ジョン・ハートのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
わかりやすいなあ。ストレートに面白い。先日、ニコラス・ケイジとメグ・ライアンの競演による儚いラブ・ストーリー映画「シティ・オブ・エンジェル」を観て、つくづくそう思った。というのは、この映画がフランス、西ドイツ合作映画「ベルリン・天使の詩」のリメイクでありながら、わかりやすさの点でははるかに「ベルリン……」を凌いでいたからだ。「アメリカ流」の優れたところを見せられた。それで、本書。やはり、わかりやすく、シンプルでストレートなストーリー。ジャンルとしては、ミステリというよりはハードボイルド寄り。主人公の本能にまかせた行動は、たやすく気持ちを昂らせてくれた。大雑把な表現でだが、「アメリカ流」を実感した。ときに、悪い意味で使われることもあるが、本書に対しては、かなりの「褒め言葉」のつもりである。本書のストーリーは、これでもかこれでもかと重荷を背負い込んでいく主人公アダム・チェイスが、はたして事件を解決し、背負い込んだ重荷を降ろすことができるのか、という超ド定番の長篇のサスペンス・ミステリ。幼いときに目の前で母親に死なれたことがトラウマとなっているアダム。5年前には、ある殺人の罪を負いそうになる。裁判で無罪になったものの、田舎の町の人々のこと、誰も彼を信じない。大地主の息子だから無罪を金で買ったのだ、と言ってはばからないのだ。それにもまして、継母が目撃を主張する。彼が殺人現場の方から帰って来て、手には血が付いていたという証言を引っ込めない。そして、父親までもがアダムを信じずに、その妻の証言を信じたことが、アダムを暗い闇の底に突き落とす決定的な原因となった。こうして、アダムは町を出た。そして5年後、悪友から、頼み事があるから帰ってきてくれとの懇願の連絡が入る。骨太で、どっしりとした安定感あるストーリーだ。ストーリー・ラインは、家族の物語と、事件の真相を追う物語の二つ。この二つの線がきつく絡み合い、錯綜して綴られていく。家族円満、幸せいっぱいの読者ならば、どう感じるだろう? 余計な心配が頭を過ぎった。それほどに壊れた家族関係が描かれている。ただ、本書は著者ジョン・ハートのまだ2作目の作品。正直なところ、粗さも目立つ。もう少し練り上げ、磨きをかければ、と思うところもないわけではない。それでも、そんなマイナス面をも忘れてしまうほどの、テンポの良い展開があり、深みある心理描写がある。すばらしいと思う。縺れた家族の絆に心を掻き乱されながらも、元恋人との再会に心穏やかにいられない。そんな苦悩の中主人公アダム・チェイスは真相を追い続ける。彼は、いかにして事件の真相に辿り着くのか? 家族や元恋人との関係は修復できるのか?もちろんそこは本書の読みどころだが、しかしそれだけではない。読みどころは他にもたくさんある。暗い情念であったり、精神の内奥を抉るところなどが、随所に鏤められているのだ。本書はしっかりとした読み応えのある、哀しく切なくやるせなく、そして希望ある作品だ。ただし、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作品ということで、巧緻なミステリを期待すると、がっかりすることになるかもしれない。アメリカン・ハードボイルド小説好きならいいかもしれない。人間の内奥なんてどうでもいいという方や、青春小説好きには向かないだろう。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ三分の二くらいまで、登場人物の誰もあんまりすきになれなくて(特にあの母親しんどすぎんか…)読んでてつらかったけれども、
でもでも、ジョン・ハートだもんね!こっからおもしろくなるよね!信じてるよジョン・ハート!!!
…っていう気持ちで読み続け、結果、ラストのほんのちょっとのすてき部分までたどり着いた、そのちょっとの部分だけで、ここまで読んで来て良かったよ!信じてたよジョン・ハート!ってなったのでよかった。
序文がなければ信じきれなかったかもしれなかった。序文読んどいてよかった。
それにしてもあの母親しんどすぎる。父親もわりとなんだとおもう。
弟がいい子で良かった。
あと、チャンスがんばれ、とおもった。
弟チームには幸せになってもらいたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公がひどいめにあいすぎだよなぁとおもう。
まだ少年といっていい年代でひどいめにあってるのに、それがぬれぎぬだとわかっても誰も償ってくれない。今は大人同士だとしても、本人はともかく、「当時も大人だったひとたち」が現在の力関係を軸にして、ごめんなさいを(世間に対しても)しないのは違うんじゃないか。
…というもやもやは置いておいて、その報われなさを「赦すんじゃなくて、流す」みたいにして、先に進もうとする主人公まわりの幾人かについては、好感がもてるのでした。この展開で、むりやり赦しの物語、みたいにもってかれたらうさんくさすぎるもの。 -
Posted by ブクログ
アメリカの作家「ジョン・ハート」の長篇ミステリ作品『川は静かに流れ(原題:Down River)』を読みました。
「エラリー・クイーン」、「ヘンリー・スレッサー」の作品に続き、アメリカのミステリ作品です… 「ジョン・ハート」の作品は3年近く前に読んだ『キングの死』以来ですね。
-----story-------------
「僕という人間を形作った出来事はすべてその川の近くで起こった。
川が見える場所で母を失い、川のほとりで恋に落ちた。
父に家から追い出された日の、川のにおいすら覚えている」殺人の濡れ衣を着せられ故郷を追われた「アダム」。
苦境に陥った親友のために数年ぶりに川辺の町に戻ったが、待ち受けていたのは自分を勘当した父、不機嫌な昔の恋人、そして新たなる殺人事件だった。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
解説:「北上次郎」。
-----------------------
2007年(平成19年)に発表された「ジョン・ハート」の第2作で、同年のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞を受賞した作品です。
アメリカ・ノースカロライナ州… 「アダム・チェイス」は5年ぶりに故郷に戻ってきた、、、
「アダム」が故郷から出た理由は、5年前に発生した殺人事件の犯人として告訴され裁判の結果無罪(濡衣だが)となったものの、目撃証言をしたのが自分の継母「ジャニス」であり、継母の証言を信じた父親「ジェイコブ」との間にも溝ができたことが原因だった… 親友「ダニー・フェイス」からの助けを乞う電話で故郷に帰るが、原子力発電所の建設計画から土地が高騰し、建設推進派と反対派で町は緊迫している。
大農園主である「アダム」の父「ジェイコブ」は土地を売ろうとしないため様々な嫌がらせや事件が起こっていた… そんな中、ついに殺人事件が、、、
父親・継母・双子の義弟妹「ジェイミー」と「ミリアム」、兄妹同然に育った「グレイス」、5年前故郷を去る時に分かれた元恋人「ロビン・アレグザンダー」、親友「ダニー」… 犯人は誰なのか、警察の捜査とは別に「アダム」は動く。
しかし、事件は意外な方向に展開する… 愛情、友情、信頼、裏切り、嘘、憎しみ、信頼、赦し、、、
5年の歳月を経て次々と直面する複雑な人間関係… 「アダム」は事件を解決に導くことはできるのか、そして家族を守ることはできるのか……。
殺人事件の謎を追うミステリなのですが… 事件とあわせて「グレイス」の出生の謎も解きながら、家族の在り方や絆を問いかけてくるヒューマンドラマでもありましたね、、、
結局、血を分けた者同士しか理解し合えないのかなぁ… 考えさせられましたね。
主人公の性格にはやや感情移入し難い部分もありましたが… 翻訳も良いのか、600ページ近いボリュームにしては読みやすかったです。 -
Posted by ブクログ
『川は静かに流れ』以来のファンで見つけると読んでいるジョン・ハートの作品。主人公は犯人を射殺し少女チャニングを救出したものの、弾倉の18発をすべて二人の犯人に発砲しており拷問や処刑の疑いを持たれ、犯人が黒人の兄弟だったために連邦警察の捜査対象となって停職中の白人刑事エリザベス。相棒の刑事にも心は許さず、仲間より事件の被害者や遺族に共感し寄り添うタイプ。エリザベスには少女時代の命の恩人で憧れの刑事がいるのですがその刑事エイドリアンは殺人の罪で有罪となり服役中、状況証拠だけでなく物証もあるなかエリザベスだけは無罪を頑なに信じておりそのことでも警察内で孤立しています。読み始めてしばらくぶりだったのもあり、冒頭から複雑な事情を抱えた女性刑事が登場して、もしかしてシリーズものの途中から読んでしまったか?と不安になってしまいました。エイドリアンが殺人犯として収監されていた刑務所から13年ぶりに釈放されたその日に、遺児であるギデオンが母の仇を討とうと父親の拳銃を盗みエイドリアンを襲おうとして逆に大けがを負います。自分の問題だけでも手に負えない問題を抱えながらエリザベスはチャニングとギデオンを守ろうとします。。。と、概要を書こうとしても無理な複雑な設定を、ぐいぐい読ませる筆致の力強さは健在でした。冒頭はいきなりの展開にとまどいながらも中盤までくればいったいどうなるのかと読むのがもどかしい感じに。とはいえ終盤には犯人はこの人かもね、と推測が出来てしまい、推測は出来るものの納得するには至らず、それでも設定や構成はしっかり考えられており流石なのですが、これはもしや海外版の辻村深月さんなのではないか、と思いついてしまって、ちょっと残念な気持ちになりました。もう一作品くらい読んでみて、今後も追いかけたいかどうか決めようと思います。
-
Posted by ブクログ
あ~、やっぱりジェームズ・ディーンだ~。
頭の中で、主人公アダムが「エデンの東」「ジャイアント」などのジェームズ・ディーンとして映像化されてしまう。
神の存在を問うような運命、大土地所有に絡む名家と住民の根暗な物語は、アメリカ人がホント好きそう。
家族への疑心暗鬼と、青春の苛立ち、煮え切らない、カッコつけ
金持ちの坊ちゃんの中途半端な自暴自棄
人の話を聞かない、人にうまく伝えられない頑固で弱い父
ネガティブで暗い後妻とその子供たち
金と名誉とやっかみの入り混じる住民たち
川を題名とした小説はどうしてこうも暗いのか
「ミスティックリバー」デニス・ルヘイン
「クリムゾン・リバー」ジャン・クリフトフ・グランデ
「深い河」遠藤周作
後半は打って変わってアダムが探偵役として活躍するが、相変わらず危なっかしい。
不必要とも思えてしまうほど込み入った人間関係が徐々に明らかになっていき、最後の最後に悲劇とともにくっつく。
アダムが最初から知ってることを刑事に話していたら……物語にならないか。
一人称の小説たけど、ちょっと主人公の言ってること疑ってたし。
やっぱり、この人の小説は、最後まで読んで初めて報われるな~。
……気合、要るよ。 -
Posted by ブクログ
ノースカロライナ州シャーロットの殺人課刑事のビル・フレンチの双子の息子で次男のジェイソンはベトナム戦争中に除隊させられ2年間刑務所に居たが出所してきた。ビルは、この息子を避け末っ子のギブソンには兄とは関わらない様に伝えていたがジェイソンはギビーと女の子2人を誘ってドライブしマリファナ、飲酒、性行為を楽しんで居たが、女の子の1人タイラが拷問状態で殺された。
ジェイソンの部屋から凶器が見つかり逮捕され2年前と同じレンズワース刑務所に収監された。世間は、ベトナム戦争で虐殺を繰り返したギブソンが真犯人で麻薬・銃器・殺人を平気で犯すならず者だと噂するが、刑事の父親と弟のギブソンは、それぞれにジェイソンの無実を証明しようと奔走するが、ジェイソンは真犯人とその目的を知っている様だ。
死刑囚Xの策略で殺人犯し仕立てられたジェイソンを危険を覚悟で真犯人を探る高校生の弟ギブソン、大人しく優等生だった彼が兄ジェイソンとの接触で女性を知り、勇敢さを知り、危険な状況下で友情や信頼の大切さを学んだ。この物語は、家族・恋人・友人を通じて1人の高校生が大人になるストーリーです。
小説冒頭で石切場からダイブすることの出来なかったジェイソンが、全てが解決した終盤に見事にダイブを決めるシーンでこの小説の背骨がはっきりと解るのでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ双子の妹、アリッサの失踪は、連続少女誘拐・殺害事件とは別の展開を迎える。もちろん、失われた過去は取り戻せないし、事件の真相は、ジョニーにとっては知らなかったほうがよかったかもしれない。
アリッサの失踪から、1年。ティファニーの事件から、4日。事件は、連続少女殺害事件と拡大してゆくが、アリッサの事件は意外な展開(結末)を迎える。
世間に、神に絶望したジョニーが見つけた先祖との接点。そして、それが、ジョニーが纏った羽根であり、フリーマントルだったのかもしれない。
「それが理由かもしれないな、ジョニー。もしかしたら、アリッサはほかの子どもを死なせないために死んだのかもしれない」ハント刑事のこの言葉は、ジョニーに届いたのでしょうか? そして、ジョニーが最後にたどり着いた、ジャックへの想い、赦しに対して。
最後は、決してハッピーエンドという訳ではないけれども、ジョニー親子に、ジャックに、新しい明日が訪れてほしいと祈らずにはいられない。
気になるフレーズは:
★臆病は罪か?
★仕事とは何なのか?個人的感情に走るとはどういうことなのだろうか
★闇は人間の心に巣食う癌だ。
★彼女のような女性を何人も見てきた。無学で美人、必死により良い場所を求める女性を。
★うそと弱さ。このふたつも罪だ。…。神様はささいな罪は見逃してくれる -
Posted by ブクログ
ネタバレ事件から1年。それは、長く、苦しく、悲しい時間であったに違いない。
何があったら、「誰もわかってくれなかったし、誰も手を差し伸べてくれなかった。ただの一度も」と、言わせるのでしょうか?しかも、13歳の少年に。
しかも、周りの大人たちだけでなく、神様にも。「毎晩のように祈っていたんだよ。結局神様は見向きもしてくれないと悟るまで。これから先もそれは変わらないと悟るまで、わかる?」、この悲しみから、物語は始まる。
そう、事件から、1年後、新しい事件が起こり、新たな展開を迎える。
無茶苦茶になった家族、ジョニー、ジャック、そしてハント刑事。時が動き出して、後編へ。
印象的なフレーズは以下:
★どこも安全ではないことを早くに学んだのだと。どこも安全でなく、誰も守ってなんかくれない。子供時代は幻想にすぎない。
★刑事さんが諦めたかからって、ぼくまであきらめなきゃいけないことにはならないよ
★「希望を持たせるようなまねはやめて」…「二度としないで」
★誰にも理解できっこない。ティファニーの家の壁の向こうで何が起こっているのか、家族がどれほど苦しんでいるのかを。恐怖と怒り、少しずつ失われてゆく希望、そしてすべての終わりを。