あらすじ
「検索すればすぐに出てくるよ。赤ん坊を抱いたまま旦那の上司を刺しに行った女。なんか怪獣みたいな名前でさ」
ワンオペ育児で追い詰められた母親が夫の上司を刺傷した。彼女は赤ん坊を抱っこ紐で帯同したまま犯行に及んだという。事件を取り上げたWEB記事をきっかけに、イオラという犯人の特徴的な名前や事件の異常さが注目を集め、SNS上ではイオラ擁護派と否定派の論争が過熱。記事の担当者・岩永清志郎は、大きな反響に満足しながら、盛り上がりが続くよう新たなネタを探して奔走するが……。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
イオラの視点が何ひとつ描かれないまま終わり、それが今の世の中だということにちょっと目を背けたくなるけれども、よほど気をつけていないと誰でもイオラになりうるしイオラを生み出してしまいうる。
Posted by ブクログ
現実としてある、現代社会そのものだと感じた。
他人に起きた出来事を娯楽として、ただただ消費する人々。どのような出来事でも、人々に注目されるのであれば、手段を選ばずコンテンツを制作する人々。
他人の投稿や動画を見て時間を消費する。無駄であることは理解していてもやめられない。刺激を求めている。バズっている出来事を知らずにはいられない。一瞬で変化する時代の流れに置いていかれたくない。
芸能ゴシップであっても、事件であっても、自分には無関係のことでも、何もかもが人々のたった少しの時間を消費し、脳に刺激を与えるためだけのコンテンツとなってしまう。きっとそれは事実でもそうでなくてもなんでもいい。拡散されていくうちに、いつの間にか勝手な物語が作られてしまい、人々の間には共感や分断、対立が生まれる。
この本はその恐ろしさを描いている。ただ、私も含め、多くの人は無自覚のうちにその世界の一部となる。そして、それが世界のすべてだと思ってしまう。何気なく呟いたたった一言。身内で楽しむためだけのコンテンツ。それがどれだけ大きな何かを生んでしまうのか。SNSの、そしてそれに操られる人間の怖さを実感する一冊。
Posted by ブクログ
前作「ラブカは静かに弓を持つ」が本屋大賞2位そして新作、待ちに待ってました。今作は前作に比べてまったく違った趣きの作品だと思います。SNSを駆使した現代のミステリーと感じました。イオラが抱っこひも抱えたまま夫の上司を刺した。何ということであろうこれからの展開が気になってしょうがない、テーマが現代社会の暗闇という感じがします。
あなたも読んでこの異色作を何か感じで下さい。
Posted by ブクログ
なんと言うか現代の闇を表現した物語なのかな。情報の洪水の中、取捨選択をするのは自分自身。踊らされるのも静観するのも。そして何も知らないのにわかった気になることのズレ。読後がなんとも言えない気持ちになりました。
Posted by ブクログ
ワンオペ育児で追い詰められた母親が、赤ん坊を抱っこ紐で帯同したまま、夫の上司を刺した事件をWEB記事に載せたリスキー編集部の岩永。
事件の異常さと母親の名前にインパクトがあったせいか、イオラ事件としてSNS上でイオラ擁護派と否定派で論争が過熱する。
盛り上がりが続くよう新たなネタ探しに奔走する岩永だが…。
イオラ事件のことを詳細に突っ込んでいく内容かと思っていたが、岩永が家庭持ちで彼こそワンオペ育児に疲弊している妻を助けることが無いという、なんとも嫌な奴だった。
彼の最後を想像すると怖くなった。
WEB記事にも旬があり、次々と新しいネタが出てくるわけで、それは秒での戦いなのかもしれない。
現代にしかないSNSの情報の過多に惑わされてしまいがちだが、何が自分にとって必要なのか考えなければ無限ループの渦に巻き込まれてしまう。