小林武彦のレビュー一覧
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ヒトは200万年ほどまえから急速に進化しつつ、それに応じてテクノロジーも生み出し、それに応じて幸せも手に入れたはずだった。しかし、ヒトというより人――特に現代人――は多少の幸福感は覚えても、著者が定義する幸せ、すなわち死からの距離感がもたらす原初的かつ本質的な「幸せ」からは遠ざかってしまった。
というのが本書の議論の核となるものです。
なぜ人は「幸せ」になりにくいのか。
それは著者によれば、弥生時代に稲作文化がもたらされ、定住が始まり、持つ者と持たざる者が生まれて以来、進化の過程で獲得したDNAと社会のあいだに齟齬が生じてきたからです。
「極端な言い方をすれば」と、著者は終章で述べます―― -
Posted by ブクログ
ネタバレ狩猟採集の小さいコミュニティで生活していた頃は、その日暮らしであり所有という概念が無く格差も無かった。
また、貢献に応じて分け前が配分されたため、多くの取り分を得ているということはコミュニティに貢献していることになった。そのため、豊かな人がいることは自分たちにも還元されることであり、自慢することは互いに嬉しい行為だった。
他者比較についても、コミュニティ内で貢献度が低い場合はコミュニティから離脱を余儀なくされる。単独の場合、集団でいる場合と比べて生存の確率も跳ね上がる。そのため、死を逃れるために常に自分のコミュニティ内での立ち位置を気にする性質が備わっていった。
自分はどうしても他者比較 -
Posted by ブクログ
なぜヒトが幸せになれないか
その原因は
遺伝子と環境の不適合
だとのこと。
この本をしっかり読み込むとその意味がわかってくる。
うーーーん。遺伝子レベルで考えるとそうなんだ。と考えざるを得ないことがわかった。
私たちがしたくなることは、みんな遺伝子がそうなっているからで、そのプログラムによって、行動している。
でも、この遺伝子というのは、何十万年という単位で作られてきたものだから狩猟最終時代の遺伝子であって、ここ数千年で始まった農耕生活は、まだ私たちの遺伝子を変化するところまでは行っていないということで、遺伝子が環境とミスマッチになっている。
それで、幸せが感じにくくなってしまっているとのこと -
Posted by ブクログ
この著者先生のなぜ老いるのかの本を読んで、こちらも読んでみました。やはりと言うか、こちらの方が面白かったです。こちらにも老いの話は載ってますし。
生物学者の観点から、地球の生き物のライフサイクルを眺めた本です。
生まれてくるのは偶然の利己的な行為。
死ぬのは必然の利他的な行為。
この言葉が印象的でした。これを読んだからと言って死ぬのが怖く無くなると言う訳ではないですが、死ぬことは何か特別な恐怖の出来事ではないんだと思うことが少し出来ました。
それと、最後に記載されている、AIの出現が及ぼす影響のあたりは確かにそうかもしれないと思って少し怖くなりました。AIは便利だけど使うのはあくまでも -
Posted by ブクログ
138億年前、「ビッグバン」により宇宙が誕生し、46億年前に太陽系ができた。原始の地球で化学反応がくり返され、やがて偶然の産物から最初の「細胞」ができた。原始の細胞は「変化」しながら存在領域を広げ、様々な環境の中で「選択」的に生き延びたものが更に「変化」し多様性を増していった。葉緑体やミトコンドリアの細胞内共生により真核細胞が誕生し、やがて多細胞生物が生まれ、細胞間の役割が分化し、生物はより多様に、そしてより複雑な機能を獲得していった。天変地異による大量絶滅と、新たな生物相による秩序の再生は「変化と選択」の連続だった。その全過程において「死ぬ」という仕組みは保存されてきた…すなわち「死ぬ個体
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ネタバレ『なぜヒトだけが老いるのか』 小林 武彦 著
生殖期を過ぎても生き続ける生物は、(短期間生きるシャチやゴンドウグジラ以外)ヒトのみであるという点に着目して分析した内容です。いわゆる「おばあちゃん効果」(子育てに協力)や長老による課題解決など、集団においてシニアに重要な役割があったためというのが筆者の見解です。進化には目的はなく、「集団生活に適応した、他者と協力できる」サルだけが結果的に生き残ったのであり、「なぜヒトだけが老いるのか」ではなく、「老いた人がいる社会が選択」されたと言います。
それ故に、シニアはインプットもさることながら、これまでの「蓄積を吐き出すアウトプット」を多くすべき