【感想・ネタバレ】WEIRD「現代人」の奇妙な心理 上 経済的繁栄、民主制、個人主義の起源のレビュー

あらすじ

「現代人は、歴史上存在した社会や、人類進化の途上で存在した社会の人々とは、神経学的にも心理学的にも全く異なっている――」(本文より)

市場経済や法律、科学、民主主義の起源を探ると、それら現代を特徴づける制度や概念が誕生するよりも先に、ヨーロッパの人々に現代的な心理が芽生えていたことがわかる。

従来考えられていたように、社会制度や物質的豊かさが人々の心理を変えてきたのではなく、まず人々の感じ方や考え方が変化し、それによって社会が変わり、歴史がつくられてきた。

そうして生まれたヨーロッパ人の現代的な心理は、その後、文化の伝播や国家間の競争を通じて世界中に広がり、世界のあり方を大きく変えていくことに――

ジャレド・ダイアモンドが『銃・病原菌・鉄』のテーマに組み込まなかった「人々の心理」を、歴史を動かすファクターとして捉えなおすことで新しい世界像を描き出す、知的興奮の書!

16か国で刊行の世界的ベストセラー!


:::::::::世界的著名人が絶賛!:::::::::

「社会思想書における最高傑作」
――マシュー・サイド『多様性の科学』著者

「現代世界の起源を知るうえで必読」
――ウォルター・シャイデル『暴力と不平等の人類史』著者

「世界全体で生活水準を向上させ、大規模かつグローバルな課題に対処する方法を見つけることは、今後ますます重要になってくる。人々の多様性が何に由来するのか、それがこうした問題に立ち向かう上でいかに重要であるかを、わたしたちは認識しなければならない。それらの問いの答えを知りたい方は、ぜひ本書を読んでもらいたい」
――ダロン・アセモグル『国家はなぜ衰退するのか』『自由の運命』共著者

「学術書としても啓蒙書としても偉大な一冊」
――マット・リドレー『人類とイノベーション』著者

「すべての人間は共通した心理を持つという定説をくつがえした」
――リチャード・ランガム『善と悪のパラドックス』著者

「目もくらむような偉業」
――リチャード・ニスベット『木を見る西洋人 森を見る東洋人』著者

「現在繁栄している国の人々の心理的特徴は人類社会に普遍的なものではなく、(……)中世ヨーロッパのカトリック教会がもたらした制度的変化の結果だ。本書は現代社会の起源に関する議論を大きく変えていくだろう」
――ポール・シーブライト『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?』著者

「ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』よりもはるかに深くて野心的な本」
――ダニエル・C・デネット『心の進化を解明する』著者

「2020年で最も重要な本のひとつ」
――キャス・サンスティーン『NUDGE 実践 行動経済学』共著者

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Posted by ブクログ

「WEIRD」とは、西洋の(Westem)、教育水準の高い (Educated)、工業化された(Industrialized)、裕福な(Rich)、民主主義の(Democratic) 社会という意味の略語である。世の中の研究論文が、このWEIRDを対象に結論づけられている事が多いが、果たしてその見方は正しいのかというのが本著の問題提起だ。

家族形態や識字率、宗教観や人生観、経済観念においても、一様にWEIRDが世界代表と言えるわけではない。偏った標本のはずだ。我々の常識とは、本当に常識と言えるのか。

上巻は、そうした偏りを招いたであろう証拠を探っていく。特に決定的に感じるのは宗教だ。プロテスタンティズムが識字能力や教育に強く影響した。プロテスタントの信者たちは、聖書を独力で読んで品性を高め、神とのより強い関係を築くために、読み書きを学ばねばならないと考えていた。プロテスタンティズムが生んだ読み書きのできる農民たちが教育水準の高い労働力となり、それが急速な経済発展を促すとともに、第二次産業革命の推進を後押しした。

この辺は、小室直樹やマックスヴェーバーの考え方にも通ずる。

ニューギニア奥地で調査を行なっていた人類学者たちは、村々の人口がおよそ300人を超えることに気づいた。どの村も、武器や戦術にはほとんど差がないなか、争いの勝敗を分ける決め手は、共同体の規模だった。にもかかわらず、そのの規模には、目に見えない天井があるようだった。しかし、例外が一つあった。イラヒタというアラペシュ族の共同体が三九の氏族を統合し、2500人を超える集団を維持していたのだ。その結束力の源こそ、儀式や神に関する社会規範。

ハラリやジャレドダイヤモンドを補強するような論理展開でもある。下巻も楽しみだ。

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2025年08月26日

Posted by ブクログ

「現代人は、歴史上存在した社会や、人類進化の途上で存在した社会の人々とは、神経学的にも心理学的にも全く異なっている」と本書で語られるように、『サピエンス全史』にも似た学際的なアプローチから現代人【W:Western(西洋の)/ E:Educated(教育水準の高い)/ I: Industrialized(工業化された)/R:Rich(裕福な)/ D:Democratic(民主主義の)】の特異性を明らかにしていく。私たちが普遍と信じて疑わない心理的傾向や価値観も、歴史の過程で、着実に構築されてきたものであることが、実証的にわかる。

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2025年05月31日

Posted by ブクログ

 WEIRD(ウィアード)。聞き慣れない略語である。西洋の(Western)、教育水準の高い(Educated)、工業化された(Industrialized)、裕福な(Rich)、民主主義の(Democratic)社会で生まれ育った、の頭文字を取った言葉である。上下巻にわたる大作であり、まず上巻を読んだ。個人主義的傾向が強い国ほど、裕福で、イノベーションが生まれやすく、経済的な生産活動も盛んであると力説している。それがWEIRDであると。詳細は下巻を読んだ後に述べることとする。

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2024年04月13日

Posted by ブクログ

原題は『The WEIRDest People in the World: How the West Became Psychologically Peculiar and Particularly Prosperous』で、WEIRD は Western, Educated, Industrialized, Rich and Democratic のそれぞれの単語の頭文字をとったものである。
本書はいわゆる「現代人」の心理について書かれているのではなく、心理学の研究対象として偏ったサンプリングをされて「現代人」と見做されている特定の性質を持った人々について書かれている。

従って、西洋の宗教的な環境から文化が構成されることについての記述が多く、文化的な背景が不足した状態では理解の何度が高い。

> WEIRDな人々にとって、神といえばキリスト教、キリスト教といえば慈悲心なので
、プライム刺激としての神(神プライム)が、無意識のうちに慈善活動を連想させ、その結果、相手に提供する金額が増えたのかもしれない。(第4章 神様が見ておられる、正しい行ないをなさい!)

> 本書はここで、教会は、親族ベースのグローバルな差異形成に寄与したのか、したとすればどの程度なのかという点に関心を向け、それを知る方法として、親族関係の緊密度と、教会の影響を受けた期間の関連性を吟味する。(教会が親族関係を変え、人々の心理を変えた)

WEIRD な人々に関する事例の紹介は多くあるので、WEIRD な人々の調査結果が色々な分野に与える影響や問題点についての認識をあらかじめ持っている人にとっては得るものが多いのだろうと思う。
一方で、本書でいう「現代人」の世界に対する影響がいかほどのものかの感覚を持っていない私のような場合には、他の既存の研究結果や文献をあたらないと課題と問題点に共感して読み進めることが難しいのではないかという印象を受けた。

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2024年04月01日

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