磯野真穂のレビュー一覧

  • コロナ禍と出会い直す 不要不急の人類学ノート

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    すっかり日常を取り戻し、コロナ禍のことは既に遠い記憶となりつつある今日この頃。あらためて思い出してみると、色々と奇妙なことが起こっていたように思う。この本は、文化人類学というツールを使いながら、あのとき何が起きていたかを丁寧に検証し、同じ過ちを繰り返さないようにと警鐘を鳴らす大変有意義な本だ。ただ正直なところ、またパンデミックが起きたら日本人は同じことを繰り返すんだろうなという落胆も禁じ得ない。

    たびたび発せられる「気の緩み」という言葉に着目したり、専門家=医療従事者の目線だけで「不要不急」が決められていることに疑問を持ったり、文化人類学という視点は非常に面白い。県境を跨いだ移動にあれほどま

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    2025年10月26日
  • コロナ禍と出会い直す 不要不急の人類学ノート

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    ・パーティション
    2021/4 飲食店に向けての第三者認証制度のなかで必須項目の1つとなる
    2021/8/19ニューヨーク・タイムズ記事、パーティションのエアロゾル滞留が感染リスクを高めるという内容
    2022/7/14 感染拡大防止のための効果的な換気について、パーティションは空気の流れを阻害しないように設置されなければならない
    効果に疑問符がつけられたにもかかわらずパーティション設置要項は変更なし
    5類移行後に徐々に姿を消していく
    ・新型コロナと出会い直す 武漢肺炎
    実際に掛かる前に情報によって知る、直接経験を書いたまま情報経験のみが圧倒的に先行
    福井新聞に掲載された感染者相関図の人気、社会

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    2025年07月26日
  • ダイエット幻想 ──やせること、愛されること

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    ネタバレ

    現代社会の1つの当たり前として「あなたらしさ」や「人それぞれ」の賞賛が挙げられるが、それらを拠り所にできる前提として他者からの承認が必要である。自らが他者に呼びかけられることで始まることを認めつつ、他者からの声だけで満たされないようにするためには、自らの存在を点ではなく線としてとらえる見方が必要。

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    2024年11月19日
  • 医療者が語る答えなき世界 ──「いのちの守り人」の人類学

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    医療者として医療を少し外から当事者を見る機会がないので、客観と主観の間で読める一冊であった。自身の心が科学などに盲信してしまい辛いことも見なくなってしまうのも実際で、それがそれぞれの登場人物により言語化され、再度自身の信念を新たに強固に立て直せるような、そんな気持ちにさせてくれる一冊である。医療者として勧めたい本である。

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    2024年10月27日
  • ダイエット幻想 ──やせること、愛されること

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    タイトルはダイエットだけれど、文化人類学の視点で「痩せ願望」について書かれている一冊。痩せたいの根本にある「愛されたい」という誰しもが抱く感情に触れながら進んでいく。
    他人との関係性、社会的立場、可愛いの定義など、生きていく上で他者との関わりが必要だということが学べます。
    「食=生きる=他人」と関わるという「タグ付けされた世界」を我々は生きてるのだな。

    自己肯定感=社会的自尊心にばかり目が向けられて、他人ファーストの人が増えている現代にうってつけ。自己肯定感は基本的自尊心が土台にあるから成り立ってるんだよ!と伝えたい。主語が常に「あの子」の人は、比較対象が私ではなく他人にいってしまいます。(

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    2024年11月22日
  • 他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学

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    情報経験が体験を上回る現代の問題を考えさせられた。特にコロナ対策における、自分の思いを事実のように語る姿勢には違和感があった。また、人生は長さよりも質や深さが大事であり、最短距離を目指すのではなく、多様な経験を積むことで豊かになるという視点を得た。人は個人ではなく、他者との関係性の中で形成されるという「分人」という考え方にも共感した。

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    2024年09月22日
  • コロナ禍と出会い直す 不要不急の人類学ノート

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    この本を通じて、私はコロナ禍での日本社会の対応が、どれだけ多くの混乱や不確実性を生んだかを再確認しました。県外リスクの指摘やアクリル板の設置、さらには国民の気の緩みが感染拡大を招いたという論調など。様々な対策や指導が行われましたが、それらが果たしてどれほど有効だったのか。
    日本人がそのような状況下で、身体的に「基本だ」とすり込まれた行動様式は、理論や合理的な考えが入り込む余地を失わせ、感情や不安に基づく対応が優先されるようになったのではないかと感じました。

    さらに、「あなたの無自覚な行動が人を殺す」というフレーズが、まことしやかな説得力があり、戦時中の日本国民の感情と重なる部分があると感じま

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    2024年08月24日
  • 他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学

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    人類学の眼差しは普段巡り会う機会がなくとても新鮮で、他者への想像力をより豊かにしてくれる感覚があります。
    本書も例外なく興味深く、サイエンスを冠しながら単純化されたエビデンスも確かでない狩猟採集民族への幻想に対する批判や自分らしさが結局他者との関係性の中で成立することへの指摘などに触れることができ、自分自身がなんとなく感じていた違和感のひとつ答えのかけらに出会った感覚がありました。

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    2024年08月21日
  • ダイエット幻想 ──やせること、愛されること

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    全国の思春期の女の子に配りたい。

    やせたい気持ちを否定するのではなく、
    「どう付き合っていくか」という切り口なのが好き。

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    2024年04月14日
  • 他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学

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    この本の素晴らしさは後書きにあると思う。本書を購入された際に後書きを見てほしいが、ここでは簡単なサマリを備忘録的に残しておく。

    人は相互理解をスムーズにするために共通規範を導入し、お互いの意思疎通で齟齬が生じないように調整している。例えば、ビジネスメールでは「いつもお世話になっております」と冒頭に書くのがマナーになっているが、この一文があるだけで「私はちゃんとビジネスマナーを分かってますよ」と相手に伝えるシグナルになり、相互理解を円滑にするきっかけになっている。そして、共通規範はコミュニケーションの予測可能性を与える。ビジネスメールのフォーマットが決まっているから、読み手は簡単に内容を理解で

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    2022年10月30日
  • ダイエット幻想 ──やせること、愛されること

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    ネタバレ

    20年前の自分に読ませていたら、頼りないタグを追い求めることにエネルギーを消費せず、踏み跡を刻む他者との出会に目を開くことができたのではないか。

    とはいえ、今の自分を振り返れば唯一無二の私のラインがそこに確実にあり、そのムダの多いうねった線にも愛着を感じられるくらいの年の取り方ができていると気づく。

    数字と色の概念のない部族の世界には、何かを「理想的」とする概念もないのかも知りたい。

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    2022年09月23日
  • 他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学

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    物事を簡単に語って済ませてしまわない知性。
    何度も読み返してみたい。そんな本との出逢いに感謝します。

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    2022年08月16日
  • ダイエット幻想 ──やせること、愛されること

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    他者の視線がわたしの身体に入り込む

    タグ付けする関係性を越えるには
    タグ付けする関係性に飛び込み、そこから共にラインを引く関係性を構築して行くこと

    わたしらしさにも、他者の承認が必要ということにもたしかにと思う。

    奇しくも同時に読んでいた「ナチスのキッチン」とも共通点を見いだす。

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    2022年04月27日
  • 医療者が語る答えなき世界 ──「いのちの守り人」の人類学

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    医療人類学者・磯野真穂さんの著書。インタビューを通して、医療者の苦悩や葛藤が描かれていて、人類学的視点から考察されている。

    特に気になったのは、医学と医療の違い、そして「患者中心の医療」のこと。

    ・・・

    p163 「医療者の仕事の根幹は、モノとしての人間を徹底的に標準化することで体系づけられた医学という知を、それぞれの患者の人生にもっとも望ましい形でつなぎ合わせ、オーダーメイドの新しい知を患者と共に作り出していくことにある。」

    p164 「医療者の仕事は医学を医療に変換すること。」

    まさにこれは患者中心の医療のことじゃないかと思って読み進めると、やはりエピローグにもまとめられていた。

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    2022年04月10日
  • 他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学

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    良書。ターニングポイントで読み返したい一冊。「自分らしさ」の考察は、先日読んだ『ダイエット幻想』の内容から発展したもの。日本人の遺体に対する考えに関する項では、原爆で亡くなった曽祖父と大叔母を「火葬できた」事に感謝していた曾祖母の言葉を思い出した。

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    2022年03月02日
  • ダイエット幻想 ──やせること、愛されること

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    ダイエットがテーマではあるが、文化人類学の見地から、他者との関わり方、自分とは何か、幅広い思考の手助けとなる良書。昨今のコロナ専門家との距離感の参考にもなる。

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    2022年02月01日
  • 他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学

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    優しくて、丁寧な内容だった。「正しく考える」「正しく生きる」ということを少しでも窮屈に感じたことがある人であれば、読むことで少し自由になる(これまで立脚していた点が、さまざまある点のうちの一つに過ぎず、他にも立脚できる点があることがわかる)のでないかと思った。

    情報経験だけでなく直接経験を多く持ちたくなった。また、内心怯えながらでも、多くのものや人に出会い続けて、ラインを積極的に引き続けていきたいと感じた。

    個人的な備忘のために以下少し要約を記載。
    味わい深い内容なので、また読み直したい。

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    「自分らしさ」と聞くと一般的には、自らの内部にある考えや思い

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    2022年01月27日
  • 他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学

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    他者と関わりながら生きるとは、どういうことなのか?
    一見当たり前のような問いの本質は、人間とは?生きるとは?という人生観につながってる。
    本書では様々な事例を元に、この哲学的な問いに丁寧な補助線が引かれていく。
    医療における私たちが感じる選択の難しさや、様々な文化を持つ民族の考え方、コロナ禍で日々私たちを追い込んでいく数字など、読んでいて悲しくなったり驚いたりしながら、人との関わり方の多様な視座が示される。
    他者と愛を持って関わりたくなる一冊。

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    2022年01月23日
  • 他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学

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    この本は、全体を通して「手ざわり」がテーマになっていると思います。
    まず、ひとりの医師としてこの本を読んで、自分は目の前の患者の生活を過度に医療化してしまっていないだろうかと、振り返るきっかけになった。エビデンスや統計学的情報を絶対的「正しさ」として振りかざして、その人のもつ経験や物語、「手ざわり」感を、ないがしろにしてしまっていないだろうか。
    後半で語られる「関係論的時間」の概念は、時間というある種無機質にも感じるものに、「手ざわり」感をもたせてくれるようで、新鮮に感じました。

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    2022年01月18日
  • コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線

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    ネタバレ

    1人めの養老先生の「私の人生は「不要不急」なのか?」という問いでガツンと来る。数に限りがある人工呼吸器を若い患者、高齢の患者どちらに使うかで、現実にトロッコ問題が発生しているとは。「トライアル・アンド・エラー」ではなく「トライ・アンド・エラー」という表現は相変わらず気になる。伊藤隆敏さんのページにもあるように現金給付は一律じゃなくてもよかったんじゃないかと思う。ブレイディみかこさんのページにあるように普段質問しなかった子がオンラインだと質問するようになったみたいな予想していなかった変化は今後も起こるだろう。

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    2020年09月22日