安壇美緒のレビュー一覧
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ラブカは静かに弓を持つ、金木犀とメテオラと新しい作品から読み始め、このデビュー作にたどり着きました。
どの作品も登場人物の描写がすごく良くて、ほぼ全員に感情移入してしまった。そして自分自身何度も仕事で関わってきた派遣社員業界の大変さも身につまされた。
解説にも書かれていたけれども、自分が誰かを信じることで、自分が信じ得ない誰かからの善意を信じることができる。自分がほんとうに辛くて、どうしようもない時に、何の証拠がなくっても、もしかしたらこの世の誰かがどこかでひそかに自分を応援してくれてるかもしれないって呆れた希望を持つことができる。
そういうことを信じられたら、我々は生きるのが少し楽にな -
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ネタバレ一度裏切ったら二度と戻らないとあったように、浅葉は梶山やかすみ達よりも裏切られた事に激怒していた。それは、師弟関係であった橘と浅葉が他の皆より固く絆が結ばれていたからこその怒りだったのだと思う。
エピローグで、全著連を辞めた橘が再び浅葉の元へチェロを習いに行っている事がわかり、この二人はすぐ信頼関係を取り戻していくのだろうと思えた。
腹の底が読めない蛇のような男の塩坪も、『戦慄きのラブカ』:敵国に潜入した諜報員が潜入先で穏やかに暮らして最期は元の仲間に殺されるという映画が好きであった為か、橘のことも処罰対象にはしなかった。
さらに、度々登場していま三船も実は潜入員だったが、橘と同じように信頼 -
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全日本音楽著作権連盟に勤める橘が、上司の命令でミカサ音楽教室へスパイとして侵入する。
浅葉先生のもと、かつて学んだチェロを演奏することで病んでいた心が解きほぐされていく。
また「浅葉先生を囲む会」での他の生徒さんたちとの交流で、スパイとしての立場を忘れてしまうほど自分らしさを取り戻してもいく。
フィクションの作品ではあるが、実際にこういう騒動はあり、それに翻弄された私としては、橘よりも浅葉先生の心情に胸が苦しくなった。時々橘が発する心ない暴言にも悲しくなってしまった。
「無数の信頼の重なりの上に、人間関係は構築される」
浅葉先生の心の広さと強さを受けて、橘くんも成長していって -
Posted by ブクログ
ありのままの世界ってなんだろう?
本作で主人公の橘は、幼少期のトラウマをきっかけに、世界との間に透明な壁を作って日々暮らしている。
その透明な壁は、「世界のありのままの姿」をオートマティックにねじ曲げてしまう。
それも、だいたいの場合はネガティブな方向に。
さらにその壁は、橘が自分で重ねていく嘘の力によってどんどん分厚くなり、目に映るすべてを脅威に変換してしまう。
確かに嘘は、吐けば吐くほどその行為に慣れ、自分だけでなく他人も嘘をついていることを前提としてしまったり、
逆に、そんな自分を否定し続けることで、この世界を相対的に「自分なんかが居てはいけない場所」にしてしまったりもする。
しか -
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チェロ、いいですね。
私は音楽とは無縁と言っていいような人生を送ってきたので、
音楽の楽しみ方、音楽を奏でるときの感じ方、そう言ったことが綺麗に言語化されていて、
新しい世界の扉を開いたようでした。
ただ単純にチェロの話をするだけでなく、そこにスパイという誰もがワクワクしてしまうような設定が出てきます。
話の内容も実際にあった事件の内容が参考にされており、
どんどん読み進めていってしまうようでした。
スパイなんだけど、登場人物の感情に寄り添いながら、ゆったりとまるでチェロの深い音色を味わうように
文章を楽しませてもらいました。
数々の賞を受賞しているだけあり、間違いなしの1作でした。