結城昌治のレビュー一覧
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敵前逃亡・奔敵、従軍免脱、司令官逃避、敵前党与逃亡、上官殺害、これらは陸軍刑法において最高刑が死刑と定められていた罪で、作者は、これらの罪で裁かれた兵士たちの行動が実際どのようなものであったのかを解明しようと試みる。彼らはどうしてそのような行為をしてしまったのか、当時の部隊関係者等の証言から少しずつ状況が明らかになってくるのだが、そこには単純に軍規違反とは言えない隠れた悲劇があった。
ハードボイルド作家として著名な作者がどうしてこのような本を書いたのか。著者は講和恩赦の際、東京地検保護課に勤務しており、恩赦事務のために膨大な件数の軍法会議の記録を読んで、そのとき初めて知った軍隊の暗い部分 -
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ネタバレ1963年かー、「夜終わる時」。
さすがにそんな頃の昭和は知らない。でも、読んでいて、昭和のあの夜の暗さがじんわり迫ってくる感じがよかった。
だからさ、夜が蛍光灯の白くまばゆい明かりでなく、白熱電球の赤みがかった灯りだった頃…
と、なんだか前に片岡義男を読んだせいなのかw、妙に文章を飾っているようで自分で笑っちゃうんだけど、それはそれとしてストーリーといい、登場人物といい何とも言えない哀感があって。妙にメランコリックになってしまうというか、ついそういう文章になってしまうというか、そういう本だったなぁーと。
とはいえ、たかが本の感想なわけで、とりあえず本のタイトルになている「夜の終わる時」は -
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ミステリ短編集。でも実は、それほどミステリっぽくない印象のものも多い気がしました。だけど特に事件が起こるわけでなくとも、心理的にじわじわと嫌な感じが漂う物語があって、その結末に驚かされるのでこれはやっぱりミステリなのだなあ、と認識させられます。一見地味だけど、読めば読むほどじわじわ来るなあ。
お気に入りは「みにくいアヒル」。とにかく主人公は気の毒なのだけれど、それでもまあまあうまく生きられていると思っていたのに。まさかそんな選択を! でもそれが幸せと思えるのかあ、と何ともいえず切ない気分になりました。同じような印象で、「老後」も幸せの意味を考えさせられますね……。
「絶対反対」にもやられました -
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前半と後半で趣の違う短編集。前半はイヤミス寄り。後半はサプライズ重視。後者が好みであった。
惨事
いきなり悲惨な話。ラストの葛藤は、どうぶつタワーの時間切れかと思ったわ(失礼
時代背景あり、インパクト絶大のはじまりだった。
蝮の家
予想は容易く、清々しい。証拠のひとつが素晴らしかった。
孤独なカラス
教育環境が人格形成の大元。狂いそうな時間が流れた異質な作品。
老後
全然見合わない老後でもの哀しい。もっと弾けてほしかった。
私に触らないで
誘惑。違う未来。自分の判断って大事でねー。
みにくいアヒル
私も自分の容姿に自信がないが、この物語は哀しくも彼女が選んだ道なのだ。
女の鑑
読みにくい?? -
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殺人ミステリーでありながら暗さは感じられない。登場人物はみな怪しげな人物である。しかし読み進んでいってもなかなか犯人像が浮かばない。情景と心理描写は的確であり、ミステリーの中にユーモアもあって楽しく読める。巻末の解説で中辻理夫が次のように書いている。「悲劇の中の喜劇であり、喜劇の中の悲劇である。悲劇と喜劇はいずれも等しく人生に横たわっている」。思いがけないことから、悲劇が生じる。悲劇も喜劇も運命の匙加減次第。でもそれが人生だと納得させるミステリー小説だと思う。最後の郷原警部の夜中の調査経過の日記、そして眠りから覚めた翌日の思いがけない結末。考え抜かれたストーリーだと感心した。