遠野遥のレビュー一覧
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ネタバレ学校という機関の誇張されたディストピアを描いている。1日3回のオーガズム等、おおよそ教育的とは思えないような事を強制する学校のお話。真夏という少女だけはその教育に奇妙さを感じ始めているが、他の生徒たちは考えることを放棄してただ校則や先生たちに従うのみである。真夏は自身が脚本を書いた劇で、おそらくはその教育システムへの批判を込めた作品を作ったのだろうが、先生に内容を変更させられてしまう。もしかすると、劇に出てきた悪役の苺人間は、ウェルシュコーギーを解放しようとする正義の味方だったのでは、と想像する。
一見、突拍子もない内容に思えるが、そもそも我々の受けてきた教育という名のもとに行われている活動に、こういった側面が内在していることへの警告がメッセージとしてあるのではないか、と勘ぐってしまう。筆者が誇張して伝えているこのディストピアは、今の教育を無批判に受け入れる人間を育てる学校と重ね合わせて読んでみるとリアルに近づけて見える。 -
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ネタバレ① 女たちが吸血鬼のような暮らしをさせられる。
日光(紫外線) → 真実を白日の元にさらすことを意味する
分厚いカーテンや日傘によって女性は真実を見えなくされている。
美の基準がかわって日光を少し浴びた方がよいとされるが、日を浴びすぎると皮膚ガンやランク落ちの危険がある。
(真実を知りすぎることは生命にかかわる。)
② 男たちが吸血鬼のように生きている。
「美しさ」「弱いものを守る」「社会の平和」「秩序」などと言いながら、恵まれた男たちが女性たちの「自尊心」や「時間」を吸血している。
③ 最も悪質な吸血鬼「白井先生」
一見、理解があるように思える白井先生。
「自覚なき差別」と「無知」をもって「あなたのため」と女性を使って空疎な自分を満たしている。
④ エンディングでこの自覚なき差別が国家レベルに。
白井先生が政治家となってこの国を動向わせたいのは…
(1)貧困層が美容医療にアクセスできるような補助金制度
→ 末端まで「美」による支配を行きわたらせ、制度的な搾取により女性が「自分自身」をとりもどせないようにする。
(2)女性の美しさの底上げによる社会の安定
→ 女性をリソースとして利用している。
女性のためと言いながら、恵まれた男たちの社会を強化しているだけで、国全体を分厚いカーテンで覆った教室にしようとしている。
⑤ 最後の有紗の微笑の意味
最後の有紗の微笑が
「あなたは何も知らないのね、かわいそうに」だったら最高におもしろい。
美の基準がかわって健康的に筋肉もつけ、真実の気配も感じられるようになった彼女たちが、無知な男たちに反旗を翻す未来がこの先あったらスカッとする。
でもきっと「ここは微笑み返す場面だ」と理解しただけで、ディストピアは続くんだろうな。 -
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ネタバレ「悲しむ理由がなかった。悲しむ理由がないということはつまり、悲しくなどないということだ。」
この1行があったから読んで良かった。
不気味にはじまりそのまま終わり、不気味だと思えることに安堵した一冊。
でも自衛のために規範にあてはめて考えて自分が相対的に幸福であると感じて胸を撫で下ろすことはわたしも何度もしてきた。
「客観視できる」といえばそれはいいことかのようだけど、いきすぎた客観視の末路がこの物語なんだろうな。
じゃあどう生きればいいんだろう。
感じたままに好き勝手生きていいわけない。
瞬時に「そんなわけない」と思うこれは、わたしが見事に社会化させてもらえて、生きやすくいられていることの証でもある。
ただ、ささやかで身近な教訓をひとつだけ持ち帰れるとしたら、悲しさに理由はなくていいさ、ということかなぁ。
周りからみてあまりにも恵まれている私にも、悲しくてたまらない瞬間はあって、それは誰がなんと言おうと絶対的なものだ。
だれそれのなにかと比較して、私の悲しみはまだ小さい方だねと、測ろうとしなくていいんだ。
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第163回芥川賞受賞作。ふとしたきっかけで、この作品を知ることとなり、久しぶりに芥川賞作品の小説を読んだ。芥川賞の作品を読みまくっているわけではないのだが、なんか芥川賞っぽいというか、取るべくして取った作品な気がします。
表向きには現代社会に適応しているまともな人間に見えるが、実は社会に適応していように演じている、ちょっとまともでない今風の現代的な人間を描いているって感じ。今の時代の純文学ってこんな感じなんだろうなと思いました。作者は、平成生まれではじめて芥川賞を受賞した人だそうです。
純文学系の作品って、あまり小説的なストーリー展開はないのだけど、それでも小説として成り立たせてしまうのはつくづくすごいと思います。
こういう作品にありがちな決して読後感はいい感じではありませんが、文体がシンプルなせいか、変に後を引くことがなく、結構すらすら読むことができました。 -
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ネタバレ率直な感想は典型的な芥川賞作品。でも、これは作者の責任というよりは評価する側が「このぐらいの文量で、性について触れて、少し大衆とはかけ離れた感性を持たせた主人公で…」みたいな教科書的な感覚を植え付けてる気がしてならない。
肝心の内容は色々批判的に書き始めたが割と好み。主人公の陽介はあくまでドライでどこか俯瞰していて、それでいてマジョリティな感性とは少し異なり、どちらかといえばサイコと捉えられるような大学四年生。
麻衣子という完全無欠な彼女を手放してなんとなく灯を選んだりどこまでも読めない雰囲気がミステリアスで良い。
ただ、テーマの一つに性欲が中心に据えられてる気がしたのと、ここまで無感情で俯瞰的な人間がラグビーのコーチの時には他人にそこまで熱を求められるのかという違和感は拭えないままストーリーは終了。 -
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ネタバレものすごいものを読んだと思った。
文庫本を買って2年積んでいたけど、
日帰り旅行の際に
荷物が多くならないよう薄くてちょうどいいと
思ってもってきて新幹線で
読み始めたら止まらなかった。
性描写が多くて、それが全く主人公の幸せに繋がっていなくて怖かった。
凄惨な場面では主人公はいつも被害者だったけど、
女性といるときの自分の加害性には無頓着で
それも怖かった。
ストーカーのような存在に怯える女友達に
今日は一緒にいようと言って部屋に上がり込む
図々しさ、
使うかわからないけど、とコンドームを買う様子に
腹が立った。
それでいて自分が被害者の時は被害者然としていて
多様性ってこういうことなんだと思った。
こういった考えの違いの人も、
いるよねと受け入れる。
こちらに害がなければ私はよいと思うけど、
女友達にとっては一時的に脅威だったと思う。
一つわからなかったことは、
最終的に主人公に性行為を求められなかったことが
女友達にとって良かったかどうか。
もし好意を抱いていて性行為をしてほしいと思っていたのにしてもらえなかったら、
女として魅力がないのかと悲しい思いをしていただろうが、逆にホッとしただろうか。
これは作者にはわからないが、主人公は
自分が加害者になる可能性を全く考えていなくて、
腹立たしかった。私はこいつを好きになれないと思ったし、関わらないでほしいと思った。
どうか私の知らないところで、
元気に生きていてほしいなと思った。 -
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ネタバレ本当に面白かった。俺が好きなタイプの文章だった。
人間的であることを意識して、人間的なことを思考している、というふうな文体だった。
性愛と恋愛は決して違う。灯は恋愛から性愛へと徐々に移行していったということができると思うが、彼の場合はどうだったのか。そもそも恋愛だったのか。でも、おそらく、愛ではあった。
なぜこれを書いたのだろうか。思うままに書いたのだろうか。
膝の、真に人間的な、ある種の美しさが彼との対比になっていてそこがとても好きだった。
想像できないものが「破局」なのだと思うが、彼にとっての破局とはなんだったのか。
p.105 「悲しむ理由がないということはつまり、悲しくなどないということだ。」 -
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会社のCEOの彼氏がいながら、埋められない年齢差を嘆き、寂しさを誤魔化すようにゲームに没頭する高校生のふうか。ゲーム実況のような内容と、現実が混ぜこぜに描かれていて、現実味のない物語になっている。悪霊に取り憑かれ、何度もコンティニューすることで、ゲーム内のアバターの寿命が短くなっていくという設定だ。ゲーム内の彼女の家族は幸せそのものだった。しかし、父親の業績悪化で、一気に運命の歯車は狂い始める。曲のリズム、音程が崩れて不穏な空気になる感じ。ふうかに母親がいないのも、母親を求める記述があるのも、母親が自殺してしまったのだろうかと考えられる。Tシャツの太った男、黒田の痴漢の過去、ゲーム内で行われているはずなのにゲームの世界では現実味を帯びていて、現実の伏線のような設定になっていて、怖い。碧くんの仕事と生活に不穏な雰囲気が出始め、ふうかの存在がまるで透明人間になり始めている。ゲーム内の彼女のような運命になる未来が見えた気がして、本当に「浮遊」しているような、主人公のいる場所が定まらない、不思議な物語だった。
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ネタバレこの作品は「現代の若者とは」という問へのひとつの解答であると感じる。語り手のシステマチックすぎる語り口に見え隠れする不安が、まるまる語り手と同世代の自分に重なると感じた。実存主義が形を変え文学として再び表出する作品がトレンドであるように感じるが、この作品は特にそれが色濃く出ているように思う。
腹を満たすだったり、性欲を発散するという単純な3大欲求には正直なくせして、その他の複雑な欲求を理性や社会規範、また自らの肉体を檻とすることで抑制する姿は、自律的で厳しくあるように見えながら、思考停止で生きてゆけるように自分の能力不足を何かのせいにしがちな現代の若者を見事に表していると感じた。ただ、この小説のようにラストその不穏が噴出して破局を迎える人は少ないだろうと思う。多分、埋もれていく絶望の方が多い。その部分をどちらに舵を切るかは、かなり難しい選択になると思う。リアリティを取るか、面白さを取るか。なにかのインタビューでKing Gnuの「vinyl」に影響を受けて、パンチラインを意識して書いた、ということを聞いたが、ラストとかは特にそうなのかな。筆者が書きたいものをかけたのなら良いなとも思うけど、その点では少々リアリティに欠ける部分はあると思った。