木原善彦のレビュー一覧

  • ジェイムズ

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    ハックルベリー・フィンの冒険に登場する黒人のジムからの目線で綴られた作品。奴隷として扱われていた時代の黒人のお話であり所々いたたまれない部分があった。短い章の積み重ねでテンポよく読めた。

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    2025年10月09日
  • ジェイムズ

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    ネタバレ

    今年の邦訳小説の話題作。ハックルベリーの物語を南北戦争開始時に小移動し逃亡奴隷側から正調で雄弁に語るなか、後半からは独自の展開を見せる。直前にトウェインの原作?を読んでたので、対比のイメージもできて楽しい読書だった。読みやすい一方で、全体をコンパクトにまとめた結果、原典から飛び出した後の駆け足感が強く、暴力を暴力で報復するなか、小説の完成度として少々物足りなかった。逃亡奴隷の物語は小説・映画に多く取り上げられているが、それらを超える感銘とまではいかなかった。とても良い小説とは思うけど。

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    2025年09月17日
  • カーペンターズ・ゴシック

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    地の文でも会話でもナレーション的な説明がされず、読者は情報の断片を拾いながらストーリーを作り上げていくことになるが、それは陰謀論を作り上げるのとそう変わらない行為のようにも思える。作中の各人物は、その人について話している人が誰か、対話の相手が誰かによって印象が揺れ動き、読者にとって信頼できる人物は見当たらない。謎めいた言葉の連なりは、今起きている会話や動作の描写の中に、テレビで流れている映像の描写や作品内外のテキストをシームレスに織り込みながら流れていき、幻惑されるような美しさを感じさせる。言葉そのものが、今起きていることのレイヤーを分裂させ、上塗りし、つぎはぎしていくかのような。説明のなさや

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    2025年06月22日
  • オーバーストーリー

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    ネタバレ

    【木々の描く物語を想像してみる】
    世代を超えて存在する木と森林と生態系と、そこに異なる形で関わることになった人が想像する物語の話。

    人は木材を生産する時、木を守ろうとするとき、木を学問する時、自然に対する自らの視点を示すのかもしれない。

    木にまつわる神話や言い伝え、木材の伐採、森林占拠運動、科学、生物多様性…



    環境保護が欺瞞になる社会。

    この世界で、人間が特別なのは、私たちが人間だから当たり前だと思う。
    自分の家族が自分にとって避けられず特別な人間であること、
    自分の国が自分にとって特別であること、
    自分が自分にとって特別な人間であること。

    それは避けられない。

    けど、

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    2024年03月30日
  • 愚か者同盟

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    60年代ニューオーリンズが舞台らしいけど、高学歴引きニートと捉えれば令和日本でも充分通用するよね。巨漢で話の通じないヤバいヤツとすると空気階段のコントみたいな。オカンと元カノはかたまり2役。

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    2022年11月03日
  • オーバーストーリー

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    樹木と何らかの関わりを持ち、樹木をそれぞれのやり方で大事に思うようになる人々個別の物語が最初にある。短編集のようになっている。
    中盤以降は、彼らの物語が一つに絡み合い大きな流れとなっていく。

    木自体ですでに多くの生態系を抱える環境になっており、地球規模の視点で環境を見ても木は重要な役割を果たしている。極端に言ってしまえば人間は邪魔者でしかないが、さすがにそこまで言わずとも、そのことを認識しながらもっと謙虚な生き方を人間はすべきだろうと考える。
    木になったつもりで、木の視点で世界を見てみる。千年生きる木の時間からすれば、その周りを動き回る人間など、人間の周りで目にも留まらぬ速さで動き回る小虫の

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    2021年02月22日
  • オーバーストーリー

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    読みごたえあった。7月から約半年かかって読んだ。総じて言えば木と人間の話。壮大。壮大すぎて理解不能な文章が並ぶ。聖書のよう。よくもまぁこんなに脈略があるのかないのかわからない文章をツラツラ書けるな。しかし脈略がないようであるのが木で、あるようでないのが人間、なのかもしれない。

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    2020年12月30日
  • オーバーストーリー

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    圧倒された。また時を経て読み返したい。読んだ後の世界が違って見えると訳者の後書きにも出ていたが、本当にそんな感じ。情報量も揺さぶられる感情の量も多い。じっくり噛み締めて咀嚼したい。

    ‪I felt a difference of 2 cultures. Due to Shintoism, Japanese find a divinity in nature. We have certain respect for old big trees. ‬Although with this religion originated in Japan, we cut many trees, destr

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    2020年02月08日
  • オーバーストーリー

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    まず、ジャケットが出色。巨木の根元に陽が指している写真の上にゴールドで大きく書かれた原語のタイトルがまるで洋書のよう。角度を変えるとタイトル文字だけが浮かび上がる。最近目にした本の中では最高の出来である。表紙、背、裏表紙を広げるとカリフォルニアの朝の森にいるような気がしてくる。そうなると、バーコードの白抜き部分が邪魔だ。折り返し部分に印字するとか、帯に印刷するとか。他に方法はないものだろうか。

    前置きはこれくらいにして中身に入ろう。カバーの写真が直截に示す通り、木の話である。写真にある木はおそらくレッドウッド(セコイア)。樹齢二千年を超えるものもある、ウディ・ガスリーの『わが祖国 This

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    2019年11月29日
  • オーバーストーリー

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    なんらかの社会的な問題を小説で扱おうとすると、えてして、説明的になったり啓蒙になったり説教臭くなったりして、物語やうねりやスピードをそがれることが多い気がするが、これは始めの、木を巡る8人のストーリーからして面白く、ぐいぐい来る。
    環境問題、森林伐採、エコロジーの運動などを取り込んで、こんな小説が出来るとは!

    パトリシアについては、あ、これペーター・ヴォールレーベン『樹木たちの知られざる生活』じゃ…?と思って読んでいたら、やっぱりそうだよね、訳者後書きにて言及されていた。

    分厚いけど、どんどん読めた。面白かった。
    ジョン・ミューアやソローも読みたくなる。

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    2019年11月25日
  • JR

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    机の上に両足を上げ、椅子の背をいっぱいに倒し、太腿のあたりで本を開いて読んだ。手許にある書見台では厚すぎてページ押さえがきかないのだ。画像では実際の量感がつかみにくかろうが、菊版二段組940ページ、厚さは表紙部分を別にしても約5センチある。比喩でも誇張でもなく、読み終えた後、背表紙を支えていた右手が凝りで痛くなっていた。言葉を換えて言えば、持つ手が痛くなるまで、読んでいられるだけの面白さを持っているということだ。

    70年代のニュー・ヨークが主な舞台。見開き二枚の舞台地図、八ページに及ぶ登場人物一覧が付されているが、時間的にはたかだか数カ月程度、入れ代わり立ち代わり顔を出す人間の数は多いが、主

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    2019年03月18日
  • オルフェオ

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    主に20世紀の音楽の変容を感じることができます。この小説の翻訳を引き受けた新潮社の勇気には感謝しますが、これは売れないでしょう。読む人に相当な努力を要求する小説です。リチャード・パワーズですもんね、毎度ですよね。すごく読み応えのある本でした。YouTubeのおかげで登場する知らない音楽の多くを知ることができる、そんな時代だからこそ生まれた本なのかもしれません。

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    2015年12月29日
  • オルフェオ

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    愛犬フィデリオの異変にあわてたピーター・エルズは緊急サービスに電話した。それが事をややこしくしてしまった。やってきた二人組の刑事は、大量の本やCDで埋まった書棚、犬の死体、素人には不似合いな化学実験器具から何かを察知したのか、翌日別の二人組が現れ、実験器具やありふれた細菌である培養中のセラチナなどが没収される。帰宅途中、自宅に立ち入り禁止のテープが巻かれているのを車から見たエルズはとっさにその場を離れた。どうやらエルズにバイオ・テロの疑いがかけられたらしい。

    引退した音楽教師であるエルズは、もともと化学専攻だった。不眠症対策も兼ねてネットで購入した実験器具や試薬を使いDNAの塩基配列を操作す

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    2015年09月16日
  • オルフェオ

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    バイオテロ、過剰警戒な社会、冤罪、このあたりはとても現代的なというか、パワーズエラいこと流行りに乗ったな、という印象は否めない。まぁ別に現代的なテーマで流行りに乗った小説やからアカンってことはないけども。で、オイラに音楽の素養というか教養というか知識がないので、そういうのがあればもっと色々ピンと来るんだろうな、という残念感もあり。音楽ではないけれども、作中にドイツ農民戦争の際のミュンスターのヤンの話が出てきて「これ、「Q」に出てきた話か!」とつながってスゴい楽しかったので、たぶんもっと色々な仕掛けを(特に音楽中心に)オイラの知識の無さで見落としてるんだろうな、という…

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    2015年09月01日
  • ジェイムズ

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    トム・ソーヤもハックルベリー・フィンも
    アニメでチラッと見たことある程度で
    話はほぼ知らない
    どっかで話題になってると聞いたので
    読んでみた

    原作?元ネタ?を知らないので
    こんな見方したことなかった…とか
    全くわかんなかった
    ただジムが主役のハックルベリー・フィンはこうなのね
    ってとても素直に読んだだけ

    海外作品だけど
    とっても読みやすかった
    あんまり「わかんないなぁ」って
    文化の違いで首をかしげることもなかったし
    なんだ、このよくわからん詩的な表現は?
    なんてこともなかったし
    とてもよかった

    ただ今の自分には
    あまり響かなかった
    サラーっと読んでしまって
    何も考えたりしなかった

    星は

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    2025年12月05日
  • アイロニーはなぜ伝わるのか?

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    求めていた日常会話やジョークのようなものは少なめで、文学メインの高尚なアイロニーが多めだった。
    表題に対してもやっとして終わったので微妙かな。

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    2025年11月14日
  • ジェイムズ

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    期待した程では無かった。本ならではの良さは感じられず、タランティーノのジャンゴを見た時以上のものは感じられず。

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    2025年10月29日
  • ジェイムズ

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    「奴隷」「偏見」「差別」が軸にある本。奴隷制度はあまり知識がなく、考えさせられる内容だった。逃走劇&復讐劇な物語で3日で読み終えました。 トムソーヤやハックルベリーの物語は読んだことがないので、これを機に挑んでみたい。視野の広がる時間でした。

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    2025年10月19日
  • ジェイムズ

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    ハックルベリーフィンの冒険を、サブキャラであるところの奴隷ジムの視点から再構築した物語。

    アレックス・ヘイリー「ルーツ」を想起しながら読みましたが、多くの人が同じ印象を持つと思います。絶対的な差別の元凄惨な虐待を受け続け、全く人として扱われない人々の様子に改めて恐怖を感じます。

    一方、ハック・フィンを実は未読な私は、それはそれとしてなんか変な構成だなとか不思議に思いながらでもありました。きっと対応するように書かれているのでしょうか。

    正直、そこにこだわらずしっかりとジェイムズの物語として読みたかったかなというとこもあります。ラスト、あっさりすぎだし。

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    2025年10月09日
  • オーバーストーリー

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    な、長い。訳者の癖なのか、原作がそうなのか、淡々とした現在形の短文が延々と連なっている。
    読むと世界が違ってみえるらしいという誘惑で読み切った。確かに、木がお互いにシグナルを送り合い、世界はすべて繋がっている。という感覚(これをネットゲームで再現できるとしている)ははっとしたかなぁ。ドクターパトリシアのターンだけ読むのが楽しかった。
    訳者後書きで年輪のような物語の構成になっているとのこと、それ自体が面白いのかな…。過激なエコテロリズムについては内的動機が強すぎてあまり理解ができなかった。
    直近で読んだ、4000年前の狩猟採取民族が主人公のファンタジーの方が環境問題を考える契機になりそう。そして

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    2025年02月06日