小林武彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【内容】
遺伝子の変化(変異)が生み出す"多様性"があるからこそ、生物は環境の変化に適応しながら進化してきた。その過程では、環境に適応できなかった個体が死ぬことで自然選択が働き、結果として様々な生物が様々な「死に方」をも獲得してきた。生物が死ぬ主な理由は、一つに食糧や生活空間のバランスとの調整であるが、もう一つ重要なのは多様性を維持するためであると筆者は説く。激しく変化する環境下で生き残るための「変化と選択」の仕組みの一部として、寿命や細胞死などの「死を内包した仕組み」を進化の過程で生物は獲得してきたと筆者は指摘する。「死は生命の連続性を支える原動力だから」、というのが本書の題名の問いに対する答えとして提示される。そして最後に、死を前提としている生物である我々人類は、死なずに全てを記録するAIとどう付き合っていくべきかを論考して本書は終わる。
【感想】
内容自体にそれほど目新しさはないように思われた。また最後のAIに関する言及もとってつけた感は否めなかった。
死ぬことによって多様性を維持してでも存続されるのは、受け継がれる遺伝子である。「利己的な遺伝子」はまだ読めていないので、本書と関連づけて読みたいと思う。
-
Posted by ブクログ
人は元々、コミュニティを形成し支え合って生きていく生き物。また、コミュニティで生き残るために、評価を得るために他者と比較する生物。
それが遺伝子レベルで組み込まれているので、現代のようなコミュニティが希薄で、評価の実態を得にくい状態だと幸せになるのが難しいとの事。
かつ、幸せになる為のテクノロジーの使い方も上手くない。
では、幸せになるにはどうしたらいいか。
コミュニティ作ろうよ、みんなで支え合おうよ。
確かにそうなのだが、個人的にはやはりそれだけでは人生物足りなくて。
自己実現の要素も欲しいのだよな〜と思いながら読み進める。
ここでマズローの五体欲求の図を改めて見てみた。
自己実現の欲求はあくまで、安全や所属の上に成り立つ。
自己実現で幸せを感じるためにはその土台が不可欠なのだな。
幸せを感じにくい時に、必要なことをシンプルに思い出せるようになったかも。 -
Posted by ブクログ
最近よく聴くポッドキャストで紹介されていた本。こんどお会いすることになっている学者センセイの頭の中の深いところを探るのに役立つかと思って読んだ。
やはり興味深く読んだのは、このところどっぷり浸かっている鳥類関係のはなし。川上先生は軽妙な語り口で、キャッチーな論文を紹介してくれた。恐竜学者の小林先生の項では、鳥類の祖先が恐竜だったことが学会の主流になったのは
1998年の論文発表からだった、と知った。1985年生まれの私は、子どもの頃から始祖鳥の存在は知っていたが、それが鳥と恐竜とを繋ぐ存在だという認識は薄く、あくまで鳥の祖先だ、という理解だったのだが、それが当時はふつうの解釈だったようだと再認識。
恐竜、土、岩石、老化…。知っていたことよりも知らなかったことが多かったし、自分が生きている間に分かったことも多いな、いうのが率直な感想。世界はまだまだわからないことで溢れていて、それを知ろうとする面白い人がたくさんいる、ということが伝わる本。 -
Posted by ブクログ
AIに聞いたところ、オタクとは、アニメ、漫画、ゲーム、アイドルなど特定の趣味分野に強烈なこだわりを持ち、時間や金銭を極端に費やして深い知識や情熱を持つ人を指すらしい。趣味、ではないが特定の分野に強烈なこだわりを持つ面では研究者もオタク気質なのだろう。オタク達が自分の推しを語る際の勢いは凄まじい。5W1Hを駆使して推しの尊さを押し出してくる。多分、相手に伝えたいのではない、語りながら自分の中で推しの尊さを整理している。この本に登場する研究者達もそんなオタク達だ。自分の愛する分野での推し論文をピックし、尊さを語っている。研究分野も、文章から覗く著者の性格も、どれも多様だけど、愛する論文のために筆を走らせる事が苦ではない様子は共通している、というかみんな紙面が足りなさそうだった。
自分の愛する分野を見つけ、その分野への愛を深める事によって生活できるとは、なんとも幸せな仕事なんだろうなぁと感じました。 -
Posted by ブクログ
実は「生物はなぜ死ぬのか」より以前の
「生命とはなにか」がこの春以来、
熾火のように未だ燻っている状態だったので、
タイトルが目に入った途端連れて帰った本。
はじめにの1行目から、ものすごく興味深い。
宇宙的な視野の広さをもって見ると、地球には2つのものしかありません。
それは「生きているもの」とそれ以外です。(3頁)
そうそう!その生きているものとそれ以外の決定的な違いを言語化してほしかったのよ!
…と、思いながら第1章、
そもそも生物はなぜ誕生したのか
私にとってこんな最高の掴みはない。
ちなみに、先ほどの私の問いはあっさりと明かされる。すなわち、
生物と無生物の大きな違いは、単独で存在でき、それ自身で増えることができるかどうかです。(35頁)
序盤で早々に回答を得られてしまっても、この本が面白かったのは、昔学校で習ったはずの遺伝物質のお話や、最近ようやくその真意を少しだけ理解できてきたように思う進化論について、丁寧な図解とともに解説してくれているから。
そもそも、そこがわからないと、この本の大きな問いであるところ「死」について、説明しきれないのだろう。
ただ、正直めちゃくちゃ難しい。
通読したけど、細かい部分(RNAやDNAの塩基配列とか複製とかそういうところ)は2割もわかっていないと思う。
図解もあってめちゃくちゃ丁寧なんだけど、多分私に圧倒的前提知識が足りてない。
前提知識が足りていないと自覚しつつも、この本の向かうところ、「生物が死ぬこと」について、生物学的見地から紐解かれる内容は大変面白い。
捕食されて死ぬのか、老化により死を迎えるのか、個体としての死を丁寧に追っていくかと思えば、種としての生命の循環に繋がったり、ハッとする箇所がいくつもあった。
そんな中でもやはり、生物についていつかどこかで耳にした「ガスの火」の比喩がめちゃくちゃしっくりきたのが、自分的に次の足掛かりになりそうな知識のアップデートになると思う。
さらに、最後の方で書かれていたAIについての著者の見解が、私が今ぼんやり思っている不安の輪郭を見せてくれている内容で、「死」についての結論よりも印象に残った。
今年に入って、自分の頭で考えたことを誰かに伝えたり、そもそも自分の頭で考える習慣に対して異常なまでに興味を惹かれるのは、ここに対する自分なりのカウンターだったのかもしれない。
生命とはなにか?
この本による言語化でスッキリしつつも、私にとってこの問いが持つ熾火はまだまだ消えそうにない。