安壇美緒のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ギリシャにある宙に浮くようなメテオラ修道院群。その名の由来である「メテオラ」には、本来「宙に浮くもの」という意味があるとのこと。
本作の舞台は北海道の中高一貫女子校。寄宿生活を送る少女たちは、夜中に無断で流星群を見に行く。実際に流星を見ることができたのは、成績トップを争うふたりだけ。
「メテオラ」という言葉は、ここでは単なる天文用語ではなく、少女たちの状況そのものを指しているように思う。
家庭も将来も確かな足場を持たず、着地できないまま宙吊りになっている少女たち。
櫛木理宇さんが「少女葬」で現実としてのギリギリを描くならば、
安壇さんは 現実の只中で苦しむ少女たちを描きますね。
しかも北海道という土地柄なのか、彼女たちはあまり愚痴をこぼさない。
少女でさえ、静かに耐え、葛藤し、未来を見据えようとします。
ただ、彼女たちの苦しさの根源の親子関係については、もう一歩踏み込んで描いてほしかった気もします。 -
Posted by ブクログ
ネタバレネットニュースの編集者、岩永を中心としてネットでの炎上(話題)やワンオペ育児など近年よくニュースになるキーワードがたくさん出てくる話だった。
ある日、岩永はイオラという特徴的な名前の妻が夫の上司を刺したというネットニュースを書く。それによりネットはいろいろな憶測や共感をうみ、その記事はバズった。そして、その共感に背中を押してもらったとして第二のイオラ事件(模倣事件)が発生する。
岩永がネットニュースの編集者ということもあって、どこよりも先に記事にしなければ、という焦りや自分のニュースをバズらせたいという気持ちが伝わってきて痛々しかった。岩永に関わる上司や部下、アルバイトそして妻。いやー、岩永とは結婚したくないなぁ。そして、こういう人が何も考えずに自分のことだけ考えて記事にしているのかなぁとも思ってしまった。まぁ仕事だからね。記事にして見てもらえないとダメなことはわかるけども。
途中にあった妻、涼子とAIの会話がリアルすぎた。AIってめちゃくちゃ寄り添ってくれるんだよな…怖いくらいに。
ラストがよくわからなくて、個人的には岩永の妻である涼子が第三のイオラとして事件を起こすのかなと思いながら読んでいたんだけど、もしかしたらそういう未来もあるのかな。 -
Posted by ブクログ
SNSに依存し無邪気な悪意をばら撒く男たちを描く連作短編集。
『ラブカは静かに弓を持つ』がとても良くて、安壇さんの他の作品も読みたいと思って今作を手に取りました。
『ラブカ〜』とはガラリと違う内容でしたが、とても面白かったです。登場人物たちの心情がリアルで、「今」っぽいお話でした。SNSで対立構造を煽ることでPVを稼ぐアテンションエコノミーに支配される社会と、そのどうしようもない嫌さが描かれています。
安壇さんはとてもタイトルの付け方が上手いなぁと思います。今作も、イオラって綺麗な響きだな…星の名前かな?と思ったら全然違いました。
萩尾威愛羅(はぎおいおら)という女性が赤ちゃんを抱っこ紐で背負いながら夫の上司を包丁で刺しに行ったという事件─通称イオラ事件を巡るSNSでの騒動が物語の中心です。
主人公となる男たちが全員それぞれ違った嫌さとダメさを持っているのですが、罰がくだるわけでも会心するわけでもなく物語は終わります。
しかし、男たちがせっせっと女を見下してバカにしているうちに、女たちはそんな男を捨てて皆いなくなっている…そんな未来を予感させるラストが不穏。 -
Posted by ブクログ
ワンオペ育児で追い詰められた母親が、赤ん坊を抱っこ紐で帯同したまま、夫の上司を刺した事件をWEB記事に載せたリスキー編集部の岩永。
事件の異常さと母親の名前にインパクトがあったせいか、イオラ事件としてSNS上でイオラ擁護派と否定派で論争が過熱する。
盛り上がりが続くよう新たなネタ探しに奔走する岩永だが…。
イオラ事件のことを詳細に突っ込んでいく内容かと思っていたが、岩永が家庭持ちで彼こそワンオペ育児に疲弊している妻を助けることが無いという、なんとも嫌な奴だった。
彼の最後を想像すると怖くなった。
WEB記事にも旬があり、次々と新しいネタが出てくるわけで、それは秒での戦いなのかもしれない。
現代にしかないSNSの情報の過多に惑わされてしまいがちだが、何が自分にとって必要なのか考えなければ無限ループの渦に巻き込まれてしまう。
-
Posted by ブクログ
小説すばる新人賞受賞作。
タイトルの天龍院亜希子が、回想にしか出てこない。その点は「桐島、部活やめるってよ」と似てるなと思った。
人材派遣会社勤務の27歳、田町譲。
父が倒れて遠距離になった、別れかけていた彼女の早夕里。
会社の同い年の中途同期、巨乳のふみか。
美人な先輩で子育て時短中の、岡崎さん。
人材派遣のリアルな現場描写と、女性との、そして女性同士の関係を描いていて、純小説寄り。
漫画やアニメやタレントなどの名前をガンガン出していくサブカル的な書き方は軽快さを感じつつも、やや違和感があった。
ちょくちょく出てくる比喩が気になった。
馬場先生の「自分が知り得ない誰かからの善意を信じることができる」という言葉がかなり好きだった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの小説に、イオラの視点は出てこない。
だとしたら、「散らばる光」は誰なのか。
Agoraに愛想を尽かした女性ユーザー達だろうか。
イオラ事件を取り上げた岩永を軸に、物語は進む。
家庭で、仕事で、彼は自分が自分より弱い者をコントロールすることを愉しむ。
それは、岩永よりも強い者が、彼を愉しむ道具として扱っているのと同じ構造で。
強い者が弱い者を痛ぶることで、自分の存在を絶対的なモノだと勘違いする。
そんな構造に諦めを抱いたのが「散らばる光」であり、その先頭にいたのがイオラなのかもしれない。
正直、イオラと同じ結末を、岩永の妻が繰り返すのではないかと思って、読んでいた。
けれど、彼女は諦めることを選べた人だった。
構造を客観視できたら。
苦しいことが少しは減るのだろうか。
それが空しさに変わったとしても、もう一度、自分の世界を立ち上げるきっかけになるだろうか。 -
Posted by ブクログ
ホラーゲームを実況中の短編アンソロジー。
今は、ゲーム実況などを経験している人は多いのかもしれない。
だがゲームも好きではなく、ましてや実況などとてもじゃないが見ることもましてや参加するなど無理なわけで…
だがホラーだと、どういう感じなんだろうかと読んでみたが、ゲームというのが頭にあるからだろうか、怖さを感じることがなく、どちらかと言うと不気味さの方が強かった。
見るのをやめれば…ということが可能なので入り込めなかったのかもしれない。
○マーダー・ミステリー・リプレイ(品田遊)
姥蜘蛛に喰われる無限ループ
○CIUDAD(波木銅)
生配信中に消息を絶ったバーチャルYouTuber
○メリイクリスマス、コナミル君(青柳碧人)
不快な言動を繰り返し始めるゲームキャラクター
○#プレイしたら呪われる(秋吉理香子)
プレイするだけで呪われるらしいホラーゲーム
○吉兆ちゃんの言うことは絶対(安壇美緒)
息子が夢中の動画から聴こえる耳障りな実況者の声