安壇美緒のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
物語の結末に至るまで主人公・橘の人格を掴みきれず、何度も「橘はこういう人間だったのか」と驚かされた。
橘が過去のトラウマから自己開示が得意でない人物であることが、読者の私にも影響したのかもしれない。
ただし、これは主人公のキャラクター像が揺らいでいるという批判ではない。
これは、はじめ深海に深く潜ってしまっていたような橘が、浅葉という光に照らされて様々な角度から姿を現したというだけの話だと思う。
また、深海にいた橘が浅葉と出会って光に導かれるまま浮上し、一度底へ沈みかけてまた海面を目指すような、変化し続けた物語だったからとも言える。
私が捉えきれない位の橘の感情の変化を浅葉は当たり前のよ -
Posted by ブクログ
ネタバレ著作権管理団体で働く青年が、チェロ教室に潜入調査に入る。人との繋がりを持たない孤独な青年が潜入先で出会う人との絆、葛藤の物語。
瑞々しく張り詰めた空気感と透明感、人との絆の暖かさを描いた作品、とても面白かったです…!
浅葉先生が人間味がありとても魅力的。展開の緊張感と最終的に主人公が選んだ結末、全て含めて読ませる展開でした。
学校、習い事含めて恩師という存在は自分にはいないですが、こんな人脈があったらな、と思わせるような活き活きとした人物像でした。
面白かった!
スパイがバレた後の、言い訳を挟まない関係再構築の展開が良い。彼が奏でる音楽同様、それは純粋なものだったのだろう。
出てくる人物、全 -
Posted by ブクログ
文句無しの5.
感動した。この後の展開があるなら知りたい。
橘は全著連の社員で、音楽教室の教材としての曲の著作権についての裁判で優勢になるため、音楽教室の生徒として潜り込む。
そこで出会う先生や生徒とのコミュニティ、そしてチェロの演奏の楽しさを再認識する。
理屈や正しさ云々では、表せきれない
『講師の生徒のあいだには、信頼があり、絆があり、固定された関係がある。それらは決して代替なきくものではないのだ(p242)』のセリフがすごく素敵に、そして心に染みた。最後に信頼が回復方向に向かい、読み切ってなおこのセリフがより刺さった。
優しい人の信頼は大事にしたい。 -
Posted by ブクログ
スパイ小説と思って読んだら違った。いやスパイ小説だ。私が思っているのとは違うけどスパイが主人公だ。
私も大人になってから音楽教室に通ったことがある。私は不器用なので個人レッスンにしてもらい、3畳もないような防音室で講師からレッスンを受けた。あんな密室でスパイ活動だなんて私には絶対できない。と、まあ状況が把握できるだけに主人公にヒヤヒヤと感情移入をしてしまう。途中で「さっさと任務放棄しろ」「そんな会社辞めちまえ」と檄を飛ばしてしまった。小説なのにね。
実際にモデルとなった事件があったようで潜入調査員の精神的犠牲はいかほどかと察せずにはいられない。
良い本でも内容を忘れてしまうこともあるが、この本 -
Posted by ブクログ
ネタバレシンプルにとても面白かった。そして久しぶりに気持ちよく泣けた。
私は楽器を何もやったことがない。文字通り音楽とは無縁の世界で生きてきたのだが、最近何かひとつくらい楽器を習ってみたいと思っていた矢先にこの本に出会った。結果としては、良いタイミングだった思う。
本著では演奏シーンも勿論だが、常に嘘を付き続けている自分と、純粋に音楽を、チェロを楽しむ自分との狭間で揺れ動く主人公の心理描写も見事である。
また、第一楽章があまりにハッピーな終わり方だったため、あと半分も残っているのにこんなに大団円な展開なのは胸騒ぎがする…と思いつつ、第二楽章に進んだところ、上記の板挟み状態がすごいスピードで加速し -
Posted by ブクログ
スパイ×音楽
全日本音楽著作権連盟に勤務する橘樹が、大手音楽教室が著作権法の演奏権を侵害している証拠を掴む為潜入する。
その音楽教室のチェロ講師が浅葉桜太郎。
この浅葉がとても魅力的な講師。人間としても音楽家としても。浅葉の教え子たちもとても人間的にいい人ばかり。
精神的にも重くのしかかっていた橘の過去も、この浅葉との出会いで少しずつほぐれていく。
でも結局はスパイ。信頼と絆が出来上がってきたのに…とグイグイ読めて引き込まれていった。
チェロは決して派手ではないかもしれないが、重厚感があって豊かで深い音色が本当に美しい楽器だと思う。
この作品はチェロの魅力も人との関係性もよく描かれていて、 -
Posted by ブクログ
「リスキー」の担当者たちが、人をPVやコンテンツとしてしか見られなくなっていく過程が本の世界とは思えなかった。
彼らにとって重要なのは、事件の真相や被害者・加害者の痛みではなく、どれだけネットが沸くか、どれだけシェアされるかという点だけで、そうした情報を操ることが暴力であることに無自覚である。そして、常に新しい刺激を投入し続けなければ忘れ去られるという恐れから、次々と新しい物語を捏造したり加工し続けたりと必要に迫られる。
彼らが心をなくすほどに、記事は読者の欲望を満たすものとなり、彼らの罪悪感も仕事の成功として誤認される感じが、すぐ隣で起きているような気がして、ずっしりと重みを感じた。 -
購入済み
ラフかは静かに
からの流れで拝読
何だか清々しく文章が流れていきました。
少し新鮮
電車書籍だと90%位の文面が1番素敵
誰かに応援してもらいたいとは思いませんが
気付かれなくても応援したい人を応援は
し続けてもいいんだな。 -
Posted by ブクログ
幼少期にチェロを習っていた橘。誘拐されかけたことがきっかけで、チェロに触れることなく生活していた。
暗い深い光も入らないような深海の悪夢にとらわれ、チェロへの漠然とした不安は大きな飴色の楽器を見ただけで、わき上がっていた。
しかし、勤務先から2年間音楽教室への潜入捜査を命じられる。陰鬱で人間関係の構築が苦手がゆえに変な情を持たないだろう、たしかにスパイの仕事を遂行できるたろうと見込まれていた。
12年ぶりにチェロを握り、恐怖と懐かしさを覚え、徐々に没頭していく。チェロを弾くことに楽しさを感じ、もっと奥行きのある音を響かせたいと願う。私的なひとりの時間はチェロにあてて、チェロへの仄暗いぼんや -
購入済み
本屋さん大賞ノミネートの
ラブカは静かにから流れて拝読
途中読むのがツラクなる描写もありましたが中々の良作
作中の時の流れが早過ぎて、終わりも登場人物の進路の
描写もなく物足りなさもありそれでいいのかも?
スーパースターのみなみの家族が一番普通
きっとこの作品に必要な書き下ろしでした
個人的には馨が1番好き。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ私も学生のとき宮田のように勉強面で負けず嫌いなところがあったためその時を懐かしみながら読んだ。
きらきらした青春小説では決してない、薄黒い霧に囲まれた中を懸命に自問自答しながらも進む少女たちの物語です。
しかし、現実のこの時期もきらきら100%じゃないなと思う。純粋な自分の内面とは裏腹に、汚れている世界の気配を感じて疑念を抱き始める。そんな少し不気味な時期じゃないかと思っている。
自分にはない物を持っている人に劣等感を抱き、どうしたら手に入れることができるのか探し必死に掴もうとする。
宮田も奥沢も相手に嫉妬しながらもそのエネルギーを自分に向けているところが誠実で『嫉妬』という感情は割と悪いやつ