結城昌治のレビュー一覧

  • 軍旗はためく下に 増補新版
    戦争はもちろんのこと軍隊組織の非合理性を説く。軍法会議をテーマに組織の歯車に潰された哀しき兵士たちを、独特の伝聞体で描く。
  • 暗い落日
    この暗さがなんともね、イイネ!
    もうね、今どき漁村の近くの断崖から車を落下させてなんてもうね、津軽海峡・冬景色、ですんで展開的に無理があるけどね、この昭和なら許されるわけですよ。畳の一間に絨毯をひく貧しさとか、成り上がった金持ちとその強力な父親に抑圧された息子みたいな設定とか。それもまたアリなわけで...続きを読む
  • 白昼堂々
    集団ドロボー業はじめました、
    こんな感じの作品ですね。
    割のいい仕事がこれ、といっている時点で
    なにやら胡散臭さ満載ですが。

    何より面白いのは
    悪人ながら、きちんと栄光、墜落
    そして完全陥落まで書かれていること。
    特に一発逆転劇のところは目を見張ることでしょう。
    ただし、結末は、予想通りなのだ。
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  • 斬に処す-甲州遊侠伝(小学館文庫)
    実際に読んだのは、昭和四十七年の徳間書店版。
    清水次郎長一家の描かれ様に溜飲が下がる想いだ。
    一方で、赤報隊で悲惨な末路を迎えた、相樂総三と同様に、権力の切捨てにあった、勝蔵と比べて、あまりにも調子が良すぎる次郎長の生き延び方には、虫酸が走るのは、山梨県人の贔屓の引き倒しなのか。
  • 軍旗はためく下に 増補新版
    1970年の直木賞受賞作品。敵前逃亡は死刑、陸軍刑法によって理不尽に処刑されてしまったたくさんの日本兵のはなし。
  • 軍旗はためく下に 増補新版
    覚悟の戦死ではなく、戦犯となり死刑となった人たちの経緯をたどる短編集。

    何度か挫折しそうになった戦争小説。限りなくノンフィクションと言っても間違いない太平洋戦争の「理不尽」が満載。

    総力戦の負け戦には、本作で描かれた「理不尽」も待ち受けることを全日本人は肝に銘じるべき。

    構成もさることながら「...続きを読む
  • ひげのある男たち(電子復刻版)
    初読みの作家さん。いやぁなかなかおもしろかったです!犯人全然わかりませんでした!題名の通り、ただ、ひげのある男たちが随所に出てきて混乱しました。
    それから、「不可能です、この人にはこの犯罪は出来ません」という説明が長すぎかなと思いました。個人的に、こういう説明文が苦手です。
    でもすべてが解決されたと...続きを読む
  • 通り魔~昭和ミステリールネサンス~
    寒中水泳 C+
    天上縊死 A
    死ぬほど愛して B
    通り魔 A+
    喘息療法 A
    不可抗力 B+
    六年目の真実 B
    風の報酬  B

    あるフィルムの背景もそうだったが、この作家は幅が広い。本格ミステリからブラックユーモア、スパイ小説と豪華なラインナップだ。お勧めしやすい。高クオリティな作品群である。
    ...続きを読む
  • ひげのある男たち 郷原部長刑事シリーズ1
    結城昌治のほぼ処女作。落語好きの結城はユーモラスにストーリーを展開しながら、読者を数多くの「ひげ」で混乱させる。登場人物も多くて、頭が入り乱れる。最後の結末は、思いがけないが、なるほどと納得できる。楽しく読めて、頭を使う小説である。
  • ゴメスの名はゴメス
    1954年にジュネーブ休戦協定で、ベトナムは南北に分割された。翌年アメリカの支援でゴー・ディン・ディエムが南ベトナムの初代大統領になる。本書は、ベトナムでの革命・抗争が続いてゆく中の1962年に書かれたスパイ小説である。日南貿易会社の私、坂本は、前任者が姿を消したサイゴンに赴任し、前任者の行方を捜し...続きを読む
  • 長い長い眠り 郷原部長刑事シリーズ2
    殺人ミステリーでありながら暗さは感じられない。登場人物はみな怪しげな人物である。しかし読み進んでいってもなかなか犯人像が浮かばない。情景と心理描写は的確であり、ミステリーの中にユーモアもあって楽しく読める。巻末の解説で中辻理夫が次のように書いている。「悲劇の中の喜劇であり、喜劇の中の悲劇である。悲劇...続きを読む
  • 終着駅
    ぽろぽろと人が死に、悲惨だが不思議に明るい。
    「成さずに死ぬこと」に対する恐れと諦観は語られるが、終末の描写は一切無く、回想として語られる。淡々とした進行が気持ち良い。終章美しい。
  • 長い長い眠り 郷原部長刑事シリーズ2
    長篇なんだけどまとまりがないというかダラダラ展開してゆく。
    といってつまらないかというとそうではない。物語の大半がモノローグで進むから拒否感があるのかな?
  • 暗い落日
    国産ハードボイルドの黎明期を飾るとされる長編。あからさまにロス・マクである。重い空気感は悪くないが、悲劇の根幹にある秘密に、ひねりがなさ過ぎる。この程度の真相なら、もっと早くに看破してもらいたい。それと、自分の方は他人を信用せずに、嘘ばかり吐いてるくせに、他人には自分を信用してもらいたがる探偵の身勝...続きを読む
  • 通り魔~昭和ミステリールネサンス~
    *東京の千川上水沿いで連続する“通り魔”事件。いずれも若く太った女性が臀部を切りつけられ、被害者は数を増すばかり。だが、警察の捜査は捗らず、ついには婦警を囮に犯人を誘き寄せたが…。法の抜け穴をついた巧みな構成が光る表題作を始め、著者の記念すべきデビュー作「寒中水泳」、国際情勢を加味したスパイ小説「風...続きを読む
  • 振られた刑事
    ショートショートミステリという、変わったテーマ。この前に花村萬月を読んでいたので、軽くて軽くて不思議な文章に思えた。

    ショートショートといえど、ちゃんとミステリなので、最後の最後まで謎解きをしながらきちんと落とすのはなかなか秀逸で新鮮。ただ、時代が時代だけあって、やたらと不倫、やたらとガス自殺(当...続きを読む
  • ひげのある男たち 郷原部長刑事シリーズ1
    ヒゲを巧みに使った小説、うーん、書き出しはこの展開に頭が回らないかとおもいきや、意外と単純な流れであった。
    最後の結末は、ナンジャイみたいで、何で?かな、休日には頭休めで、持って来いの推理小説であった(^-^)
  • 白昼堂々
    「あんな暮らしは人間の暮らしじゃない。ネズミだってもっとましに生きている」
    「あたりまえだ」
    「しかし、おれが彼らを更生させるにはたった一つの方法しかなかった。度胸があって手先の器用そうなのを選び、それでまずケッパーの買い方から教えた」
     スリの専門用語で、ズボンの尻ポケットをケッパー、同じく横ポケ...続きを読む
  • 仲のいい死体 郷原部長刑事シリーズ3
    「そうだろう。きみの考えそうなことだ。しかし,きみはその2人がほんとうに心中したと思っているのか」
    「ちがうんですか」
    「死体を見たのはきみだ。わたしは見ていない。だからきみにたずねている」
    「おかしいですね」
    「何がおかしいんだ。きみはうらやましいくらい気楽な男だぜ。警察官になって何年になるか知ら...続きを読む
  • 長い長い眠り 郷原部長刑事シリーズ2
    「わたしは犯人を女と限定したわけではありません。悲鳴をあげさせぬためには,猿ぐつわをはめてから,無理に毒薬を飲ませてもいいでしょう」
    「なるほど。しかし,猿ぐつわのはまった口に,どうやって毒薬を飲ませるかね」
     部長はそこまで言うと,足を速めて鬼頭刑事を離した。鬼頭刑事の考えていることは,少なくとも...続きを読む