結城昌治のレビュー一覧

  • 軍旗はためく下に 増補新版

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    戦争はもちろんのこと軍隊組織の非合理性を説く。軍法会議をテーマに組織の歯車に潰された哀しき兵士たちを、独特の伝聞体で描く。

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    2024年04月04日
  • 暗い落日

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    この暗さがなんともね、イイネ!
    もうね、今どき漁村の近くの断崖から車を落下させてなんてもうね、津軽海峡・冬景色、ですんで展開的に無理があるけどね、この昭和なら許されるわけですよ。畳の一間に絨毯をひく貧しさとか、成り上がった金持ちとその強力な父親に抑圧された息子みたいな設定とか。それもまたアリなわけですよ。
    色恋沙汰も全く無し。ひたすらストイックに頑張る主人公にサラリーマンの悲哀を重ねつつも共感せずにはいられない、そんなおっさん向けの物語。

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    2023年10月10日
  • あるフィルムの背景 ──ミステリ短篇傑作選

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    オビに「昭和に書かれていた極上イヤミス」とあって、その通りなのよね。それなので、その時代を知らない人には楽しめないかもなー・・・
    第一部は角川版で既読、二部ではたぶん未読のものも読めて満足。

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    2017年11月26日
  • 白昼堂々

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    集団ドロボー業はじめました、
    こんな感じの作品ですね。
    割のいい仕事がこれ、といっている時点で
    なにやら胡散臭さ満載ですが。

    何より面白いのは
    悪人ながら、きちんと栄光、墜落
    そして完全陥落まで書かれていること。
    特に一発逆転劇のところは目を見張ることでしょう。
    ただし、結末は、予想通りなのだ。

    ある意味悪い奴らだけれども
    一番人間の欲に正直に生き、
    散っていった気がします。

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    2012年04月10日
  • 斬に処す-甲州遊侠伝(小学館文庫)

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    実際に読んだのは、昭和四十七年の徳間書店版。
    清水次郎長一家の描かれ様に溜飲が下がる想いだ。
    一方で、赤報隊で悲惨な末路を迎えた、相樂総三と同様に、権力の切捨てにあった、勝蔵と比べて、あまりにも調子が良すぎる次郎長の生き延び方には、虫酸が走るのは、山梨県人の贔屓の引き倒しなのか。

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    2011年02月01日
  • あるフィルムの背景 ──ミステリ短篇傑作選

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    編者推しの前半部分はほぼ男女関係や恋愛のもつれ、性的倒錯などに関わる短編ミステリ。嫌ミスという括りになるのかはともかく、読後感は当然ながら爽快ではない。
    後半は一捻りある「奇妙な味」の短編、ショートショートであり、個人的にはこちらのほうが好みであった。

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    2025年11月01日
  • 軍旗はためく下に 増補新版

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     敵前逃亡・奔敵、従軍免脱、司令官逃避、敵前党与逃亡、上官殺害、これらは陸軍刑法において最高刑が死刑と定められていた罪で、作者は、これらの罪で裁かれた兵士たちの行動が実際どのようなものであったのかを解明しようと試みる。彼らはどうしてそのような行為をしてしまったのか、当時の部隊関係者等の証言から少しずつ状況が明らかになってくるのだが、そこには単純に軍規違反とは言えない隠れた悲劇があった。

     ハードボイルド作家として著名な作者がどうしてこのような本を書いたのか。著者は講和恩赦の際、東京地検保護課に勤務しており、恩赦事務のために膨大な件数の軍法会議の記録を読んで、そのとき初めて知った軍隊の暗い部分

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    2024年09月12日
  • 軍旗はためく下に 増補新版

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    1970年の直木賞受賞作品。敵前逃亡は死刑、陸軍刑法によって理不尽に処刑されてしまったたくさんの日本兵のはなし。

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    2024年02月05日
  • 軍旗はためく下に 増補新版

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    覚悟の戦死ではなく、戦犯となり死刑となった人たちの経緯をたどる短編集。

    何度か挫折しそうになった戦争小説。限りなくノンフィクションと言っても間違いない太平洋戦争の「理不尽」が満載。

    総力戦の負け戦には、本作で描かれた「理不尽」も待ち受けることを全日本人は肝に銘じるべき。

    構成もさることながら「本作を若者たちに読んで欲しい」という著者のあとがきも的確であり秀逸でもある。

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    2021年11月09日
  • 夜の終る時/熱い死角 ──警察小説傑作選

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    初期の警察小説。時代の空気は古いものの、懐かしいさを感じさせるが、展開は、かっこいい。アメリカの警察ものに通じる。

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    2020年06月10日
  • ひげのある男たち(電子復刻版)

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    初読みの作家さん。いやぁなかなかおもしろかったです!犯人全然わかりませんでした!題名の通り、ただ、ひげのある男たちが随所に出てきて混乱しました。
    それから、「不可能です、この人にはこの犯罪は出来ません」という説明が長すぎかなと思いました。個人的に、こういう説明文が苦手です。
    でもすべてが解決されたとき、これはなかなか良くできたお話だなと感心しました。←上から目線(笑)
    もっと評価されても良い、興味深い作家さんだなと思いました!他の作品も読んでみたいです☆

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    2020年03月18日
  • 夜の終る時/熱い死角 ──警察小説傑作選

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    ネタバレ

    1963年かー、「夜終わる時」。
    さすがにそんな頃の昭和は知らない。でも、読んでいて、昭和のあの夜の暗さがじんわり迫ってくる感じがよかった。
    だからさ、夜が蛍光灯の白くまばゆい明かりでなく、白熱電球の赤みがかった灯りだった頃…

    と、なんだか前に片岡義男を読んだせいなのかw、妙に文章を飾っているようで自分で笑っちゃうんだけど、それはそれとしてストーリーといい、登場人物といい何とも言えない哀感があって。妙にメランコリックになってしまうというか、ついそういう文章になってしまうというか、そういう本だったなぁーと。

    とはいえ、たかが本の感想なわけで、とりあえず本のタイトルになている「夜の終わる時」は

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    2019年05月18日
  • 通り魔~昭和ミステリールネサンス~

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    寒中水泳 C+
    天上縊死 A
    死ぬほど愛して B
    通り魔 A+
    喘息療法 A
    不可抗力 B+
    六年目の真実 B
    風の報酬  B

    あるフィルムの背景もそうだったが、この作家は幅が広い。本格ミステリからブラックユーモア、スパイ小説と豪華なラインナップだ。お勧めしやすい。高クオリティな作品群である。
    特に「通り魔」の大がかりなトリック、「嘆息療法」の計画破綻。物悲しさの中に、なんともいえぬ余韻を残す。

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    2018年10月30日
  • あるフィルムの背景 ──ミステリ短篇傑作選

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    小市民が悪事に手を染める瞬間と人々の破滅を描く。強姦被害者がトラウマに翻弄されて暗鬱な人生を送り最後は犯人に報復、強姦されかけてプライドを取り戻すも殺人する不美人、妻が出ているポルノを探し求める男(まるで赤い教室)、オリンピック反対者の殺人犯という正体、不気味な少年による殺人など不安が根底にある短編集。不気味で面白い。

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    2018年09月16日
  • 夜の終る時/熱い死角 ──警察小説傑作選

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    火曜サスペンス劇場の再放送を楽しんだという感じ。
    ♪さあ~、眠りなさい~とエンディングテーマが流れてきそうだった。♪いつか~来た道~な方かな?

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    2018年04月21日
  • あるフィルムの背景 ──ミステリ短篇傑作選

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    ミステリ短編集。でも実は、それほどミステリっぽくない印象のものも多い気がしました。だけど特に事件が起こるわけでなくとも、心理的にじわじわと嫌な感じが漂う物語があって、その結末に驚かされるのでこれはやっぱりミステリなのだなあ、と認識させられます。一見地味だけど、読めば読むほどじわじわ来るなあ。
    お気に入りは「みにくいアヒル」。とにかく主人公は気の毒なのだけれど、それでもまあまあうまく生きられていると思っていたのに。まさかそんな選択を! でもそれが幸せと思えるのかあ、と何ともいえず切ない気分になりました。同じような印象で、「老後」も幸せの意味を考えさせられますね……。
    「絶対反対」にもやられました

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    2018年02月28日
  • あるフィルムの背景 ──ミステリ短篇傑作選

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    前半と後半で趣の違う短編集。前半はイヤミス寄り。後半はサプライズ重視。後者が好みであった。

    惨事
    いきなり悲惨な話。ラストの葛藤は、どうぶつタワーの時間切れかと思ったわ(失礼
    時代背景あり、インパクト絶大のはじまりだった。
    蝮の家
    予想は容易く、清々しい。証拠のひとつが素晴らしかった。
    孤独なカラス
    教育環境が人格形成の大元。狂いそうな時間が流れた異質な作品。
    老後
    全然見合わない老後でもの哀しい。もっと弾けてほしかった。
    私に触らないで
    誘惑。違う未来。自分の判断って大事でねー。
    みにくいアヒル
    私も自分の容姿に自信がないが、この物語は哀しくも彼女が選んだ道なのだ。
    女の鑑
    読みにくい??

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    2018年09月15日
  • ひげのある男たち 郷原部長刑事シリーズ1

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    結城昌治のほぼ処女作。落語好きの結城はユーモラスにストーリーを展開しながら、読者を数多くの「ひげ」で混乱させる。登場人物も多くて、頭が入り乱れる。最後の結末は、思いがけないが、なるほどと納得できる。楽しく読めて、頭を使う小説である。

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    2013年03月17日
  • ゴメスの名はゴメス

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    1954年にジュネーブ休戦協定で、ベトナムは南北に分割された。翌年アメリカの支援でゴー・ディン・ディエムが南ベトナムの初代大統領になる。本書は、ベトナムでの革命・抗争が続いてゆく中の1962年に書かれたスパイ小説である。日南貿易会社の私、坂本は、前任者が姿を消したサイゴンに赴任し、前任者の行方を捜し始める。ガラス張りの靄のかかった状況の中で、確実に危険が迫ってくる。ストーリーは入り組んでいて、敵味方がわからなくなってゆくが、精緻に構成されている。文章は読みやすく、一気に読んでしまった。

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    2013年04月23日
  • 長い長い眠り 郷原部長刑事シリーズ2

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    殺人ミステリーでありながら暗さは感じられない。登場人物はみな怪しげな人物である。しかし読み進んでいってもなかなか犯人像が浮かばない。情景と心理描写は的確であり、ミステリーの中にユーモアもあって楽しく読める。巻末の解説で中辻理夫が次のように書いている。「悲劇の中の喜劇であり、喜劇の中の悲劇である。悲劇と喜劇はいずれも等しく人生に横たわっている」。思いがけないことから、悲劇が生じる。悲劇も喜劇も運命の匙加減次第。でもそれが人生だと納得させるミステリー小説だと思う。最後の郷原警部の夜中の調査経過の日記、そして眠りから覚めた翌日の思いがけない結末。考え抜かれたストーリーだと感心した。

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    2013年04月23日