【感想・ネタバレ】改良のレビュー

あらすじ

女になりたいのではない、「私」でありたい――ゆるやかな絶望を生きる男が人生で唯一望んだのは、美しくなることだった。平成生まれ初の芥川賞作家、鮮烈のデビュー作。第56回文藝賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

追記
彼はただ美しくなりたかった。だけどそれを性癖だと勘違いされ、女だと勘違いされた。
うまくいかない、なんかちがう。
でも確かにメイクは崩れているか、確かに手は汚れているか、そう自分を省みる。
この不自然さが、彼特有に感じる。


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ほう、そして改良。
スピードを上げたまま終わり、タイトルを見て思った。改"良"か。"良"で良かった、その逆でなくて。


整理しよう。
幼少期、友人に性器を触られ触らせられた。
大学生になり、女装を好み、女の子を買って家に呼ぶ生活をしている。
そして最後。

バヤシコに言われた自分自身のことについて、驚きつつも納得し、大学生になった今、近い道を歩んでいる。しかし、性の対象は女性で、自分の女装を誰かに認めてほしいと思っている。
しかしその想いは叶わず、カオリには勘違いをされる。そこで思い出したつくねの元へ向かうが途中で事故に遭う。

なぜつくねに会おうとしたのか、私はここが引っ掛かる。これっきりの関係でないとわかっていたのに、なぜこの時につくねに会いに行くのだ。
また、つくねのことを散々に思っているのに、相手をしてもらおうと本気で思っているのが引っ掛かる。遠野さんの作品にはこのような男性の様子が描かれるように思う。そこまでも、誰でも、どこでも考えているのか?考えているだけでなく準備もして、タイミングを伺っている。こっちが少しでもその気っぽいことをしたら都合の良いように解釈をしかねない。

ふーん、そんなものか。そうなのか、?

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2025年08月12日

Posted by ブクログ

この感想を、どう文章で表せばいいかわからない。
内容は重たいのに、面白すぎて眠い目をこすりながら一気読みしてしまった。

これを男性作家が書いたというのだから衝撃…

人に見下されることを怖がりながらも、結局他人を見下してしまう。
自信がついた瞬間、その自信のせいで地獄に堕とされる。

トランスジェンダーの話だと思い読み進めていると、そんな軽いものでは無いことに気付く。

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2025年01月07日

Posted by ブクログ

自分の美しい姿に自信を持ちつつも、世間からは認められず自尊心を失っていく主人公。多様性という便利な言葉が流行っているが、結局は世間のレールから外れた時点でルッキズム思想の人間からすれば腫れ物扱い。
辛いことが起きているはずなのに冷静で淡々と進む物語にゾッとした。

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2024年10月27日

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一気読み!
平成生まれの芥川賞作家はやはり天才。
心理的に、男性?女性?と、悩むようなことも、あまりにも簡単に書き上げている。

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2024年01月20日

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この世の男女は、厳格な「普通」であるためのルールに縛られていて、その上、生まれた時から美醜による強烈なハンデやボーナスを与えられている。
ルールを押し付ける人たちは、悪気がないことが多く、時として善良でさえある。美しくありたいという思いからは、どうしても逃れられない。
その違和感や辛さを、特に男性の生きづらさの面から描いている作品なのではないかと思う。

そういうと重い作品のようだし、実際重いテーマだと思うけど、この作品はどこか軽薄で滑稽なムードがあり、とても現代的だった。
このどことない気持ち悪さ、ハマりそう。

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2023年04月04日

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4.0/5.0

自分に対する性自認が曖昧で、男の女の間で揺れ動く主人公。
だが、そのことに対して葛藤したり、悩んだりするというよりは、ただ「美しくなりたい」という願望の元、試行錯誤を繰り返す主人公の姿が印象的だった。

そして、人間における見た目の重要性みたいな部分にメスが入れられていると感じた。
見た目、という自分ではどうすることも出来ない先天性の要素がここまで人生に大きな影響を及ぼすことに、個人的に疑問や引っ掛かりを感じることが時折ある。だが、自分は男である以上、見た目の良い女性に惹かれるし、女性に好かれるためにカッコよくなりたい、という願望も当然ある。
そのやるせなさみたいな部分が繊細に描かれていると感じた。

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2025年08月04日

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ネタバレ

ものすごいものを読んだと思った。
文庫本を買って2年積んでいたけど、
日帰り旅行の際に
荷物が多くならないよう薄くてちょうどいいと
思ってもってきて新幹線で
読み始めたら止まらなかった。

性描写が多くて、それが全く主人公の幸せに繋がっていなくて怖かった。
凄惨な場面では主人公はいつも被害者だったけど、
女性といるときの自分の加害性には無頓着で
それも怖かった。

ストーカーのような存在に怯える女友達に
今日は一緒にいようと言って部屋に上がり込む
図々しさ、
使うかわからないけど、とコンドームを買う様子に
腹が立った。
それでいて自分が被害者の時は被害者然としていて
多様性ってこういうことなんだと思った。
こういった考えの違いの人も、
いるよねと受け入れる。
こちらに害がなければ私はよいと思うけど、
女友達にとっては一時的に脅威だったと思う。
一つわからなかったことは、
最終的に主人公に性行為を求められなかったことが
女友達にとって良かったかどうか。
もし好意を抱いていて性行為をしてほしいと思っていたのにしてもらえなかったら、
女として魅力がないのかと悲しい思いをしていただろうが、逆にホッとしただろうか。
これは作者にはわからないが、主人公は
自分が加害者になる可能性を全く考えていなくて、
腹立たしかった。私はこいつを好きになれないと思ったし、関わらないでほしいと思った。
どうか私の知らないところで、
元気に生きていてほしいなと思った。

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2025年08月02日

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自己肯定感は誰の中にも存在するし、それを蔑ろにする想いも存在する。
見た目?性質?価値観?倫理?
他者に関係ない。
改良する意義があると思うなら、すればいいし、周りの思惑なんてクソ喰らえだ。
本来の姿がどんな姿だったのか。
それは、己の中で決めればいいし、決めたら他者の納得に納得しないで貫けよ。
良と願望なんて誰だってあるぜ。

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2024年11月10日

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文体がとても美しい。水が滞りなく流れるような、そんなイメージ。最後の章は一気読み。暴行シーンもとても美しく感じたのは、この物語を語る主人公が「美しさ」だけを求めていたからか?
平野啓一郎氏の解説もセットで読むべし、と思った。「納得」の文章世界を体験できた。

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2024年08月31日

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ネタバレ

人はそれぞれに描き出したルールを持つ。それを自分自身や相手に強制することで納得させ、日々を送る。世の中には強制させられたらそれを受け入れてしまう人がいる。(私自身がそうであるように)これは社会的に問題視されるルッキズムや”普通”に対する考えにも通ずるところがある。世間一般的に言われる”普通は”という思想は人によって異なることがある。それを理解していながらも私たちはその普通を知らないうちに強制していたり受け入れてしまっていたりする。だからこそ、どこに自分があるのかが分からなくなってしまうのだと思う。 するべきはまず、自分の”本当”を知り、改良していくことなのかもしれない。 

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2024年06月23日

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『破局』に続いて二作目。
こちらも大変面白かった。人に対する世間の外見の評価、とりわけ女性に対するそれは本当に厳しくそれが生きづらさに繋がるのは女性である私も私も身をもって体験するところである。
美醜=人間の価値 に囚われていた主人公だが、その価値観から脱却できるのだろうか。

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2024年06月05日

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遠野遥さんの本を初めて読みましたが、とんでもなく
引き込まれました。


ものの2時間で読める軽さなのにまるで主人公の人生をすべて追体験したかのような読後感。本当に感動すら覚えました。


ゆるやかに絶望しながら生きる大学生「私」の納得して生きる部分と、理不尽に納得させられる様を追っていく物語。


男性であっても女装したい、美しくなりたいと願う「私」。それによる他者からの決めつけや性的暴行に抗えない「私」。その姿をみて我々、読者がなにを思うのか。

それを静かに強く問われているような作品でした。

まじでオススメです!

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2024年05月25日

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ネタバレ

短くて、話も淡々と進んでいくため一気読みしてしまった。とても面白かった。以前、『破局』を読んだがそれと同じようにですます調で話が進んでいったため、主人公の実際の喋り方とかなり異なり、すこし違和感を覚え
た。
つくねの「ブスじゃなかったらする必要なかったんじゃないかって」という言葉は重く響いた。私も日本で暮らしていてルッキズムに支配された国だと感じたことは何度かある。ブスだということが、悪であるかのように思えるこの国は異常だと感じた。
最後、主人公が強姦まがいのことをされるシーンは、グロテスクだった。なぜあのナンパしてきた男はあそこまで怒っていたのかもわからないし、執着したのかもわからなかった。

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2024年02月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

めくるページは決して軽くはない。
気持ちは晴れやかになるどころか反対にどんより重くなるばかりで、主人公が凄惨なシチュエーションに陥るあたりからは特に読み進めるのが、しんどい。
それは、描写があまりに直截的であり、剥き出しに過ぎるから、ともちろん言えるのだが、決してそれだけでなく、人により濃淡こそあれ、読者それぞれが"我が事"として自らを重ね合わせることになるからだ。
自分の人生とはまったく関係がない、接点などなさそうな物語に見えたとしても、必ずどこかに自身の生にフックする要素が潜んでいる。
そして心に引っ掛かってくるその何かは、読む人にとって決してポジティヴなものではなく、どちらかと言えば思い出したくないもの、積極的に他人に明かしたくはないものであるから、読んでいて苦しくなる、そんな普遍性を持った作品である。
答えは既に出ているので後出しじゃんけんになるが、このデビュー作をしたためた小説家は例えば遠からず芥川賞などを取って広くその文学性が評価されるだろう…と言いたくもなる。

文庫巻末に収められた平野啓一郎氏の解説がまた名文であり、読者が漠と感じていたであろう主人公のパーソナリティに対する印象を言語化して明瞭に説明している。
深く納得。

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2024年02月08日

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たまにいる「なにを考えているかわからない人」が
どんなふうに見えてどんなふうに感じているのかが
淡々と描かれている様がある意味でリアル
誰しもの「自己中心的」で世の中が形成されている

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2023年12月04日

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遠野さん、芥川賞作家ということでずっと読みたいと思っていたけど、へそ曲がりなので、代表作ではなく処女作から。
この作品ではないけど、芥川賞を受賞したことに納得がいく。文学的。
激しめな描写があるから絶対に無理だけど、国語の授業とかで扱えそうな書き方だなと思う。

「美しくなりたい」ただそう思っている、男性のお話。
美しくなるために化粧の勉強をし、自分が美しく見える服を着てウィッグをかぶる。
淡々と進んでいくけど、最後は余韻とかなく、スパッと終わって解説にいく。
解説で答えというか、模範解答?を見ている気分になった。何回か読まないと理解しきれないような気がする。

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2022年10月11日

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flotsambooks(写真集やzine専門の個人書店)でついでに購入
遠野遥1冊目
すごく読みやすくいい意味での裏切りがある、後半に疾走感があった気がする。なんだろう、作者の忖度や気の縮みが無いように見えるところにかなり好感?

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2022年08月26日

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最後の解説を読んでから、もう一度読んでみるともっと深く読み込めるかも知れない。
理解できているのか怪しいが、私の感想としては主人公はきれいになりたいだけ。きれいになりたいと思うのはおかしいこと?と常に考えてきれいになるために努力する。
なにもおかしい事ではないが、やっぱりおかしいか?
常識ってなんだ?と考えてしまう作品。

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2022年08月13日

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ネタバレ

美しくなりたい。そして、その美しさを他人に認められたい。
そう願っているだけなのに、男性であるというだけで理解されず、虐げられる理不尽さが悲しかった。
つくねの存在が彼の救いになることを願わずにはいられない。

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2025年10月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

メタ認知度が高い私にとって共感の嵐でしたが、背景描写が丁寧で細かいせいか、暴力・性の場面が生々しく超刺激的でリアルで気持ち悪かった。

性的場面から始まり、暴力によって終わる。
作品名の「改良」は本当に正しかったのかどうか、疑う内容でもあった。

主人公の女装をする趣味に対しては、馬鹿にしたり卑下するつもりはないが、彼の性に対する考え方は愚かで自己中で異常なほど変態でシンプルにキモイ人間だと思った。だから最終的に暴力を振るわれても自業自得だと思ってしまった(性格悪くてすみません)。

終わり方も少し胸糞悪く、先が気になるけど、主人公の性に対する考え方が改良されなきゃ読むのはきついだろう。

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2025年09月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 性的嗜好は女性なのだが、美しなりたいがために、女装を趣味にしている主人公。
 性癖が捻じ曲がってるとかそういうことではない。ただ、そうやって捉えられてしまうジレンマをラストに暴力的なシーンと共に描かれている。自分が今まで抱えていた偏見を痛々しい気持ちと共に改めるきっかけになった。
 
 そして、綺麗な容姿への憧れに対する心理を主人公の友達が述べるシーンはハッとさせられて虚無感を感じてしまった。

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2025年09月25日

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ネタバレ

芥川賞作家のデビュー作。
直前に同著「破局」を読んだからか、ある意味でテイストの不変さにびっくり。よくもまあここまで同様の文体で、書き切れるもんだと感心。

よく言えばオリジナリティが確立されてて、悪く言えば驚きに欠ける。

あらすじは女装を趣味とする主人公の日常。幼少期になし崩し的に同性から性的な虐めのようなものを受け、それとなく歪み、醜形に対して嫌悪を抱く男の物語。最終的にはまた同性からレイプされるのだから救いもない。

個人的には風俗嬢へクレームの電話を入れるシーンが印象的。誰もが普段はまともな部類であるのに、何かの拍子でタガが外れるかの如く、狂気に満ちるというところがよく描かれている。

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2025年09月17日

Posted by ブクログ

淡々と描かれる美しさへの執念。
他者の視線から自己を見つめ直すまでの変遷が見事。
クソ男によってそれがもたらされたのはムカつくし、殺したくなるが。
つくねの家へ歩く足取りは、清々しさすら感じた。

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2025年03月25日

Posted by ブクログ

幼少期の性の芽生えや裸を見られたくないという自意識から物語が始まっていき大学生になると健全に性的嗜好を消費し、美しくなりたいという願望から女装をする。努力をし若く美しい姿へと変われた矢先に理不尽な性暴力を受けるシーンは身も心もへし折られ、淡々とした日常を一気にひっくり返す。単純なルッキズム批判に終わってないところに読み応えがありました。

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2024年05月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

痛い表現を思い出して痛い気持ちのままで感想を書くことになったけれど、平野啓一郎さんの解説で腑に落ちたことが多くあった。自分の中の正義って、中にある分にはいいけど外に出すと誰かを傷付けるよね。あのラストに希望があるのかないのか、読み終わった自分がこの作品を良いと思ってるのか最悪だと思ってるのかも定まってない。とにかくインパクトはあった。他の作品も読んでみたい。

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2024年04月27日

Posted by ブクログ

美しくなることだけを求めていたのに…

彼は、美しくなることだけに努力を払い、美容とデリヘルにのみ費やしていた。自分だけの満足で良かったのに。他人に見てほしい。認めてほしい。と思い始める。

性をめぐる理不尽な暴力、ただただ追い求めたのは美しさだけなのに。

淡々と描かれていますが、結構、生々しく、グロいところもあり、純文学ですが、ご注意ください(笑)

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2023年08月29日

Posted by ブクログ

以前見たテレビ番組で、YOUさんが「よく『ありのままの私を愛してほしい』っていう女の人がいるけど、じゃあ畑から掘り出した泥だらけの大根を食べろって言われて食べますか? 手をかけて調理したものを食べたいでしょ? 努力って、大事よ〜。」と言っていたのがずっと心に残っています。どんな自分でありたいか、という方向は人それぞれ。タイトルが『改良』なのですから、良く変わっていく姿を描いているのだと思うのですが、共感できるポイントが見つかりませんでした。ただスリルを味わいたい訳でもなさそうだし… 自分の中の二面性を両方うまくやりたいなんて、幸せな証拠じゃないかな。私は自分ひとりさえ持て余しているのに。

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2023年08月12日

Posted by ブクログ

芥川賞受賞作「破局」を先に読んでからの今作。「改良」は「破局」のプロトタイプ。表現の強度は上がっても、軸は頑固なほどブレていないのが理解できた。

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2022年12月08日

Posted by ブクログ

外見至上主義にふれた作品。主人公の男性は美しくなりたいという欲求があって、女装をしている。女になりたいという訳ではなく。恋愛対象、性的対象も女性。主人公をとりまく、理解ありますよ風の全然理解ない人たちにイライラ。強制され納得した風に自分をごまかして受容しても結局納得はできないよね。ありのままの自分を受け入れて欲しいって欲求は誰にでもあると思う。そして、みんな本当の自分を見せたら嫌われてしまうんじゃないかと怖くて少しでも良く見えるよう自分を偽っていたり、常識的にを考えて行動してると思う。自分を曝け出すのは勇気が要ること。

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2022年11月29日

Posted by ブクログ

回りくどい表現をされている小説が苦手な人におすすめです。直接訴えてくるような、ダイレクトな表現をされているので、問題提起の部分や話の流れが掴みやすいです。

どちらかと言うと私は、まどろっこしい表現の方が好きなので、評価3にしました。

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2022年07月07日

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