吉田裕のレビュー一覧
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ネタバレ序章 一つの時代の終わり
著者が本書を上梓したのは2011年。2000年代後半は戦争体験者が続々と鬼籍に入り、軍人恩給本人受給者数や戦友会が一挙に減少した時代の節目にあたる。
著者は「戦無派」世代の研究者として、「あの戦争に直接のかかわりを持たなかったという『特権者』の高みから、彼らの戦後史を裁断」しないよう、丹念に資料を読み漁り、あの戦争に対峙していく。
彼と同世代の東京新聞社会部長、菅沼堅吾の書いた「(我々は)戦争体験の風化を許した最初の世代になるかもしれない」という言葉に励まされる思いがしたと記す著者の心情に、平成生まれの私が共感を覚えるなどというのはいささかおこがましい気もするが、やは -
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前作と同様、兵士視点で太平洋戦争を分析した本書。前作と重複する部分も多いものの、当時の兵士たちがどのような環境にどのような生活を強いられていたのかをより深掘りし、やっぱり負けるのは分かりきっていたという事実をまざまざと突きつけられる。
毎日食べるものにも困り、加えて慢性的な睡眠不足に、回復することのない肉体的・精神的疲労。兵士を大事にする意味を理解していたアメリカ軍との差がひどすぎて、本当に悲しいレベル。当時命を落としていった何百万人もの人々の無念はいかばかりかと思わずにはいられない。事実を知れば知るほど、なぜ早く降伏しなかったのかと思うが、人命を軽視する組織がそんな判断下せるわけないよな… -
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アジア・太平洋戦争を兵士視点で分析した本。情報戦においての劣勢や判断ミスが敗戦の原因だったと論じる本が多く、私自身もこれまでその影響を少なからず受けていたので、「あの時もしこうだったら…」というようなif論をつい考えてしまうことがあったが、一貫して兵士目線に立って細かな分析をしている本書を読むと、実力を過大評価した軍部がノリと勢いだけで始めた戦争で、物資量・国力・軍事力・技術力あらゆる面において日本は劣っており、負けるべくして負けたんだなと冷静に理解し、考えを改めるきっかけとなった。すべてにおいて優勢であれば戦争して良いという話ではないが、負けると分かりきった上で戦争へと突入し多くの命を死なせ
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続けて『続・日本軍兵士』を読む
前作と重複する箇所がかなり多く、辟易する
だがしかし、前作から8年を経ており、復習しながらさらに深掘りする内容で、しかも冒頭で断りを入れている
完全に続けて読む方が悪い
ごめんねごめんねー
で、である
掘れば掘るほどダメダメである
帝国陸海軍、ダメダメである
全くなってない
そりゃ負ける
必然
もう全てに於いて人間軽視が貫かれいる
兵士は消耗品
だから戦術は突撃一辺倒
食料は自分たちでなんとかしろ
装備も貧弱、病気はほったらかし
全く居住環境に配慮しない艦船
アメリカ軍は最も貴重なのは「人」という考え
よく分かった
そして今大切なことは、最も貴重な -
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太平洋戦争における日本の死者数は合計で三二〇万人とされており、その内軍関係は二一〇万人となっています
そして、それらの「死」のあり様を兵士の視点から検証したのが、本書となっています
ただ、その前に、やはり是非とも覚えておきたい、いや忘れてはいけない数字があって、それは太平洋戦争における”アジア”の死者数で、一九〇〇万人以上と言われています
とりわけ”中国”は一〇〇〇万人以上と文字通り桁が違う
そりゃ簡単に怨みは消えないよ
一〇〇〇万年は消えないよ(暴論)
だから何でもかんでも言う事聞いたれってことではもちろんないんだが、やっぱりこの数字はポイってしちゃうわけにはいかないよね
はい、あらた -
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「戦場の真実を直視する:『続・日本軍兵士 帝国陸海軍の現実』を読む」
吉田裕氏の『続・日本軍兵士 帝国陸海軍の現実』は、前作『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』に続き、アジア・太平洋戦争における日本軍兵士の実情を克明に描き出した衝撃的な一冊です。
組織としての帝国陸海軍:構造的な問題点
前作が兵士個々の視点から戦争の実態に迫ったのに対し、本書では帝国陸海軍という組織に焦点を当て、その構造的な問題点を浮き彫りにしています。
兵站と衛生:戦場の悲惨な現実
特に深く印象に残ったのは、兵站と衛生に関する記述です。戦地における物資の欠乏、劣悪な衛生環境、そしてそれらが兵士たちに与えた絶望的 -
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前作に続く続編ではあるが、前作を読んでいなくても内容に関しては全く理解できるので問題ない。寧ろ、筆者が述べるように過去の戦争を原因や勝敗の分析をする書籍が大半を占める中、本書のように定量的な事実や環境、兵士の実態などの側面から捉える内容の物は少なく、戦史の一つとして理解を深めるのに大変役立つ。
近代の戦争、それは要は総力戦である。兵士の数や兵器の良し悪しなどは分かり易い指標ではあるが、実際にはそれを成立させるための国力が全てであり、過剰な兵員数、バランスの取れていない軍隊が戦争に勝利するのは難しい。日本は明治維新以来の重工業化を経て、近代的兵器や艦船を作ってきた。だがその供給力に於いてはアメリ -
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『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』吉田裕著 ― 戦争の深層を現代に問う
近年、吉田裕氏の著書『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』を読み、その内容に深く心を揺さぶられました。これまでアジア・太平洋戦争に関する書籍をいくつか読んできましたが、本書のアプローチは、兵士個々の体験と心理に焦点を当て、戦争の現実を多角的に描き出しており、私の戦争観に新たな視点をもたらしました。
戦争の「現実」を直視する
本書は、単なる歴史的事実の羅列ではなく、兵士一人ひとりの視点から見た戦争の「現実」を浮き彫りにします。アジア・太平洋戦争は、多くの若者が動員され、過酷な戦場へと送られた、日本にとって深い傷 -
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日本軍兵士を多面的、かつ客観的に分析した本。読めば読むほど、日本軍の粗探しのような評価、残念な感情が増幅する。
軍人、軍属の戦没者230万人のうち餓死、マラリアなどの病死が140万人。特攻隊にはヒロポン。特攻隊の爆弾は機内にあって破壊力が落ちるため、激突前に爆弾を降下させた方が合理的であったが切り離せないな機体もあった、など。
また、戦況の変化についても詳細に記される。開戦から1942年5月までは日本軍の戦略的攻勢期。短期間に東南アジアから太平洋に領土を拡げた。まだ、太平洋地域で陸海軍ともアメリカを上回っていた。しかし、1942年のミッドウェー海戦で空母4隻を失い敗北。43年、ガダルカナル -
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ネタバレ本作は一橋大学名誉教授の吉田氏による、太平洋期間中の末端兵士の状況を記録した作品になります。
太平洋戦争を4つの期にに分類し、その中でも絶望的抗戦期に焦点をあてます。各種資料から戦地での兵士の状況をあぶりだします。具体的な切り口は、衛生状況、医療、食事配給、ロジスティック、通信、人員管理、軍需品製造、組織管理、グループシンク、などでしょうか。
なお、ご参考までに4期を挙げますと以下の通りです。もう勝ち目がないことが薄々認識されているなかで、だらだらと戦いが続いている期間、でしょうか。
戦略的攻勢期(1941.12 – 1942.5)
戦略的対峙期(1942.6 – 1943.2)
戦略的 -
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誰しも責任を人に押し付けたがる傾向は多少なりとも持っている。中には明らかに責任逃れをしている大人達を見ると殴り倒してやりたい気持ちよりも憐れみを覚えることさえある。斯くいう私だって、仕事の不手際(自分ならまだしも部下の大きな失敗など)について、言い訳をしたい気持ちになる事は多い。後からその様な気持ちを抱いた事にまた自己嫌悪にも陥るのだが。
ご存知の様にポーツマス条約により中国に権益を得たのち、日本が中国侵攻を見据えて仕掛けた満州事変、そして太平洋戦争の敗戦へと続く時代を振り返りながら、戦争責任がどこに存在するかを追いかけていく無い様となっている。
確かに当初は陸軍の暴走の様にも映るが実際にはそ