遠野遥のレビュー一覧

  • 浮遊

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    会社のCEOの彼氏がいながら、埋められない年齢差を嘆き、寂しさを誤魔化すようにゲームに没頭する高校生のふうか。ゲーム実況のような内容と、現実が混ぜこぜに描かれていて、現実味のない物語になっている。悪霊に取り憑かれ、何度もコンティニューすることで、ゲーム内のアバターの寿命が短くなっていくという設定だ。ゲーム内の彼女の家族は幸せそのものだった。しかし、父親の業績悪化で、一気に運命の歯車は狂い始める。曲のリズム、音程が崩れて不穏な空気になる感じ。ふうかに母親がいないのも、母親を求める記述があるのも、母親が自殺してしまったのだろうかと考えられる。Tシャツの太った男、黒田の痴漢の過去、ゲーム内で行われて

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    2025年03月28日
  • 破局

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    ネタバレ

    この作品は「現代の若者とは」という問へのひとつの解答であると感じる。語り手のシステマチックすぎる語り口に見え隠れする不安が、まるまる語り手と同世代の自分に重なると感じた。実存主義が形を変え文学として再び表出する作品がトレンドであるように感じるが、この作品は特にそれが色濃く出ているように思う。
    腹を満たすだったり、性欲を発散するという単純な3大欲求には正直なくせして、その他の複雑な欲求を理性や社会規範、また自らの肉体を檻とすることで抑制する姿は、自律的で厳しくあるように見えながら、思考停止で生きてゆけるように自分の能力不足を何かのせいにしがちな現代の若者を見事に表していると感じた。ただ、この小説

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    2025年02月28日
  • 教育

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    ネタバレ

    あらすじを読んで、ずっと気になっていた小説だった。元気な時じゃないと読めなさそうだと思っていてなかなか手を出せずにいた。

    学校という小さな世界に閉じ込められて暮らす生徒たちが、今自分が生きる世界とは全く異る価値観、倫理観の下に、尋常ならざる日常を何の疑問も持たずに送っている。

    全編を通して何も理解出来るところが無いので、学校の存在理由や、外の世界との関わりや、何か、理解出来るとっかかりが欲しく、どんどんページを捲った。
    しかし、最後までその問いには答えてくれない。
    異常な世界を、異常だと思っている者がそこに存在しなければ、その世界では平常であるという事だろうか。

    教育というタイトルの意味

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    2025年02月06日
  • 破局

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    内面を晒さず感情に向き合わない代わりに、法律や規範にはどこまでも従う。
    他人と感情を共有することを避ける代わりに、身体の交わりには能動的。

    そういう在り方が「ハイスペック」な男性性をレプリゼントしてしまうのは、ちょっと病的なんだなと思う。

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    2025年01月05日
  • 改良

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    自己肯定感は誰の中にも存在するし、それを蔑ろにする想いも存在する。
    見た目?性質?価値観?倫理?
    他者に関係ない。
    改良する意義があると思うなら、すればいいし、周りの思惑なんてクソ喰らえだ。
    本来の姿がどんな姿だったのか。
    それは、己の中で決めればいいし、決めたら他者の納得に納得しないで貫けよ。
    改良と願望なんて誰だってあるぜ。

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    2024年11月10日
  • 破局

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    おもしろかった
    芥川賞をとった作品ということで身構えてしまったが全然読みやすかった。
    人間味のない感じに逆に人間味を感じた。

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    2024年11月08日
  • 教育

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    ネタバレ

    適応力、順応力が孕む不健全さ。
    ディストピア的「学校」生活、成績向上のために規則に盲従する主人公。
    あまりに突拍子もない物語の終盤、「学校の外では、感染症が拡大していて…」の一文。
    マスク生活、三密回避。すがるようにあるいは不承不承ながらも政府の呼びかけや専門家の意見に大部分の人が素直に従い、従わないものには、周囲からの冷たい視線、果ては、自粛警察、マスク警察の鉄槌が下る、コロナ禍下。
    「学校」の中と外の差は、存外大きなものではないのかもしれない。

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    2024年09月17日
  • 破局

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    下品、下品すぎる笑笑
    クソ真面目な顔して下ネタぶっぱなしてるのなんなん、読んでて気が狂いそう笑
    誰かの視線を感じる描写が下ネタと同等に多かった
    登場人物全員マトモじゃない

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    2024年09月14日
  • 破局

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    どこかでチラ見したこの本の感想に惹かれて一気に読んだ。いわゆる今の日本のいい大学の学生なんて大体こんなものだと思う。社会の一員として、自分がどう自分の頭で考え生き抜いていくのかを訓練されない日本だからこそ、こんな若者が量産され、日本は取り残されるのだ。それにしても、人生の破局っぷりが、脳天文字通りぶっ放されすぎる展開でした。

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    2024年09月13日
  • 改良

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    文体がとても美しい。水が滞りなく流れるような、そんなイメージ。最後の章は一気読み。暴行シーンもとても美しく感じたのは、この物語を語る主人公が「美しさ」だけを求めていたからか?
    平野啓一郎氏の解説もセットで読むべし、と思った。「納得」の文章世界を体験できた。

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    2024年08月31日
  • 破局

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    第163回芥川賞受賞作。自分も他人も傷つけながら進んでいく割れたガラスみたいな登場人物たち。主人公の「異物感」の感覚的には『コンビニ人間』に通ずるところもあるが、周囲とのずれの自己認識の仕方が異なる。どちらの作品も発達障害やそのグレーゾーンの登場人物の話と切り分けてしまう読み方もできるだろうけど、個人的には現代のありふれた当たり前の人間の描写のように感じる。発信と承認、メタ思考と視野狭窄。SNS全盛時代に現れる人間の歪さやリアルな人間関係の危うさを切れ味鋭く描いた傑作。

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    2024年07月30日
  • 破局

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    ネタバレ

    ◼︎面白かったか
    面白かったと思います。行き帰りの通勤時間ですぐ読み終わりました。
    ◼︎なぜそう思ったか
    彼なりに色々頑張ったのにことごとく上手くいってなくて可哀想だけども、希望はなんだかありそうなところが良かったような気がします。具体的には思い出せませんが、クスッと笑えるところもいくつかあったと思います。
    ◼︎他人に勧めようと思うか
    思いませんでした。
    ◼︎どんな人におすすめか
    コンビニ人間とかが好きな人とかにおすすめです。作者も芥川賞受賞の会見で何らかの影響を受けているかもしれない作品として挙げていました。
    ◼︎読もうと思ったきっかけ
    芥川賞受賞の会見の様子を偶然YouTubeで見かけて、

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    2024年07月26日
  • 改良

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    ネタバレ

    人はそれぞれに描き出したルールを持つ。それを自分自身や相手に強制することで納得させ、日々を送る。世の中には強制させられたらそれを受け入れてしまう人がいる。(私自身がそうであるように)これは社会的に問題視されるルッキズムや”普通”に対する考えにも通ずるところがある。世間一般的に言われる”普通は”という思想は人によって異なることがある。それを理解していながらも私たちはその普通を知らないうちに強制していたり受け入れてしまっていたりする。だからこそ、どこに自分があるのかが分からなくなってしまうのだと思う。 するべきはまず、自分の”本当”を知り、改良していくことなのかもしれない。 

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    2024年06月23日
  • 改良

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    『破局』に続いて二作目。
    こちらも大変面白かった。人に対する世間の外見の評価、とりわけ女性に対するそれは本当に厳しくそれが生きづらさに繋がるのは女性である私も私も身をもって体験するところである。
    美醜=人間の価値 に囚われていた主人公だが、その価値観から脱却できるのだろうか。

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    2024年06月05日
  • 破局

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    この主人公好きだなぁ〜。
    ラグビー、性欲、肉、筋肉、就活…
    それぞれの事柄に異常とも思える執着を感じる。
    変わってるし、発達障害なのかな?って
    思うくらいラグビーのシーンにあるように
    一つのことに集中すると周り見えなくなる。
    あと、この主人公が他の登場人物に共感してる
    ようなシーンが見当たらなかった。

    でも、これって小説として内面を
    掘り下げてるからこの主人公の変わってたり、
    サイコパス的なところが読者には読み取れるけど
    この感じって本人も周りもきっと気づいてないんだろうなぁ〜。とい思った。

    この雰囲気がうまく言えないけど現代社会を投影している気がした。

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    2024年06月04日
  • 破局

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    俺は他人と違うことをやりたいと悪いながら、一方で他人に認められたいって思いもあって、それが苦しい。たぶんありふれた苦しさだと思うんだけど、それがまた余計に苦しい。俺にしか味わえない俺だけの苦しさみたいなのはどこかにあるんだろうか?
    この文が印象に残ってる

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    2024年06月03日
  • 改良

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    遠野遥さんの本を初めて読みましたが、とんでもなく
    引き込まれました。


    ものの2時間で読める軽さなのにまるで主人公の人生をすべて追体験したかのような読後感。本当に感動すら覚えました。


    ゆるやかに絶望しながら生きる大学生「私」の納得して生きる部分と、理不尽に納得させられる様を追っていく物語。


    男性であっても女装したい、美しくなりたいと願う「私」。それによる他者からの決めつけや性的暴行に抗えない「私」。その姿をみて我々、読者がなにを思うのか。

    それを静かに強く問われているような作品でした。

    まじでオススメです!

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    2024年05月25日
  • 破局

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    かなり好きだった。芥川賞の作品が好きな人向け

    最後の方まで人間の皮を被ったクローンの思考を内側からのぞいているような気持ち悪さがあった
    気になる表現は色々あるが、友人や恋人の話が無駄に冗長な辺りも同じ空間にいながらも違う次元から物事を捉えているようで気持ち悪さが素晴らしかった

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    2024年04月03日
  • 破局

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    なんとも独特な世界観
    読んでいるうちに何故か不安な気持ちになってくる
    それがまたクセになるから面白い
    性描写や自慰のシーンでは生々しくて少しウッときたけれど、あれが24歳の若さなのかしらと、昔むかしを思い起こされた

    ラストシーンは不条理な結末で
    あーーーっなんでーー!!??!!?
    と思わず声が出そうになってしまった

    女ってずるくて面倒ですね(女だけど思った)

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    2024年03月27日
  • 破局

    Posted by ブクログ

    書き出しから、安定して不安定さが醸し出される。
    大事件が起きるでもなく、ある大学生男子の何気ない日常が淡々と綴られていくだけ…? いやでも何かがおかしいぞ、決定的に何かがずれている…と、読者は正体不明の不安に襲われ、ぞわぞわする胸騒ぎを抱えることになる。

    道徳や倫理の観念が専ら自己の外側にしか見出せない、という点において、主人公はいわば原始的な欲求のみに忠実に従って生きる獣のようなものか、と当初思ったが、動物であっても種によっては備わっている優しさや情愛のようなものもおそらく主人公の内面から湧き上がってくることはないだろうから、さらに不気味な存在と感じられる。
    いわゆるサイコパスにカテゴライ

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    2024年03月14日