あらすじ
充実したキャンパスライフ、堅実な将来設計、そして新たな恋――。肉体も人生も、潔癖なまでに鍛え上げた私に、やがて訪れた破局とは。現代の実存を問う芥川賞受賞作がついに文庫化。
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Posted by ブクログ
芥川賞受賞作品というのと、作品名で読もうと思った。
最初はよく分からなかったが、読み進めていくうちに状況が理解できた。
ところどころ?と思う文が挟まっている。違和感も覚える。主人公の感情がほとんど書かれていない。解説を読んでようやく主人公の性が分かった。
彼ほどではないにしても、感情よりも理性を大切にする、男性の心理や特徴をよく捉えているのではないかと思う。
お笑い芸人を目指す友人のキャラクターが好きだった。
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歪で美しい物語
ベンチ上のくたびれたトートバッグを「疲れきって眠った犬のよう」さらに「二人の飼い犬のよう」と繋げるシミリーにシビれた
登場人物の描写も細やかでリアリティがある
作品中に漂う独特の世界観
これは芥川賞受賞も納得
後に知ったがBUCK-TICKのボーカル櫻井敦司さんのご子息とのこと
芸術性のDNA恐るべし
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率直な感想は典型的な芥川賞作品。でも、これは作者の責任というよりは評価する側が「このぐらいの文量で、性について触れて、少し大衆とはかけ離れた感性を持たせた主人公で…」みたいな教科書的な感覚を植え付けてる気がしてならない。
肝心の内容は色々批判的に書き始めたが割と好み。主人公の陽介はあくまでドライでどこか俯瞰していて、それでいてマジョリティな感性とは少し異なり、どちらかといえばサイコと捉えられるような大学四年生。
麻衣子という完全無欠な彼女を手放してなんとなく灯を選んだりどこまでも読めない雰囲気がミステリアスで良い。
ただ、テーマの一つに性欲が中心に据えられてる気がしたのと、ここまで無感情で俯瞰的な人間がラグビーのコーチの時には他人にそこまで熱を求められるのかという違和感は拭えないままストーリーは終了。
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本人が「気持ち悪い小説」(超意訳)と言ってた意味は分かる各章の繋がりをまだ見いだせてないけどそれでもラストの書き方はすごい実体験なんじゃないのか
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本当に面白かった。俺が好きなタイプの文章だった。
人間的であることを意識して、人間的なことを思考している、というふうな文体だった。
性愛と恋愛は決して違う。灯は恋愛から性愛へと徐々に移行していったということができると思うが、彼の場合はどうだったのか。そもそも恋愛だったのか。でも、おそらく、愛ではあった。
なぜこれを書いたのだろうか。思うままに書いたのだろうか。
膝の、真に人間的な、ある種の美しさが彼との対比になっていてそこがとても好きだった。
想像できないものが「破局」なのだと思うが、彼にとっての破局とはなんだったのか。
p.105 「悲しむ理由がないということはつまり、悲しくなどないということだ。」
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4.2/5.0
この小説を読み終わった時の第一の感想は「カッコいい」だった。そしてそれはハードボイルド的とも言えるような無骨な文体によるところが大きいと感じた。
独特の気持ち悪さと掴みどころのなさがこの小説に不穏な空気を纏わせている。
世の中を冷めた溜息と共に冷笑している感じがなんとも痛快だった。
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何も考えず、欲のままに生きた結果。
こういう人、きっとたくさんいると思う。こういうことをして、みんなが破滅するわけではないけど、誰もが破滅の可能性を抱えているのではないか。
個人的に好きだったところは、ゾンビ映画をホテルで観るところ。映画を見始めないから、映画の人々はゾンビにならずに済んだ的な流れは、これから起こる破滅を防ぐためには、最初から始めなければいいということを伝えている気がした。
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この作品は「現代の若者とは」という問へのひとつの解答であると感じる。語り手のシステマチックすぎる語り口に見え隠れする不安が、まるまる語り手と同世代の自分に重なると感じた。実存主義が形を変え文学として再び表出する作品がトレンドであるように感じるが、この作品は特にそれが色濃く出ているように思う。
腹を満たすだったり、性欲を発散するという単純な3大欲求には正直なくせして、その他の複雑な欲求を理性や社会規範、また自らの肉体を檻とすることで抑制する姿は、自律的で厳しくあるように見えながら、思考停止で生きてゆけるように自分の能力不足を何かのせいにしがちな現代の若者を見事に表していると感じた。ただ、この小説のようにラストその不穏が噴出して破局を迎える人は少ないだろうと思う。多分、埋もれていく絶望の方が多い。その部分をどちらに舵を切るかは、かなり難しい選択になると思う。リアリティを取るか、面白さを取るか。なにかのインタビューでKing Gnuの「vinyl」に影響を受けて、パンチラインを意識して書いた、ということを聞いたが、ラストとかは特にそうなのかな。筆者が書きたいものをかけたのなら良いなとも思うけど、その点では少々リアリティに欠ける部分はあると思った。
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内面を晒さず感情に向き合わない代わりに、法律や規範にはどこまでも従う。
他人と感情を共有することを避ける代わりに、身体の交わりには能動的。
そういう在り方が「ハイスペック」な男性性をレプリゼントしてしまうのは、ちょっと病的なんだなと思う。
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下品、下品すぎる笑笑
クソ真面目な顔して下ネタぶっぱなしてるのなんなん、読んでて気が狂いそう笑
誰かの視線を感じる描写が下ネタと同等に多かった
登場人物全員マトモじゃない
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どこかでチラ見したこの本の感想に惹かれて一気に読んだ。いわゆる今の日本のいい大学の学生なんて大体こんなものだと思う。社会の一員として、自分がどう自分の頭で考え生き抜いていくのかを訓練されない日本だからこそ、こんな若者が量産され、日本は取り残されるのだ。それにしても、人生の破局っぷりが、脳天文字通りぶっ放されすぎる展開でした。
Posted by ブクログ
第163回芥川賞受賞作。自分も他人も傷つけながら進んでいく割れたガラスみたいな登場人物たち。主人公の「異物感」の感覚的には『コンビニ人間』に通ずるところもあるが、周囲とのずれの自己認識の仕方が異なる。どちらの作品も発達障害やそのグレーゾーンの登場人物の話と切り分けてしまう読み方もできるだろうけど、個人的には現代のありふれた当たり前の人間の描写のように感じる。発信と承認、メタ思考と視野狭窄。SNS全盛時代に現れる人間の歪さやリアルな人間関係の危うさを切れ味鋭く描いた傑作。
Posted by ブクログ
◼︎面白かったか
面白かったと思います。行き帰りの通勤時間ですぐ読み終わりました。
◼︎なぜそう思ったか
彼なりに色々頑張ったのにことごとく上手くいってなくて可哀想だけども、希望はなんだかありそうなところが良かったような気がします。具体的には思い出せませんが、クスッと笑えるところもいくつかあったと思います。
◼︎他人に勧めようと思うか
思いませんでした。
◼︎どんな人におすすめか
コンビニ人間とかが好きな人とかにおすすめです。作者も芥川賞受賞の会見で何らかの影響を受けているかもしれない作品として挙げていました。
◼︎読もうと思ったきっかけ
芥川賞受賞の会見の様子を偶然YouTubeで見かけて、この人の作品は好きかもしれないと思ったからです。あと、コンビニ人間が好きだったからです。
◼︎この星の数にした理由
すぐ読み終わりましたし、面白かったですが、登場人物にめちゃくちゃ共感したとか価値観が変わったとかそういうのはなかったので星4にしました。
Posted by ブクログ
この主人公好きだなぁ〜。
ラグビー、性欲、肉、筋肉、就活…
それぞれの事柄に異常とも思える執着を感じる。
変わってるし、発達障害なのかな?って
思うくらいラグビーのシーンにあるように
一つのことに集中すると周り見えなくなる。
あと、この主人公が他の登場人物に共感してる
ようなシーンが見当たらなかった。
でも、これって小説として内面を
掘り下げてるからこの主人公の変わってたり、
サイコパス的なところが読者には読み取れるけど
この感じって本人も周りもきっと気づいてないんだろうなぁ〜。とい思った。
この雰囲気がうまく言えないけど現代社会を投影している気がした。
Posted by ブクログ
俺は他人と違うことをやりたいと悪いながら、一方で他人に認められたいって思いもあって、それが苦しい。たぶんありふれた苦しさだと思うんだけど、それがまた余計に苦しい。俺にしか味わえない俺だけの苦しさみたいなのはどこかにあるんだろうか?
この文が印象に残ってる
Posted by ブクログ
かなり好きだった。芥川賞の作品が好きな人向け
最後の方まで人間の皮を被ったクローンの思考を内側からのぞいているような気持ち悪さがあった
気になる表現は色々あるが、友人や恋人の話が無駄に冗長な辺りも同じ空間にいながらも違う次元から物事を捉えているようで気持ち悪さが素晴らしかった
Posted by ブクログ
なんとも独特な世界観
読んでいるうちに何故か不安な気持ちになってくる
それがまたクセになるから面白い
性描写や自慰のシーンでは生々しくて少しウッときたけれど、あれが24歳の若さなのかしらと、昔むかしを思い起こされた
ラストシーンは不条理な結末で
あーーーっなんでーー!!??!!?
と思わず声が出そうになってしまった
女ってずるくて面倒ですね(女だけど思った)
Posted by ブクログ
書き出しから、安定して不安定さが醸し出される。
大事件が起きるでもなく、ある大学生男子の何気ない日常が淡々と綴られていくだけ…? いやでも何かがおかしいぞ、決定的に何かがずれている…と、読者は正体不明の不安に襲われ、ぞわぞわする胸騒ぎを抱えることになる。
道徳や倫理の観念が専ら自己の外側にしか見出せない、という点において、主人公はいわば原始的な欲求のみに忠実に従って生きる獣のようなものか、と当初思ったが、動物であっても種によっては備わっている優しさや情愛のようなものもおそらく主人公の内面から湧き上がってくることはないだろうから、さらに不気味な存在と感じられる。
いわゆるサイコパスにカテゴライズされる表層上は有能な人物が、何かのボタンの掛け違いをきっかけに転げ落ちていく様が、創作でありながらも極端に走ることなく、ごく身近で起こり得る事例として描かれているところが、また不気味さを感じる著者の力量である。
人間の醜悪な部分をクローズアップするディテールの書き込みは、サイコパスならずともすべての読者が持つ弱点をずばりと抉り、その切れ味は本当に恐ろしい。
デビュー作「改良」が見事に正常進化を遂げている芥川賞受賞作、と言えるだろう。
遠野遙は癖になる。
Posted by ブクログ
主人公自身や、度々入ってくる場面描写がどこか奇妙。「何か違和感を感じる」小説は割と数があるけど、遠野さんの世界観は本当に独特で、違和感どころか確信的におかしい。その世界観にハマってしまって一気読みした。
しかし、物語の一番の事件は、その主人公のおかしさは直接的に関係ない。自他のあくまで普通の感情に翻弄されてしまったという印象だ。
トラブルというのは、誰かの持ちうるおかしさではなく、ごく普通の感情によって起こるのかもしれない。
Posted by ブクログ
カバーのデザイン、好み!
から入り前評判も全く知ることなく
芥川賞受賞作!とだけ理解し
破局ってあの破局でOKなのか?と読み始める
ベッドの下に眼
うわ〜不気味
この女がそうさせるのか、この展開だからなのか、この語り口によるものなのか
ひとまずそういった類の展開なのかなと思い
ドキドキしつつ読み進めていたけど本当に破局で終わった
虚無
心理描写
うわあ、良い、と思わされるところもところどころ
Posted by ブクログ
遠野遥の小説に共感を覚える、と言われたので読んでみた。まったく理解できない感性だが、小説は面白く、さらっと読み終えてしまった。
解説で倉本さおりがいうように、まさに異物感、違和感、そして不快感が全体を覆っている本。
「どうしてと麻衣子が言い、穴、と私は思った、口や鼻というのはつまり人間の顔に空いた穴だと気づいたのだ。」
この社会の破綻・この世界の歪みを訴える。文学のありようとしてあまりにも正しい小説。
Posted by ブクログ
見たものをただただリアルタイムで垂れ流す、虚無を感じる小説だった。
流れに身を任せてそれなりに上手く生きていけるが、これといって自我がない人間をじっくり見させてもらった感じ。
面白くないところが素晴らしいと思える小説
Posted by ブクログ
文体はすごく好みだった。
メッセージ性なんてものは特に感じられなくて、
ただずっと気味が悪かった。
実際に彼から出力されている行動は善良であり、
社会的にみて正しいことだが、
それを決定させる機械的な考えが不気味だった。
彼は、善悪の判断を全てを
世間に委ねているように感じた。
だから、彼は他人から向けられる
悪意に鈍感なのかもしれない。
そして自分の軸がないから、
外部からの揺らぎに耐えられない。
彼は空っぽなんだと思った。
Posted by ブクログ
読んでいるうちに主人公と自分の中になにか違和感を感じた。それはゲームに出てくるNPCのようで、人間の皮を被った機械のような感じに思えた。
とても上質な純文学だと思います。
Posted by ブクログ
芥川賞私小説シリーズ。
こういうまったく共感でできない主人公の話を読めるのがシステム化してに本を読むいいところ。まぁ上手くいってるような人でも生きづらさを持っているという典型的な話。
Posted by ブクログ
謎めいた感じの主人公で、感情を描写するのではなく、こうするべきだからこうする。というスタイルでした。
実際にこういう考えで行動している人もいるのかもしれない、と数人の知り合いを思い浮かべました。感情を排除した小説として心に残りました。好みとしてはそんなに好きではなかったです。