結城昌治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『夜の終る時』は、結城昌治の警察小説。
第17回日本推理作家協会賞受賞作。
1979年11月にテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」で
ドラマ化。
実直な刑事が捜査に出たまま行方不明となる。
捜査係は総力を挙げて事件解決に乗り出すが、彼と暴力団の関係についての噂が流れ、同僚たちの間に疑念が渦巻く。
そんな中、行方不明の刑事はホテルで扼殺死体として発見される。
前半は、事件を追う刑事たちの執念と焦燥を描く追跡劇。
第二部では視点が転換し、真犯人の男がいかに警察組織の歪みの中で堕ちていったかが語られる。
二部構成により、前半で提示された謎が後半できちんと回収される構成美。
描かれる警察組織の歪みが、昭和という時代特有のものなのか、それとも現代にも形を変えて連続しているものなのか。懐かしさも感じますね。
『殺意の背景』
一人の刑事が、夜の飲食の女性に恋に堕ちる。
当然、上司や同僚からは反対される。
男は、女の浮気を疑い、信じ直し、また疑う
不安定な愛情の熱に浮かされていく。
そして、男が女の家を訪ねた後、彼は殺されてしまう。
一見、よくある情痴の果ての事件に見えながら、
当時としては思い切った犯人像には驚かされる。
愛が引き起こす盲目と破滅、
その背景にあるものを問いかける作品。
『熱い死角』
妻を深く愛する刑事。
しかし、その妻の浮気を疑いはじめる。
皮肉にも、その相手は反社会勢力の男――
しかも幼馴染という因縁までついてくる。
愛ゆえに、刑事は迷わない。
男の首を、その手で絞めてしまう。
そして、妻もまた迷わない。
夫を警察へ引き渡すことを。
正義と愛情、私情と職務。
どれも守ろうとした末に、
すべてが瓦解していく残酷さ。
『裏切りの夜』
裏社会の下位層で生きてきた男が、行方不明になる。残された妻は妊娠中。
男は、生まれてくる子どものために、
「まっとうな生活に戻りたい」と願っていた。
しかし、そのささやかな希望は、
裏社会のしがらみと、抜けようとする者への報復の中 確実に断ち切られていく。
未来を守ろうとした男が、
過去に引きずり戻される悲惨さが胸に残る。
短編集ですが、
そして読み進めていくうちに、ふと気づく。
この文庫に収められた短編は、
いずれも「似た設定」を共有している
・刑事と反社会勢力の人間が闇でつながる構造
・夜の店に勤める美しい女性
・そして、妊娠や家庭という、逃れられない事情
選者は、意図的に“同じ闇のテーマ”をもつ作品ばかりを集めたのか?作者の作風なのか?
今日は忌日でした。
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Posted by ブクログ
ショートショートミステリという、変わったテーマ。この前に花村萬月を読んでいたので、軽くて軽くて不思議な文章に思えた。
ショートショートといえど、ちゃんとミステリなので、最後の最後まで謎解きをしながらきちんと落とすのはなかなか秀逸で新鮮。ただ、時代が時代だけあって、やたらと不倫、やたらとガス自殺(当時は燃料用ガスで窒息死できた)という展開で、続けて読んでいると「またか」と思わされることがある。
また、どうしても謎を謎らしくして犯人がわからないようにするため、無駄に登場人物を増やすというところが有り、若干げんなりした。
1本1本をバラで読めば、それなりに楽しめるので、電子書籍で読むのをおすすめしたい。 -
Posted by ブクログ
「あんな暮らしは人間の暮らしじゃない。ネズミだってもっとましに生きている」
「あたりまえだ」
「しかし、おれが彼らを更生させるにはたった一つの方法しかなかった。度胸があって手先の器用そうなのを選び、それでまずケッパーの買い方から教えた」
スリの専門用語で、ズボンの尻ポケットをケッパー、同じく横ポケットをテッポーという。上着の内ポケットが内パーで、外ポケットなら外パーである。そしてスり取ることを買うと称し、初心者は平場(交通機関以外の雑踏する場所)でこの技術をおぼえ、やがて練達して箱師となる。
勝次自身は箱師として知られ、仲間うちの評判だけではなく、かつては警視庁スリ係の刑事たちの間でもその技術を高く評価されていた。
「うまくいったのか」
銀三は話の先をうながした。
「うまくいきすぎた」
勝次は憮然と答えた。
(本文p28-29) -
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「そうだろう。きみの考えそうなことだ。しかし,きみはその2人がほんとうに心中したと思っているのか」
「ちがうんですか」
「死体を見たのはきみだ。わたしは見ていない。だからきみにたずねている」
「おかしいですね」
「何がおかしいんだ。きみはうらやましいくらい気楽な男だぜ。警察官になって何年になるか知らないが,そんなことで刑事の飯が食えると思っているのかね。死んだ女は持田加代,町でも評判の美人だ。しかもブドウ畑から温泉が噴きだして,明日にも大金持ちになろうという未亡人だ。世の中が楽しくてしようがなかったにちがいない。一方,心中の相手は駐在にくすぶっている草場巡査,五十二という年よりも老けてみえる。見栄えのしないじいさんだ。事件がないから勤まっていたが,事件があればまったく役にたたぬ巡査だった。そのかわり品行は方正,妻があり三人の子供がある。健康で病気ひとつしたことがない。仕事の余暇をみては畑の手入れをしている男だった。その草場巡査と持田加代が,月夜に恋を語らったあげく,世をはかなんで心中したというのか。こんなことは刑事じゃなくても,ひげの生える男ならだれだって考えつく」
「……なるほど」
長山刑事の返事は遅かったが,頷く首は大きく振った。
(本文p.63-64) -
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「とにかく,問題はひげの男だな。そいつをはっきりさせんことには,どうにもならんね」めぼしい成果のあがらぬ警察の捜査を,佐原検事は軽く責めるように言った。「タバコ屋のおかみが見たひげの男,少女が見たひげの男,新川和代が見たひげの男,この三人のひげの男は同一人なのか,それとも,三人とも別人なのか。香月栗介にひげがある,平野清司にひげがある,その後剃落していなければ磯貝浜造にもひげがあるはずだ。それに二宮伸七にもひげがあるというじゃないか」
郷原部長は検事の言葉を聞いて,思わず自分のひげに手を伸ばした。そして言った。
「たしかに,ひげの男が問題です」
※ひとこと※
1959年上梓の長編推理小説。当時はひげ男が結構たくさんいたのかな?