戌井昭人のレビュー一覧

  • すっぽん心中

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    ネタバレ

    3つの短編。

    事故で仕事を休んでいる時に出会った若い女のモモ。
    すっぽんを売って一儲けしようと、霞ヶ浦まで行って捕獲する過程で殺してしまったすっぽんの末路。

    実家の近所で起きた殺人事件に異様に反応し、妻と子供と車で実家に向かうまでの奇行と、翌日朝食を食べながらテレビで見た呆気に取られた犯人逮捕の報道。

    鳩がなによりも嫌いだったというのに、仕事が軌道に乗るまでビルの屋上に住まわせてもらうことになり
    よりによって鳩によって狂人扱いされる寸前での商売初め。

    すっぽん!

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    2022年04月30日
  • さのよいよい

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    大きな秘密を抱える認知症の祖母を軸にストーリーは、ゆるゆる進む。何でもない日常の風景に抗いがたく引き込まれる。鮮明な過去がある一方で、スッポリと抜け落ちている過去があり、さらには忘れたくて燃やした過去もある。それらがこんがらがって渦を巻く。周囲の者は頭を混乱させないように話題を変えたりしながら静かに向き合う。当の本人はどこ吹く風。曰く「厭なことは火にくべて燃やせばいい。そうしたら、すべて灰になって消えてしまう。」と恬然としている。凄惨な事件も軽やかに昇華してしまう。緩やかな流れが気持ちを温かく癒してくれる。

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    2021年03月27日
  • 壺の中にはなにもない

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    主役が嫌い
    ぼんやり生きてんじゃねーよ
    とイライラしたけど
    ほんとは羨ましかったりしてー
    うまく転がってく人生、いいなー

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    2021年02月10日
  • さのよいよい

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    結婚も仕事も思うようにいかない主人公とまだらぼけの祖母とその家族。そして昔あったお不動さんの放火殺人事件。事件を紐解くうちに祖母の過去の苦労を知り自身のふがいなさが見えてくる。嫌なことは燃やせばいい。そうかもしれない。

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    2021年01月28日
  • すっぽん心中

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    表題を含む3作の短編。
    タイトルからして面白い。いずれも、ありがちな日常の中に潜む人間の狂気や勝手な勘違いみたいなものを描いているが、暗さはなく、むしろあっけらかんとした印象になる。早い人なら1時間で読み終えれるくらいの手軽さ。

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    2018年06月27日
  • どろにやいと

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    興味深い本だったというのが第一印象。
    未来を切り開くのは自分自信であり、困難を切り抜けなければ勝ち取りたい未来はないのだ。
    逆に困難がない未来はなくても同じであり、それは本当に望んでいたものではないし、どんな感動もあり得ない。

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    2018年06月20日
  • ひっ

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    作曲家のひっさん。甥っ子の主人公との投げっぱなしにみせながら、優しい気持ちが感じられる本。特に甥っ子のことを考えてるわけではないけど、ギターを70万で売ったことに怒りながらも、旅に使ったことは良しとしてる。いいおじさんやな。

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    2017年11月17日
  • ゼンマイ

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    陰茎の穴から噴き出してきたオレンジ色とか黄色の金平糖のような星が百個くらい床やベッドに飛び散るのを眺めながら宇宙を夢想する。陰茎の先に広がる宇宙はたちどころに白濁したものに変わってしまうが、飛び出した瞬間は確かに宇宙。短くせつない恋を主軸に夢と現実の狭間の曖昧な空間をファンタジックに描く。「世の中なんて不思議な出来事が簡単に起きるくらい、くだらない。」すべてがここに収斂していく。成果とか効率に追われる毎日の中でほっこり心に安らかさを与えてもらえた。

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    2017年09月09日
  • ゼンマイ

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    ハチャハチャな人生を送ってきた老人が、その人生に強烈な印象を残した女性を、テキトーにやってきたライターと共にモロッコに捜しに行く。
    アレヨアレヨと読み進めて行くと、それなりの探索劇は終わり、物語もおしまい。
    読み飽きないけど、何も残らない。

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    2017年09月07日
  • 俳優・亀岡拓次

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    大好きな安田顕さん主演映画の原作ということで手に取りました。
    主人公である亀岡拓次が、ものすごく顕さんっぽい。
    いちいち表情や仕草が思い浮かんで、ニヤニヤしっぱなしでした。
    何か大きな事件が起きるわけではなく、まるで亀岡拓次の日記のよう。
    でも、その淡々とした雰囲気が心地よくて、もっと色々読みたい気持ちにもなった。
    なんてったって、亀岡がいい。
    何度もお酒で失敗してしまうような、ちょっとだらしない亀岡…若くてカッコいい男の子も良いけど、こーいう少し情けない男の人にもキュンとくる年齢になったんだな、私(笑)

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    2017年06月06日
  • どろにやいと

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    ロードムービーのような、のんびりした感じでいくのかと思いきや、
    途中からなんだか変な方向に...。
    どこに辿り着くのか気になり、気づかぬうちに引き込まれる。
    主人公の辿ってきた人生が少しずつ垣間見えて、
    それとは似ても似つかぬお灸売りをするという設定がおもしろい。

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    2017年01月24日
  • 酔狂市街戦

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    ネタバレ

    『青鬼』
     格差社会の下層にいる男。ある日からまぶたの裏に青鬼がうつって消えない。現実から逃げ出すと、自分が鬼になっていた。

    『カナリア』
     大学時代に芝居をはじめてから、ほとんど生活を変えることなく飲んでばかりいたら五十歳になっていた男。カナリアを飼うことに決め、購入に付き添ってくれたモンちゃんがその帰りに事故に遭う。

    『酔狂市街戦』
     飲みすぎてちゃんと演奏の出来ないバンドのメンバーである3人の男たち。ツアーで訪れた京都の市街地で、いきなり市街戦を始める(幻想)。

    『川っぺりらっぱ』
     サックス奏者の男。やっぱり酒好きで、前歯が一本ない(前歯がなかったらサックスは吹けないと思う)。サ

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    2016年11月19日
  • 酔狂市街戦

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    ダメ男がダメ男なだけに血まみれになる短編集。ダメすぎて哀愁にまみれている。でも、ほんのちょっぴりだけ羨ましさを感じてしまうのよね。ダメに生きるって。。最後の「川っぺりらっぱ」が一番すきでした。

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    2016年10月14日
  • 酔狂市街戦

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    下手くそな演奏しかできないのにダラダラと音楽を続ける。続けていれば何かいいことがあるといった漠然としたフワフワしたものだけがよりどころ。目的をもって生きるという執念はない。我武者羅だけど少なくとも前には転がっていた、そんな時期もあったのに、中年になった今は転がることもできず、ただ沈滞するのみ。何も起こさず何も起きない生き方。童貞に逆戻りしていくような生き方。悲しいペーソス漂う中にも、どこか憎めない生き方が、読む者の心をどこかホッとさせる。読後は清々しい居心地の良さが広がった。

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    2016年09月17日
  • のろい男 俳優・亀岡拓次

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    今作でも、主人公は犯罪者に扮したり、台詞もなくただ無惨に殺されたり…、特異な役を嬉々としてこなす。そう、現場での亀岡拓次はすこぶる男前。業界の評価はうなぎのぼり。カルトなファンは多く、その中には外国人監督もいたり。

    読み飽きさせないプロットとドライブ感。仕組まれた構成。なのに前作の方がはるかにオモロい。原因は明確。とにかくはっちゃけすぎ。前作に垣間見れた主人公の哀愁さ・小心さ・下心さはすっかり影を潜め、大胆で能動的過ぎる。躁気質なキャラになってしまっている。人物造形の振り幅の大きさに首をかしげてしまう。著者は続編を想定していなかったんだろうな。ゆえに過剰なケレンさを生んでしまった。今作から読

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    2016年09月13日
  • 酔狂市街戦

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    ネタバレ

    4編の短編集。「芥川賞5回落選作家!による、血まみれダメ男ブルース」と帯にあるとおり、たしかに主人公は血まみれのダメ男たちばかり。「川っぺりらっぱ」はいい感じで終わりそうだったんだけどな。やはり最後は血まみれ。

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    2016年08月26日
  • 俳優・亀岡拓次

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    20160721

    夢とうつつが地続きだ、という書評の通り、亀岡の日常と役者としての仕事が面白いように関わっている。

    役者なんて憧れて目指すものではないのかも。

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    2016年07月21日
  • のろい男 俳優・亀岡拓次

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    長年、独り身で、自分勝手にやってきた俳優亀岡拓次。貫禄もなければ生活感もない。普段ギャンブルをやっているわけはやらないが、昼間の競輪場へ行き、わけのわからないおっさん達の仲に入り「ああ自分もこんな感じでいいんだ」と安心感を得るのを小さな楽しみとする。背中には哀愁漂う間抜けさがある。生ぬるいビールを飲まされ、興奮もときめきもないお婆さんの胸を揉まされ1万3000円をぼったくられる。それでも名女優の乳房を思い出させてくれたからと寛厚温藉をみせる。浮かれた世相の裏側にある社会の暗部を浮き彫りにする。いかがわしさと猥雑が寧ろ救ってくれる。

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    2016年02月06日
  • 俳優・亀岡拓次

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    映画だとイマイチ伝わらなかったんですが、亀岡が好きな作品「骨抜きレモ」は原作で読むと面白い作品だったんだな、と思いました。

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    2016年02月01日
  • どろにやいと

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    嘘をつき騙し女淫に耽ってきた。己を顧み省察することもない誤魔化しだけの人生。父の死を機に一念発起、行商の旅に出る。家々を回りながら父が残した顧客と向き合い対話の中で相手を鏡とし自らを映し見出す。罪滅ぼしの行脚を続けるもどこか偽善的で「泥にやいと」。寂しい空虚が胸に響く。あくなき生への執着の果てに見る青空はどんな風に映ったのか。

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    2014年09月28日