ニール スティーヴンスンのレビュー一覧
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分裂と統合の物語。
相変わらず冗長ともとれてしまう細々としたコロニーやらメカやら古典・現代物理学の説明セリフも多く、ひぃふぅ言いながら読み進める。
頁を進める毎に細々とした説明が加速度的に、まさに”指数関数的に”増してゆくようで、あれこの人今何してたんだっけ、っていうかこの人誰だっけ・・となってしまうのはワタシの読書能力と物理学その他について教養がないせいもあるだろうけども・・
この描写は緻密を超えて、ちょっとオタクっぽ過ぎるかもしれない・・
下巻にはいってようやく題名『7人のイヴ』の正体が明らかになる。
解説でも指摘されている通り、邦題としての『7人のイヴ』はネタバレを含んでしまっているのかもしれない。
人種差別、マイノリティ差別という、全世界的な問題が生じる。
この問題はもちろん日本も例外ではないが、特に激しく噴出しやすい米国の作家であるからなおのこと、なのだろう。
どんな少人数であってもひとは集団を作って社会化する。
猜疑心、優劣、善良さ。
人類は集団の中でしか生きられないが、しかし、その集団は暴力的で排他的な一面も濃いのが悲しい事実でもある。
上巻からひぃふぅ読み続け、この作者が描くテーマは人種とか国境というものだったのではないか、と気がつく。
物語の最終章である第四部。
この第四部こそ、この長い物語の本編といってもいいのかもしれない。
第三部から第四部への唐突ともとれる移行は『2001年宇宙の旅』(映画)でサルによって投げられた骨がゆっくり回転し、宇宙ステーションに切り替わる、あのシーンを彷彿とさせる気もする。
COVID-19という時局、文脈に生きていると、人種の多様性、或いは生態系には多様性が必要であって、それらは乗り越えるものでもなく、共生という暴力的なものでもなく、理解しあう共感という文脈が種族存続のキーワードになるのではないか。
この物語のラストシーンを読むと、そんなことを考える。
ふぅ。
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Posted by ブクログ
ディストピアはなぜか心地よい。
月の分裂にはじまるパニック、分断、希望の象徴としての箱舟宇宙ステーション建造とここまでは地球・人類滅亡の物語だ。
中盤、いよいよ地上最後の日の描写がとても心地よい。
心地よい分、もう少し長く楽しみたかった気もする。
いかんせん最後の日の描写が短いのだ。
もちろん、この物語の視点は箱舟が中心になるから、地上の最後は通過点に過ぎないのだが。
後半以降はいよいよ箱舟だけの人類史がはじまる。
しかし、ここでも権力、対立、分断という人類を人類たらしめている醜く愚かな一面がのぞいてくる。
滅亡を控えた地上がディストピアであったように、地上滅亡後の箱舟も等しくディストピアなのか。
ここで上巻が終わる。
この物語はどちらかというとハードSFでもあるから、難解さや説明過剰な点、いわゆるオタクっぽさもあって宇宙船の姿や動きを思い描くのが難しい。
その一方で時折挟まれるユーモアは、ディストピアSFにふさわしい皮肉やブラックユーモアに溢れている。
P.113『驚異的な身体持久力をそなえ、生死に関わる危険を完全に無視できて、宇宙服を着た状態で生き残るすべを身につけていなくてはならない。その結果、すべてがロシア人ということになった。」
そんなことあるかい。
ロシア人をなんだと思っているんだ。 -
Posted by ブクログ
本書は四分冊の最後の本だ。第二次世界大戦で日本軍が隠した金塊などを現代で掘り起こす物語。埋蔵金の場所は暗号化されているので、それを解読する過程にドキドキする。ラストに向かって大きな冒険があるにはあるが、冒険小説ほどではなく、暗号の解読も思っていたよりあっさりと成し遂げられてしまったので、意外な展開と言えばそうなのだが、盛り上がりにかけてしまった印象を持ってしまうのが残念なところだ。これは、自分の期待が暗号寄りだったためであり、小説としては良質のエンターテイメントになっていると思う。本書で意外にも良かったのが解説である。本書意外にも暗号について分かりやすい解説が巻末にあり、暗号に馴染みがない人が読んでも面白いと感じるだろう。
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Posted by ブクログ
多少中弛みのようなものを感じたが、それ以上に多くの謎を提示され、続きが気になる展開だった。日本兵の後藤がジャングルをさまようシーンがあるが、日本人作家が書いたかのように日本兵の立場を描写している。翻訳者が補ったところもあるのだろうけど、日本兵の苦しみを日本人の立場で考えられる。物語全体は「チューリング」の巻と同じく、第二次世界大戦と現代が並行して流れる。より密接に二つの時代が絡むのかと思ったが、この巻ではそこまでいかない。次巻でのお楽しみのようだ。特筆すべきは巻末の解説。暗号化技術について簡潔かつ分かりやすく、歴史まで解説している。暗号化技術って何? と思っている人は、この解説を読むだけでも役に立つ。インターネット(携帯電話の通信を含めて)と切り離した生活ができない現代において、暗号は陰日向に我々の生活の必需品であることを認識できるだろう。
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Posted by ブクログ
映画「イミテーション・ゲーム」を見て、チューリングが登場する小説ということで読んでみた。表紙の絵が古くさく、こんなの面白いのかなと不安であったが、読んでいて止まらなくなった。コンピュータが好きな私なので、暗号や数学、コンピュータそのものが出てくるだけで楽しめるのだ。物語は、現代と第二次世界大戦が並行して進む。第二次世界大戦のパートでは、もちろんチューリング博士が登場する。第二次世界大戦時代に登場する人物の子供や孫が現代パートで登場する。過去と現代が微妙なリンクをしつつ、どちらも通信の暗号や解読に関わっており、冒険小説のようでハラハラドキドキする。さて、本作は4作品で1つの大長編だ。第2作の「クリプトノミコン〈2〉エニグマ」までは入手済みだが、残りの2作品も必ずゲットしなければ。第1作でこれから回収されるであろう伏線がたっぷりとちりばめられているように思えた。題材が暗号なだけに最後にはどのように謎が解かれているのか楽しめである。