吉田裕のレビュー一覧
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アジア太平洋戦争で戦った日本軍兵士の悲惨な現実を描いた「日本軍兵士」の続編。日本陸海軍の実態にさらに分け入り、その「衣食住」と背景にある思想に迫る。結論から言うと日本陸海軍の考え方は、人間軽視、この一言に尽きる。衣服や靴の質が悪いためい多くの死者を生んだ。食については、米一辺倒で栄養が偏り、戦争末期にはそれさえ不足して飢餓による死者が膨大な数におよんだ。さらに機械化が遅れ、歩兵は体重の半分以上の装備を身に着けて長距離を行軍しなければならなかった。戦艦では居住性はほとんど考慮されず、士気は極めて低かった。これでは戦争などできるはずがない。この人間軽視の考え方は、戦後の水俣病などにもつながるのでは
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第二次世界大戦の日本軍の内実について詳しく書かれた本である。日本軍兵士の多くが餓死や病死であること、そして自殺が多かったことを初めて教えられた。また、傷病兵の多くを殺していたこと、神経症を患った兵士も射殺していたことなどむごい行為も知った。さらに、戦場では虫歯やマラリアなどの病気が蔓延し、その対応は無きに等しかった。これらの背景には、兵力が足りないことから兵士には不適格な者を召集した制度、武器弾薬衣服食料などの補給の途絶または生産力不足、蔓延する私的制裁、情報および通信の軽視など、およそ軍隊として成り立っていないと思われる実態があった。そんな情けない日本軍が無謀にも起こした戦争が、日本だけで3
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死者の6割と言う半分以上が戦闘ではなく『戦病死』だなんて、ほんと『現場では』悲惨な状況だったんでしょう。
言葉では表現できないだろうなと思います。まして、戦後産まれて「豊かな」社会生活を享受している私には語る資格なんてないでしょう。
ただ、程度は月とスッポンですが、『現場軽視』というのは今も昔も同じなんでしょうね。
国のために召集に応じ、命を落としてしまった方々、命懸けで戦地に赴いた英霊に感謝しかありません。
ほんと過酷すぎる状況で、ほんと『国を護る』戦い以前の問題で命を削って、ほんとなんと言えば良いのか、、、
なんでこんなにも『現場軽視』な文化なんだろうかと思う次第です。
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本書の内容は解説に集約されている。
近代において、これほど国民・軍人の命を軽視した国家があっただろうか。しかもこれは組織の問題ではなく、日本人の精神構造に起因するものなのか。
本書は旧日本軍兵士について書かれたものであるが、主語を自衛隊に置き換えても成立してしまうところに日本の本質があるように思えてならない。
先の大戦の反省を踏まえ、帝国陸海軍と決別したはずの自衛隊においても人間軽視の歪みがあるのではないか。
あくまで例文としてだが解説の一部を抜粋すると…
無理ある軍拡、「正面装備」以外の軽視、犠牲を強いる構造、生活・衣食住の無視。進まない機械化…精神論、住環境無視…。
自衛隊において -
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第二次世界大戦に於いて、230万人と多くの日本軍兵士が戦没。拙い装備や戦術、激戦以外にも伸びた兵站による飢えやマラリアで多くの兵士が戦病死した事は認識していたが、その割合が6割にも上っていた事は知らなかった。また、戦病死の割合は日清・日露戦争や第一次世界大戦の頃よりも激増していた。本書は明治以降の日本軍について戦術や兵器ではなく、食糧・衛生・医療・兵站・装備や募兵、犠牲の不平等、人間軽視などといったこれまで余り語られなかった面から日本軍を分析した一冊である。南方での日本軍同士の食糧の奪い合い、本土決戦のために集められた兵士が民家や畑を荒したり神社の鳥居を薪にしたり、こんな状況で戦争を継続出来る
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兵士に焦点を当てた戦争の現実。餓死病死が多かったとはよく聞くけれど、
・虫歯の蔓延
・水無視の蔓延
・餓死の推移
・飢えに伴う略奪の実際
・衣類装備品の実際(靴底が抜ける軍靴)
・私的制裁、その背景の考察
・水中爆傷(海中爆発の衝撃を受けることによる内臓の破裂)
・自殺、自傷
・精神疾患
・荷物の重さ(体重と同じ重さの荷物)
・少年兵への負荷
・生きているものへの罵倒
・軍隊の中にあって、暴力団的な組織の存在
など、ここまで詳細な調査は初めて読んだ。何百万人もこのような状況で亡くなっていったこと知り、あの戦争が国民一人一人に与えた死ととてつもない傷の大きさを思う。日本人はこの本から、あと100 -
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この本を読むまで、戦争に関するまともな知識・関心がなかった。
子供の頃、学校の社会見学で原爆ドームに行ったことがあるぐらい。
戦争の悲惨さは被災地のことに焦点を当てて考えていたけど、前線で戦っている兵士についてはあまり想像していなかった。
なんとなく兵士は勇敢に、儚く散っていったものというイメージがあったが、想像を絶する現実を突きつけられた感じだった。
兵士は、アクション(撃ち合いなど)の末に敗れるイメージだった。餓死や栄養失調の問題など、知らないことが多かった。
作戦、物資、機械、部内統制などでも、色んな面で問題を抱えていたんですね。
「続・日本軍兵士」も出ていますので、今度そちらも読もうと -
Posted by ブクログ
2019年新書大賞を受賞した前作の「日本軍兵士-アジア・太平洋戦争の現実」から待望の続編が出版された。アジア・太平洋戦争では、日本人310万人が死亡し、推計230万人の兵士と80万人の民間人が犠牲となった。230万人の軍人・軍属を喪った6割は戦闘による戦死ではなく、戦病死であった。著者が引用し、著者の恩師である藤原彰氏のバイブル的書籍「飢え死にした英霊たち」でも詳細な推計が行われている。大量死の背景には、第2次世界大戦における機械化部隊に対する日本軍の精神論重視、下級兵士に犠牲を強いる組織機構の問題、兵士の生活や衣食住を無視した兵站軽視、日清戦争や日露戦争で露呈した栄養失調による脚気の再燃。