集や古今和歌集などから取り上げた和歌と自身のエッセイを交えた読み物。
まず、外国人が日本の古い和歌に興味を持っていること。とて嬉しい。
「ながらへば またこのごろや しのばれん うしとみしよぞ 今は恋しき」P74
辛いことがあっても、生きていればいずれ過去になる。そんな時、振り返ってみれば、懐かしく思えるようになっている。いつの間にか。
これは好きな歌。
P110
「はるかなる 岩のまざまに ひとりいて 人目思はで もの思はばや」
里から遠く離れた岩の間で身を隠し、人目気にせず物思いにふけりたい。
とても分かる。この気持ち。
ドキドキした恋ごころを1人でこっそ -
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チョン・ソヨンさん
初読みの作家さんです
と言っても、韓国文学自体をまだまだ読んでいないのでほとんど初読み作家さんですが…
本作は、SFやファンタジー、フェミニズムにLGBTを扱った十一の短篇と四つの連作短篇が収録されている
いくつか簡単に紹介してみると
「となりのヨンヒさん」
となりの部屋に住んでいる異星人を少しずつ理解し、友情を育んでいく話
「最初ではないことを」
中国に留学した友人が得体の知れない伝染病にかかり、前例のない手術を受ける過程を見守った話
「跳躍」
身体も管制もサイボーグに変わっていく人の気持ちを描いた話
「アリスとのティータイム」
パラレルワールドを描いた話
(こ -
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ネタバレ・ミステリーのなかでも、謎解きというよりはスリラー要素が強い
・韓国文化に関心があり読んだ。
■韓国っぽさを感じたところ
・冒頭から、「女性安心帰宅サービス」。日本で検索するとALSOK=企業のサービスが一番上にヒットする。日本の夜道の方が安全!とまでは言えないが、公的サービスが求められるレベルなんだな。
・「半地下」。日本なら、珍しい物件だね〜倉庫があってイイネ〜とポジティブな捉え方をされるのではないかしら。映画『パラサイト』でもあったように、韓国だと狭くて暗い、怪しさの象徴なんだなあ
・「脱北傭兵」。日本の小説では、公安だのFBIだのの方が頻出のような。
それ以外は日本に置き換えても読め -
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純粋で力強い復讐劇! 妻子の命を奪われた大学教授が古書店を開いて殺人鬼を待つ… #記憶書店
■あらすじ
大学教授でありテレビのコメンテーターとしても活躍中の主人公は、かつて殺人鬼に妻と子の命を奪われていた。その事件で犯人は、主人公と格闘した結果、貴重な古書を残して逃走することになったのだ。
犯人をおびき寄せるために大学教授を引退して古書店を開くことに。古書店にはいかがわしい客たちが訪問してきて…
■きっと読みたくなるレビュー
復讐劇であり対決もの、プロットしては比較的シンプルで優しい文章、読みやすいですね。そして背景やら小道具は現代風なものが使われているにもかかわらず、古書や古文書というア -
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絶縁がテーマの短編集。
期待していた村田沙耶香さんの短編も良かったが、意外に他の作家さんの短編が気に入った。
幼なじみの少女と結構良い仲だったのに、結局その少女とは結ばれることなく、小さい頃の少女との会話を思い出す主人公の話(「穴の中には雪蓮花が咲いている」)は、自分の思う通りには世の中は進まないということ、あともう一歩踏み出せていたらという後悔などの主人公の気持ちが押し寄せてくる。ただただ切ない。
「絶縁」では、仲の良かった先輩夫婦と主人公が、ある出来事をきっかけに疎遠になるという話。そんなことで人は袂を分けてしまうものなんだな…と思うが、譲れない思想は皆それぞれ持っている。それがたまた -