木原善彦のレビュー一覧

  • 愚か者同盟

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     ピューリツァー賞受賞作品であり、デヴィッド・ボウイの愛読書でもある。看板に偽りはなく、最初の3ページだけでも既にかなり面白い。
     舞台は60年代のアメリカ南部。傍若無人で高学歴で子供部屋に住む無職の巨漢イグネイシャスがついに就職活動を始める。彼が巻き起こす騒動を軸に珍妙なミステリーと風変りなラブストーリーと演劇的な群像劇が絡み合う。イグネイシャスは作中で資本主義のシステムに滔々と文句を垂れているし、不純な動機からでも社会運動を始めようとするあたりプロレタリア文学の要素も入っているかもしれない。すべてが不思議なバランスと巧みなストリーで成り立ち、風刺も効いている。
     ミルトンを気取って社会から

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    2022年09月30日
  • 愚か者同盟

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    イグネイシャス!!! その名の通り、世の中から「迫害」されていると思い込んでいる、陰キャ。陽キャを配役するなら、アレックス・デラージだろうか。アレックスが暴力的「ハラショー」で自己肯定に突き進むのに対して、イグネイシャスは母親の「イグネイシャス‼︎!」で自己肯定に突き進む。ドルーグの白装束と、イグネイシャスの白スモッグ。アレックスは精神病院で治療されるもマンマと返り咲き、イグネイシャスは間一髪救急車から身をかわす。この二人を批判しても始まらない。在るのだから。綺麗事を言っても、社会はこの二人を内包している

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    2022年09月22日
  • オーバーストーリー

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    大傑作。あまりにおもしろくて半日で一気読みした。ちょっと動揺するくらいにso movedで、とりあえず今年のマイベストは決定した。極めて美しい無限の姿。

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    2021年12月29日
  • オーバーストーリー

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    すごい本だった。
    第一に、アメリカで天然林の伐採運動が、どのように盛り上がっていったのか、何人かの人の個人史の集合として読むことができる。
    第二に、樹木の集合体としての森林に、別の次元の特性が備わっていることを、科学的知見も援用しながら示したこと。
    第三に、それに関わる人間のあり方を示したこと。
    とにかくパワフルでびっくりした。

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    2020年07月25日
  • オーバーストーリー

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    切ない物語でした。適した大気があるから、我々は普通に生活できている。その大気を作ってくれている樹木。その樹木を伐採する人間。その伐採を食い止める人。レイの発した「正当防衛」がしっくりきた。不条理な世の中だなぁとつくづく思う。メルロポンティを思い出した。

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    2020年05月25日
  • オーバーストーリー

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    人との出会い・人生は無数に枝分かれし、絡み合い、時に根幹に帰る様はまるで木のよう。

    読み終えた後、木を見上げその樹皮に触れて名前を尋ねてしまったけど、伝わっただろうか。

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    2020年03月24日
  • オーバーストーリー

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    昔、吉祥寺に知久寿焼のライブを観に行ったことがある。彼はMCで、吉祥寺の街中にあるとても古い木について話していた。その木は不思議なことに、つららのようにいくつもの「こぶ」が太い枝から下に向かって伸びているのだという。自分はその木を幼い頃から当然のように認知していたが、そんな形状が目に入ったことは一度もなかった。ライブのあと、何気なくその木の前を通って例の「こぶ」を目にした時、身近な世界のなかには不可視の領域が含まれているのだと知り、愕然としたことを憶えている。
    この本に充満しているのは、そうした視えないものたちのむせかえるような気配だ。そしてパワーズ特有の、途方もなさから詩の様相を帯び始める事

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    2020年02月09日
  • オーバーストーリー

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    ‪淡々と積み重なった冷静な言葉が描く、ゾクゾクするくらい緻密で壮大な営みに、ひたすら心を震わされる快感。こんな本にあと何回出逢えるんだろう。

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    2020年01月21日
  • オルフェオ

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    核酸を増殖するPCR(polymerase chain reaction)の過程をこれ程まで詩的に記載された文章はあっただろうか?!僅か2ページの出だしの文章に、いきなりやられてしまった。
    音楽の物語、否、音の物語。音は楽器から奏でられるものだけではない。あらゆる物、あらゆる言葉、あらゆる事象の中に音は内包されている。例えば、朝焼けには朝日のメロディーが、夕焼けには夕日のメロディーが、降雪も雪の種類により各々のメロディーが内包されている。この世は音に溢れている。世界中から音が聴こえ、それを譜面に著わそうとするピーター。それが高じてDNA塩基をkeyとしてメロディーを作ろうとする。それが周囲の誤

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    2019年05月14日
  • オルフェオ

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    リチャード・パワーズは以前から友人のひとりに読め読めと言われ続けていたのだが、なにしろ長大で難解な印象があり(事実そうなのだが)、読書会というきっかけがなければこのままずるずる読まずにいたと思う。その点で読書会に感謝、そしてまた、リチャード・パワーズという小説家、『オルフェオ』という作品に出会えたことを心から感謝する。

    結論から言うと、本書『オルフェオ』は2015年の個人的ベスト級の作品です。今現在『グールド魚類画帖』のフラナガンとパワーズによる、熾烈なWリチャード首位争奪戦が繰り広げられている次第。ちなみにわたしは音楽的な知識は絶無なので、本書に出てくる曲の十分の九は名前すら聞いたことがな

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    2015年12月06日
  • ジェイムズ

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    海外文学は私には読みづらい物が多く、リタイヤすることも多々あり、、。
    期待せずに読み始めたけど面白かったー!一気読みしちゃった。
    トムソーヤの冒険は未読です。
    これから読みたいなぁとも思わなかったけど、これは良かった。
    人間も動物なんだなって思う。どこまでも残虐になれちゃって。怖い。
    差別はまだなくなってないし、これからもなくならないだろな。なんでこういう経験したのによくならないんだろ。
    忘れちゃうのかな。自分が経験してないからなのかな。

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    2026年08月16日
  • ジェイムズ

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    トムソーヤの親友ハックルベリー。そのハックを養子に迎えたダグラス未亡人。そのダグラスの姉ミスワトソンの奴隷であるジム(ジェイムズ)が主人公のこの作品。奴隷というものが、どのように自身の存在を捉え、白人を見て、そして奴隷社会の中で生きるのか、それが描かれていて、かなり読みやすく内容も面白かったです。

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    2026年08月09日
  • ジェイムズ

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    非常に読みやすい文体であっという間に読み終わりました。
    多様性、LGBTQなどさけばれる昨今において、この時代にこの問題提起がなされることで、現在進行形の差別がまだあるのだと思いました。日本にいると気づきにくいですが。

    ハックルベリーの冒険の原作を40年前に読んだ気がするのですが、全然覚えてないのであらためて読み直してみたいと思います。

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    2026年08月09日
  • ジェイムズ

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    『トム・ソーヤーの冒険』の続編にあたる『ハックルベリー・フィンの冒険』――暴力的な父親から逃げた少年ハックが、逃亡中の黒人奴隷ジムとともに、いかだでミシシッピ川を下りながら、自由と本当の友情を求めていく物語――を、ジム(ジェイムズ)の視点から描いた作品です。

    もっとも、訳者のあとがきによれば、前半は原作と同じストーリーをたどるものの、後半、私の推測では全体の後ろ三分の一ほどは、独自の物語になっているそうです。なにせ原作は未読――ひょっとしたら五十年以上前に読んだのかもしれませんが、もはや忘却の彼方です――なので、どの部分が原作と異なるのかは分かりません。

    主人公のジェイムズは、知的好奇心に

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    2026年08月06日
  • ジェイムズ

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    アメリカにおける人種問題、白人に迫害される奴隷としての黒人の気持ちや考えが記されています。ハックルベリー・フィンの冒険の中のジムを主人公に語られていて、目を覆いたくなる場面もありますが、彼等の気持ちがしっかりと伝わります。

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    2026年06月05日
  • ジェイムズ

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    ネタバレ

    「ハックルベリー・フィンの冒険」を黒人奴隷ジムの視点から描き直した作品。原作をほとんど覚えていなくても問題なく楽しめた。奴隷制度という重いテーマを扱いながらも、逃亡劇としての面白さが抜群で、皮肉やユーモアも効いていて読みやすい。終盤には思わぬ展開も待っていて、最後まで夢中になった。「自分の好きな嘘は信じるけど、都合の悪い真実は無視する」という言葉は、現代社会にも重なるものがあり、とても印象に残った。これを機に本家「ハックルベリー・フィン」も読み返してみたくなった。

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    2026年05月24日
  • プレイグラウンド

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    ネタバレ

    トマス・ピンチョン著作『逆光』が重版しました、とのポストをふと目にした。プロフィールを見ると、同じ訳者である木原義彦氏が『プレイグラウンド』に関するポストを引用リポストしていたというのがこの本との接点。本屋に行った際に見かけて、ちょっと買ってみるかと4,500円の本をレジに渡したのが最後、最後まで興味深く読ませてもらった。

    初めに文章について話すと、小難しいわけでもなく、だらだらとしているわけでもなく、良い塩梅で読者をこの本の世界に引っ張ってくれた。作者及び訳者の力量によるものと思う。勝手なイメージだがアメリカ文学は固有名詞をその文化圏の固有名詞及び「常識」の範囲を拡大した、読者を選別するよ

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    2026年04月11日
  • オルフェオ

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    相変わらずぺダンティックで、濁流のように押し寄せる暗喩。イライラする。
    しかし終盤で必ず気持ちよさが用意されていると、3人の農夫が舞踏会に行く的な本で学んだので、以前よりは期待感を持ってストレスなく読み進める。あと主人公が冴えないおっさんなので、語り口もどこかウディアレンぽい滑稽さとして受容できる、この点もストレスの軽減に貢献する。
    最後はやはりよかった。いわれている意味は大して理解できないけど、映像的に美しい。

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    2026年04月10日
  • ジェイムズ

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    勢いで読み切れちゃう作品
    トムソーヤーの冒険とかハックルベリー・フィンの小説を読んでる人はより楽しめるかも

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    2026年03月30日
  • ジェイムズ

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    ・しんどかったけど面白かった〜。
    ・トムソーヤやハックルベリーはとても昔に読んだのだけど、正直話はあんまり覚えていない。解説で最後財宝を見つけて〜と書いてあったけど、そうだっけ?と思ったくらい。
    ・なのでこの作品単体で楽しんだ、という感覚。
    ・まぁ楽しんだ、というには当時の奴隷の扱いがしんど過ぎたけれど。自分は他者が軽んじられる(というレベルでは無いけれど)という描写には基本苦手、しんどさを感じてしまうので。ドラマの「地下鉄道」(あれも凄かった)を思い出した。
    ・とは言え、ジム(や他の黒人奴隷)の二面性(話し方を使い分ける)等、ゾクゾクする様な設定もあり、文学、社会の歴史的な意義深さ、以外にも

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    2026年03月15日