安壇美緒のレビュー一覧
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ラブカは静かに弓を持つ、金木犀とメテオラと新しい作品から読み始め、このデビュー作にたどり着きました。
どの作品も登場人物の描写がすごく良くて、ほぼ全員に感情移入してしまった。そして自分自身何度も仕事で関わってきた派遣社員業界の大変さも身につまされた。
解説にも書かれていたけれども、自分が誰かを信じることで、自分が信じ得ない誰かからの善意を信じることができる。自分がほんとうに辛くて、どうしようもない時に、何の証拠がなくっても、もしかしたらこの世の誰かがどこかでひそかに自分を応援してくれてるかもしれないって呆れた希望を持つことができる。
そういうことを信じられたら、我々は生きるのが少し楽にな -
Posted by ブクログ
全日本音楽著作権連盟に勤める橘が、上司の命令でミカサ音楽教室へスパイとして侵入する。
浅葉先生のもと、かつて学んだチェロを演奏することで病んでいた心が解きほぐされていく。
また「浅葉先生を囲む会」での他の生徒さんたちとの交流で、スパイとしての立場を忘れてしまうほど自分らしさを取り戻してもいく。
フィクションの作品ではあるが、実際にこういう騒動はあり、それに翻弄された私としては、橘よりも浅葉先生の心情に胸が苦しくなった。時々橘が発する心ない暴言にも悲しくなってしまった。
「無数の信頼の重なりの上に、人間関係は構築される」
浅葉先生の心の広さと強さを受けて、橘くんも成長していって -
Posted by ブクログ
ありのままの世界ってなんだろう?
本作で主人公の橘は、幼少期のトラウマをきっかけに、世界との間に透明な壁を作って日々暮らしている。
その透明な壁は、「世界のありのままの姿」をオートマティックにねじ曲げてしまう。
それも、だいたいの場合はネガティブな方向に。
さらにその壁は、橘が自分で重ねていく嘘の力によってどんどん分厚くなり、目に映るすべてを脅威に変換してしまう。
確かに嘘は、吐けば吐くほどその行為に慣れ、自分だけでなく他人も嘘をついていることを前提としてしまったり、
逆に、そんな自分を否定し続けることで、この世界を相対的に「自分なんかが居てはいけない場所」にしてしまったりもする。
しか -
Posted by ブクログ
チェロ、いいですね。
私は音楽とは無縁と言っていいような人生を送ってきたので、
音楽の楽しみ方、音楽を奏でるときの感じ方、そう言ったことが綺麗に言語化されていて、
新しい世界の扉を開いたようでした。
ただ単純にチェロの話をするだけでなく、そこにスパイという誰もがワクワクしてしまうような設定が出てきます。
話の内容も実際にあった事件の内容が参考にされており、
どんどん読み進めていってしまうようでした。
スパイなんだけど、登場人物の感情に寄り添いながら、ゆったりとまるでチェロの深い音色を味わうように
文章を楽しませてもらいました。
数々の賞を受賞しているだけあり、間違いなしの1作でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ現実としてある、現代社会そのものだと感じた。
他人に起きた出来事を娯楽として、ただただ消費する人々。どのような出来事でも、人々に注目されるのであれば、手段を選ばずコンテンツを制作する人々。
他人の投稿や動画を見て時間を消費する。無駄であることは理解していてもやめられない。刺激を求めている。バズっている出来事を知らずにはいられない。一瞬で変化する時代の流れに置いていかれたくない。
芸能ゴシップであっても、事件であっても、自分には無関係のことでも、何もかもが人々のたった少しの時間を消費し、脳に刺激を与えるためだけのコンテンツとなってしまう。きっとそれは事実でもそうでなくてもなんでもいい。拡散され