吉田裕のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ終戦記念日の今日、先の大戦に関する書籍として本書を手にしました。
日本軍兵士(皇軍)の真実が語られている貴重な作品だと思います。
戦時中や戦後の時代には決してオープンにされなかった事実。
本書が世に出たのが2017年、戦後約75年の時を経て日本軍兵士の苦悩を知ることが出来ました。
戦いの中で命を落とした戦死者の陰にこんなにも多くの餓死者や自殺者がいたという衝撃の事実。
処置という名の下、自ら動く(歩く)ことが出来ない怪我や病気の傷病兵に自殺を勧奨し、強要し、命を奪った事実。
満足な補給すらなく、生きていく為に現地の人々から、自軍からも糧食を奪い、人肉をも喰らう。
支給される装備の -
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終戦の時期ということで、積読の中からチョイス。
終戦後の昭和天皇と国体護持をめぐる様々な動きが、明確な根拠とそれゆえのリアリティを持って書かれています。ここまでの文献とそれに対する考察が加えられているのはさすがの一言。敗戦を経ながらも、天皇制と政治体制がなぜ連続性を持って続いたのかがよくわかる本。
昭和天皇個人の戦争責任はもちろんのこと、それよりもさらにその先の国体護持のためにほとんどの人が統一的な行動をとっているのには感嘆。当たり前だけど、現代の皇室観からは全く理解できるものではない。そして当時の天皇観と、それに対して天皇の生々しい人間的な言動が明らかにされている。そして米国の思惑とその他世 -
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独白録成立の政治的背景が明らかになる。GHQ提出文書の下本として、未だ国体護持や退位の回避が確定せざるときに著された。戦犯容疑者や宮中グループやGHQの一部などが行った、天皇の責任回避を目指すあらゆる行為のひとつが独白録の作成だった。
記憶に強く残った指摘。
ニュルンベルク裁判と違い、東京裁判は文書による証拠が少ないため、日本側の恣意的な証言が判決に有利に働くことがあった。
敗戦直後の日本は対米開戦責任をフォーカスしすぎて、近衛文麿はまさか大陸政策で己が戦犯容疑者になるとは思っていなかった。昭和天皇も同様で、独白録のなかでの大陸政策に対する責任回避のためにする供述は甘い。41年の対米英の開戦 -
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大きく分けて2種の観点から日本軍を見る。
ひとつは一兵士から見た日本軍。それは徴兵される存在であり、成人への儀礼通過の象徴であり、満期を上等兵で向かえ故郷に錦を飾るべきものであり、またその職業は貧しい農村出身者の生活手段であった。
祖父がそのまた祖父⁽予備役⁾の載る日露戦役の出征リストを見て、上等兵と記載があるのを見た時に妙に感心をしていた。初めてその理由を理解した。
考えてみれば当然のことなのかもしれないが、軍と地方の関係はいつだって相対的で、地方出身にもいろいろあって農村出身者もいれば大学教員もいるわけで。社会的ヒエラルキーのどの視点から軍を見るかによって軍の評価やとらえ方が変わる。本書は -
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戦後へと連なる国民意識の変容、底流に触れた後半部分が興味深い。この時代を経て、この時代の前から、戦後の日本が始まっていたのだな。
あとがきで、著者は思い入れが強かったと自省的に述べているが、私はその立場を好ましく感じる。軍部の分析で、国民の意識が離れていくことを指摘したものがあるのが、意外であった。天皇の立場も、絶大なのに、濫用したとまでは言えないように思う。遺骨の問題への言及もナイーブなだけに興味深い。なんともできなかったんだろうな。
まぁ、ひどい戦争だったんだな。総力戦のもろさを露呈している。なにかの目的だけに、これだけの国民を十全に活用、運用することはできないのだろう。戦後、社会主義 -
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1940年、近衛内閣成立後の開戦への道から1945年の終戦までのアジア・太平洋戦争の歴史。
本のタイトルでよく見かける「あの戦争とは何だったのだろう」ということを考えさせられる良書。なぜ無謀な戦争を初めてしまったのか。なぜ壊滅的な状態まで戦争を長引かせてしまったのか。
戦争の終盤、若き学生らが戦地に駆り出され、国家のために命を懸ける。その姿は美化もされるが、尊い命を捧げたその意味は何か。彼らは何のために命を懸けたのか。
歴史は継続している。現代社会はあの戦争とも繋がっている。そこに断絶はない。歴史を学ぶ意義は過去と現在が連続しているからだ。
現代を生きるものの責務として、あの戦争で何があったの -
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吉田裕が書いた本作と『日本軍兵士』『続・日本軍兵士』の3冊を続けて読もうと買い込み、先ずこの本
から手をつけた。論調がスムーズで心地よく読んだ。これを「読書登録」しようとして、初めて数年前にも読んでいたことがわかった。読んだこと自体を完全に忘れていた。内容はもとより筆者の真意を受け止めきれていなかった。
「戦後日本を支えた人々」という副題からして、
執筆姿勢には惹かれるものを感じた。
アジア太平洋戦争で生き残った元兵士たちの戦後史
を彼らが生あるうちに聞き取って記録として残す。
現在の日本に彼らが果たした功績や意味を考える。
戦争体験につきまとう挫折感や贖罪意識の不条理を心の奥底に抱えながら