【感想・ネタバレ】帰らざる故郷のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

久々ジョン・ハートの新作がよーやく回ってきた。
質量ともに読み応えバッチリ!軽く読み流す小説ではないけど、それなりに時間をかけてじっくり読む読書は最高の至福、その贅沢な時間を与えてくれる作品って意外と少なく、安定して供給してくれる作家はさらに少ない。

ジョンハートは貴重なその一人だということ。

主人公ギビーが少年から大人に変わる儀式の飛び込みシーンとその兄ジェイソンが刑務所から出所するシーンから物語は始まる。2人の兄ロバートはベトナム戦争で戦死、その影響で母はギビーを異常なまでの過保護に扱い、反抗的なジェイソンは毛嫌いされる。そんな家族にバランスを取ろうと苦心する父。

ギビーの青春譜が描かれていくのかと思いきや、ジェイソンに関わる不審な動きが徐々に物語に入り込み、刑務所にひそかに暮らす悪の大御所、変態シリアルキラー弁護士、出世欲にくらむ警察官などが絡み、ベトナム戦争終焉当時の病み混乱したアメリカの病みの部分を照らし出す。

それでも、さすがはジョンハート、少々残虐なシーンやこんなのも書くんか?と驚きのアクションシーンも経つつ、物語の落としどころは少年が大人になりゆく成長譚と家族愛の物語。涙を流して感動するような荒っぽさではなく、ジワジワシミジミ効いてくる感動が良い。

色々感動的な場面はあるが、ジェイソンの名前を聞いて即座に敬礼を返す兵士のシーン、主人公の親友の母が晩御飯を一緒に食べるよう促すシーン、最後あの岸壁から高飛び込むを決めるシーン(飛ぶはまさかの)は良かった。

次の翻訳が待ちきれない!ジョンハート、最高である。

0
2021年10月25日

Posted by ブクログ

 1972年。舞台はノース・カロライナ。ヴェトナム帰還兵とその一家の物語。作者のジョン・ハートは1965年生まれだから、本書の背景の時代は、実は作家7歳の幼年期ということになる。翻って、読者のぼくはこの年、16歳。反戦のフォークソング、悲劇的で衝撃的なアメリカン・ニュー・シネマのショッキングなエンディングに、もろに曝されて育ったあの多感な時代。

 だからこそ、というだけではないにせよ、この物語の時代背景を記憶に蘇らせながら、そこを通り抜けたアメリカの青春群像を生き生きと、現代に読み返し、想い出してゆくという読書行為は、何とも心にうずくものを抱えているような、妙に懐かしくも心の痛む、不安と緊張に満ちたものであった。

 本書の主人公であるギビー(18歳)もまた、多感この上ない青年である。殺人課刑事の父の息子である彼のもとに、戦死した兄ロバートの双子の弟・ジェイソンが帰郷した。戦地で29人殺したという伝説を携えて。収容所での不審な収容期を終えて。

 ジェイソンが帰還後、現地民虐殺の疑いで放り込まれていた州立刑務所には、一方でXという途方もない怪物がいて、事実上刑務所を支配しているという構図である。劇画的誇張が過ぎるようにも見受けられるが、刑務所幹部たち含め、彼の走狗である猟奇殺人者リースともども、物語の現代を横軸として綴る緊張が張り巡らされる。

 ノースカロライナの田舎町に起こる凄惨な女性殺人事件と帰還兵、反社会組織のバイカー集団、血に飢えた殺人者と、彼を刑務所から操るX。そうした幾重にも絡み合った暴力の嵐が、青年ギビーの家族や周囲に吹き荒れる。まさしく凄まじいまでに。

 読者だけが知らされる危険この上ない状況の中、巻き込まれ翻弄されるギビーの青春とと、その家族たち。兄、警察官である父、以上とも言える母、恋人、親友。一見、平和に見えていた家族やその周囲の人々を、ヴェトナムから持ち込まれた暴力の風が巻き込んでゆく。

 ヴェトナムに起こった村民虐殺事件の真相を背景に、徐々に見えてくる構図、散乱した事実への落とし前の付け方が、なんともスリリングな読みどころである。この作家は骨太でしかも確かな書き手との印象がやはり強い。七作目の長編ということであるが、これだけで食べて行けるアメリカの出版環境に改めて驚かされる。じっくりゆっくり作品を作ることが許される環境なのだ。それこそがこうした力のこもった大作を生み出せる要因であるように思う。

 何とも頼もしい作家による、確かな傑作であり、家族小説であり、青年の成長小説でもある。アメリカでしか成し得ないプロットでも、本書は良く成功しているように思う。

0
2021年09月30日

Posted by ブクログ

ずっと待ってた著者の新作。四年?五年?ぶり。待ってた甲斐があったすごく好みな作品。1972年のヴェトナム戦争時のアメリカ。家族の形が壊れた一家の物語。親と子、兄と弟。犯罪者として刑務所にいる兄と善良な弟。警察官の父。離れていく兄と近づこうとする弟。この二人の関係性とそれぞれを思う感情がいい。孤独、不安、恐怖を感じながらも兄を追うこと。自分の世界から遠ざけようとする兄。そこに隠されているもの、隠されている弟への思い。壊れている家族でもどこかで繋がっているように見えるこういう作品が大好きで本当に面白い。何度も読み返すことになりそうなくらいたくさん感情を揺さぶられた。

0
2021年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

時は1972年、ベトナム戦争の最中。
双子の兄を持つギブソン。
優しくヒーロー的存在だった上の兄ロバートは戦死。
一方下の兄ジェイソンは、ロバートを追うように戦地に赴いたが、不名誉除隊処分を受け帰国後薬物に溺れ服役。

2年の服役期間を終えたジェイソンが街へ戻ってきた。
素行の悪いジェイソンをギブソンに近づけたくない父母、ジェイソンに対する少なくない恐れを感じながらも血の繋がり故の湧き上がる親近感を拭えないギブソン。

物語の書き出しがうまいなぁ。
家族の分裂と兄弟の友愛、そのすき間に仕組まれた犯罪により深まる溝。
弟に見せる親愛の情、悪に染まりきっていない言動を見れば、どこかに誤解があることはわかる。
ただその誤解がうまいこと解かれる方向には進んでいかず、いじらしい展開。

悪の絶対王者、二流シリアルキラー、黒幕二人の自己満行動で物語をたたみにいってしまうのがちょっと残念な方向性で、星5にはできないところ。

0
2021年10月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み逃していたジョン・ハート第二弾。
海兵隊員だったジェイソンのベトナムでの行動は立派だけど、Xの正体は最後まで明かしてもらえないのね。それがストレスだったかな。

0
2023年12月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ベトナム戦争当時、戦争から帰国した兄と弟を中心とした家族の話。あらすじから、ベトナム戦争での経験が物語の重要な部分をなすのかと思っていたが、ウェイトとしてはそんなに大きくない。逆に終盤は全く関係ない展開で、、、。
この作家の作品は好きだが、今回は今一つ。
次作に期待。

0
2022年01月19日

Posted by ブクログ

 ノースカロライナ州シャーロットの殺人課刑事のビル・フレンチの双子の息子で次男のジェイソンはベトナム戦争中に除隊させられ2年間刑務所に居たが出所してきた。ビルは、この息子を避け末っ子のギブソンには兄とは関わらない様に伝えていたがジェイソンはギビーと女の子2人を誘ってドライブしマリファナ、飲酒、性行為を楽しんで居たが、女の子の1人タイラが拷問状態で殺された。

 ジェイソンの部屋から凶器が見つかり逮捕され2年前と同じレンズワース刑務所に収監された。世間は、ベトナム戦争で虐殺を繰り返したギブソンが真犯人で麻薬・銃器・殺人を平気で犯すならず者だと噂するが、刑事の父親と弟のギブソンは、それぞれにジェイソンの無実を証明しようと奔走するが、ジェイソンは真犯人とその目的を知っている様だ。

 死刑囚Xの策略で殺人犯し仕立てられたジェイソンを危険を覚悟で真犯人を探る高校生の弟ギブソン、大人しく優等生だった彼が兄ジェイソンとの接触で女性を知り、勇敢さを知り、危険な状況下で友情や信頼の大切さを学んだ。この物語は、家族・恋人・友人を通じて1人の高校生が大人になるストーリーです。
 小説冒頭で石切場からダイブすることの出来なかったジェイソンが、全てが解決した終盤に見事にダイブを決めるシーンでこの小説の背骨がはっきりと解るのでした。

0
2021年12月05日

Posted by ブクログ

1972年、アメリカ。ベトナム戦争中に海兵隊を不名誉除隊させられ刑務所にいた兄と、数年ぶりに再会した弟。しかし、町で起こるある惨殺事件が、彼らを引き離す――戦争が人々の心に残した傷跡、そして兄弟の絆を描くクライム・フィクション。

今回はポケミスのみの刊行。
予想の斜め上を行く展開。後半は違う作家の作品を読んだような印象。うーむ。

0
2021年05月06日

「小説」ランキング