戌井昭人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2話収録本。
一つ目はタイトルの通りアメリカの道で、だいじょーぶ、あんたはだいじょーぶとずっと話しかけてくる女性の話。実はその人の過去は全然大丈夫じゃなくて、でもその紆余曲折な人生が彼女の大丈夫という言葉にパワーをのせて、いろんな人にそれは伝染していき…。
登場人物たちの過去は一人一人丁寧に描かれて、なおかつ戦争の前後の時代のため一人一人が壮絶で。
だからこそ、そこを生き抜いた人たちって本当に強く生きてるな~と感じる。
行きつけのバーや居酒屋には年齢層高めのお兄さんお姉さんがいて、いつもその人たちと飲んでるが、やんちゃしてた人のほうが人生に深みがあって今過去を語るとき楽しそうに話すよな~といまふと思う。
この登場人物たちもそんな感じがした。最後に日本に来たときいろいろインタビューに答えていたりするが、きっと楽しそうにはなしてたんだろうなと想像ができる。
いつもミステリーばかり読んでいて、これは全くジャンルが違うがとても良かった。
二つ目の話はちょっと最後にクスッとなるようなお話で、なんでもない日常の話で近所の名物おじさんと少女の話。少女はとても想像力豊かで話が止まらない。そんな女の子の話をずーっと静かに聞いて、ちゃんと相槌もしてくれて。そんな優しいおじさん。
最後はクスッとしてしまって、後味良かったな。
たまにはこんなジャンルの本を読んでみるのも悪くない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレなんて素敵で温かい子育てロードノベル!
タロは3歳、父ちゃん母ちゃんと神奈川県の海辺の町の一軒家に住んでいる。毎日貧乏長屋と呼ぶ部屋でちゃぶだいの傷跡から生まれたおにとかっぱ、ぬいぐるみの牛田うしのすけとの会議をして、海辺まで散歩してラジオ体操して、海の浄化のために石ころを投げて、元漁師やタイヤで鍛える兄ちゃんや芋パンを焼くお姉さんと交流するような日々を過ごしてる。
ミュージシャンの父ちゃんが九州から西日本して関東へ帰ってくるドサ周りツアーに向かう直前、母ちゃんが体調を崩し、とうちゃんはタロを連れてツアーに向かう。
前半パートの日常も良い、後半の親子ロードパートも楽しい。何よりラジオ体操や会議やおむつのトイレ、しっかり食べる食事シーンなんかの挿話が一つ一つ愛おしくて。
大きな事件が起こるわけでもなく、怖いことも哀しいことも起きない、のどかで平和でちょっとした事件だけを読んでいく楽しさ。多分俺が過ごしている日常もこういう平和で気持ちよい要素で溢れていて、自分でそれに気付いてないだけなんだろうなぁと…。
もっともっと気持ちを緩めていいんだろう、心地よいと感じる方向に進んでいけばいいんだろう。コスパもタイパも関係ないんやろう。
読後、ずっとオーティスレディングを聴いている。 -
Posted by ブクログ
おにたろかっぱについての十項目
・タロは(今は)売れてへんミュージシャンの父ちゃん、デザイナーの母ちゃんといっしょに葉山で暮らしてる三歳児。
・「昭和の貧乏長屋」と名付けられたタロの部屋でタロはおにとかっぱの三人で脳内会議してる。それに参加したい父ちゃんはときどき上田ウシノスケに化けて混じってる。
・タロとこんなふうに濃密に遊んでられるのは今だけなんやろな、呑気でアホくさいことが幸せなんやろなと父ちゃんは思う。でもできるだけタロを喜ばせ続けなくっちゃとも思う。
・父ちゃんがドサ回りツアーに出ることになったときタロもついていくことになりこの本の後ろ半分は二人のゆる〜いロードノベル。
・タロがいると世の中平和で楽しい。似たテイストの何かを知ってるような気がしてちょっと考えてみて、あずまきよひこさんの『よつばと!』やと思った。
・ギャンブル好きでタロにチンチロリンを教えたアコーディオン奏者の田部井さんとかドラムを叩くと豹変する僧侶の壮念さんとかいろんな(けったいな)人が登場する。
・タロと父ちゃんの会話が楽しい。
・最後に京都でみんなが集まり大騒ぎ。
・父ちゃんは売れてない自分を不安に思ったり意外にまともなことも考えたりしてる。
・あんパンと牛乳の組み合わせはサイコー。お好み焼きとコーラの組み合わせもサイコーかもしれない。シキ子さんの芋パンも美味しそうだ。
《この空気を感じると、浮世から少しだけズレているような心地よさを味わえる。この町にはいたる所に、このような空気が漂っている。》p.65
《検索が人生の余裕を削っているように思える。》p.255 -
Posted by ブクログ
都心から三浦半島の海沿いの街の一軒家に引っ越してきた3歳児のタロは父ちゃん、母ちゃんと暮らしている。玄関横の昭和レトロな部屋がタロの部屋で、そこでおしゃべり上手なタロは不思議なオニやカッパ、牛のぬいぐるみの「上田」と会議するのが日課だ。しがないミュージシャンの父ちゃんは最近ほとんど仕事がなく、毎日、タロと散歩に出かける日々。ミュージシャンとしての人生に区切りをつけるため、父ちゃんは「どさまわり」に出ることにするが、母ちゃんが熱を出し、タロの面倒を見れなくなったため、タロも門司港、山口、広島、尾道、倉敷、京都の「もどさまわり」についていくことになり…。
とにかく平和な物語だった。
おしゃべり上手で落語が好きで、ワニ皮の財布をもらって喜び、コイを食べたいと言うおませなタロだけど、ウンチはオムツじゃないとできないのが可愛くて可愛くて…。ちゃぶ台の前で正座をしてる3歳児のタロを想像しただけでニヤけちゃう。
父ちゃんとタロの会話もクスッと笑えるものばかり。そして、冴えないミュージシャンの父ちゃんの歌も何だかヘンテコリン。
ちょっとずつ成長していくタロに父ちゃんと同じく嬉しくもあり、寂しくも感じた。
幸せをお裾分けしてもらったような気分になった。