あらすじ
先の大戦で230万人の軍人・軍属を喪った日本。死者の6割は戦闘ではなく戦病死による。
この大量死の背景には、無理ある軍拡、「正面装備」以外の軽視、下位兵士に犠牲を強いる構造、兵士の生活・衣食住の無視があった。
進まない機械化、パン食をめぐる精神論、先進的と言われた海軍の住環境無視……日中戦争の拡大とともに限界が露呈していく。
本書は帝国陸海軍の歴史を追い、兵士たちの体験を通し日本軍の本質を描く。
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アジア太平洋戦争で戦った日本軍兵士の悲惨な現実を描いた「日本軍兵士」の続編。日本陸海軍の実態にさらに分け入り、その「衣食住」と背景にある思想に迫る。結論から言うと日本陸海軍の考え方は、人間軽視、この一言に尽きる。衣服や靴の質が悪いためい多くの死者を生んだ。食については、米一辺倒で栄養が偏り、戦争末期にはそれさえ不足して飢餓による死者が膨大な数におよんだ。さらに機械化が遅れ、歩兵は体重の半分以上の装備を身に着けて長距離を行軍しなければならなかった。戦艦では居住性はほとんど考慮されず、士気は極めて低かった。これでは戦争などできるはずがない。この人間軽視の考え方は、戦後の水俣病などにもつながるのではないか。日本人の思想に根本的な問いを投げかける貴重な研究である。
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知らなかったことばかりで大変勉強になった。
硫黄島が発見されるところから始まっているので硫黄島の歴史がよくわかる。
その歴史はサブタイトルどおりまさに「国策に翻弄された130年」だ。
旧島民や島民二世たちが硫黄島に戻れなくても、せめて未だ数多く眠る遺骨をすべて回収してあげてほしい。
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死者の6割と言う半分以上が戦闘ではなく『戦病死』だなんて、ほんと『現場では』悲惨な状況だったんでしょう。
言葉では表現できないだろうなと思います。まして、戦後産まれて「豊かな」社会生活を享受している私には語る資格なんてないでしょう。
ただ、程度は月とスッポンですが、『現場軽視』というのは今も昔も同じなんでしょうね。
国のために召集に応じ、命を落としてしまった方々、命懸けで戦地に赴いた英霊に感謝しかありません。
ほんと過酷すぎる状況で、ほんと『国を護る』戦い以前の問題で命を削って、ほんとなんと言えば良いのか、、、
なんでこんなにも『現場軽視』な文化なんだろうかと思う次第です。
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本書の内容は解説に集約されている。
近代において、これほど国民・軍人の命を軽視した国家があっただろうか。しかもこれは組織の問題ではなく、日本人の精神構造に起因するものなのか。
本書は旧日本軍兵士について書かれたものであるが、主語を自衛隊に置き換えても成立してしまうところに日本の本質があるように思えてならない。
先の大戦の反省を踏まえ、帝国陸海軍と決別したはずの自衛隊においても人間軽視の歪みがあるのではないか。
あくまで例文としてだが解説の一部を抜粋すると…
無理ある軍拡、「正面装備」以外の軽視、犠牲を強いる構造、生活・衣食住の無視。進まない機械化…精神論、住環境無視…。
自衛隊においても本質的にはほとんど変わっていない、この状況から導き出される結論は?
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第二次世界大戦に於いて、230万人と多くの日本軍兵士が戦没。拙い装備や戦術、激戦以外にも伸びた兵站による飢えやマラリアで多くの兵士が戦病死した事は認識していたが、その割合が6割にも上っていた事は知らなかった。また、戦病死の割合は日清・日露戦争や第一次世界大戦の頃よりも激増していた。本書は明治以降の日本軍について戦術や兵器ではなく、食糧・衛生・医療・兵站・装備や募兵、犠牲の不平等、人間軽視などといったこれまで余り語られなかった面から日本軍を分析した一冊である。南方での日本軍同士の食糧の奪い合い、本土決戦のために集められた兵士が民家や畑を荒したり神社の鳥居を薪にしたり、こんな状況で戦争を継続出来るわけがない。明治維新から急速に近代化し欧米列強と肩を並べたという文脈で語られがちだが、実態は無理に無理を重ね、国民に無理を強いた張りぼてだった事がよく分かった。華やかな局面だけ見るのではなく、このような悲劇や失敗を教訓にするのが大切だと感じた。また、コラム「戦争の呼称を考える」も大変示唆に富む。
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戦争の犠牲者と言っても戦病死が多いことを実証する。特に戦局の悪化による栄養失調などを具体的な数値により指摘。日本政府が明らかにしない戦争の実態に踏み込んだ一冊。
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読んでる途中だけど、ここに書いてあることを学校で学ぶ(現)近代史の中心にしたらどうかな、生徒は少し興味を持つかも
俺が学校で教えられた年号と出来事の羅列には全く興味がわかなかった
その後自分で興味を持った歴史は本を読んで多少学んだ
兵士は戦うだけでなく自分達と同じように、食べて、寝て、排出して、病気になって、という事実と、そこに全く目が向けられてこななかったという事実に唖然とする
無謀な戦いだったことをこれほど的確に表した本に出会ったのは初めて
続く(かも)
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2019年新書大賞を受賞した前作の「日本軍兵士-アジア・太平洋戦争の現実」から待望の続編が出版された。アジア・太平洋戦争では、日本人310万人が死亡し、推計230万人の兵士と80万人の民間人が犠牲となった。230万人の軍人・軍属を喪った6割は戦闘による戦死ではなく、戦病死であった。著者が引用し、著者の恩師である藤原彰氏のバイブル的書籍「飢え死にした英霊たち」でも詳細な推計が行われている。大量死の背景には、第2次世界大戦における機械化部隊に対する日本軍の精神論重視、下級兵士に犠牲を強いる組織機構の問題、兵士の生活や衣食住を無視した兵站軽視、日清戦争や日露戦争で露呈した栄養失調による脚気の再燃。アジア・太平洋地域に戦端を広げすぎたツケが、兵士を無謀な戦争へ追い込んだ軍上層部の無謀な作戦立案と撤退の遅れ。本書は帝国陸海軍の歴史を追い、兵士達の体験・エゴドキュメントを通して、日本軍の本質を描く。本書を読んで、戦争とはいかなる事態に陥るのかを多くの若い人たちに知ってほしい。(428字)
【雑感】
著者は、「おわりに」で続編発行までに長い月日が経ってしまったと回顧するが、7年の月日で著者が様々な書籍出版に関わり、一橋大学の退官記念書籍も発行し、故早乙女勝元氏の後を受けて東京大空襲・戦災資料センターの館長を歴任しながらの労作であることは間違いない。著者は、一橋大学において日本近代軍事史、日本近現代政治史の専門家として、ここ10年のNHKの夏の戦争特集では、毎年時代考証者として解説していることも付け加えておきたい。
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「帝国陸海軍は兵士には、必要以上の負担を強いる特性があった」
”はじめに”にある夏目漱石の『それから』の引用の通りで
「貧乏国は戦争なんかやってはいけない」
読めば読むほどにそう思いました。
もちろん金持ち国ならやってもいいわけでもありませんが。
本書の主題とは違いますが本書内のコラム
”戦争の呼称を考える”によって
「太平洋戦争」という呼称すら十分な市民権を得ていない、
という指摘に驚きの五〇代です・・・。
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国内の工業生産力、農業生産が低下する中で、前線に武器も補給も不十分な兵士数ばかり積み上げても、戦争に勝つことはできない。
戦死者よりも戦病死者が積みあがることは、戦争指導者の責任です。食料も燃料も現地調達では、戦う前から負けが見込まれる。下位兵士に犠牲を強いる構造は、日本社会の縮図である。
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前作と同様、兵士視点で太平洋戦争を分析した本書。前作と重複する部分も多いものの、当時の兵士たちがどのような環境にどのような生活を強いられていたのかをより深掘りし、やっぱり負けるのは分かりきっていたという事実をまざまざと突きつけられる。
毎日食べるものにも困り、加えて慢性的な睡眠不足に、回復することのない肉体的・精神的疲労。兵士を大事にする意味を理解していたアメリカ軍との差がひどすぎて、本当に悲しいレベル。当時命を落としていった何百万人もの人々の無念はいかばかりかと思わずにはいられない。事実を知れば知るほど、なぜ早く降伏しなかったのかと思うが、人命を軽視する組織がそんな判断下せるわけないよな…
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かえすがえすも、なんと大勢の人が無駄に死んでいったことか。なぜあんな戦争をしてしまったのか。日本人の心まだ傷ついている。
戦史研究が近年盛んになってきているとのコメントは希望。
何事につけても科学的に正しくあれ、というのは、今も活かせる大きな学びだろう。
Posted by ブクログ
『日本軍兵士』の方が衝撃は強かったが、今作もげっそりする内容。
前作出版時とは違って、今は実際の戦争を目の当たりにしているため、戦争やそこで戦う生身の兵士に想いを致さざるを得ない。
Posted by ブクログ
続けて『続・日本軍兵士』を読む
前作と重複する箇所がかなり多く、辟易する
だがしかし、前作から8年を経ており、復習しながらさらに深掘りする内容で、しかも冒頭で断りを入れている
完全に続けて読む方が悪い
ごめんねごめんねー
で、である
掘れば掘るほどダメダメである
帝国陸海軍、ダメダメである
全くなってない
そりゃ負ける
必然
もう全てに於いて人間軽視が貫かれいる
兵士は消耗品
だから戦術は突撃一辺倒
食料は自分たちでなんとかしろ
装備も貧弱、病気はほったらかし
全く居住環境に配慮しない艦船
アメリカ軍は最も貴重なのは「人」という考え
よく分かった
そして今大切なことは、最も貴重な「人」はこっち側にもあっち側にもいるということではないのかね
Posted by ブクログ
「戦場の真実を直視する:『続・日本軍兵士 帝国陸海軍の現実』を読む」
吉田裕氏の『続・日本軍兵士 帝国陸海軍の現実』は、前作『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』に続き、アジア・太平洋戦争における日本軍兵士の実情を克明に描き出した衝撃的な一冊です。
組織としての帝国陸海軍:構造的な問題点
前作が兵士個々の視点から戦争の実態に迫ったのに対し、本書では帝国陸海軍という組織に焦点を当て、その構造的な問題点を浮き彫りにしています。
兵站と衛生:戦場の悲惨な現実
特に深く印象に残ったのは、兵站と衛生に関する記述です。戦地における物資の欠乏、劣悪な衛生環境、そしてそれらが兵士たちに与えた絶望的なまでの影響。著者は豊富な資料と証言をもとに、日本軍の組織的な欠陥を冷静に分析し、それが兵士たちの命をいかに軽んじたかを痛烈に批判しています。
「戦場の花と散る」という美辞麗句とは裏腹に、実際には多くの兵士が飢えや病に苦しみ、誰にも看取られることなく命を落としていったという事実。その悲惨な現実に、私はただただ言葉を失いました。
日米の組織文化の差異:命の重さ
本書を読むと、アジア・太平洋戦争における日本とアメリカの戦い方が、いかに異質であったかがよく分かります。アメリカ軍が兵士の命を最大限に尊重し、潤沢な物資と医療体制を整えていたのに対し、日本軍は兵士の精神力に依存し、補給や衛生を軽視する傾向がありました。
この違いは、両軍の組織文化や価値観の根本的な違いに起因するものと考えられます。アメリカ軍は兵士を「人的資源」として捉え、その能力を最大限に活用しようとしたのに対し、日本軍は兵士を「消耗品」として扱い、精神力さえあれば物資の欠乏や劣悪な環境も克服できると考えていたのではないでしょうか。
もちろん、アメリカ軍にも問題点はありました。しかし、日本軍の組織的な問題点は、それを遥かに凌駕するものであったと言わざるを得ません。
現代に通じる教訓:組織とリーダーシップ
本書は、単に過去の戦争を批判するだけでなく、現代の組織にも通じる教訓を与えてくれます。組織の目的と手段、リーダーシップのあり方、そして何よりも「人」を大切にするということ。これらの普遍的なテーマについて、改めて考えさせられました。
戦史に興味がある方はもちろん、組織論に関心がある方にも、ぜひ本書を手に取っていただきたいと思います。今までとは異なる視点からアジア・太平洋戦争を捉え、そして現代社会にも通じる深い洞察を得ることができるでしょう。
Posted by ブクログ
前作に続く続編ではあるが、前作を読んでいなくても内容に関しては全く理解できるので問題ない。寧ろ、筆者が述べるように過去の戦争を原因や勝敗の分析をする書籍が大半を占める中、本書のように定量的な事実や環境、兵士の実態などの側面から捉える内容の物は少なく、戦史の一つとして理解を深めるのに大変役立つ。
近代の戦争、それは要は総力戦である。兵士の数や兵器の良し悪しなどは分かり易い指標ではあるが、実際にはそれを成立させるための国力が全てであり、過剰な兵員数、バランスの取れていない軍隊が戦争に勝利するのは難しい。日本は明治維新以来の重工業化を経て、近代的兵器や艦船を作ってきた。だがその供給力に於いてはアメリカやイギリスには未だ未だ及ばない。自動車の生産力や生産量を見てもアメリカのそれには全く及ばないし、エンジンも他の部品もアメリカの模倣品、それもかなりの粗悪品のレベルだ。工業力だけではない。兵員数は太平洋戦争の経過年数と共に増加し続け、食糧生産に支障をきたす程に伸び続ける。全体のバランスの観点で見れば、国家全体、特に地方における食糧生産は女性や若年層に頼らざるを得ず、結果的には国民の消費カロリー低下に繋がっていく。ましてや戦地に供給するには、太平洋を股にかけ闘う兵士達には海を越えて届ける輸送力も必要だ。それらのバランスが崩壊した時、十分な食事と娯楽すらも戦地で得られる米軍兵士に勝てる訳が無い。本書はそうした食事事情や兵站、兵士たちの使用する軍靴など、あらゆる視点で数値化を試み、戦闘力以前の問題点として捉えていく。
現代社会では身体や知能に障害を持つ人であっても、活躍の場は多く、正に多様性の掛け声の中で、あらゆる人々が働ける時代になった。未だそうした社会的な環境が充分に揃わない戦時中に於いては、そうした人々にまで召集が及び、十分な戦闘が出来ないまま戦地に送られ命を落とす。一方では病歴詐称などにより召集逃れをするもの、金品を渡して軍医から「兵士として不適切」の免罪符を得るものもおり、結局は金持ちは死に辛く、そうで無いものとの間に「命の格差」が生まれていく。当時も今も経済的な格差が生存率に影響していた実態が多くあった様である。更には戦地で十分な医療を行うことが出来ない日本と、充分過ぎる医療機材、薬品が揃う米国とでは兵士の損耗率を見ても、叶う訳が無い。そうした時に日本が得意とする精神論で押し通すのも、やはり限界はある。
あらゆる面で及ばない日本が、順当に戦争に敗北していくのを、本書は数値的に理解していくことができる。そこから学び取れるのは、やはり「バランス」に尽きるのでは無いか。この考え方自体は「国家総力戦」として従来から叫ばれてきたものではあるが、そこは「神国日本」の何か強力な加護に軍上層部さえも支配されていたのでは無いだろうか。人間軽視、機械化不十分、バランス崩壊、それら負の皺寄せは全て戦場に生きる兵士達に押し寄せていく。最前線の兵士は勇敢に戦いながらも、アメリカ兵だけではなく、蚊や餓えとも戦わざるを得ず、やがては敗北につながる虚しさも理解しつつ戦い続けたのでは無いだろうか。その様な兵士達の心の内を想うと涙が溢れてくる。
二度と戦争は起こしてはならず、今、正に世界で起きている戦争は直ぐに終わらせるべきである。どの様な理由があり、終わらない終わらせられない理由・状況があるにせよ、1番悲惨な最前線の兵士を思わなければならない。一刻も早く世界から戦争・紛争を無くすために、今は平和にある日本であっても一人一人真剣に考えるべきでは無いか。きっかけを与えてくれる一冊だ。
Posted by ブクログ
世界的な軍拡の時代にあって、ぜひとも読まなければならない本だ。
予算を増やしさえすれば国防ができるわけじゃない。軍備が充実するわけじゃない。
頭脳がしっかりしていないのに体だけでかくするとどうなるか。悲劇しかない。
悲劇の再来を防ぐために、過去の無様な事実に目を向け、教訓にしておきたい。
不都合な真実にふたをしてはいけない。