遠野遥のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ追記
彼はただ美しくなりたかった。だけどそれを性癖だと勘違いされ、女だと勘違いされた。
うまくいかない、なんかちがう。
でも確かにメイクは崩れているか、確かに手は汚れているか、そう自分を省みる。
この不自然さが、彼特有に感じる。
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ほう、そして改良。
スピードを上げたまま終わり、タイトルを見て思った。改"良"か。"良"で良かった、その逆でなくて。
整理しよう。
幼少期、友人に性器を触られ触らせられた。
大学生になり、女装を好み、女の子を買って家に呼ぶ生活をしている。
そして最後。
バヤシコに言われた自分自身のことについて、驚きつつも納得し、大 -
Posted by ブクログ
ネタバレ率直な感想は典型的な芥川賞作品。でも、これは作者の責任というよりは評価する側が「このぐらいの文量で、性について触れて、少し大衆とはかけ離れた感性を持たせた主人公で…」みたいな教科書的な感覚を植え付けてる気がしてならない。
肝心の内容は色々批判的に書き始めたが割と好み。主人公の陽介はあくまでドライでどこか俯瞰していて、それでいてマジョリティな感性とは少し異なり、どちらかといえばサイコと捉えられるような大学四年生。
麻衣子という完全無欠な彼女を手放してなんとなく灯を選んだりどこまでも読めない雰囲気がミステリアスで良い。
ただ、テーマの一つに性欲が中心に据えられてる気がしたのと、ここまで無感情 -
Posted by ブクログ
4.0/5.0
自分に対する性自認が曖昧で、男の女の間で揺れ動く主人公。
だが、そのことに対して葛藤したり、悩んだりするというよりは、ただ「美しくなりたい」という願望の元、試行錯誤を繰り返す主人公の姿が印象的だった。
そして、人間における見た目の重要性みたいな部分にメスが入れられていると感じた。
見た目、という自分ではどうすることも出来ない先天性の要素がここまで人生に大きな影響を及ぼすことに、個人的に疑問や引っ掛かりを感じることが時折ある。だが、自分は男である以上、見た目の良い女性に惹かれるし、女性に好かれるためにカッコよくなりたい、という願望も当然ある。
そのやるせなさみたいな部分が繊細 -
Posted by ブクログ
ネタバレものすごいものを読んだと思った。
文庫本を買って2年積んでいたけど、
日帰り旅行の際に
荷物が多くならないよう薄くてちょうどいいと
思ってもってきて新幹線で
読み始めたら止まらなかった。
性描写が多くて、それが全く主人公の幸せに繋がっていなくて怖かった。
凄惨な場面では主人公はいつも被害者だったけど、
女性といるときの自分の加害性には無頓着で
それも怖かった。
ストーカーのような存在に怯える女友達に
今日は一緒にいようと言って部屋に上がり込む
図々しさ、
使うかわからないけど、とコンドームを買う様子に
腹が立った。
それでいて自分が被害者の時は被害者然としていて
多様性ってこういうことなん -
Posted by ブクログ
ネタバレ本当に面白かった。俺が好きなタイプの文章だった。
人間的であることを意識して、人間的なことを思考している、というふうな文体だった。
性愛と恋愛は決して違う。灯は恋愛から性愛へと徐々に移行していったということができると思うが、彼の場合はどうだったのか。そもそも恋愛だったのか。でも、おそらく、愛ではあった。
なぜこれを書いたのだろうか。思うままに書いたのだろうか。
膝の、真に人間的な、ある種の美しさが彼との対比になっていてそこがとても好きだった。
想像できないものが「破局」なのだと思うが、彼にとっての破局とはなんだったのか。
p.105 「悲しむ理由がないということはつまり、悲しくなどな