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歴代直木賞受賞作中の白眉である(浅田次郎『コレクション戦争と文学11 軍隊と人間』解説より) 敵前逃亡・奔敵、従軍免脱、司令官逃避、敵前党与逃亡、上官殺害。陸軍刑法上、死刑と定められた罪により、戦地で裁かれ処刑された兵士たち。戦争の理不尽を描いた直木賞受賞作に著者の自作再読エッセイを収録した増補版。 〈解説〉五味川純平 〈巻末エッセイ〉川村湊
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Posted by ブクログ
戦争はもちろんのこと軍隊組織の非合理性を説く。軍法会議をテーマに組織の歯車に潰された哀しき兵士たちを、独特の伝聞体で描く。
覚悟の戦死ではなく、戦犯となり死刑となった人たちの経緯をたどる短編集。 何度か挫折しそうになった戦争小説。限りなくノンフィクションと言っても間違いない太平洋戦争の「理不尽」が満載。 総力戦の負け戦には、本作で描かれた「理不尽」も待ち受けることを全日本人は肝に銘じるべき。 構成もさることながら「...続きを読む本作を若者たちに読んで欲しい」という著者のあとがきも的確であり秀逸でもある。
敵前逃亡・奔敵、従軍免脱、司令官逃避、敵前党与逃亡、上官殺害、これらは陸軍刑法において最高刑が死刑と定められていた罪で、作者は、これらの罪で裁かれた兵士たちの行動が実際どのようなものであったのかを解明しようと試みる。彼らはどうしてそのような行為をしてしまったのか、当時の部隊関係者等の証言から少しず...続きを読むつ状況が明らかになってくるのだが、そこには単純に軍規違反とは言えない隠れた悲劇があった。 ハードボイルド作家として著名な作者がどうしてこのような本を書いたのか。著者は講和恩赦の際、東京地検保護課に勤務しており、恩赦事務のために膨大な件数の軍法会議の記録を読んで、そのとき初めて知った軍隊の暗い部分が脳裡に焼き付いたという。多勢の兵隊たちは、一体誰のため何のために死ななければならなかったのか。 例えば、ある地点の守備についていた中隊が、死傷者が続出し、補給が途絶、中隊長は飲料水のある地点まで、部隊を独断で一時退避させた。それがたまたま視察に来た連隊副官の怒りを買い、中隊長は軍法会議にかけると責め立てられた、というもの。 あるいは、ある軍曹が数名の下士官とともに何らかの理由で部隊を離れたが、戦没者名簿には「敵前党与逃亡罪で死刑」との記載はあるものの判決書は存在せず、当時の関係者を当たってもそもそも本当に死刑になったのか、事実は一向にはっきりせず”藪の中”状態、というもの。 まともな装備もなくて戦闘どころではなく、食糧の補給もほとんどなくて飢えに苛まれ、部隊としての規律ある行動を取ることが困難になっていた状況において、そもそもその裁きは正当と言えるものであったのかという大きな疑問が湧いてくる。いかなる命令であっても従わなければ抗命となり、自らの命を守ろうとすれば逃亡と言われかねない理不尽さ、軍隊というものの非情さを感じさせられる。 特殊な状況を扱っていると思われるかもしれないが、新しい戦前とも言われる昨今、是非読んでもらいたい一冊。
1970年の直木賞受賞作品。敵前逃亡は死刑、陸軍刑法によって理不尽に処刑されてしまったたくさんの日本兵のはなし。
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結城昌治
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