木原善彦のレビュー一覧
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ピューリツァー賞受賞作品であり、デヴィッド・ボウイの愛読書でもある。看板に偽りはなく、最初の3ページだけでも既にかなり面白い。
舞台は60年代のアメリカ南部。傍若無人で高学歴で子供部屋に住む無職の巨漢イグネイシャスがついに就職活動を始める。彼が巻き起こす騒動を軸に珍妙なミステリーと風変りなラブストーリーと演劇的な群像劇が絡み合う。イグネイシャスは作中で資本主義のシステムに滔々と文句を垂れているし、不純な動機からでも社会運動を始めようとするあたりプロレタリア文学の要素も入っているかもしれない。すべてが不思議なバランスと巧みなストリーで成り立ち、風刺も効いている。
ミルトンを気取って社会から -
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昔、吉祥寺に知久寿焼のライブを観に行ったことがある。彼はMCで、吉祥寺の街中にあるとても古い木について話していた。その木は不思議なことに、つららのようにいくつもの「こぶ」が太い枝から下に向かって伸びているのだという。自分はその木を幼い頃から当然のように認知していたが、そんな形状が目に入ったことは一度もなかった。ライブのあと、何気なくその木の前を通って例の「こぶ」を目にした時、身近な世界のなかには不可視の領域が含まれているのだと知り、愕然としたことを憶えている。
この本に充満しているのは、そうした視えないものたちのむせかえるような気配だ。そしてパワーズ特有の、途方もなさから詩の様相を帯び始める事 -
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核酸を増殖するPCR(polymerase chain reaction)の過程をこれ程まで詩的に記載された文章はあっただろうか?!僅か2ページの出だしの文章に、いきなりやられてしまった。
音楽の物語、否、音の物語。音は楽器から奏でられるものだけではない。あらゆる物、あらゆる言葉、あらゆる事象の中に音は内包されている。例えば、朝焼けには朝日のメロディーが、夕焼けには夕日のメロディーが、降雪も雪の種類により各々のメロディーが内包されている。この世は音に溢れている。世界中から音が聴こえ、それを譜面に著わそうとするピーター。それが高じてDNA塩基をkeyとしてメロディーを作ろうとする。それが周囲の誤 -
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リチャード・パワーズは以前から友人のひとりに読め読めと言われ続けていたのだが、なにしろ長大で難解な印象があり(事実そうなのだが)、読書会というきっかけがなければこのままずるずる読まずにいたと思う。その点で読書会に感謝、そしてまた、リチャード・パワーズという小説家、『オルフェオ』という作品に出会えたことを心から感謝する。
結論から言うと、本書『オルフェオ』は2015年の個人的ベスト級の作品です。今現在『グールド魚類画帖』のフラナガンとパワーズによる、熾烈なWリチャード首位争奪戦が繰り広げられている次第。ちなみにわたしは音楽的な知識は絶無なので、本書に出てくる曲の十分の九は名前すら聞いたことがな -
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翻訳された小説は、日本語の表現が独特で、ちょっとついていけないことがあるけれど、これはそんなことはない。読み始めると、文章がわかりやすく、物語の面白さもあって、2日で一気に読んでしまった。
それに、黒人奴隷であるジェイムズに、意外なある事情が読み取れて、それが水面下で期待をもたせ続けるのが新鮮だ。
物語は、自分だけ奴隷として売られることを知り、逃亡しようとするジムと、父親が帰ってきて暴力を振るわれるのを避けるため逃げたいハックルベリー・フィンが一緒に川を下って逃げるところからはじまる。
すでに家族がいるジムは、金を稼いで家族を買い戻そうとするのだが・・・。
そして、物語は唐突に終わりを迎える -
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賞を5つも受賞し、話題になっているようだが、自分の教養のないせいか、ハックルベリーフィン、トム・ソーヤーの物語の理解がないためか、それほど重要なものとは思えなかった。
恐らく白人視点から描かれたハックルベリーフィンの物語を黒人視点から描き、追加の設定(?)を入れ込むことで、古典のコペルニクス的転回をやったことで、黒人差別をNGとする世論に乗っかった形となり、受賞対象となりやすかったのだろうと思われる。
こういう作品がその設定だけで(?)評価されているとしたら、まだまだ黒人差別が根強く残っている証拠じゃないかと思ってしまう。
百歩譲って欧米人が評価するのは理解できるとして、日本人がこれに共 -
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実はハックルベリーフィンの冒険を
今まで読んだことなくて(^^;;
でもそんな自分でもワクワクと
シリアスなシーンにハラハラしながら
楽しく読めました!
まさかの別視点から描かれた
大人向け「ハックルベリーフィンの冒険」。
翻訳は読みやすいし、主人公の黒人奴隷の
ジムは自分の立場をわきまえてると
見せかけて大胆な行動をするところには
驚きもありました。
後半になるにつれて当時の黒人奴隷に
対する扱い方、接し方が
まるで家畜同様になる場面はとても苦しかった。
ジムが本を読んだり、文字を書いたりすることに
熱中する場面が何故か頭に残っています。
しかも、文字を書く短い鉛筆は、
手に入れる過程 -
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ネタバレ伊与原新さんの推薦文を読んで購入。
少年時に海に魅せられた主人公(と表現して良いのか分からないが)の、学生時代の友人との交流と別れ、そしてIT業界での成功とレビー小体型認知症。
終盤で、本書の仕掛けが明らかになる。最後まで読んで、訳者解説を読んだ上で再読すると、より分かるのだろうなあ。…ただ、本の厚さと、訳書であるがゆえの文の取っ付きにくさや人名の分かりにくさがあり、再読する気力が沸かないというのが正直なところ。
原書では英語だけでなく様々な言語が織り交ぜられているのだろうか、そのあたりも翻訳に反映されているようだったので、翻訳もすごく大変だったのだろうなと思ったけれど、読むのはちょっと大変だ -
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『トム・ソーヤーの冒険』の結末で、ハックルベリー・フィンと親友トムは、盗賊の金貨を発見した。しかし二人ともまだ子供であるため、発見した金貨は二人で折半、ハックの取り分はサッチャー判事が保管し、金貨の管理人となったダグラス夫人の養子としてハックは屋敷に住み、トムと共に学校に行くようになった。自由人としての暮らしではなく、決められた時間に寝起きし、礼儀作法をミス・ワトソンから徹底的に仕込まれる日々は、堅苦しかったが、安全だった。ところが、行方をくらましていたハックの父がセント・ピーターズバーグに現れ、強引にハックを連れ去ってしまう。逃げ出して自分の死を偽装したハックは、逃亡奴隷のジムと出会う。