【感想・ネタバレ】日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実のレビュー

あらすじ

310万人に及ぶ日本人犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。異常に高い餓死率、30万人を超えた海没死、戦場での自殺と「処置」、特攻、体力が劣悪化した補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏……。勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験を強いられた現実を描く。アジア・太平洋賞特別賞、新書大賞受賞

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Posted by ブクログ

多くの戦史を読んで来たが、これは教科書に載るような所謂歴史では無く、戦争の悲惨さ、残虐さを体感するリアルを伝えてくれる最上の作品。

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2025年10月01日

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第二次世界大戦の日本軍の内実について詳しく書かれた本である。日本軍兵士の多くが餓死や病死であること、そして自殺が多かったことを初めて教えられた。また、傷病兵の多くを殺していたこと、神経症を患った兵士も射殺していたことなどむごい行為も知った。さらに、戦場では虫歯やマラリアなどの病気が蔓延し、その対応は無きに等しかった。これらの背景には、兵力が足りないことから兵士には不適格な者を召集した制度、武器弾薬衣服食料などの補給の途絶または生産力不足、蔓延する私的制裁、情報および通信の軽視など、およそ軍隊として成り立っていないと思われる実態があった。そんな情けない日本軍が無謀にも起こした戦争が、日本だけで310万人、連合国が17万人、アジア各国が1900万人以上の死者という悲惨な結果を招いたのだ。

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2025年08月16日

Posted by ブクログ

兵士に焦点を当てた戦争の現実。餓死病死が多かったとはよく聞くけれど、
・虫歯の蔓延
・水無視の蔓延
・餓死の推移
・飢えに伴う略奪の実際
・衣類装備品の実際(靴底が抜ける軍靴)
・私的制裁、その背景の考察
・水中爆傷(海中爆発の衝撃を受けることによる内臓の破裂)
・自殺、自傷
・精神疾患
・荷物の重さ(体重と同じ重さの荷物)
・少年兵への負荷
・生きているものへの罵倒
・軍隊の中にあって、暴力団的な組織の存在
など、ここまで詳細な調査は初めて読んだ。何百万人もこのような状況で亡くなっていったこと知り、あの戦争が国民一人一人に与えた死ととてつもない傷の大きさを思う。日本人はこの本から、あと100年は学び続けることができる。

明治憲法体制の欠陥が根本原因であるという説は初めて知った。もっと学びたい。

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2025年05月17日

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戦争の前から負けることが明白だったことはよく言われる。もっとも許せないのは、わかっていながら国民を無惨な死に追いやり、責任も取らず、護国を美化することである。

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2025年04月28日

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この本を読むまで、戦争に関するまともな知識・関心がなかった。
子供の頃、学校の社会見学で原爆ドームに行ったことがあるぐらい。
戦争の悲惨さは被災地のことに焦点を当てて考えていたけど、前線で戦っている兵士についてはあまり想像していなかった。
なんとなく兵士は勇敢に、儚く散っていったものというイメージがあったが、想像を絶する現実を突きつけられた感じだった。
兵士は、アクション(撃ち合いなど)の末に敗れるイメージだった。餓死や栄養失調の問題など、知らないことが多かった。
作戦、物資、機械、部内統制などでも、色んな面で問題を抱えていたんですね。
「続・日本軍兵士」も出ていますので、今度そちらも読もうと思います。

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2025年03月09日

Posted by ブクログ

この本を読んで、旧日本軍に対するイメージが変わりました。
近年の旧日本軍を美化する流れにすっかり染まりきっていました。
いくら美化されようとも、結局リアルはそうでは無い。。
末端の兵士の方々がホントに過酷(絶望的)な環境であったのに、そういった話に接する機会が無いことは大変憂慮される現状ですね。。
私だけでなく、国民みんなが一度は知る必要があると思います。

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2025年01月11日

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日本兵の死傷の状況を通じてアジア・太平洋戦争下の日本軍の実態に迫る一冊。

戦地の様子を当事者から聞くことの出来なかった世代なので、こういう戦場のリアルはなかなかこたえる。
勇ましく華々しい描写に酔いしれたい気持ちが無いといえば嘘になるが、戦争とはこういうものだと知られて良かった。
ものごと準備不足で突っ走るとこうなる、という人生の反面教師でもある気がした。

大往生とはいかないまでも、死ぬのは畳の上が良い。

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2024年10月03日

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日本とアメリカの軍事力、技術力の差が初学者の私でもわかりやすく記されていました。

美化されたものではなく、根拠をもとに戦時下の状況が分析されていてとても勉強になりました。

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2023年01月27日

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主にアジア太平洋戦争時の戦史を兵士の視点で描いた本。具体的な記述が豊富で、さすが歴史書といった感じ。通俗的な日本礼賛、戦争礼賛的な書籍と異なり、戦争の悲惨さが具体的に記述してある。「勇敢な日本兵士」「立派に戦った日本軍」といった通俗的な観念に打撃を加える一冊。

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2022年05月18日

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携帯無線機や輸送用のトラック、空港整備の重機まで、何一つ用意できずに戦争に突入し、人力と精神力で世界一の米国軍に立ち向かおうとするとは、完全に狂気の沙汰。歴史にイフがあったとしてもこれでは万に一つの勝機もない。世評の高い『失敗の本質』が実に本質を突いていない事がよくわかる。

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2021年09月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

終戦記念日の今日、先の大戦に関する書籍として本書を手にしました。

日本軍兵士(皇軍)の真実が語られている貴重な作品だと思います。

戦時中や戦後の時代には決してオープンにされなかった事実。

本書が世に出たのが2017年、戦後約75年の時を経て日本軍兵士の苦悩を知ることが出来ました。

戦いの中で命を落とした戦死者の陰にこんなにも多くの餓死者や自殺者がいたという衝撃の事実。

処置という名の下、自ら動く(歩く)ことが出来ない怪我や病気の傷病兵に自殺を勧奨し、強要し、命を奪った事実。

満足な補給すらなく、生きていく為に現地の人々から、自軍からも糧食を奪い、人肉をも喰らう。

支給される装備の粗悪さ、兵力のみならず、兵器や通信機器でも遅れをとる中でも戦争を止めることが出来なかった悲しき歴史。

多くの事実を学ぶ事が出来た素晴らしい良書。



説明
内容紹介
310万人に及ぶ犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。異常に高率の餓死、30万人を超えた海没死、戦場での自殺・「処置」、特攻、劣悪化していく補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏……。勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験をせざるを得なかった現実を描く。

「アジア・太平洋賞特別賞受賞」
「新書大賞受賞」
メディア掲載レビューほか
日本軍兵士の過酷すぎる実態 語り継がれていないアジア・太平洋戦争

アジア・太平洋戦争による日本人死者は、民間人が80万人、軍人・軍属が230万人の計310万人。日露戦争の戦没者が9万人であることを踏まえると、とてつもない数字だ。さらに驚くべきことに、その9割が戦争末期、1944年以降のわずか1年ほどのあいだに亡くなったと推算されるという。短期間に甚大な死を引き起こす要因となった、日本軍兵士たちのおかれた苛酷な肉体的・精神的状況の実態を、豊富な資料に基づき緻密に描き出した新書が売れている。

「被爆や空襲、沖縄戦のような体験は、いまなおよく語り継がれています。しかし戦場の話は、多くの人が従軍したにもかかわらず、あまり語り継がれていない。関連した本も最近の作品は漠然とした内容が多い。そこを具体的に、詳細に書いたことが、驚きをもって多くの読者に受け止められたのではないでしょうか」(担当編集者)

昨今、日本軍の勇猛さをとかく賞賛するような本も多いが、本書は異を唱える。立論に説得力があるのは、情緒に流れていないからだ。

「著者は兵士の目線、地を這うような目線での具体的な体験談を紡ぎ出すと同時に、鳥瞰的に戦争を捉えることも忘れません。他国と比べて異常に高い餓死率など客観的な数字を記することで、極端な例だけを取り上げた恣意的な内容ではないとわかり、兵士たちの『声』がより真に迫るものに感じられるんです」(担当編集者)

評者:前田 久

(週刊文春 2018年05月24日号掲載)

内容(「BOOK」データベースより)
310万人に及ぶ日本人犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。異常に高い餓死率、30万人を超えた海没死、戦場での自殺と「処置」、特攻、体力が劣悪化した補充兵、靴に鮫皮まで使用した物質欠乏…。勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験を強いられた現実を描く。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
吉田/裕
1954(昭和29)年生まれ。77年東京教育大学文学部卒。83年一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。83年一橋大学社会学部助手、助教授を経て、96年より一橋大学社会学部教授。2000年より一橋大学院社会学研究科教授。専攻・日本近現代軍事史。日本近現代政治史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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2021年08月15日

Posted by ブクログ

アジア・太平洋戦争を兵士視点で分析した本。情報戦においての劣勢や判断ミスが敗戦の原因だったと論じる本が多く、私自身もこれまでその影響を少なからず受けていたので、「あの時もしこうだったら…」というようなif論をつい考えてしまうことがあったが、一貫して兵士目線に立って細かな分析をしている本書を読むと、実力を過大評価した軍部がノリと勢いだけで始めた戦争で、物資量・国力・軍事力・技術力あらゆる面において日本は劣っており、負けるべくして負けたんだなと冷静に理解し、考えを改めるきっかけとなった。すべてにおいて優勢であれば戦争して良いという話ではないが、負けると分かりきった上で戦争へと突入し多くの命を死なせたのだから、それは悪いに決まっている。

戦死よりも食料不足による栄養失調やマラリアなどの伝染病による戦病死の割合が圧倒的に多く、軍部は衛生面の問題を認識しながらも重要視しなかったことや、特攻などという行為を行わせたことなどから見ても、戦力に直結する人命を軽視していた当時の軍部の性格がよくわかる。また一番驚いたのは、知的障害者までをも根こそぎ招集していたということ。これまでにも太平洋戦争関連の書籍はいくつか読んできたが、この事実は初耳だった。当時の軍がいかにめちゃくちゃで組織としてもはや成り立ってなかったかを物語っていると思う。

素晴らしい人格の武人たちがいたのは事実であるし、命を賭して散っていったすべての方々に感謝と哀悼の意を表すべきだが、彼らの犠牲を過度に美化してはいけないと反省した。

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2025年07月13日

Posted by ブクログ

戦争末期の日本兵が悲惨な状況に置かれていたことがよくわかった。日本軍の組織としての問題点もある程度わかった。続も読もうと思いました。

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2025年07月05日

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太平洋戦争における日本の死者数は合計で三二〇万人とされており、その内軍関係は二一〇万人となっています

そして、それらの「死」のあり様を兵士の視点から検証したのが、本書となっています

ただ、その前に、やはり是非とも覚えておきたい、いや忘れてはいけない数字があって、それは太平洋戦争における”アジア”の死者数で、一九〇〇万人以上と言われています
とりわけ”中国”は一〇〇〇万人以上と文字通り桁が違う
そりゃ簡単に怨みは消えないよ
一〇〇〇万年は消えないよ(暴論)
だから何でもかんでも言う事聞いたれってことではもちろんないんだが、やっぱりこの数字はポイってしちゃうわけにはいかないよね

はい、あらためて日本兵です
具体的な数字は分からないんだけど、日本兵の死因の最たるものは「餓死」(栄養失調に伴う体力の喪失による病死も含む)なんだそう
もうね、わいなんかただでさえ食いしん坊なんで「餓死」なんて聞いただけでもちょっと苦しくなってくるもの

だいたい作戦の中身が食料は現地調達!みたいなんが平気で実行されてたわけでね
もう、端からダメすぎるし、食料補給もままならないんじゃ、勝てるわけないじゃん!
やっぱり無謀な戦争だったんよ〜

なんてことを思うわけだけど
ちょっと待て!と
ちょ〜っと待ちなさいよ!と言いたい
じゃあ、ほぼほぼ勝てそうな戦争はOKなのか?と

もちろん本書でもそんなことはひと言も言っていないわけだが、そっちへ行っちゃう危険もちゃんと認識して進んでいきませんか、と思うわけ

無謀な戦争も、無謀じゃない戦争もダメだよ!いや無謀じゃない戦争なんてないわ!( ゚д゚ )クワッ!!

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2025年04月09日

Posted by ブクログ

今、続編がだいぶ評判みたいだけど、その前にまずこちらを読んどかないと、ってことで。ちょうど手元に積読かれていたし。ちなみにそのネタ元は、評論文読書案内。戦闘で亡くなった人より、その他の原因で亡くなった人の方が多い、ってのはよく聞く話だけど、その実情を、各死因にそれぞれ言及しながら詳らかにしていく。それにしても、陳腐な物言いながら、命を何だと思っとるんだ。戦争反対。

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2025年03月24日

Posted by ブクログ

『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』吉田裕著 ― 戦争の深層を現代に問う

近年、吉田裕氏の著書『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』を読み、その内容に深く心を揺さぶられました。これまでアジア・太平洋戦争に関する書籍をいくつか読んできましたが、本書のアプローチは、兵士個々の体験と心理に焦点を当て、戦争の現実を多角的に描き出しており、私の戦争観に新たな視点をもたらしました。

戦争の「現実」を直視する

本書は、単なる歴史的事実の羅列ではなく、兵士一人ひとりの視点から見た戦争の「現実」を浮き彫りにします。アジア・太平洋戦争は、多くの若者が動員され、過酷な戦場へと送られた、日本にとって深い傷跡を残した出来事です。しかし、彼らは戦場で何を感じ、何を考えていたのでしょうか。本書は、綿密な調査と証言に基づき、その問いに迫ります。

吉田氏は、兵士たちの戦争に対する認識の変化や、極限状態における人間性の葛藤を丹念に描き出します。祖国のために戦うという使命感に燃えていた兵士たちが、戦場の現実を目の当たりにし、理想と現実のギャップに苦悩する姿は、戦争の残酷さを物語っています。しかし、彼らを突き動かしたのは、使命感だけではありませんでした。戦場での生存本能、上官の命令、仲間との絆など、様々な要因が複雑に絡み合い、彼らの心を揺さぶっていたことが、証言から読み取れます。

戦争の意味を現代に問う

『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』が私たちに問いかけるのは、戦争という行為そのものの意味です。戦争は単純な善悪二元論では捉えきれない、複雑な側面を持っています。本書を読むと、兵士たちの心情が、「敵」と「味方」という単純な対立軸では語れない、複雑なものであることが分かります。

現代に生きる私たちは、当時の兵士たちの苦悩と葛藤をどのように受け止めるべきなのでしょうか。戦後、日本では平和の尊さが繰り返し語られてきましたが、過去の戦争から何を学び、未来にどう生かしていくのかという問いは、現代においても重要な意味を持ちます。

現代社会への示唆

本書は、過去の戦争を振り返るだけでなく、現代社会における価値観や戦争への向き合い方についても重要な示唆を与えてくれます。戦争の影響を受けた兵士たちが、帰還後にどのように社会に適応していったのか、戦後の日本がどのように復興を遂げたのかという視点は、現代社会が抱える問題、例えば、戦争のトラウマを抱える帰還兵の問題や、国家間の対立がもたらす心理的影響を考える上で、重要なヒントを与えてくれます。

私たちが日常生活の中で「戦争」を遠い過去の出来事のように感じがちである現代において、吉田氏が提起する「戦争の記憶」をどのように継承していくのかという問いは、非常に重要です。戦争を知らない世代が増えつつある今こそ、過去の教訓を未来に語り継ぐ責任を、私たちは真剣に考えなければなりません。

結論

『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』は、アジア・太平洋戦争という歴史的出来事を、兵士たちの心情と生活を通して深く掘り下げた作品です。戦争に対する理解を深めたいと願うすべての人にとって、本書は必読の書と言えるでしょう。

吉田裕氏の綿密な調査と深い洞察力によって、私たちは「戦争の現実」を改めて見つめ直し、平和について真剣に考える必要があることを痛感させられます。アジア・太平洋戦争について更なる考察を深めたいと願う方々に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

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2025年03月13日

Posted by ブクログ

⚫︎単なる戦闘ではなく、日本兵士の置かれた状況がよくわかる良作。最近はこの手の本の方が面白い。
⚫︎陸海軍は単なる軍隊ではなく、大変な官僚機構であったことも大変興味深い。資源もない中で、あれだけ戦線を広げて、よくもまあ日々の事務処理が流れていったものだと変に感心してしまう。まあ、実際には流れてないからダメダメな部分もあるのだろうが、今後はそういう視点の本も出てきて欲しい。
⚫︎兵士もあくまで人間、ほんとにタイミングで、生死が別れる特殊な環境だと実感する。
⚫︎悲しいかな、資源のなさを後半は痛感しまくるのであった…

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2025年02月09日

Posted by ブクログ

日本軍兵士を多面的、かつ客観的に分析した本。読めば読むほど、日本軍の粗探しのような評価、残念な感情が増幅する。

軍人、軍属の戦没者230万人のうち餓死、マラリアなどの病死が140万人。特攻隊にはヒロポン。特攻隊の爆弾は機内にあって破壊力が落ちるため、激突前に爆弾を降下させた方が合理的であったが切り離せないな機体もあった、など。

また、戦況の変化についても詳細に記される。開戦から1942年5月までは日本軍の戦略的攻勢期。短期間に東南アジアから太平洋に領土を拡げた。まだ、太平洋地域で陸海軍ともアメリカを上回っていた。しかし、1942年のミッドウェー海戦で空母4隻を失い敗北。43年、ガダルカナル島での敗北により、日本の敗勢は明確に。44年、マリアナ諸島のサイパンでマリアナ沖海戦に敗北。アメリカはここにB29の発車基地を築き、日本本土を行動圏内へ。

「偏執病的な作戦至上主義」、餓死者の話が辛い。

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2024年06月07日

Posted by ブクログ

太平洋戦争の後期 日本軍兵士の悲惨な現状 現実が 面々と 綴られているなぜ
なぜ死んでいくのか 自殺という現実
生き残った兵士たちも 行軍で疲労困憊していく
前線で神経症になってしまうケースもいることが報告されているが 戦後はその状態を引きずってどのように生きていたのだろう
覚醒剤 ヒロポン 多用されたことが報告されている 戦後をしばらくはその副作用に悩まされることとなる

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2024年06月16日

Posted by ブクログ

人災…。が一番の感想。敵からの攻撃で亡くなる兵士よりも、飢餓や上官からの私的制裁、覚醒剤やマラリアなどの感染症に苦しめられた兵士が多かったのは想定内だが、虫歯や水虫にまで苦しめられていたというのは、戦争ってなんなんだろう、さらにこれを美化する人達はなんなんだろうという気持ちにさせられた。

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2024年02月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本作は一橋大学名誉教授の吉田氏による、太平洋期間中の末端兵士の状況を記録した作品になります。

太平洋戦争を4つの期にに分類し、その中でも絶望的抗戦期に焦点をあてます。各種資料から戦地での兵士の状況をあぶりだします。具体的な切り口は、衛生状況、医療、食事配給、ロジスティック、通信、人員管理、軍需品製造、組織管理、グループシンク、などでしょうか。

なお、ご参考までに4期を挙げますと以下の通りです。もう勝ち目がないことが薄々認識されているなかで、だらだらと戦いが続いている期間、でしょうか。

戦略的攻勢期(1941.12 – 1942.5)
戦略的対峙期(1942.6 – 1943.2)
戦略的守勢期(1943.3 – 1944.7)
絶望的抗戦期(1944.8 – 1945 .8)

・・・
私が持った印象を端的に述べれば、最悪、悲惨、地獄、といったところ。

人の命よりも国家の存亡が優先された時代。もう読んでいて唯々悲しい気持ちしか抱けません。信じられない。

恵まれた時代の豊かな国にいるともう別世界の話ですが、ほんの一世紀前の現実であることを考えると空恐ろしい気がします。

中でも印象的なのは、非戦死の多さ、不透明な組織構造、立ち遅れ、でしょうか。

・・・
戦争の本ですので、死の記述は前編にわたって記載されています。それにしても非戦死に関する記載は頻度が高いです。そして実は戦闘以外で相当度の方が亡くなっているという事実に愕然とします。

具体的に言うとその死因は、病死、餓死、自殺、いじめです。

筆者のひく書籍によると、病死の率は、1941年の日中戦争時点でおおよそ50%超、そして徹底的抗戦期ではこれが75%にも上るという(P29, 30)。しかも当時は戦(闘による)死に重きが置かれたため、傷病兵をその場で殺し戦死扱いとする、あるいは兵站上の問題からそのまま放置することも多かったとか。つまり戦死の率は更に低い、と。

餓死については、制海権・制空権を相手に握られ、兵站が途絶された状況では、容易に想像がつく死因であります。作中では、意識がもうろうとなった餓死寸前の兵士のスケッチなどもありリアルです。

自殺というのは、想像には難くないものの、今まで私があまり見聞きしない戦中の死因でした。作品では宜昌作成という日中戦争時の戦闘で既に、一連隊(およそ1,500名)でその戦闘作戦中38名の自殺者を出したとか。戦地でのプレッシャーに対するメンタルケアなぞおおよそ当時の上官の意識にはなかったでしょうが、何とかできなかったのか。いわんや終戦間際はいかばかりだったことか。

いじめについても幾らか記載があります。古参兵とが新参兵を撲死させるのは良くあることだそう。また終戦末期では精神障碍者なども戦地に送られたそうで、こうした古参兵の格好の餌食にされたことかと思います。

国を守るための戦地に赴いたのに、この大切な生命は戦闘以外のところで、無駄にされてしまったのです。

・・・
もうこれ、なんでだろう、という話になるじゃないですか。

本書には個別の原因追及は余りありません。むしろ大局的に明治憲法の制度的・構造的要因を指摘していました。曰く、実は一元的責任集中していないとのこと。逆だと思っていましたが。

個人的には、より現場に近い組織で、改善がなされなかった原因・理由の方が気になります。例えば古参兵によるいじめを年若い上官が見て見ぬふりをしたこと。今でいえば、海外拠点での古参のやり手ベテランの些細な不正を、年若い駐在(彼も収益プレッシャーが厳しい)が見て見ぬふりをする、みたいに読み替えできるかもしれません。

そのほかにも、なんで? 意味あるの? 何のために? みたいな、読んでいて?が消えない悲しい状況描写がたくさん。意味不明の戦争だ、という印象が読み進むにつれて強くなります。

・・・
また、軍備の立ち遅れについての記録もあります。よくもまあ戦争を開始・継続したなあというため息でいっぱいになります。

二つほど申し上げます。

先ずは馬の使用。日本軍は東南アジアへ進攻していたものの、馬は暑さに弱いらしいです。当然の事ながらヘタって馬が死んでしまう。爾後はとうぜん、人力で運ばなくてはならない。体重対比の最大荷重量(35-40%)があるそうですが、日本軍は体重と同じ量を運ばないといけない兵卒も居たそう。ちなみに当時のトヨタは粗悪であったそう。米軍はフォードの運搬車と戦車で戦っているときに馬のち竹やりですよ。戦いになりません。戦争以前の力量差。

もう一つは通信技術の軽視です。米軍が無線通信に力を入れ、ハンディートーキーを開発しているさなか、日本軍の現場では無線はおろかあっても有線。そして有線は爆弾一つで一瞬で途絶。さらに戦争末期には伝書鳩を使っていたそうです。鳩ですよ鳩。

現代の感覚だと、なぜ早急に戦争をやめなかったのか、という話です。

・・・
ということで吉田先生の書籍でありました。

戦争の本としては、末期に焦点を当てた、そして現場の声を集めたという点が良かった気がします。
私も現実に不満不平はありますが、読後はまったく自分の状況はマシだと思いました。作中の状況は、一言でいえば、不条理の極北、であると思います。

戦争の記録の集成としても貴重ですが、なぜ状況が放置されたのかと疑念が止まらない読後感でした。『失敗の本質』を再読したくなりました。

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2024年01月06日

Posted by ブクログ

先の大戦では310万人もの人が亡くなった。その9割以上が1944年以降に亡くなったそうだ。中でも餓死や自殺が大変多かったということに驚いた。

飢えだけでなく、覚醒剤中毒、虫歯、水虫などに苦しんだ様子も詳しく書かれていた。

近頃、日本軍は強かった、凄かったと礼賛する内容の話を聞いたりしたが、そんなことはなく、しっかりと負けを認め、総括することが大切だ。

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2023年08月22日

Posted by ブクログ

日本近代戦史が専門の著者が、太平洋戦争時の日本兵が置かれていた状況を淡々と分析している。言葉は平易だが、内容は結構深い。これを読めば、太平洋戦争は負けるべくして負けた戦争だったことがよくわかる。

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2022年11月22日

Posted by ブクログ

大戦を振り返り、その教訓を未来へ生かそうと考えれば、本書のように、末端兵士視点からの分析は大切なことと思います。従軍経験のある祖父の話と重ね、まだまだ知らないことが多いと感じました。

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2022年04月24日

Posted by ブクログ

日本軍の敗因から自身を見直せる
第二次世界大戦の日本軍がなぜ負けたのかを様々な視点から記述している。
個人的に大きな敗因だと感じたのは以下の三点だ。
・米中の二正面戦争
・兵士達の士気のコントロール
・後手に回る対応

・米中の二正面戦争
そもそも日本は中国を軽視しており、中国への勝利を確信していた。この軽視が全ての失敗の始まりだと感じる。

・兵士達の士気のコントロール
また、士気に関しては、上官が兵士を駒としか考えていない事が大きな士気の低下を招いた事が感じられる。一人の人間として、特攻はしたくないし、病気にかかった友人が見捨てられていく現状、終わりの見えない戦いなど、かなり不安に苛まれる要因があった様に思える。これらが重複して、軍全体に負のオーラが漂っていたと考えられる。

・後手に回る対応
そして、全ての対応が後手に回っているように思えた。連合国が無線通信を導入する中、有線通信を貫いて、断線させられて孤立すること。予測を誤って戦争に突入したあまりに配給の不足、そして現地調達を要求することにより、現地住民の反抗がおきること。矛盾する国策。「己を知り敵を知れば百戦危うからず」という言葉を改めて考えさせられる。

日本軍がさも勝てたかのようなドラマや映画が出されたり、最近のテレビでは日本が世界一優れているような演出がなされることも少なくない。一面ではそうかもしれないが、それを見る側としては、正しい現実を理解することが必要である。理解した上で、どう判断するのかを考えられる教養をつけることの重要性を感じる。

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2023年12月26日

Posted by ブクログ

『日本軍兵士』アジア太平洋戦争の現実 吉田裕
『続・日本軍兵士』帝国陸海軍の現実   “

アジア・太平洋戦争の「兵士の戦争史」である。
「兵隊は悲しいなあ、軍上層部の作戦計画などまったく知らされなくただ翻弄されるだけの存在だった」

従来日清戦争や日露戦争では参謀本部や軍令部が統計資料を収録した大部の戦史を編纂していた。第一次世界大戦でも戦史を残している。しかし満州事変と日中戦争以降は敗戦前後の公文書焼却に加え戦史の編纂を途中で打ち切ったためそれすらない。ただしアジア・太平洋戦争については戦後防衛庁防衛研修所戦史室が編纂した『戦史叢書』全102巻がある。それは旧陸海軍幕僚将校グループの専有物で相変わらず作戦第一主義的な性格が強く兵站、情報、衛生、教育などは軽視していて「戦訓研究」の傾向が色濃い。

開戦に至る経緯と終戦およびその後の占領政策に関する研究では政治史や近代史研究者の成果も多い。「煙管の筒」の部分は社会史や民衆史の視点から書いたものはあるが、現実の戦争や軍隊を客観的に捉え直す軍事史研究そのものには手がつけられなかった。

著者は歴史学の立場から
①連合軍側の記録と付き合わせ②兵士の目線、「死の現場」に焦点を合わせて③帝国陸海軍の軍事的特性が兵士たちの過酷な状況にどう関係したのか、という問題意識で兵士たちの現実を大きな歴史的文脈に位置付けることを意図してこの作品を書いた。

・15年間の戦争中1944年以降の最後の2年弱で戦没者は310万人中281万人を記録し91%に達する
政府、軍部、天皇中心の宮中グループの戦争終結の決意が遅れたことによる

・軍人・軍属の戦没者230万人のうち広義の餓死者は140万人(61%)と推定、これは制海・制空権の喪失による補給路寸断で食料不足の発生、栄養失調症・マラリア・脚気・精神神経症などの併発が多い
指導部の兵站を無視した無謀な作戦の結果である

・35万8000人の海没死(搭載量過重、船舶輸送居住区画の狭隘、坪当たり2.5人に対して5人も)
戦果に乏しい特攻死(陸海軍3848人)の蛮行

・戦没者中自殺者・自決者が世界一多い、これは戦陣訓(1941年)が元凶で「動けなくなった傷病兵は捕虜になることを恐れて自殺する」結果である。
インパール作戦の退却路「白骨街道」(戦死の30%は敵弾、残りの6割は自殺・1割他殺・一部事故死)など、自決できなければ他殺が不文律の空気による

・兵士の体格・体力の低下、結核の拡大、虫歯の蔓延、病む兵士の心(恐怖・疲労・罪悪感)、被服・装備の劣悪化、軍靴も粗悪化で裸足や草鞋履き鮫皮靴も

・異質な軍事思想により
短期決戦・作戦至上主義で補給・情報・衛生・防御・海上護衛などが悉く軽視された。
極端な精神主義と中国軍や米英軍の過小評価

・日本軍の構造的で根本的な欠陥として
統帥権の独立と両総長の権限、多元的・分権的で統一した国家戦略を決定できる政治システムを持たないまま戦争を戦った、私的制裁の横行、軍規の弛緩と退廃

・後発の近代国家であり資本主義の後進性故の兵力と労働力の取り合い

・軍の機械化・自動車化、兵站の整備、軍事衛生や軍事医療、給食の充実などの課題はすべて先送りとなり兵士に一層過重な負担を強いる
歩兵の行軍装備限界重量 体重比35-40%に対して50%超え(30k)、「激しい撃ち合いの戦闘よりも行軍による体力・気力・戦意の消耗はとてもひどかった」

・大日本帝国の悲惨な敗北を準備したのは軍事史的に見れば日中全面戦争の長期化と戦略的見通しを欠いた無統制な軍拡だった、「最大の犠牲者は中国の農民だが、補給を無視し略奪なしには生きていけないような作戦を強行した軍幹部の責任は大きい」

一部に例外はあっても、内向きの軍内出世競争を勝ち抜いた軍事エリートには「演習的机上作戦」はあっても現実の戦場とそれを担う兵士たちの存在や銃後の国民のことは眼中になかった。特殊社会育ちの彼らの思考空間は現実とはあまりにも乖離していた。部下兵士はもとより国家や国民がどうなるかよりも自分の出世競争に現を抜かす。彼らから本質的な政策や戦略・戦術は出てこず、考えが体制や構造に及ぶ術もない。立場の権限を振るうのみで、その影響や役割の責任意識はなかった。国力が圧倒的で常識的な指導者が率いる国には勝てるわけがない。
兵士たちの悲哀と軍指導部に対する怒りが最高潮に達したところで一連の作品は終わる。

指導者やリーダーの在り方を深く考える。
それによる兵士たちの犠牲の夥しさを。

実際の歴史を知る価値を痛感させる作品であった。
新書大賞・第30回アジア太平洋特別大賞 も宜なるかなである。


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2025年10月06日

Posted by ブクログ

「続・日本軍兵士」とあわせて読みたい。
世界的な軍拡の時代にあって、「危機なんだからしょうがない」と予算を吊り上げ、国民に労苦を強いる。そんな悲劇を繰り返してはいけない。政治の罪から目をそらしてはいけない。

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2025年08月05日

Posted by ブクログ

尊厳をとことん踏みにじるものとして、戦争の悪を語り継がねばならないと思いを新たに。
人命を軽視し尽くした当時の精神性も、安全に飽き足りず安心まで求める現代も、ともに日本の姿。戦争を経たことが日本人にとっていかなる体験だったのか、もっと理解したい。

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2025年06月03日

Posted by ブクログ

軍国主義、帝国主義、植民地主義、権威主義、家父長制、マチズモ全て燃やせ
戦争の凄惨な事柄を並べるのは良いことだが、ただそれだけにおさまっている気がして作者の徹底的な戦争批判がほしかった。

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2025年05月25日

Posted by ブクログ

2019年新書大賞受賞作。
先の大戦を題材とした書籍は星の数ほどあるが、膨大な史料を分析して、兵士という目線で当時の日本軍の実相が描かれているのが本書の大きな特徴だ。新書らしくわかりやすくコンパクトにまとまっている。

一口に戦死といっても、餓死、海没死、発狂死、処置という名の傷病兵殺害、兵士による人肉食、肉攻、私的制裁、私闘など。
戦争ほど悲惨なものはない。改めて痛感。









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2022年02月05日

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