小林武彦のレビュー一覧
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今までありそうで(あったかもしれないが)見つけられていなかったテーマ。いろんな分野の先頭を走る研究者が各々愛する論文を語るという、極めて興味深く面白かった本。各々の研究テーマが違うのはもちろん、各々の研究者の感性や語り口がそれぞれ全く違っていたのも面白かった。一般向けに少し噛み砕いてくれている人もいれば、専門用語もりもりで愛が溢れている人もいた。どちらも素晴らしいと思う。いわゆるオタク文化にも通ずるところがあると感じた。専門家から見た「私見を含んだ」サイエンス的エッセイは非常に面白かった。
大学時代を振り返ると、論文を読むのは嫌いではなかったし、面白かったがやはりどこかタスクの一つになっていて -
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生物学、遺伝子などを研究する著者が、『生物はなぜ死ぬのか』『なぜヒトだけが老いるのか』に次ぐ、生物としての私たちの存在の意味を考えるシリーズの三作目と位置付ける一冊。
本書で、著者は、「幸せ」=「死からの距離が保てている状態」と定義し、生物にとっての幸せとはどういう状態のことで、ヒトは進化の中で、その幸せになれなくなった背景やその処方せん、未来への警鐘を鳴らします。
「幸せ」になる方法は、すでに遺伝子に刻まれているとし、
原動力は、生存本能と生殖本能に尽きる。生存本能の一つの形として、ヒトは集団の中で生き残るために、空気を読み、自分の位置を認識し、集団から追い出されないように、他の人より少しだ -
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生まれて、死ぬ。全ての生命はそれを繰り返して、今の地球環境で生存していることになります。生まれて死ぬを繰り返す中で進化してきているのです。
最初に生まれた生命が不老不死だったとしたら、生物学的な進化を遂げるわけでも無く、その形のまま地球環境が大きく変化した時に適応できずに生命は終わってしまうことでしょう。遺伝子に老化や死は組み込まれているのだそうです。
本書には難しい話も出てきますが、生物に関する興味深い話を学ぶことができます。生物として考えると、生と死を理解できるのですが、身近な人やペットが亡くなると、とてつもない喪失感を味わい、なぜ死ななければいけないのか?と考えてしまいます。本書は、我が -
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ネタバレ現代社会でヒトが「幸せ」を感じくくなっている。その原因を著者は「遺伝子と環境の不適合」と説明する。
700万年にわたる狩猟と採集の時代の間に、ヒトの心と体はコミュニティの中で他者と助け合って生きるよう最適化されてきた。コミュニティにおける他者との関わりの中で「ヒト」は「人」になっていった。協力、共感、利他性、正義、ベターを目指す性質などは、進化の過程で遺伝子に刷り込まれたヒトの本能。
「遺伝子と環境の不適合」は「弥生格差革命」に始まる。農耕と定住化は富の偏りや身分格差をもたらし、コミュニティは集団から家族単位へと変化した。テクノロジーが発展し、寿命は延び、物質的な生活は豊かになったが、 -
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生物としてのヒト、社会に生きる人。これを区別することが肝要。
そう、人はヒトなのだ。
ヒトの生物学的な幸せを「死からの距離が保てている状態」と定義し、
ヒトの歴史で、死がどういう位置づけになっていったかを追う。
直立し、体毛を失ったことで集団子育てに適した側面。
生物は子を産んで、育てたら死ぬ。逆に言えば育てている間は死なない。
ヒトは、孫の世話もするようになって、長寿化した。
…やはり役割は必要なのだ。別に子育て、孫育てじゃなくても。
狩猟から農耕に移ったことで、食糧事情は安定したが、狩猟時代の「公平」が、
農耕時代、日本でいえば弥生時代に格差が生まれた側面。
格差は一番人を不幸せにする -
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そうか、老化は必然なんだ。
そう気づかされたから、昨今の体力の低下とか病気とかを悲観するのではなく、正面で受け止められる気がする。
小林先生が易しい言葉に落としてくださっているように、「生き物が生まれるのは偶然ですが、死ぬのは必然なのです。壊れないと次ができません。これはまさに、本書で繰り返してきた「ターンオーバー」そのものです。」P202 という事実を踏まえれば、自分が死ぬこともそう悪くないことだと思う。
願わくばこの何十億年もかけて進化を遂げたいのちのルールを、昨今の商業主義による激しい開発競争ただ中の抗老化研究が、真摯な検証もないままにひっくり返してしまうことのないよう祈っている。 -
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小難しいタイトルからは想像できないかもしれないが、分かりやすく面白い、しかも小ネタまで盛り込み、読み手の門戸を広げてくれている生命科学の本。
不幸の始まりは、「弥生格差革命・YKK」(本文より)。定住化によりヒトは貯蓄することを覚え、それが格差を生み、他者との比較・競争のループから抜けられなくなる...YKKのくだりに笑いつつも、なるほど!不幸の歴史は弥生からなのか~とその根深さに驚嘆。
ヒトはテクノロジーの発展に見合う速度で進化していない、というのも『メンタル脳』アンデシュ・ハンセン/著で読んだことの裏付けとなっていた。
この小林武彦先生のシリーズは中学生にも是非読んでもらいたい。 -
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「老い」や「死」に対するイメージを大きく変えてくれる一冊。
自然界の生き物のほとんどは老いずに死ぬ。身体機能や生殖機能が衰えた後も長く行き続ける「老い」はヒトに特有の現象である。「変化と選択」の長い歴史の中で「老化」という性質が保存されたからには、「老化」にも生物学的な意味があるはず―。この本はそんな序論から始まる。
序盤では、細胞や個体レベルの「死」や「老化」が、「DNAの損傷の蓄積」によって起こるという生物学的なメカニズムについて、わかりやすく順を追って説明される。続いて、社会性の生き物であるヒトの進化の過程で「老い」はなぜ選択されてきたのか、コミュニティに年長者が存在することがど -
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生物学者である小林武彦氏がこの本で読者に伝えたかった内容は、実は宗教哲学者のようでした。
第7章 人は最後に老年的超越を目指す の中の「老年的超越を目指して」の最後で以下の言葉を語っていました。
やがて目も見えなくなり、私を呼ぶ声も遠ざかり、ただただ幸せな気持ちに包まれて、ここはどこだったのか、私は誰だったのかなどはどうでもよく、宇宙そして全ての生き物とのつながりを感じながら、旅立つというより、元いた場所に戻る安堵感に包まれて長い眠りにつくのです。また目覚める日を夢見ながら
と締めくくっています。
ここまでたどり着くため、第1章から地球誕生からの奇跡の生命体の誕生からこの本は始まりまし -
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スケール大きく、知的刺激溢れる。しかも、説明上手で分かりやすい。生物学の込み入ったDNAの話とか、関心があるのに理解が及ばない領域に一歩踏み入れたい人にはオススメの入門書と言えるだろうか。話は宇宙の成り立ちから始まる。
現在観測できる最も遠くの星は、2018年にハッブル宇宙望遠鏡がとらえたイカロス。地球からの距離は90億光年。幅が30メートルある巨大な望遠鏡TMTでは、138億光年先が見える。宇宙にはおよそ10の22乗個、つまり1000億の1000億倍以上の恒星があると推定される。太陽系のように恒星である太陽の周りに惑星が8個あるのは例外的に多く、恒星の周りに惑星がない方が一般的。現在までに -
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生命の誕生以来、あらゆる生命体に生じる「死」。
人類も例に漏れず、どんな偉人でも必ず死ぬ運命にあり、王侯貴族が不老不死に向けた儚い努力をしたののの実らず、必ず死んできた。
そのように忌むべき存在として語られがちな、死であるが、そもそもなぜ「死ななくては」いけないのか。
系としての「死の目的」は何かあるのかを問うた本書。
個人的には死生観の転換を促したといってもいいほどの良書。
生物的な死の役割と、生命を構成する基本設計も学べます。
1.そもそも生物はなぜ誕生したか
2.そもそも生物はなぜ絶滅するのか
3.そもそも生物はどのように死ぬのか
4.そもそもヒトはどのように死ぬのか
5.そもそも -
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概要: タンパク質をコードしている領域以外(非コード領域)は遺伝子の発現制御や進化に非常に強く関わっている; ヒトゲノムが全て読まれたと言われているが、読み方の都合上繰り返し領域はうまく読めない; スプライシング; エクソンとイントロン; 偽遺伝子; レトロトランスポゾン; 遺伝子を眠らせるヘテロクロマチン化; リボソームRNA遺伝子; 脆弱X症候群; グロブリン遺伝子の再編成; 胎盤とレトロとランスポゾン; イントロンと転座と進化; 遺伝子増幅; 色覚; 偽遺伝子が発現制御に関わる; 非コードDNAと寿命、がん
感想: けっこう難しいが非常に面白い。もう1回読む。