柳広司のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
面白かった
東京裁判で裁かれる者たちが拘留されている巣鴨プリズンを舞台にした物語。
主人公はそこに拘留されているキジマ。
キジマは戦時中に捕虜を虐待した容疑で拘留されていますが、その戦時中5年間の記憶がありません。
キジマの虐待行為に対する様々な証言
キジマは本当に捕虜を虐待していたのか?
また、頭脳明晰で何度も脱獄を繰り返す変わりモノ。
そして、プリズン内で発生した服毒死事件の謎を追っていく事になります。
その相棒となるのが知人の情報を得るためにニュージーランドから来日した私立探偵のフェアフィールド。
プリズン内の人間関係、事件の真相、さらにはキジマの5年間の捕虜虐待の真相と、様々な謎が絡み合って明らかになっていきます。
さらに、筆者自身の戦争観も随所に見られます。
とりわけ、戦犯の問題や、日米文化の相違、そして天皇責任論にまで踏み込んでいます。
マツウラのセリフ
「ねえ、あなた。いったい女や子供の頭のうえに無差別に大量の爆弾を落とすというのは”人道に対する罪”には当たらないものなんですかね?」
東京裁判の意味が問われています。
ということで、戦争そのものの悲惨さ、戦争責任、東京裁判、そして、ミステリーと満載な物語でした。
お勧め -
Posted by ブクログ
舞台は巣鴨プリズン。戦犯達を裁くための拘置所。
現在池袋サンシャインの旧跡だ。
戦時中に消息を絶った知人の情報を得るため巣鴨プリズンを訪れた私立探偵。
調査交換条件に、囚人貴島の記憶を取り戻す任務を命じられる。
貴島なる囚人は恐ろしく頭脳明晰だが、戦争中の記憶が失われており...
拘置所内で立て続く服毒殺人事件の果てに...
一冊のミステリとして面白いことは間違いないが、戦争における正義、責任、国による文化的差異、教育の脅威、その示唆は実に富む。
本書の一節に、戦時中の日本における当時の国民性が実に端的に表されている。
女:「誰?誰が私の子供を殺したの!」
亡者達が女の周りに集まり、犯人探しが始まった。
「豚を選んだのはこいつだ」亡者達が一人の男を指差した。
「俺は選んだだけだ。こいつが豚に紐を結んだんだ」別の男を指差した。
「俺は紐を結んだだけだ。こいつが紐を引っ張ってきた」別の男を指差した。
「俺は引っ張ってきただけだ。こいつが豚を押さえていた」別の男を指差した。
「俺は尻を押さえただけだ。こいつが豚の頭を押さえていた」別の男を指差した。
「俺は頭を押さえただけだ。こいつが豚の喉を切った」別の男を指差した。
「いいや、俺は豚の喉を切らなかった」最後に指さされた若い兵士が首を振った。
「のどを切ったのは、この斧だ」
-そうだ、この斧が豚を殺したんだ!
正に御真影を仰ぐ天皇制が、敗戦直後の日本が、実によく表したものだ。 -
Posted by ブクログ
ジョーカーゲームで柳さんの世界観にどっぷりとハマり、こちらも読んでみることに。
読んでいても暗い雰囲気が映画のように頭の中に流れ込んできました。
だからといって、戦争小説のように重すぎるわけではなくバランスがいい作品に感じました。
そして、フィクションながらも実在した人物や巣鴨プリズンなど実在した場所も作品のに登場し、少しリアリティも感じながら読み進めたり…となかなか面白かったです。
また、敗戦国の庶民にもスポットを当てており、戦後の苦しい日本の生活などが少し垣間見れた気がしました。
バラバラであったピースが集約していくのが爽快。
ただ最後のオウムのトリック…無理ない…?と感じてしまったところもあったりしたのが残念だった。
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Posted by ブクログ
太平洋戦争の戦犯たちが収監される巣鴨プリズンを舞台としたミステリー。
柳作品はこの本で4冊目ですがなんというか惜しい作品だなあ、という印象。
巣鴨プリズンで起こった連続毒殺事件、記憶を失った囚人と提示される謎はとても魅力的。また記憶を失った捕虜のキジマが探偵役でもあり、また彼の記憶が物語の中心にもなるわけですが、キジマのキャラが魅力的。危険な雰囲気やミステリアスな雰囲気が漂っていてなんとも言えないカッコ良さがあります。
そしてテーマとして天皇の戦争責任や原爆の被爆者、そして戦争から浮かび上がる人間の闇にも踏み込みます。
とまあ、魅力的な点も多いのですが、ミステリのトリックがかなりの力技だと感じるものがあったり、動機の面があやふやで説明不足に感じたり、
また戦争を取り上げた作品としても、作中で上がった議論はいずれも表面上触れただけで、議論が練られている感じがしなかったりと、惜しいなと思う点もちらほら。そのため後半は失速してしまった印象があります。
柳さんの戦争下を舞台とした作品に『新世界』と「ジョーカーゲーム」シリーズがありますが、ちょうどその間の時期に書かれたのがこの『トーキョー・プリズン』。
『新世界』は原爆を扱った社会性の強い作品で、ジョーカーゲームシリーズはどちらかというと娯楽重視だったので、ちょうどその移行期で試行錯誤した結果が、惜しい感じになったのかな、と少し思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ東条英機ら第二次大戦の戦争責任者たちを収監した巣鴨プリズンで起こる不可解な事件の謎に迫るミステリ。
巣鴨プリズンは実在したけど、本作でのポジションはあくまで舞台というだけ。戦争の功罪を読者に問いかけてきたりはしないので安心して読めます。
戦時中に消息を絶った知人の情報を得るため巣鴨プリズンを訪れた主人公・私立探偵フェアフィールドは、調査の交換条件として、囚人・貴島悟の記憶を取り戻す任務を命じられます。捕虜虐殺の容疑で拘留されている貴島は恐ろしいほど頭脳明晰な男だが、戦争中の記憶は完全に消失。フェアフィールドは貴島の相棒役を務めながら、プリズン内で発生した不可解な服毒死事件の謎を追うが…。
歴史ものとも言えるけど、それよりは純粋に推理小説として楽しみたい作品。