戌井昭人のレビュー一覧

  • 身体を記す

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    女性の書き手が綴る身体や性にまつわるエッセイ「私の身体を生きる」の、男性版。
    女であり女であることに違和感なく生きてきた私にとっては、女性の書いたものの方が当然共感するところは多かったけれど、男性たちの綴る文章もとても興味深かった。
    男女問わず、どんな属性の人だってそれぞれ尊重されるべきではあるけれど、同質である必要は全くないなと改めて思う。

    女性と比べて、身体やジェンダー、性のことを直接的に書いている人がかなり少ない印象を受けた。
    と同時に、男性が男性性を語ることの難しさとはこういうことかと納得させられる。社会において強い側とされる側が何をどう語るのか、語って良いのか、難しいのかもしれないけれど、もう少し踏み込んだ内容が読みたかったな、というのが正直な感想。
    身体より社会、に意識が向いているように感じた。

    その中でも田中慎弥さんの偏屈さが滲む文章がとても好きだった。好きだったとかも言われたくないのかなとか思っちゃう。なんだかいじらしい愛しさがある。

    最後の最後で朝井リョウが‘やっている’。
    両手を掴んでいたはずなのに、その手を掴んだまま大きく振り回されて、遠心力で吹っ飛ばされたような気持ちで本を閉じた。

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    2026年10月02日
  • 身体を記す

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    他の話は割と身体と(男)性について大切なことを訴えたり、考えを変えなきゃいけないことを真面目に説いていて、正論すぎてやや辟易だったりしたが、尾崎世界観が、自分の心の傷とそれの間違った解消法をプリペイドカードで例えたのが秀逸だったのと、春日太一の身体の見た目からくる運動に対するイメージのギャップと、自分の体なのに思いどおりに動かせていなかったことの気づきに共感した。

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    2026年09月30日
  • 身体を記す

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    「身体を記す」とのテーマでエッセイを読み、テーマとの距離感が掴めない作家がいたり、上から目線で今ひとつ面白くない作家がいたり、なかなか同じテーマで作家それぞれのアプローチが面白い。

    「身体は大きかった」は、幼稚園児で便を垂れた、ペニスなど奔放で話が自虐的で面白い。
    「報酬系との戯れ」は、達成感や快感を刺激するスイッチを押し続けたラットの話はなかなか興味深い。
    「じ論」に至ってはナポレオンと痔、軍隊生活と痔など、痔を語る潔さが面白い。
    ロマンティック恐怖症
    「もしかして体育と運動」の逆上がりのグダグダ感も面白く読んだ。

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    2026年09月29日
  • すっぽん心中

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    「すっぽん心中」(戌井昭人 著)を読んだ。あまり知らない人だけれど、これはしばらく前の芥川賞候補作だっけ?短編が三つ入っていて、最初の一編が表題になっている。

    ごく普通の男がDQNの娘と行き当たりばったりの道中になり、千葉の田舎の沼地で採れたすっぽんを料理屋に売り込みに行くという戯けたストーリーで始まる。馬鹿げてはいるものの、まるで著者の体験談のように自然な話だ。次の『植木鉢』、『鳩居野郎』も同様だ。DQNばかりが出てきて、すったもんだして話は落ちるべきところに落ちる。
    特に感動も何もしないが、暇つぶしにちょうど良い短編集。たまにこういうのを読みたくなるものだ。

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    2026年09月06日
  • 戌井昭人 芥川賞落選小説集

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    ネタバレ

    自らを卑下するかのようなタイトルが印象的な作品集。

    形容しがたい不思議な感じの書きぶり。主人公は大抵、ゆるゆる・ふらふら・へらへら。そんな主人公が何だか不思議な体験をしてしまう、という短篇5篇。どれも面白かったです。

    筆者による「それでも賞欲しい」といういじらしいあとがき、なるほどとうなずく町田康氏による解説も良かった。

    何よりこちら、5篇はどれも単独で販売されていたもの。言わば5冊が1冊で読める・しかも結構面白いし、これはお得だなと感じました。

    ・・・
    短篇のタイトルはそれぞれ、「まずいスープ」「ぴんぞろ」「ひっ」「すっぽん心中」「どろにやいと」、とどれも個性的。

    内容には触れませんが、大体主人公は20代、仕事は(色々理由があって)していない・ないしはフリーランス的な。ある意味自由な時間を持てていて、平日の昼間にも出歩けるような人。犬も歩けば棒に当たるではないけど、そんな人が外にでると、案の定、不思議な話に遭遇する、そんな感じの話たちです。そしてちゃっかり・しっかり女性にも手を出す。でも汚らしくはないかな。

    町田氏も解説で指摘されていたように、作り込んだ虚構感はあまりなく、「自然な」駄目さ加減の男の日常(=小説になるくらい非日常的)、みたいな感じでしょうか。

    飾りや衒いのない書きぶりは、金城一紀氏の作品に似ていると感じたり、あるいは駄目男の一人称の視点というと長嶋有氏のテイストにも通底するものがあるなあと感じました。

    殺人モノ・刑事モノのような娯楽に特化したわけでもなく、かといって文学文学したお高くとまる感じもない。普段使いだけどちょっとちがう、無印良品みたいな印象を受けました。比喩が過ぎる!?

    ・・・
    ということで初めて戌井氏の作品を読みました。

    ひょうひょうとしており、味わい深い作品でした。落選し続けつつも頑張る?筆者に自らを重ね合わせるわけではないのですが、underdogな私ですので、こういう筆者は応援したいですね。

    また機会を見て渉猟したいと思います。

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    2026年05月09日
  • おにたろかっぱ

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    ミュージシャンの父ちゃんと
    タロさんさいのお話

    ほぼ何にも起こらない

    2人が後半
    「どさまわり」に出かけるが
    事件や事故は起こらない

    途中で母ちゃんが体調不良になって
    うっすら暗雲…?と思ったが
    別に何もなかった

    ライブで父ちゃんが無茶して怪我するも
    特になにもなかった

    平和でほんわか
    こんな社会情勢だからなおさら
    タロくんはずっとこんな世界で成長してほしい

    個人的に尾道が大好きなので
    特に後半のロードムービー的な部分に
    旅情がかき立てられた

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    2026年03月11日
  • 戌井昭人 芥川賞落選小説集

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    タイトルそのまま、もう芥川賞は取れずじまい?
    次は直木賞で!

    読んでみると、初期の作品2つがお気に入り。
    まずいスープ
    ぴんぞろ
    確かに作品としては、プロが見れば上手くなっているんだろうけど、上記2つはシンプルで素直に読める。

    それぞれの落選後のあとがきも楽しめて、そして町田さんの解説が凄い(小難しいのだがなぜか説得力があり、彼らしくまさに芥川賞受賞者なる人である)

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    2026年01月17日
  • おにたろかっぱ

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    ずーっと平和なままで終わった。何か起きてほしいと望んでしまったが、タロのためを思えば何も起きない方が良いね。後半は、タロとお父さんと一緒に旅をしているような気分になれた。

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    2026年01月15日
  • おにたろかっぱ

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    年をとってからの子ども(48歳のとき3歳)と散歩したり、地方へ演奏のどさ回りをしたりする父子の小説。散歩の光景は保坂和志の『季節の記憶』と重なったりするが、基本的にはくだらないけど、下品ということもないほどの微笑ましさ。
    途中で紹介される古代ギリシャの遠近法の時間論「彼らは未来を自分たちの背後からやってくるものと見なし、過去を眼前から後退するものであると見なした」(119-120頁)が示唆するような、父親はその人生分までの未来しか見えないのが切ない。

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    2025年12月06日
  • おにたろかっぱ

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    ほのぼの、子育て中の人には刺さるかも。
    のんびりゆったりしたときに、少しずつ読むのがいいね。

    後半はロードノベルなので、街のそれぞれ下町っぽいところを巡れる楽しさもある。

    著者がラジオで話していたように、自分の近影を重ねているようだ。
    ちょっと丸くなった分、1ファンとしては内容的には少し物足りなかったかな。

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    2025年12月04日
  • すっぽん心中

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    3つの短編、どれも狂った人というか変人というか、私としては理解しづらいような人が出てきた。
    だけど真ん中の「植木鉢」なんて、そこまで大それたことじゃないけど私も似たような感情は常に持っているわけで、行動に移してしまったらこうなるのか…って考えるとぞっとした。

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    2025年05月18日
  • 戌井昭人 芥川賞落選小説集

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    好きな作家なので作品のほとんどは既に読んでいたのですが、読み直したくてコチラも購入しました。
    五作とも話の筋というものがほぼなくて、どこに転がっていくのか分からない感じと、デタラメなんだけどそれが妙に人間味があってリアルな展開がとても面白かった。登場するのはいい加減な人間ばかりなんだけれど、なぜか憎めなくて「どうしようもないなー」とほくそ笑んでしまいます。まさに人間の業。

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    2025年02月16日
  • さのよいよい

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    主人公を祖母にした方が面白かったんじゃないのか。
    題材は面白いのに、冴えない作家を主人公にしたためにちぐはぐな印象。

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    2025年02月14日
  • 厄介な男たち

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    自身にふりかかった厄介ごとを振り返った一冊。

    身近にいる人が、厄介かも…と感じたら距離をおくかもしれないなぁなどと思いながら読んだ。

    まあ、ここまで次から次へと厄介なことが起こったり、厄介な人と出会ったりするもんだなぁと…。
    まあ、どのくらいで厄介なのか…それは人それぞれだろうけど。
    主観によりけりなんだろう。
    真っ当に生きてるつもりでも、他人から見ればそうでなかったりするわけだから。

    まぁ、とんでもなくいろいろなことを曝け出している厄介な男たちが出てくる本だった。




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    2023年01月22日
  • すっぽん心中

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    ネタバレ

    3つの短編。

    事故で仕事を休んでいる時に出会った若い女のモモ。
    すっぽんを売って一儲けしようと、霞ヶ浦まで行って捕獲する過程で殺してしまったすっぽんの末路。

    実家の近所で起きた殺人事件に異様に反応し、妻と子供と車で実家に向かうまでの奇行と、翌日朝食を食べながらテレビで見た呆気に取られた犯人逮捕の報道。

    鳩がなによりも嫌いだったというのに、仕事が軌道に乗るまでビルの屋上に住まわせてもらうことになり
    よりによって鳩によって狂人扱いされる寸前での商売初め。

    すっぽん!

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    2022年04月30日
  • さのよいよい

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    大きな秘密を抱える認知症の祖母を軸にストーリーは、ゆるゆる進む。何でもない日常の風景に抗いがたく引き込まれる。鮮明な過去がある一方で、スッポリと抜け落ちている過去があり、さらには忘れたくて燃やした過去もある。それらがこんがらがって渦を巻く。周囲の者は頭を混乱させないように話題を変えたりしながら静かに向き合う。当の本人はどこ吹く風。曰く「厭なことは火にくべて燃やせばいい。そうしたら、すべて灰になって消えてしまう。」と恬然としている。凄惨な事件も軽やかに昇華してしまう。緩やかな流れが気持ちを温かく癒してくれる。

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    2021年03月27日
  • 壺の中にはなにもない

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    主役が嫌い
    ぼんやり生きてんじゃねーよ
    とイライラしたけど
    ほんとは羨ましかったりしてー
    うまく転がってく人生、いいなー

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    2021年02月10日
  • さのよいよい

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    結婚も仕事も思うようにいかない主人公とまだらぼけの祖母とその家族。そして昔あったお不動さんの放火殺人事件。事件を紐解くうちに祖母の過去の苦労を知り自身のふがいなさが見えてくる。嫌なことは燃やせばいい。そうかもしれない。

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    2021年01月28日
  • すっぽん心中

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    表題を含む3作の短編。
    タイトルからして面白い。いずれも、ありがちな日常の中に潜む人間の狂気や勝手な勘違いみたいなものを描いているが、暗さはなく、むしろあっけらかんとした印象になる。早い人なら1時間で読み終えれるくらいの手軽さ。

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    2018年06月27日
  • どろにやいと

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    興味深い本だったというのが第一印象。
    未来を切り開くのは自分自信であり、困難を切り抜けなければ勝ち取りたい未来はないのだ。
    逆に困難がない未来はなくても同じであり、それは本当に望んでいたものではないし、どんな感動もあり得ない。

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    2018年06月20日