吉田裕のレビュー一覧
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日本軍の敗因から自身を見直せる
第二次世界大戦の日本軍がなぜ負けたのかを様々な視点から記述している。
個人的に大きな敗因だと感じたのは以下の三点だ。
・米中の二正面戦争
・兵士達の士気のコントロール
・後手に回る対応
・米中の二正面戦争
そもそも日本は中国を軽視しており、中国への勝利を確信していた。この軽視が全ての失敗の始まりだと感じる。
・兵士達の士気のコントロール
また、士気に関しては、上官が兵士を駒としか考えていない事が大きな士気の低下を招いた事が感じられる。一人の人間として、特攻はしたくないし、病気にかかった友人が見捨てられていく現状、終わりの見えない戦いなど、かなり不安に苛まれる -
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終戦時における天皇・軍部・宮中等それぞれの思惑とその結果が、解禁された資料に基づき、客観的かつ多面的に分析されている。
日本側として終戦時に最優先されたのが「国体護持」。
アメリカ世論は、天皇制に対して厳しい見た方をしていたものの、アメリカ政府は以下の理由により天皇制の継続を指示した。
・日本の降伏がアメリカ側の予想より数ヶ月早まったために、十分な軍政要因が確保できなかったこと
・天皇の命令によって日本軍の武装解除が迅速に行われたのをみたアメリカ側が天皇の権威を再認識しこと
・アメリカ国内の世論に配慮して、占領コストの節約を意図したこと
アメリカ政府は「天皇制を支持しないが、利用する」政 -
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日中戦争から太平洋戦争における昭和天皇(と宮中Gr)の戦争責任を具体的に指摘(日中戦争への責任の無自覚・無関心?、昭和天皇が口実とする立憲君主の前提となる議会制度の機能不全や、御前会議以前の下問時の意見など)することで批判する一方、近衛文麿を高く評価している書物には初めて出会った。
著者が研究者としてどういった立ち位置にいるかは知らないが、昭和天皇の死後3年程度でこれほど天皇の戦争責任に突っ込んだ書物が発行されていたとは驚きである。現在、これよりかなりトーンダウンして戦争責任について書く書物にすら時代は変わったなと最近感じていただけに。 -
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やや民衆よりの立場からの太平洋戦争史。必然的に反戦・自虐史的色合いが濃い。簡単に言えば左寄り。
まあ、そういう本だね、ということで適宜脳内補正を掛けながら読めば、多様な文献にあたりながら、当時の人々の実感を浮き彫りにしようとしているなかなかの労作だと言って良いと思う。しかし天皇の戦争責任にここまで踏み込んで記述している本も珍しいかも。ちなみに南京事件に関する記述は一切無し。
ただ、終戦のあたりからの軍の暴走や、人々の生活の厳しさの記述が長くてちょっと諄かった感じはある。
いずれにしても、僕自身としてはこういった感じのジギャクシテキ歴史観の方が、正直しっくりくる。冷戦が日本の戦争責任をウヤ -
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[ 内容 ]
1873年の徴兵令制定以来、文明開化の推進力となり、全国に近代秩序を浸透させる役割を果たした日本の軍隊。
それが、十五年戦争期のような反近代的で精神主義的な軍隊になってしまったのは、なぜか。
日本の民衆にとって、軍隊経験とは、どんな意味があったのか。
豊富な史料をもとに「天皇の軍隊」の内実を解明する。
[ 目次 ]
序章 分析の視角
第1章 近代社会の形成と軍隊(時間・身体・言語;軍隊と「文明開化」 ほか)
第2章 軍隊の民衆的基盤(「人生儀礼」としての兵役;軍隊の持つ平等性 ほか)
第3章 総力戦の時代へ(軍部の成立;軍改革への着手 ほか)
第4章 十五年戦争と兵士(国軍から -
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[ 内容 ]
マレー半島上陸と真珠湾攻撃によって開始された「アジア・太平洋戦争」。
なぜ開戦を回避できず、長期化したのか。
兵士や銃後の人々、アジアの民衆は、総力戦をいかに生き、死んでいったのか。
矛盾を抱えて強行され、日本とアジアに深い傷跡を残した総力戦の諸相を描きながら、日米交渉から無条件降伏までの五年間をたどる。
[ 目次 ]
第1章 開戦への道(三国同盟から対米英開戦へ;戦争の性格;なぜ開戦を回避できなかったのか)
第2章 初期作戦の成功と東条内閣(日本軍の軍事的傷利;「東条独裁」の成立)
第3章 戦局の転換(連合軍による反攻の開始;兵力動員をめぐる諸矛盾;「大東亜共栄圏」の現実;国 -
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ネタバレ[ 内容 ]
戦争責任ははたして軍部だけにあったのか?
天皇と側近たちの「国体護持」のシナリオとは何であったか?
近年、社会的反響を呼んだ「昭和天皇独白録」を徹底的に検証し、また東京裁判・国際検察局の尋問調書など膨大な史料を調査・検討した著者は、水面下で錯綜しつつ展開された、終戦工作の全容を初めて浮き彫りにする。
[ 目次 ]
序 「天皇独白録」とは何か
1 太平洋戦争時の宮中グループ
2 近衛の戦後構想
3 宮中の対GHQ工作
4 「天皇独白録」の成立事情
5 天皇は何を語ったか
6 東京裁判尋問調書を読む
7 行動原理としての「国体護持」
結 再び戦争責任を考える
[ POP ]
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岩波新書のシリーズ日本近現代史の6冊目は、太平洋戦争研究の第一人者である吉田裕(現・一橋大学大学院社会学研究科教授)が担当。
さすがにこの分野を長年手がけてきた研究者の書くものなので、新書ながらコンパクトにまとまっているし、読みやすい。
読みながら思うのだが、やはりこの分野の研究の蓄積量は並大抵のものではない。非常にアカデミックな実証研究から、一般市民の手記に至るまで数多くの刊行物があり、硬軟取り混ぜて記述しているのも入門編としての親切心というところだろうか。
しかしながら、本書には大きな欠陥があると感じる。それはわざわざ「アジア・太平洋戦争」という左派イデオロギーを感じる -
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読みたい順に読み進めて、そろそろ後半に差しかかっている「シリーズ日本近現代史」。そうこうするうちに、「シリーズ日本古代史」の刊行も始まってしまったので、あんまりのんびり読んでもいられなくなってきた…。
今回は第二次近衛文麿内閣成立から、ポツダム宣言受諾までの太平洋戦争について論じた、「戦史」。最近話題になることの多い強制連行問題や、沖縄の集団自殺問題、都市空襲の是非などについても直近の研究成果を踏まえて記述されており、興味深い。
日本はなぜ戦争に負けたのか、という質問に対しては、次のデータが参考になるだろう。日中戦争以降の軍人・軍属の戦死者約230万人のうち、餓死(または栄養失調で抵抗力を -
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『日本軍兵士』アジア太平洋戦争の現実 吉田裕
『続・日本軍兵士』帝国陸海軍の現実 “
アジア・太平洋戦争の「兵士の戦争史」である。
「兵隊は悲しいなあ、軍上層部の作戦計画などまったく知らされなくただ翻弄されるだけの存在だった」
従来日清戦争や日露戦争では参謀本部や軍令部が統計資料を収録した大部の戦史を編纂していた。第一次世界大戦でも戦史を残している。しかし満州事変と日中戦争以降は敗戦前後の公文書焼却に加え戦史の編纂を途中で打ち切ったためそれすらない。ただしアジア・太平洋戦争については戦後防衛庁防衛研修所戦史室が編纂した『戦史叢書』全102巻がある。それは旧陸海軍幕僚将校グループの専有物