あらすじ
超高密度文体で紡がれる黙示録的ゴシック・サスペンス!
全米図書賞&日本翻訳大賞受賞作『JR』の作家ギャディスによる、一軒の古いゴシック式洋館を舞台に繰り広げられる、世界的陰謀と底無しの悪意が渦巻く狂騒劇――
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今は亡き大鉱山主の娘エリザベス・ブースは、ハドソン河畔にある古いカーペンター・ゴシック様式の屋敷に、夫ポールと暮らしていた。
山師気質で粗暴なポールは、メディアコンサルタントとしての成功を目論見、いくつもの胡散臭い事業の立ち上げを画策し動き回っている。
ひっきりなしに屋敷にかかってくるいくつもの電話、そして訪ねてくる怪しい男たち。
彼らが交わす錯綜した会話の断片からは、CIA、FBI、放送局、種子販売会社、鉱山開発会社などの影が垣間見え、やがて巨大利権をめぐる遠大な世界的陰謀へと話は広がり、エリザベス自身もそこで起こる事件へと巻き込まれていく……
全米図書賞受賞『JR』の作家ギャディスによる、一軒の屋敷を舞台に繰り広げられる、超絶技巧×超高密度文体のゴシック・サスペンス&黙示録的狂騒会話劇。
(1985年作)
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Posted by ブクログ
地の文でも会話でもナレーション的な説明がされず、読者は情報の断片を拾いながらストーリーを作り上げていくことになるが、それは陰謀論を作り上げるのとそう変わらない行為のようにも思える。作中の各人物は、その人について話している人が誰か、対話の相手が誰かによって印象が揺れ動き、読者にとって信頼できる人物は見当たらない。謎めいた言葉の連なりは、今起きている会話や動作の描写の中に、テレビで流れている映像の描写や作品内外のテキストをシームレスに織り込みながら流れていき、幻惑されるような美しさを感じさせる。言葉そのものが、今起きていることのレイヤーを分裂させ、上塗りし、つぎはぎしていくかのような。説明のなさや明暗の描写の美しさから、途中までは映画を見てるみたいだと思っていたけれど、これは小説ならではの体験だった。