フランシス・フクヤマのレビュー一覧

  • リベラリズムへの不満

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    1077. 2024.09.21
    法の支配を中心とするリベラリズムが右派と左派との両極端な形態に分かれているのが現状だとする分析は明解。

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    2025年12月25日
  • 人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

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    ネタバレ

    はじめに

    1戦争、ニヒリズム、耐え難い不平等を超えて
    エマニュエル・トッド
    現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている
    ・私たちの生活を変えるでしょう。存在しなかったら、私たちはより悪い状況におちいっていたでしょう。
    ・人類には「歴史」の感覚が必要。
    ・私たちは謙虚でなければいけません。
    ・長期的な視点で物事を考えなくなりました。「自分たちがどこから来たのか:「何を生き延びてきたのか」「何を成し遂げてきたのか」といったことを考えるのをやめてしまいました。
    ・ある種の健忘症のようなもので…ショックが容赦ないほど大きすぎたのでしょう。…ショックが大きすぎました。そのため、私たちはかっての自分との接点を失ってしまったのです。・先進国の出生率の低さは本当に恐ろしく、…気候変動よりも恐ろしく感じています。・・・人間の知性の低下にもつながるからです。
    ・人は知性の担い手です。
    ・歴史は続いていくからです。人間の歴史はすべて、崩壊と生き残りの連続です。
    ・「民主主義は存続するのか」という問いに集約するのは、私には一種のジョークに聞こえます。
    ・・・死亡率の上昇は本当に恐ろしいことですし、西ヨーロッパでは、生活水準が下がり始めています。たくさんのネガティブなことは指摘できます。知性の低下も問題です。
    ・人間は人間で、火の発明、農業、街の発明などの偉大なことを、成し遂げてきました。

    フランシス・フクヤマ氏
    「歴史の終わり」から35年後 デモクラシーの現在地
    ・リベラリズムは国によって捉え方が違います。
    ■全地球規模で起こり始めている「分断」
    ・今の世界には、新たな分断があります。
    ・われわれが目にするのは、多極的な世界です。
    ・米国の覇権国家としての役割が戻ることは決してありません
    ・力は分散されるでしょう。今後直面する課題ごとに、異なる同盟関係が形成されて行くことでしょう。
    ・歴史は単に繰り返したりはしません。
    ・生成AIの技術は、平等を促進するかもしれません。スキルや教育水準が低い人にとっては大きな力になるかもしれません。生成AIがどのようなインパクトをもたらすかについては、まだわからないことの方が多いのです。
    ・とても重要な人間の欲望とは「自己決定の欲望」です。
    つまり、自分の意志で選択できる状態のことです。その意味では、創造性とか表現とも言えるでしょう。

    2「テクノロジー」は、世界をいかに変革するか?
    スティーブ・ロー
    技術という「暴走列車」の終着駅はどこか?
    Q.(聞き手:五十嵐大介)一般の人たちが普通に利用することについて、人々の生活や教育、仕事の向上に役立つのでしょうか?
    ・二つの立場があります。
    一つは、「AIはインテリジェント・アシスタントとして役に立つ」という肯定的な立場。もう一つは、「自動化された技術は、人の仕事を奪ってしまう」という否定的な立場。
    ・人間の業務とは、技能の束なのです。
    ・人と接するような立場では、いろいろな技能を組み合わせることも求められます。
    ・長い年月をかけて行われてきた仕事が自動化されていくのは、今後さらに進んでいくでしょう。
    ・農業を例に挙げれば、世界中で―とりわけ先進国ではー20世紀初頭の農業従事者数のわずか数%の人たちによって、当時よりもより多くの農産物を生産しています。製造業でも同様です。
    ・雇用数は減っていますが、生産量は増えています。
    ・AIツールを使ううえで、注意すべきことは、「信用しすぎるな」「みちびかれても、支配されるな」と言うことです。
    ・生産性を高め、自動化をさらにすすめる必要がある、労働力不足は世界共通の深刻な問題です。
    ・「孤独の問題」「高齢者の孤立」の問題全てがすべて片付くわけではありません。しかし、サービスにより少なくとも一つは解決するでしょう。
    この分野には大きな可能性があり、様々な取り組みがなされています。
    ■AIが影響を与えるのは「カスタマーサービス(コールセンター)」「マーケティングと営業」「ソフトウェア・エンジニアリング」「研究開発」の四つの分野の雇用の影響の範囲。
    ・コールセンターの仕事はきつくて離職率が高い。自動化が進むのは必ずしも悪いことではない。有効な手段と言えるでしょう。
    ・ソフトウェア・エンジニアリングの分野では、自明の理ですが、テクノロジー労働者はハイテク業界に集中しているわけではなく、あらゆる業界に広がっているからです。
    AIが研究者に取って代わることはできなくても、生産性や革新性の向上に寄与することはできます。
    ・マーケティングや営業部門でも同様です。
    AIの利用は、ターゲット広告やおすすめ商品など、売り込みが成功する確率を上げることに焦点が置かれてきました。
    なので、生成AIがマーケティング分野でより大きな成果をあげているのは、当然のことです。その分野の効率化は収益に直結します。
    このように見ていけば、AIは有能なアシスタントにはなっても、仕事自体を奪われることはないでしょう。
    ・研究開発の分野では、弁護士と同じで、膨大な法律文献や科学文献を読み込んで検索することも自動化できます。また見落としも防げます。いわば顕微鏡のようなものです。これまで見えなかったものが突如はっきり見えるようになり、生物の仕組みの解明の手掛かりが与えられた。
    ディープラーニング(深層学習)の、画像認識や単語認識、パターン識別によって、どこを見ればいいのかというところまで予測できるようになりました。
    生成AIの、分子設計や製薬において、試験管やペトリ皿で行われていた実験がコンピュータ・シュミレーションとしてできるようになりました。
    これにより、数千のリストから数個の標的薬物を絞り込み、本当に良いものを作れるようになります。そして、開発にかかる時間も大幅に短縮されました。こういったワクワクすることがもたらされたのも、生成AIのおかげでした。
    ・「AIが未熟練労働者の技術レベルを上げる」というのは、テクノロジーの最近の歴史をみると、労働者によってそれほど勇気づけられる状況ではありません。
    ・私が危惧しているのは、技術レベルの高い人と低い人の二極化が進み、中間層が空洞化する可能性です。
    ・中間賃金の仕事を行って生活を営む中間層の人々に適した仕事をどのように創造するかは、かっては、製造業が中間層の受け皿になっていました。しかし、今はそうではない。
    ・「新しいテクノロジーが是正の手段になり得る」というのは、歴史の教訓から言うと、私は少し懐疑的に思っています。
    ■AI時代に必要になってくる教育
    ・仕事で役立つ、目に見える技術的スキルとコミュニケーション能力
    ・対人関係を円滑に進められる幅広い能力は、社会にとって不可欠なものです。画面越しであっても、言葉によって意志を伝えあうことの大切さ
    ・人々の政府に対する関心を高めた
    ・この先どうなってゆくのか、インターネットを見れば、すこし想像がつきます。良いことも、革新的なことも、一方で、悪いこともたくさんありました。
    ・つまり、良いことも悪いこともたくさんあります。
    ・AIには、データの収集と蓄積が必要不可欠であり、膨大な計算能力が求められる
    ・鉄道時代と似ています。大手IT企業数社による、独占というより、「寡占」なのです。
    ・頑なに知ろうとしないのは、良い選択とは言えないでしょう。
    ・無暗に怖がるのではなく、慎重であること。大切なのはこれです。

    メレディス・ウィテカー✖安宅和人✖手塚眞 鼎談
    進化し続けるAIは、人類の「福音」か「黙示録」か
    ・AIという技術そのものが悪いわけではない。
    ■AIの進歩の裏にある「権力集中」という問題
    ・この業界における資本力や技術力などの、あらゆる集中を理解しなければなりません
    ■たった数年間で、AIはこれほどまでに改良された
    ■人間の肉体的な労働が、人工的な知能を支えている
    ・実際にかなりの人間の労働力を必要としている
    ・何千人、何万人、何百万人もの人々の労働とデータなしに勝手に出来上がるシステムなど何一つないのです
    ・学習の仕方や時間は、人間にとってかなり大切なものになってきます。
    ・「創造性」、人間の創造とは「0から1」を生みだすことではありません。
    ・過去から存在している作品から学習していますよね。
    ・自分自身の体験から得た知識や情報、これを自分の中で編集しています。
    ・創造の、「編集する技術」、「組み合わせの技術」「情報を学習し、組み合わせることで創造している」、これはAIができることです。
    ■人類は「AI」とともに生きていくしかない
    「もうわれわれはこの技術と一緒に生きているんだ」と考えるしかない
    ・一般の人は、とりあえず使い倒すことから始めたほうがよいでしょう。従来型のデータサイエンスは、訓練なしには使用することができませんでした。しかし、生成AIなら使うことができます。
    ・AIと人間は「パートナー」のような関係
    ・未来はどこにも書かれていないので、私たち自身が未来を有益な形にする責任がある。
    そのためには、現在地を明確に示す地図が必要。現在地を正しく示した公平なデータがなければ、適切な意思決定ができないからです。
    ・20世紀に自動化技術と工業技術の分野でリードしてきた日本
    ・アメリカと中国に挟まれた日本。地政学的な意味合い。
    ・「人間の尊厳」とは何かについて、われわれは深く考える必要に迫られるでしょう。そうした時代をわれわれは生きています。
    ・「免疫力」が、社会全体、全世界的に必要になるでしょう。
    ・日本のみなさん、現実から目を背けないでください。実際に起きていることからあなたの目をそらし、惑わせようとする言説に注意してください。

    3支配者はだれか?私たちはどう生きるか?
    マルクス・ガブリエル
    戦争とテクノロジーの彼岸「人間性」の哲学
    ■「人間である」という共通点から始まる道徳
    ・哲学者スキャンロンの言葉、「私たちは人間性を共有しているという事実から、お互いに何かを負っている」。カント、「わたし達はお互いに何かを負っていて、それは相手の人間性への敬意なのだ」

    岩間陽子×中島隆博 対談
    ・今から日本が核兵器を保有するということは、アメリカのシステムに正面から盾突くことになるわけです。そのコストが相当なものになることはわかりますよね。
    ・日本には二つの側面が重要になってくると思います。「自分で力をつける」という面と、「チャンスを見つけて対話の場を作っていく」という面。
    ・日本はもはや大国ではないが、相対的にはまだまだアジアのリーダー格の国であると同時に、多くの中小国とも友好的な関係を維持しています。その多義的な立ち位置を、外交上十分に活かしていくことが必要です。
    ・二つの側面の両方をやりながらチャンスをうかがっていくべき。戦争を望んでいるわけではないでしょう。
    ・ポイントは見失わずに、安定的な国際的コミュニティをどこに見出すか。そのチャンスを必死で探していく時代が、これからも続いていくのだろうと考えています。

    おわりに

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    2024年12月23日
  • 人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

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    世界の知性と言われる方々が、現代の状況や課題を読み解くもの。時々こういうの読むと考えが整理できて良い。ただし、批判的に読むことも大事。トランプ政権になった米国、世界はどうなるのか。AIと人間はどう付き合っていくのか、などヒントがいっぱい。

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    2024年11月24日
  • 人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

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    何時の時代にも「考えてみるべきであろう」というテーマは在る。そんなことに関する話題を提供してくれるのが本書である。豊富な話題を提供してくれる一冊であると思う。
    本書は識者達へのインタビューや鼎談、対談を色々と集めて纏めたモノである。幾つもの読み応え在る内容を纏めている。新聞の特集、その下敷きになるフォーラムというのが下敷きになっているようである。
    幅広い話題が取上げられているが、敢えて一口で纏めるのであれば「揺らぐ世界の中で進む技術革新という様相が導く先は?」というようなことになるのだと思った。
    ロシア・ウクライナ戦争のような大規模な軍事衝突が展開している他方、各国で民主主義体制が揺らいでいるかもしれないような様子も見受けられ、更に著しい人口減少という社会の行方がよく判らなくなるような傾向も強まり続けている。歴史が転換している真っ只中なのかもしれない。そんな中に、急速に進歩を遂げる「生成AI」なるモノのような新技術が台頭している。
    本書では、「歴史の転換点」ということで、戦争や民主主義というようなことを論じる要素と、「AI」のような技術が辿った経過、現況、可能性、未来予想というような要素とが併存していると思う。結局「揺らぐ世界の中で進む技術革新という様相が導く先は?」ということだ。
    正直、個人的には「生成AI」なるモノはよく判らない。
    想い起してみると、自身が生きて来た年月の中、インターネットの登場と普及、携帯電話の登場と普及というような「そこまでの時代には考え悪かったような新技術と、それがもたらした社会の様相の変化」ということが起って来た。何れに関しても、自身が長じて、青年、壮年というような年代以降の出来事で、何となく「自身で勝手に適度なと想える距離感」でそうしたモノに接してきて、現在時点でもそうしていると思う。
    「生成AI」なるモノに関しても、壮年というような年代以降に登場して普及しようとしているので、何となく「自身で勝手に適度なと想える距離感」で接したいと個人的には思っている。が、巷では何やら「利用を当然視」というように動こうとしているようにも感じる。例えば「生成AI」なるモノで文案のようなモノを作成出来るとされているが、そういう程度のことなら、自身で勝手に考えて綴る方が気に入るモノが簡単に速く出来ると思うことが在る。そういう感覚だが、そのうちに「少数意見」であることすら認められないような感じになるのかもしれない。新しいモノは、古いモノを塗潰してしまうような一面も在るように思う。
    こうした感覚も持ちながら、本書のAI関連の色々な論に触れた。過大に信頼も出来ず、過大に無視も出来ないという、よく在る新技術の一つであるAIだが、最初期に登場した頃の経過を見て考えると、色々と恣意的な要素や偶然が入り込んでいるようでもある。
    AI関連で、本書では「既に他界して久しい有名漫画家の、御本人が描く新作を想わせるようなモノを、AIで創ることを試みる」ということに取組んでいる方の話しが収録されていた。それを興味深く拝読した。「漫画作品を創る」という例を通じて、AIの可能性と限界というようなことを考え易い話しだったと思う。
    AIを利用して「漫画作品を創る」となれば、人気作品の主要人物を有名漫画家御本人が新たに描いたかのように再現する、または新しい作中人物を御本人が描いたかのように創るようなことは出来るようになるらしい。そしてそれらしくストーリーも組み立てられそうだが、かなり困難なことがあるという。有名漫画家が人生経験を通して有している思想性、想いが作品には少なからず跳ね返っているが、そういうモノは再現する術が無いのだという。
    こういうようなことは記憶に留めておかなければならないと個人的には強く思った。「人生経験を通して有している思想性、想いのようなモノはAIで如何こう出来る筈も無く、そういうようなことこそ大切にせねばならず、そう出来るのが人間である」とでも言い続けたいような気もする。
    技術革新が目覚ましい中ではあるが、「冷戦の終結で段落したかのようだった歴史」がまた揺らいでいる中、「人が人らしく?」というような、遥かな昔からの哲学のような思索が益々求められているのかもしれないというような気もする。
    本書は、広く色々な話題を巡る識者達の論を集めたというような感なのだが、「モノを考える材料」として貴重であると思った。

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    2024年04月07日
  • 人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

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    「人類の終着点」とはエグいタイトル。終着点と言いつつ、副題で「戦争、AI、ヒューマニティの未来」と。未来、それが明るいのか暗いのかはわからないけど、歴史が続くのであれば、決して終着ではない。一方、今の不透明・混乱な時代に生きる我々からすると、今後どうなるのか=終着ということだろう。

    民主主義の問題、資本主義の問題、リベラルの問題、、、、今の世界を覆う問題を解説するものは多い。しかし論点が複雑で、自分の理解が大雑把でも正しいのかどうか自信がなかった。この本は、インタビュー・対談方式の構成で、体系立ってはいないけれど、わかりやすく解説されている。
    グローバリゼーションとテクノロジーが、急速に世界を変えている。マルクス・ガブリエルはTwitterやフェイスブックを禁止にすべきだと述べているが、これらがなかった時代が不便で困っていたかと思うとそうではない。むしろ今の社会の混乱や分断の原因がこれらにあるのであれば、規制するというのは自然な発想で、決して極論ではない。
    今の世界を代表する知が、大いに語っていて、今の世界の状況を冷静に知ることができる良書。

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    2024年03月30日
  • リベラリズムへの不満

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    リベラルとは何か、に関する本は様々手にしたが、今日的な右派と左派の対立現実と双方の思想的特質が明瞭に結びつけられており、もやもやしていた分かりにくさが払拭された。
    普遍的真理の尊重ととアイデンティティ政治の確執が、世界の分断に大いに影響を与えている。また、そのベースにメディア、データの氾濫という要素があることも見逃せない。
    こうした複合的な大衆の危機に、バランスの取れた視野であるべき向き合い方を示してくれる名著。

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    2023年10月06日
  • リベラリズムへの不満

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    200ページ強の大冊だが、リベラリズムの発展経緯を細かに述べている.新自由主義・ネオリベラリズムの登場による経済格差の顕在化を憂いているが、それ以上の現代のアメリカの状況を危惧していることに驚いた.数多くの著書や文献に目を通して、自説の補強に絶え間ない努力をされている姿勢に感心した.ロシアや中国、ハンガリーなどの権威主義体制も批判しているが、言論の自由の保護が世界的に危ういものになりつつあることへの警告も発している.p125にあった「トランプをはじめとする現代の保守派が彼らが忌み嫌うポストモダニズムの理論を一言でも読んでいることはありえないが..」のフレーズは我が国の自民党の輩にも与えたい語句だ.最後にでてきた「個人の自律性が充実感の源であるとしても、無制限の自由と制約の絶え間ない破壊が人をより充実させることにはならない.時には、制限を受け入れることで充実感が得られることもある.個人として、共同体として中庸を取り戻すことが、リベラリズムそのものの再生、いや、存続の鍵になるのである.」は至言だと感じた.

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    2023年10月03日
  • 「歴史の終わり」の後で

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    ご多分に漏れず、よく知らないのに知った気になってました。まずはフランシス・フクヤマ氏に対する偏見・誤解から脱出し、近しい所ら辺へ辿り着ける入門書なんだろうと思います。対話形式ですし、感覚として新書に近いです。
    私は「成長」に対し懐疑的というか、神話めいた印象を拭うことができなかったのですが、成長のない世界はゼロサムの略奪ゲームになるという指摘は発見でした。また、国民は共同幻想(この単語は使われていません)というか、物語を共有することで構築されるとか、その物語は人種や民族や宗教ではダメだとか、基本に立ち返る言説が頻出する本でした。良かった。

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    2023年06月13日
  • 人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

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    これからの世界について、今起きている戦争、AIの発展、資本主義、民主主義の今後など重要なテーマについて、複数の知識人たちの語りで展望が語られる。

    ロシアのウクライナ侵攻を西欧ほどそのほかの国々は嫌っていないとか、戦後ロシアとドイツの接近こそアメリカが嫌っているとか斬新な切り口もあり、人口減少する先進国なので第二次世界大戦ほどの拡大戦争にはならないという見方もあれば、それはわからないという意見もある。

    AIによるデータの大企業に寡占される様やソノ、IT企業組織はヒエラルキー型のトップダウンという保守的組織であるという指摘も興味深い。

    ただAIはよくできて効率的なWikipediaのようなもので、何かを直接生み出すこともなければ、視覚聴覚に頼りがちな我々が体験したかのように錯覚するが、五感を通した体感とは別のものという指摘は忘れないようにしたい。

    リベラルな民主主義とコミュニティの関係が制度とし述べられる中、一方でコミュニティのアソシエイトとしての責任と権限、そしてそれが体感できる規模感、そういった共通倫理や道徳感があってこその民主主義制度が機能するという中島氏の意見はまさに賛同する。

    まさに無責任、手触り感のない暮らしは工業社会以降の先進国に多く生み出されている。それは仕事、暮らし、住居などが特定の土地、文化、共同体から切り離されたり、容易に変わらざる得ない現状が生み出したものでもあると思う。

    また、コミュニティやアソシエイトの負の側面(同調圧力等)にも目を向けて、出入り可能なフレキシブルさ、レジリエントも必要という結びに賛同しつつ、それを作ってかないとなというところに読後感が着地した一冊。

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    2025年01月09日
  • IDENTITY 尊厳の欲求と憤りの政治

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    筆者は、アイデンティティの尊厳が求められているとする。これを解決するアイデンティティの政治が必要であるが、これが解決が困難な状態が現れ、安易にジェンダーやLBGTのようなより狭い問題に集中する様になった。これにより、アイデンティティの尊厳を求める最も大きな中間層の要求に、既存の中道左派が応えられない事が、現在の課題であるとする。
    移民を含めたより多くの人を巻き込むアイデンティティへの取り込みにより、解決することが出来るとするが、その具体的な方法は明確でない。
    移民への言語等の文化教育も行き過ぎると、移民のアイデンティティを奪うことにもなりかねない。

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    2022年03月04日
  • IDENTITY 尊厳の欲求と憤りの政治

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    ここ数年の政治や社会の対立軸に対して、ぼんやりと思っていたことを言語化してくれたような著作であった。
    ”アイデンティティ”言いかえると”承認欲求”ということか。
    結局は社会全体が豊かになってきたということだろう。比較の問題はあっても。
    この”アイデンティティの政治”の考え方は大きな視点だけでなく、身近なコミュニティや会社内のことでも応用できると思う。どうすれば所属メンバー全員が生き生きと前向きになれるか。人材育成という観点で、エンゲージメントというワードが注目されてきているが、根底にあることは本書に近い気がする。

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    2020年06月21日
  • 人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

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    民主主義は衰退しつつあり、アメリカは図体はでかいが自分に必要なものを世界中に依存している点で極めて危険な国家として存在する世界になる。リベラルは世界の人々の支持を失いつつある。
    AIに関しては、この本を2026年に読んだ身としては、本書で有識者が主張している未来はAIを過小評価していると感じた。それだけAIの進歩が早いということか。マルクス・ガブリエルが「人類はツールであるAIのツールになるのではないか」という評価はもっともだと感じた。

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    2026年06月21日
  • IDENTITY 尊厳の欲求と憤りの政治

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     本書では、現代の政治でアイデンティティが重要な役割を果たしている理由を理解しやすくるために、「アイデンティティ」を特定の意味で用いる。まずアイデンティティは、自分のなかの真の自己と、その内なる自己の価値や尊厳を十分に認めようとしない社会的ルールや規範から成り立つ外の世界とのギャップから生まれる。人類史上ずっと、個人は自分が暮らす社会とのあいだに葛藤を抱えてきた。ただし、内面にあるほんものの自己にこそ本質的価値があり、外の社会はそれをいつも不当に評価しているという考えが根づいたのは近代になってからである。内なる自己が社会のルールに合わせなければならないのではなく、社会のほうが変わる必要があると考えられるようになったのだ。
     内なる自己は、人間としての尊厳の基礎である。しかし、尊厳の性質は時とともに変わってきた。かつての文明の多くでは、戦いで命を危険にさらす戦士など、わずかな人にだけ尊厳が与えられていた。他方で、自分の意志で主体的に行動する力を持つ人間はみんな本質的に価値があると考え、その考えに基づいてすべての人間に尊厳を与える社会もある。さらには、記憶と経験を共有する大きな集団の一員であることによって尊厳が得られる社会も存在する。
     最後に、自尊心は承認を求める。いくら自分の価値を自分で感じていても、他者が公にその価値を認めなかったり、ときには侮辱してきたり、こちらの存在を無視したりすれば、承認への欲求は満たされない。自尊心は、他者から尊敬されることで生まれるものだからである。人間は自ずと承認を求めるので、現代の意味でのアイデンティティはたちまち「アイデンティティの政治」に発展する。そこでは個人が自分の価値を公に承認されることを要求する。したがって「アイデンティティの政治」は、民主革命から新しい社会運動まで、ナショナリズムやイスラム主義から現在のアメリカの大学キャンパスでの学生運動まで、現代世界の政治闘争の大部分を包含している。実際、哲学者ヘーゲル[訳注:ドイツ、一七七〇~一八三一]は「承認をめぐる闘争」こそが人類史の究極の推進力であり、近代世界の出現を理解する鍵だと論じた。
     ここ五十年あまりのグローバリゼーションから生じた経済格差が、現代政治を説明する主な要素ではあるが、経済的な苦しみは屈辱や軽蔑の感情と結びつくことではるかに強くなる。それどころか、経済的な動機と理解されているものの多くは、実際には富や資産への単純な欲求を反映しているわけではない。金銭が地位を築き尊敬を購うと考えられているのである。現在の経済理論は、人間はだれでも合理的であり、だれもが自分の「効用」――物質的な幸福―――を最大化しようとするという前提の上に成り立っており、政治も単にその効用最大化を目指す行動の延長線上にあると考えられている。しかし、現代世界に生きる人間の真の行動を正しく理解しようと思ったら、単純に経済的な動機で人間を理解しようとする現在支配的なモデルを超えて、人間の行動の動機について理解を広げなければいけない。だれもが合理的に行動する力を持ち、だれもが利己的でより多くの富と資産を求めることに異を唱える人はいない。しかし人間の心理は、単純な経済モデルが示唆するよりもはるかに複雑である。現在の「アイデンティティの政治」を理解するには、まずは一歩引いて人間の動機と行動についてより深く理解する必要がある。言いかえるなら、人間の心についてのより優れた理論を必要とするのである。


     ルソーが主張し、その後の世界政治の土台となったのが、社会と呼ばれるものが人間個人の外部に存在するという考えである。数多くのルール、関係性、命令、慣習が人間の可能性実現をみ、人類の幸福を妨げているというわけだ。この考え方はわれわれにすっかり染みついているので、普段意識されることはない。それが目に見えるのは、罪を犯した若者が「社会が自分にこうさせた」と申し開きをするときや、女性が周囲の男女差別的な社会のせいで自分の可能性が狭められていると感じていたりするときである。さらに大きなレベルでもこれは見られる。アメリカ主導の国際秩序によってロシアが不当に軽視されているとウラジーミル・プーチンが不満を示し、それを覆そうとしているのがその一例だ。かつての思想家たちも、既存の社会ルールや慣習の一部を批判することはあった。しかし既存社会とそこでのルールをすべて廃止し、もっと望ましいものと取り替えるべきと説く者はまずいなかった。この考えによってルソーは、一七八九年フランス、一九一七年ロシア、一九四九年中国の革命政治と結びついているのである。


     これらの社会と経済の大変化によって、個人は突如として以前よりも多くの人生の選択肢やチャンスを持つようになった。昔の社会では選択肢が限られており、その限られた選択肢によって、ある人の内面が何者であるか決定されていた。しかし、新たな地平が開けたのにともなって「自分はだれか」という問いが急に意味を持つようになり、人の内面とその外にある現実との大きな隔たりも意識されるようになった。つまり観念が物質的世界を形づくり、物質的世界が特定の観念の拡散する条件をつくり出したのである。


     一方で現実世界の自由民主主義国は、その土台にある自由と平等の理念を完全に実現することはできない。権利はしばしば侵害される。法律は豊かで力を持つ者と貧しくて力のない者に平等に適用されはしない。国民は政治参加の機会を与えられているのに、それを行使しないことも多さらに言うならば、自由と平等というふたつの目的のあいだには、本質的に矛盾がある。自由が大きくなれば不平等が広がることが多く、結果の平等を確保しようとすると自由が狭められる。民主主義を成功させるには、このふたつの理想を最大化するのではなく、両者のあいだでバランスをとることが求められる。個人の自由と政治的平等とのあいだで、また合法的な権力を行使する有力な国家とそれに制約を課す法律や説明責任の諸制度とのあいだで、バランスをとることが必要なのである。民主主義国の多くは、これだけでなくさまざまな政策を通じて、はるかにたくさんのことに取り組む。経済成長の促進、環境保全、消費者の安全確保、科学や技術への支援などだ。しかし、民主主義国であるための最低条件は、政治的選択の能力を持つ平等な大人として、国民を効果的に承認することにある。


     この点は、狭く定義された集団にもっぱら目を向けることで生じる第二の問題ともつながっている。古くからある大きな集団から注意が逸らされてしまうという問題である。これらの集団が抱える深刻な問題は、ずっと無視されてきた。一九七○年代と八○年代に、アメリカの白人労働者階級のかなりの部分が、アフリカ系アメリカ人に比肩する最下層に引きずり下ろされた。それにもかかわらず、アメリカの地方で蔓延するオピオイド中毒や、貧困状態のひとり親家庭で育つ子どもの行く末を懸念する声は、(少なくとも最近までは)左派の活動家からほとんど聞かれなかった。今日の進歩派には、オートメーションが進むにつれて大量失業が起こる可能性や、テクノロジーの発展によって白人・黒人・男女すべてのアメリカ人のあいだで所得格差が広がる可能性に対処する大きな戦略がない。ヨーロッパの左派政党も同じ問題を抱えている。近年、フランスの共産党と社会党は国民連合にかなりの票を奪われており、ドイツ社会民主党もアンゲラ・メルケルのシリア難民受け入れ政策を支持したことで、同様に二〇一七年の選挙で票を失った。

     
     ナショナル・アイデンティティを理論化するのはむずかしい。いまある国々は、複雑で錯綜し、しばしば暴力的で強制的だった歴史的闘争の副産物だからだ。そうした結果として生まれた国々は、民主主義の諸制度の土台としてうまく機能しているが、論争はやまず、人口、経済、政治の変化によっても絶えず問題にさらされてきた。
     ナショナル・アイデンティティは、主に四つの道を通じて創り出された。ひとつめが、国の政治的な境界線を越えて人を移動させる道であり、それは入植者を新たな領土に送り込んだり、ある土地に暮らす人々を強制的に追い出したり、あるいはただその人々を殺害したり、この三つすべてを組み合わせたりすることで実現された。人々を殺害するやり方は、一九九○年代はじめのバルカン戦争では民族浄化と呼ばれ、当然ながら国際社会から非難された。しかし民族浄化は過去にほかの多くの国でも用いられており、そこにはオーストラリア、ニュージーランド、チリ、アメリカなどの民主主義国も含まれる。入植者が先住民を暴力的に排除したり殺害したりしたのである。
     ナショナル・アイデンティティ創出への第二の道が、境界線を移動させて、既存の言語・文化集団と一致させるというものである。歴史上これは国の統一か分離によって成し遂げられた。統一の例は、一八六〇年代と七○年代のイタリアとドイツに見られる。分離の例としては、一九一九年にアイルランド共和国が連合王国を離脱したことや、一九九一年にウクライナが旧ソヴィエト連邦から独立を宣言したことなどがあげられる。
     三つめが、マイノリティを既存の民族・言語集団の文化に同化させる道である。フランスは二○○年前には多言語の国だったが、やがてパリのフランス語がプロヴァンス語、ブルトン語、フラマン語に取って代わった。同様に、アルゼンチンやアメリカへの移民、とりわけその子どもたちは、スペイン語や英語を習得して主流文化に溶け込み、社会での地位を高めていく。中国は一見したところ民族的に均質であるように思われ、人口の30パーセント以上が漢族だといわれるが、これは三○○○年もかけてマイノリティを文化的・生物学的に同化させてきた結果である。
     四つめが、ナショナル・アイデンティティを当該社会の現在の性質に合わせてつくり直す道である。多くのナショナリストの考えとは異なり、「国民」は太古から存在する生物学的存在ではない。人々によって下からも、また権力によって上からも、社会的に構築されたものである。これを構築する者は、人々の性格や習慣に合わせて意図的にアイデンティティをつくる。この一例が、インドを建国したガンディーとネルーだ。彼らは、インド社会のきわめて多様な人々を組み入れる「インドという理念」という既存概念を用いて、その上にナショナル・アイデンティティを築いた。また、インドネシアやタンザニアの建国者は、実質上、新しい国語をつくり出して、きわめて多様性に富む社会を統一しようとした。


     ハンチントンは、アングロサクソン系プロテスタントだけがアメリカ人の資格を持つという意味で、イングランドのプロテスタントがアメリカ人アイデンティティの土台だと論じたのではない。彼が言おうとしていたのは、イングランドのプロテスタント入植者が、のちにアメリカが民主主義国として発展し成功するのに欠かせない文化を持ち込んだということである。重要なのは文化であり、そこに参加する人たちの民族的・宗教的アイデンティティではない。わたしの考えでは、彼の見解は紛れもなく正しい。
     ハンチントンが強調する文化の一要素が、「プロテスタントの」労働倫理である。データで見ると、アメリカ人は世界のほかの国の人たちよりもはるかによく働く。多くのアジア人には劣るが、それでもほとんどのヨーロッパ人よりは勤勉だ。歴史を見れば、たしかにこの労働倫理の起源は、初期にアメリカへ入植した者たちのピューリタニズムにあるのかもしれない。しかし、いまのアメリカで一生懸命働いているのはだれだろうか?おそらく韓国人の食料品店主、エチオピア人のタクシー運転手、メキシコ人の庭師といった人たちであり、自分のカントリークラブからの配当金で暮らすイングランド系プロテスタントの子孫では必ずしもない。文化の歴史的起源がどこにあるかを知っておくのはいいが、この文化は特定の民族や宗教から切り離されて全アメリカ人の共有財産になったことも認識しておく必要がある。


     現代民主主義国の多くが、重要な選択を迫られている。各国は経済と社会の急速な変化に対応しなければならず、グローバリゼーションの結果、社会ははるかに多様になった。こうした状況のなか、以前は主流社会のなかで顧みられることのなかった集団が承認を求めるようになっている。しかし、これらの集団に取って代わられた集団は、自分たちの地位が低くなったと感じており、これが憤りの政治と反動につながった。どちらの側もきわめて狭いアイデンティティに引きこもり、そのせいで社会全体として話し合い集団行動を起こす可能性が脅かされている。この道の先には、最終的に国家の崩壊と破綻が待ち構えている。
     しかし、このような現在のアイデンティティの性質は変えることができる。なかには、アイデンティティは生物学的な要素に根ざしているので手を加えることはできないと思い込んでいる人もいるかもしれないが、近代は複数のアイデンティティを持つことを人に強い、そのアイデンティティはさまざまなレベルでの社会交流を通じて形成される。人種、ジェンダー、職場、教育、姻戚関係、国籍などによってアイデンティティが定義されるのである。多くのティーンエイジャーにとってアイデンティティは、自分や友だちが聴く音楽のサブジャンルを中心に形成されることもある。


     アイデンティティの問題は現在、新しいポピュリスト・ナショナリスト運動、イスラム主義の戦士、大学キャンパスで交わされる論争など、数多くの政治現象の根底に横たわっている。われわれは、自分たちと社会のことをアイデンティティによって考えることからは逃れられない。とはいえ、われわれの内面奥深くにあるアイデンティティは固定されているわけではなく、必ずしも生まれによって決まるわけでもない。これを心にとめておく必要がある。アイデンティティは分断を生むこともあるが、一体化のために使うこともできるのだ。結局のところそれが、現在のポピュリスト政治に対する改善策になるのだろう。

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    2025年01月11日
  • 人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

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    結論 民主主義・資本主義は不平等を生み出し、本来目指した価値を発揮していない。日本は西側に属するが、西洋的な価値が真理ではない。今後、世界は多極化する。国同士の対話を続けて変革のスイッチを探すべき。より道徳的なあり方を目指すべき。世界は続いていく。

    補足 気候変動、LGBTQ、女性の活躍など、すべての国のすべての人が目指す問題ではない。

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    2024年11月10日
  • 民主主義の危機 AI・戦争・災害・パンデミック――世界の知性が語る地球規模の未来予測

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    2024年の年初にユーラシアグループが発出した「2024年10大リスク」のトップが「米国の敵は米国」というのが衝撃的であった。米国の分裂具合がどの程度にものか気になり、この本を手に取ってみた。
    この本は米国の分裂にフォーカスした内容ではないが、イアン・ブレマー氏以外の方々も米国の分裂状況についてコメントしており、想像以上であった。

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    2024年04月14日
  • 人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

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    頭が良すぎる人たちの議論が良くわからなかったというのが正直なところ。彼らにとってAIは十分に知的とは言えないのだろう。そういう意味ではAIが人間を超えるというのは今のところ心配ないようだ。

    とはいえ、スマートフォンをツールとして生み出した人間がスマートフォンの奴隷になっている現状からすると一部の頭の良い人が世界の富を独占するほうという構図はどんどん極端になっていくようだ。

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    2024年04月03日
  • 民主主義の危機 AI・戦争・災害・パンデミック――世界の知性が語る地球規模の未来予測

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    7人の世界のオピニオンリーダーとの対話の記録。1:7の対話だし、時期も微妙に異なるのでそれぞれの内容は独立したものと考えた方がよさそう。皆さん、民主主義の危機、権威主義国家の台頭、ポピュリスト政治の蔓延などに危機意識を持っておられるようです。あんまりいい解決策が出ているわけではありませんが、この本を契機に彼らの代表的著作を読んでみるのもいいかもしれません。

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    2024年03月24日
  • 人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来

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    戦争やAI、資本主義と民主主義など現在のさまざまな論点についての識者の発言をまとめた一冊。
    大国の覇権ではなく、各国・地域の利害に基づく多様なつながりが増えている現代、米中問題とか対ロシアという近視眼的な見方では追いつかないというのはよく分かる。
    個人的に面白く読んだのはAIの話。人間を超えるか、という問いの立て方になんとなく違和感を持っていたけれど、素人にはそれがうまく説明できず、漠然とした危惧にあおられたままだった。その違和感を詳細に言葉で説明してくれた感じ。
    たとえば人口「知能」というネーミングが導く恐怖感とか、AIの背後でデータを学習させるために単純作業をする労働者たちが抱える問題、データやツールを独占する国家や大企業の権力の問題の方が、AIそのものよりもはるかに深刻な危惧だ、と。
    一方で、そもそも「知性」を外から入った情報を処理して何らかのアウトプットをすること、と定義すると、人間の知性とAIは確かに似たような作業をしているようにも見えるし、「創造性」についても、人が過去の経験や学習を基に作品を創り、AIはデータを基に「創造的な」作品をアウトプットすると考えると、やはり類似性は見える。
    それでもなお、本質的な問題は人間の側にある。バイアスがかかったり誤った情報が出てきた時に、それを見分ける能力を持ち得るか、拡散されるフェイクにどう対応するか。現在進行形の課題をしっかり考える足掛かりになる。

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    2024年02月28日
  • リベラリズムへの不満

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    リベラリズムの理想は叶えられていない部分もあり、
    そこを左右から攻撃されているのが今。
    攻撃によって分断が進むのだから、とにかく不毛……

    次の大統領選に関する報道を見ていて、アメリカどうなっちゃったんだと思っていたので、右派の行動原理について理解が深まったのはよかった。

    言論の自由を加速させる装置かのように思われたインターネット、SNSが、そうではない方向に進んでいるのが現代の大きな問題。

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    2024年01月28日
  • リベラリズムへの不満

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    アメリカの政治学者フランス・フクヤマによる、古典的リベラリズムを擁護する本。リベラリズムを「人道的な自由主義」と呼び、「法の支配」による自由主義であり「寛容」が基本原則であると主張している。右派による新自由主義に基づく格差の拡大やポピュリズム、左派によるアイデンティティ政治や個人の自律の極端化を批判している。理解の難しい箇所もあるが、勉強になった。

    「新自由主義経済学の欠陥は、財産権や消費者利益を崇拝し、国家の活動や社会的連帯をあらゆる面で軽視したことであった」p67
    「近年、アメリカでは「批判的人種理論」をはじめ、エスニシティ、ジェンダー、性選好などに関する批判理論をめぐって、騒がしい争いが起きている。現代の批判理論家は、じっくりと議論する真面目な知識人であるというよりも、大衆受けを狙った政治主張をしているだけであり、批判理論に対する右翼の批判者(大多数は批判理論について一切読んだことがない)はさらにたちが悪い」p93
    「個人主義は、東アジアや南アジア、中東、サハラ以南のアフリカにおいては、ヨーロッパや北米と同じように根付くことはなかった」p96
    「福祉国家や社会保障の諸制度は19世紀後半から大きく発展し、多くの自由民主主義先進国では、GDPの半分近くを費やすまでになった」p103
    「リベラルな個人主義は西洋文明の偶然の歴史的副産物かもしれないが、いったんそれがもたらす自由に触れれば、さまざまな文化の人々にとって非常に魅力的であることが証明された」p105
    「チェック・アンド・バランスは、独裁的な権力の乱用を防ぐために存在する。中国では憲法上の制約がないため、鄧小平の改革だけでなく、毛沢東の大失敗である大躍進政策と文化大革命も可能になった。チェック・アンド・バランスの欠如は、今日の習近平の独裁中央集権化を促進させている」p110
    「極左は国家主義者ではなく、アナーキストであることが多い」p165

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    2023年09月04日