安壇美緒のレビュー一覧
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いつだったかの新聞の書評を読んで購入。
実社会を投影するようなSNS時代のネットメディアと炎上による波及、それによる社会への影響、自己肯定感とは?など、色々な要素を複数の人物を通じて訴えてくるような内容でした。
読み進めていくと、自分自身の中にも確実に根付いてしまっている、親世代から受けてきた、男らしさのめんどくささ、性差を区別ではなく差別的に捉えてしまう部分が自身の中に浮き彫りになり、更に自分が苦手なタイプの登場人物が何人も出てきて、不快感が押し寄せてきました。
ただ、不快感がこれだけ出ても、違和感ではないあたり、自分自身の中にもこの登場人物達と共通する部分があるからこそなのかもしれないと思います。
私個人としては、後半、きっとこういう事が起こるのではないか?と思った事が作中では起こる事なく終わり、余韻と読後感にスッキリ感はありませんが、本を読むのは、こういう行間というか、明示されない部分を読者に委ねるという事で、考えるキッカケを与えてもらってるという点も思い起こされて、これを書きながら評価を少し変えた気がします。 -
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ネタバレ現実としてある、現代社会そのものだと感じた。
他人に起きた出来事を娯楽として、ただただ消費する人々。どのような出来事でも、人々に注目されるのであれば、手段を選ばずコンテンツを制作する人々。
他人の投稿や動画を見て時間を消費する。無駄であることは理解していてもやめられない。刺激を求めている。バズっている出来事を知らずにはいられない。一瞬で変化する時代の流れに置いていかれたくない。
芸能ゴシップであっても、事件であっても、自分には無関係のことでも、何もかもが人々のたった少しの時間を消費し、脳に刺激を与えるためだけのコンテンツとなってしまう。きっとそれは事実でもそうでなくてもなんでもいい。拡散されていくうちに、いつの間にか勝手な物語が作られてしまい、人々の間には共感や分断、対立が生まれる。
この本はその恐ろしさを描いている。ただ、私も含め、多くの人は無自覚のうちにその世界の一部となる。そして、それが世界のすべてだと思ってしまう。何気なく呟いたたった一言。身内で楽しむためだけのコンテンツ。それがどれだけ大きな何かを生んでしまうのか。SNSの、そしてそれに操られる人間の怖さを実感する一冊。 -
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ネタバレ主人公田町譲の描写が生々しくてリアリティある。
著者の安壇さんって男性なの?ってネットで調べてしまった。女性でした。なんでこんなに生々しく書けるんだ。凄い。
解説の方も言っていたけど、天龍院亜希子とマサオカが直接物語に絡まないこの構成がいい。終盤とか絡んできたら個人的にはだいぶしらけたと思う。
マサオカのモデルは清原さんなのかな?清原さんの事は応援しているから、マサオカを応援している田町により感情移入できました。
佐藤陽平の話も好き。彼の自分の中に波があるっていう所は物凄くよく分かる。私もそうです。
くたびれた服の所も良かった。こういう風に思える田町くんは優しくて魅力的です。
解説もいい。呆れた希望の所は私もグッときました。
読後感もいい。いい物語を読み終えたなっていう満足感に浸れています。読んで良かったです。 -
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ネタバレ2023年本屋大賞第2位。スパイ×音楽という異色の組み合わせの小説。
全日本音楽著作権連盟に勤める橘は、音楽教室の著作権法違反の証拠を掴むために潜入調査することを命じられる。
まず、斬新ながら有り得そうな設定に興味をそそられる。橘とチェロの関係についても不穏な雰囲気が漂うなか、スパイ業務が始まっていく。相手や自分の一挙手一投足が気になるスパイのドキドキハラハラを感じつつ、大きな起伏を感じさせない文体で物語は進んでいく。過去のトラウマにより橘は不眠症を患っていて、常時服薬していたり、食生活も良くなさそうな描写もあったが、そこに関してはあまり深く描かれていなかった。だからこそスパイのドキドキ感と音楽に集中できて読みやすい。落ち着いた文体ながらもスパイの葛藤や苦悩には心動かされた。
チェロは人の声の音域に近い楽器らしい。なぜこの物語の楽器がチェロなのか、このことがすごい意味を持っている気がする。小野瀬のコンサートに行って音楽を聴くことでなにかが変わるのかと思ったけど、そうではなく、そこでかすみと出会うことで物語が動いていく。音楽小説というと、音楽の力を感じさせるような展開になるような気がするけど、この小説で橘を救ってくれたのは音楽より人の言葉や思いだった。チェロを再開してチェロの音色に包まれることで、人の声が届きやすくなっていったんじゃないかなあと思う。 -
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人材会社勤務27歳男性の何気ない日常を覗き見したような小説。誰しもが日々生きていくなかで、湧きでる小さな希望や絶望の繰り返しが丁寧に描かれていて、自身にとっては共感性の高い作品だった。
とくに印象的なのは佐藤陽平との出来事だ。実際自分の身に起きたらかなり精神的にきそうな一件である。リアルで虚しく痛々しいエピソードだが、これが物語に絶妙なスパイスを加えてくれている。
キーパーソンとなる早夕里の父だが、主人公が慕う理由が読者にも違和感なく伝わってくる。2人の会話だけ特別に温度を持って響いてくる気がした。その筆力の高さが流石だと思った。
また個人的には筆者が女性ということもあり、登場人物の女性たちの描写がこれまたリアル。ふみかのような性格難アリ感情むき出し女(でも仕事はできるから厄介)、岡崎さんのように精神年齢高めで自分の軸を持ってる女(ただ聖人な訳ではなくちゃんと人を見下してたりする)、早夕里のように賢くニュートラルな女(正論をかざす面倒な一面もある)など、、それぞれが一生懸命悩みながら生きている血の通った人間らしさを感じられたのがよかった。
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すごく好きなかんじ!
自然豊かなど田舎にできた新興の中高一貫の女子校の一期生たちのお話。
はたから見たら凡人離れしている突出して優秀な少女、宮田と奥沢。
それぞれ意識して、互いに相手を羨んで反発しているけど、その実どちらも劣等感や大きな悩みを抱えて苦しんでいる。
二人が相手も色々あるんだって気付くのに、変に距離が縮まったりしない感じが良い。
まわりの凡人?な少女たちも、キャラが立っていて魅力的。
ちょっとうざい子はいても、すごい嫌な奴っていうのいなくて、結局ずっと同じメンバーでつるんでいるの微笑ましい。
誤解されやすい宮田が「こいつはそういう奴」って、排除されることなく受け入れられていて、なんかほっこりした。
旧宣教師館に向かう落ち葉の道や
星を見に行く真っ暗な道路
色んな季節ごとの空気とか
そういうの描くのも上手だなぁと思いました。
この作家さん初めてだったので、他の作品も読んでみたい! -
Posted by ブクログ
中学の時の塾の先生に勧められてから数年が経ち、最近友達が貸してくれて「そういえばタイトル聞いたことあるな〜」と思いながら読み始めた。
自分自身、可愛い制服や美しい校舎に惹かれて北海道の端にある女子校に憧れを抱いていた時期があったので、この本の舞台設定にはとてもときめいた。
宮田や奥沢が、自分には持ちえないものを持っているという点で特別な関係として描かれるのでは無く、同じクラスの程よい距離感の間柄として描かれるのがリアルで良かった。
進学校だと半強制的に自分の将来を考えて大人に伝えなくてはならない時が来るし、そういう時にこれまで育ってきた環境や容姿など、自らが選択出来ない自己を形成する要素に不満を持つことってあるよな〜と思った。
人には人の辛さがある、宮田と奥沢の置かれた環境の苦しさも感じたけど、平凡な一読者の私から見たら、彼女たちの苦しさを等身大で感じることは難しくて、二人の持ち合わせるものに終始ほんのりとした憧れを抱くことをやめられなかった。
だから本編よりもみなみの視点で描かれた「スーパースター」の方がより強く共感したし感情が大きく動かされた。
宮田や奥沢の持つものは、どこかで見たスターの来歴の一部ようで、私は「もしも私が宮田や奥沢だったら」というような想像をやめられないし、分不相応な夢を抱くこともやめられず、現実と理想の乖離に苦しむ。
宮田をライバル視していた馨も成績が常に三番手という優秀なキャラクターで、平凡もしくはそれ以下の人間はやっぱりスターと同じ土俵には上がれないのか、星の影のままなのか、と歯痒くなった。
深く心情が描かれることのなかった悠や真帆、由梨から見た宮田と奥沢の印象も気になる。
自分と誰かを比べて苦しむのではなく、良い意味で自分の持つものだけに目を向けて、他人をありのままで受け入れる彼女たちのしなやかさに感動した。
宮田や奥沢がどんな進路に進んだのか、その後も気になる。 -
Posted by ブクログ
どんなに仕事がつらくても毎日会社に行かなきゃいけない。平凡な生活のなかに見つける一つの希望。
それは、かつて少しいじめた天龍院亜希子が毎日幸せそうに生きていること。
じゃなくてふみかだろ。
同期で毎日顔を合わせて同じ苦労を味わい、話も合うし巨乳、仕事終わりは居酒屋で愚痴りエッッッなことまで...。
もうタイトル『俺とふみかのオフィスラブ』だろこれ。希望に満ち溢れてるだろ。
どこで何してるか分からない人の日記とかどうでもいいだろ。
天龍院亜希子はブログを消した。
この世のどこかで誰かが応援してくれる「呆れた希望」なんて求めていなかった。
マサオカは社会復帰すら怪しい。
天龍院亜希子とマサオカ。どこか遠くに希望を求めていたが、近くにあったんだ。
やっぱりふみかだぜ。