ジョセフ・ヘンリックのレビュー一覧

  • 文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉

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    面白かった!ヒトをヒトたらしめているのは文化であるということがよく分かった。ヒトはチンパンジーと比べて特別賢いわけでも生物として優れているわけでもない。すべては文化の蓄積のおかげなんだ。ヒトは文化と切り離されたら生きていけないが、それは現代人が退化したわけではなく、狩猟採集時代においても同じこと。樹上から降りて大きな集団を作り、集団内で文化を蓄積し、文化の進化とともにヒトの遺伝子も進化してきた。
    また、一見不合理に思われるようなヒトの心理特性についても文化進化の面から考えると納得いくことも多かった。こうしたヒトの生得的心理に逆らうような規範が社会に根付くのは難しいだろうこともよく分かった。それ

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    2025年10月03日
  • 文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉

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    ヒトが向社会的な動物として進化したのは,文化習得に秀でた個人が自然選択において有利になったからであるという主張を膨大なエビデンスをもとに展開していく。
    人類に文化的学習の淘汰圧がはたらき,文化進化がヒトの遺伝的進化の最大の駆動力となったのは200万年前と著者は主張する。
    "文化的な進化は、遺伝的な進化ではなくとも、生物学的な進化の一種なのである。"

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    2020年01月13日
  • WEIRD「現代人」の奇妙な心理 下 経済的繁栄、民主制、個人主義の起源

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    下巻は特にオスによるメスの獲得、つまり「子孫を残す」という行動原理から人類の成り立ちが紐解かれていく。日本では一夫一婦制が当たり前だが、歴史的に見てもそれが必ずしも正しいとは言い切れない。しかし、長い時間をかけて、そのような秩序が形成されていったのだ。そこには宗教的な理由や男女それぞれの合理的な思惑も反映されていった。

    結果として種が続いているという事を考えれば、狡猾な戦略がそこにはあるのだ。女性は、優れたハンターを独占できる方が、食に満たされ、自らの子孫を残す確実性が高まる。しかし、一夫一婦制だと「優秀なハンター」は別の誰かに独占されてしまい、「狩りの下手糞な夫」とつがいになる可能性もある

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    2025年08月29日
  • WEIRD「現代人」の奇妙な心理 上 経済的繁栄、民主制、個人主義の起源

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    「WEIRD」とは、西洋の(Westem)、教育水準の高い (Educated)、工業化された(Industrialized)、裕福な(Rich)、民主主義の(Democratic) 社会という意味の略語である。世の中の研究論文が、このWEIRDを対象に結論づけられている事が多いが、果たしてその見方は正しいのかというのが本著の問題提起だ。

    家族形態や識字率、宗教観や人生観、経済観念においても、一様にWEIRDが世界代表と言えるわけではない。偏った標本のはずだ。我々の常識とは、本当に常識と言えるのか。

    上巻は、そうした偏りを招いたであろう証拠を探っていく。特に決定的に感じるのは宗教だ。プロテ

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    2025年08月26日
  • 文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉

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    厳しい環境に適応するために遺伝子が変化してきたというこれまでの典型的な進化論的アプローチとは異なり、生き残るために文化が形成され、それに適応してきた結果、ヒトが遺伝的にも進化してきたという新たな進化論を、様々な事例を挙げながら解説している本書。正直「卵が先か、ニワトリが先か」のような話かと思っていたが、読むと非常に説得力があり、大変興味深かった。

    人類が地球上でもっとも繁栄してきたのは、単に知能が高いからではない。他の動物との決定的な違いは「文化」があること。環境に適応していく中で文化(毒抜きや調理法、狩猟方法、道具の作り方、タブー、儀式、風習、ルールなど)が生じ、それに基づいて社会が形成さ

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    2024年01月11日
  • 文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉

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    人類を他の生物とは違った存在に進化させたのは集団脳による文化の蓄積が可能であったからであるようだ。卓越したモデルからその技術や知識を学ぶことで、人間社会は全体がレベルアップすることが可能となった。
    しかし、他者から学べるようになるためには(教えてもらえるようになるためには)常に信頼関係を保ち続けていなければならない。社会の嫌らわれ者は何も教えてもらえないのだ。
    人間の長い進化の歴史なかでは、他人からどのように思われているか(他者からの評価がいかなるものか)が優先すべきことであったのだ。

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    2023年10月28日
  • 文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉

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    人間とチンパンジーの何が違うか、から始まる本書。つかみから面白い。ちなみに違いは模倣力の高さが挙げられていたが、逆にその模倣癖が災いしランダム選択がしづらくなっているという知識も楽しい。
    人間は、共同体で模倣による知的ノウハウを積み重ねることで文化を作り、今や地球で1番強い生物になっている。共同体というのがミソで、孤立すると持っていたノウハウは失われる。個人が集まり重なって過ごせる能力の高さが、人間の強さの元とわかる。

    進化してきたこと全てが文化進化の働きと言われていることに全面同意はできないが、内容は概ね納得できるものが多い。心理実験から民族の話等、多岐に渡る内容のため、単純に様々な知識を

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    2023年07月11日
  • 文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉

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    ヒトの進化について、言語より広い「文化」の影響を幅広く考察した書籍。幅広すぎてちょっと分かりにくい箇所も多いが、興味深い。

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    2020年08月23日
  • WEIRD「現代人」の奇妙な心理 下 経済的繁栄、民主制、個人主義の起源

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    内容的には時代感も現代の我々に近い下巻の方がとっつきやすいかもしれない。市場・法・科学・宗教、ビッグワードになりがちな近代コンセプトがいかに私たちの心理や認識を形成し、社会を形作っているのか。内容は決して平易ではないけれど、「うお〜、なるほどな〜」と次から次へと目から鱗が。

    人間は良くも悪くも一回の人生しか生きれないので、通歴史・通文化で所与を根本から疑うことが難しい。だからこそ、ガチで書かれた本が与えてくれる視座は、重厚な読書ならでは。

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    2025年06月25日
  • WEIRD「現代人」の奇妙な心理 上 経済的繁栄、民主制、個人主義の起源

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    「現代人は、歴史上存在した社会や、人類進化の途上で存在した社会の人々とは、神経学的にも心理学的にも全く異なっている」と本書で語られるように、『サピエンス全史』にも似た学際的なアプローチから現代人【W:Western(西洋の)/ E:Educated(教育水準の高い)/ I: Industrialized(工業化された)/R:Rich(裕福な)/ D:Democratic(民主主義の)】の特異性を明らかにしていく。私たちが普遍と信じて疑わない心理的傾向や価値観も、歴史の過程で、着実に構築されてきたものであることが、実証的にわかる。

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    2025年05月31日
  • 人類が進化する未来 世界の科学者が考えていること

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    主に生物学に対するトピックをまとめた書。生物を専門とする人向けというよりは、専門ではない人間が生物のトレンドを知る際に有用な書という印象。
    クリスパー・キャス9により任意のゲノムの編集が可能になった今、その将来の展望について語ってくれる(倫理というよりは生物よりの視点)。
    また、進化論についても新しい視座を与えてくれる。生物は環境によって大枠を決定されていて、多様性は細部の偶発的な変異によるものと唱えるコケル氏と、環境への適応方法は多数あり、その適応方法が多様性を生んでいるという主張のロソス氏の対比は面白かったが、ロソス氏の意見に対するコケル氏の反論を聞きたかったところ。

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    2024年09月11日
  • WEIRD「現代人」の奇妙な心理 下 経済的繁栄、民主制、個人主義の起源

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    視点がとても興味深かったです。著者も認めておられるようですが、広義にはマックス・ウェーバーの延長に位置付けられる論考だと感じます。
    ただものすごく冗長で、上下巻にわたる膨大なボリュームを書くのは確かに分析的思考に取り憑かれたウィアードな(奇妙な)人の習慣だろうとも思いました。

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    2024年08月17日
  • WEIRD「現代人」の奇妙な心理 上 経済的繁栄、民主制、個人主義の起源

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     WEIRD(ウィアード)。聞き慣れない略語である。西洋の(Western)、教育水準の高い(Educated)、工業化された(Industrialized)、裕福な(Rich)、民主主義の(Democratic)社会で生まれ育った、の頭文字を取った言葉である。上下巻にわたる大作であり、まず上巻を読んだ。個人主義的傾向が強い国ほど、裕福で、イノベーションが生まれやすく、経済的な生産活動も盛んであると力説している。それがWEIRDであると。詳細は下巻を読んだ後に述べることとする。

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    2024年04月13日
  • WEIRD「現代人」の奇妙な心理 上 経済的繁栄、民主制、個人主義の起源

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    原題は『The WEIRDest People in the World: How the West Became Psychologically Peculiar and Particularly Prosperous』で、WEIRD は Western, Educated, Industrialized, Rich and Democratic のそれぞれの単語の頭文字をとったものである。
    本書はいわゆる「現代人」の心理について書かれているのではなく、心理学の研究対象として偏ったサンプリングをされて「現代人」と見做されている特定の性質を持った人々について書かれている。

    従って、西洋の宗教

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    2024年04月01日
  • 人類が進化する未来 世界の科学者が考えていること

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    進化する未来にあたり
    科学者たちの考察や
    なにを動かしているのかを垣間見ることができる。

    でも、自分にとって
    何が有用なのか、知識を得てこの先へ進みたい
    といったことは
    本書では達成することは非常に難しい内容である。

    研究者たちの向くレールを知らないということは
    彼らの理解につながらないし
    紡いでいくこともできない。

    この「紡いでいく」という点で
    社会に役に立っていくことができるであろう著書。

    紡いでいくということは
    科学者のバトンをつなげていけることだから

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    2024年02月17日
  • 文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉

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    感想
    自然選択の先にある学習。人類は模倣と学習を繰り返すことで他の種には手の届かない段階にまで到達した。

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    2023年07月04日
  • 人類が進化する未来 世界の科学者が考えていること

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    各界の科学者とのラフなインタビュー。
    とても軽く少しずつ紹介している。
    私が読んで印象に残ったのは、理論物理学者のリサ・ランドールさんと、人類学者のジョセフ・ヘンリックさん。

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    2022年05月26日
  • 人類が進化する未来 世界の科学者が考えていること

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    いくつかのピックアップ。結局は自分の勘を信じて研究を続けること。食事の回数を減らした方が健康になれる。脳を活性化させるためにはストレスを減らす。料理で使う火は「体外の消化」を意味する。陶器の発明によって料理の幅が広がった。恐竜が1億6500万年経っても知性を持てなかったのは、必要がなかったからなのかもしれない。

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    2022年03月21日
  • 人類が進化する未来 世界の科学者が考えていること

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    様々な分野で活躍する科学者へ時事について質問しているインタビュー集です。
    世界が今注目しているAI開発や宇宙科学や遺伝学の進捗について、様々な畑からの見解が綴られています。
    生物学的進化であればゲノム編集、工学的進化であればサイボーグ技術や脳ダウンロードに進むのだろうと考えます。
    不老不死は脳ダウンロードで叶えられ、身体能力向上はゲノム編集とサイボーグ技術を合わせることで叶えられると期待しています。
    私自身は肉体を改造して新たな人類となることに恐れはありませんが…、皆さんは如何でしょうか。
    今後の人類の在り方について考えさせられる一冊。

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    2022年01月03日
  • 人類が進化する未来 世界の科学者が考えていること

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    ネタバレ

    <目次>
    プロローグ科学の発展がもたらす人類の新たなる進化
    1ジェニファー・ダウドナ ゲノム編集はヒトの希望か
    2デイビッド・シンクレア 人生200年時代の到来
    3リサ・ランドール 目に見えない宇宙の秘密
    4ジョセフ・ヘンリック 人類は自己家畜化に陥っている
    5ジョナサン・シルバータウン aiに料理はできるか
    6チャールズ・コケル 物理法則に制限される生命
    7マーティン・リース 世界大戦が起きれば数分で終わる
    8ジョナサン・ソロス 宇宙に知性は存在するか
    エピローグ進化論は科学の範疇を超える

    世界の科学者が考えていること

    P98料理が外部の胃として機能して

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    2021年12月30日