磯野真穂のレビュー一覧

  • 急に具合が悪くなる

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    ガンが進行し、医師から「急に具合が悪くなる」ことがあるからそれに備えるよう告げられた哲学者が、今後は起こり得るリスクを想定し、つど合理的な判断を下さねばならないというライフステージに立つことになって、ふと「急に具合が悪くなる」ことは誰にだって起こるといえば起こることなのに、ふつう分岐点や選択肢について一々意識して人生送ったりしてないよな、と、分岐点と選択を伴う人生の在り様への違和感について疑問を抱くことから、同年代の文化人類学者との間で往復書簡という方法で思索の旅が始まって行く。

    違和感の正体は「分岐点でそのどちら側かを選んでも、選んだ結果としての未来を選びきることができない(選択の判断基準

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    2026年06月08日
  • 急に具合が悪くなる

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    泣いた。めちゃくちゃ泣かされた。

    ガンを患う哲学者の宮野さんと人類学者磯野さん二人の書簡集。
    序盤は、ガンという病を「偶然」患うということについて、その偶然性というものに関する解釈を哲学と人類学から行う。
    このあたりは実に学者同士らしい。実に客観的なもので、同じく偶然を扱うも、その偶然はあるいは統計的な誤差とか、平均からは離れた値として処理する私のような職業の者にとっては「なるほど」と膝を打つような、若干アカデミックな視点でやりとりを読む。
    両者は終始このスタンスを崩さない。
    崩さないのだが、書簡の中で、明らかに両者の関係が深まっていくのが見て取れる。
    常に客観的なのだが、深い愛情のようなも

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    2026年06月06日
  • 急に具合が悪くなる

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    気迫に押されてなのか、何なのかわかんないけど涙が止まらないし胸が苦しいし頭まで痛くなってきた。受けている感動と衝撃が、出てくる言葉とあまりにもチグハグで混乱する。
    これを映画でどう表現したっていうんだろう。観たほうがいいんだろうか。想像もつかない。

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    2026年06月04日
  • 急に具合が悪くなる

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    とてつもない強度に満ちた本。存在は知っていたもののちゃんと読めていなかったが、映画化タイミングで手に取って本当によかった。
    毎回のやり取りで進行する病状とともに、京都学派の哲学者たちとティム・インゴルドなどにより明晰になっていく人生のあり方には、我が身を振り返らざるを得ないところが多い。濱口竜介監督が映画化原作としたのもとてもわかるというか、彼の一貫したテーマ(と私は思っている)「人生という舞台の演じ方」が終始一貫して書かれているように思う。

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    2026年06月02日
  • 急に具合が悪くなる

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    こんなにすごいやりとりを読ませてもらえるなんて、驚きと感動と「病」という現実が押し寄せてきています。
    メールのCCに自分も入れてもらえていたような感覚で進むやりとり。
    本当の意味で知的で感性の鋭い人同士が言葉を紡ぐと、こんな会話になるんですね。
    タイトルにあるように「急に具合が悪くなる」事も含め、ドキュメンタリーを文字で味わったような感覚になりました。
    カンヌでの女優賞も哲学者・宮野さんに届いていますように。
    人類学者・磯野さんが最後に書かれている舞台裏の項は読んでいて涙が止まりませんでした。

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    2026年05月27日
  • 急に具合が悪くなる

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    なんだろう。ものすごい密度のものを読んでしまった。
    こんな本があるんだ。こんな出会い方と別れ方も。
    ふたりの関係がうらやましい。

    「急に具合が悪くなる可能性がある」と言われた哲学者でガンを患う宮野さんが、病を抱えて生きることの不確定性やリスクの問題を、医療人類学者の磯野さんと専門的に深めていきたいと考えたところから始まった往復書簡。これを続けるうちに、宮野さんが「ほんとうに急に具合が悪くなる」。

    読みながら、宮野さんが「今どうされているのか」という情報を調べたい気持ちに何度も蓋をしながらいったん最後まで読んで打ちのめされ、あらためて「はじめに」戻り、そういうことだったのかと思う。
    私たちは

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    2026年05月26日
  • 急に具合が悪くなる

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    濱口竜介監督が映画化するとのことで。まさしく濱口映画のモチーフである「偶然と必然」「他者との対話と関係性」の究極のような書簡集で、完全にくらってしまった。奇しくもアルモドバル監督作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』にも通じる思想を感じた。

    がんに侵された哲学者・宮野真生子と彼女に伴走することとなった人類学者・磯野真穂。哲学者ならではの緻密な視線で生死や己の思考を見つめる宮野さんと、驚異の真摯さと引き出し力で相対する磯野さん。お互いの知性や人間性への信頼と尊敬がなければ構築し得ない関係性。一年足らずの間にこの出会いのわくわくと喪失の恐怖が急降下しながら同時にやってくる稀有な体験を走り抜き、文字にし

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    2026年04月13日
  • 急に具合が悪くなる

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    死は確かにやってくる、しかし今ではないのだ。

    そうだよね、、、死は必然なのに、存在しないかのように生きている。
    まるでずーっと生きていられるかのように思っちゃってる。

    余命わずかな哲学者と人類学者の書簡。

    賢いお二人なので、ちょこちょこ難しい話が出てきて立ち止まって調べたりしつつ、、、でも書簡なので読みやすい。

    ただ、全体的にずーっと考えさせられながら読んでた。
    考えるんじゃなくて、考えさせられるって感じね。

    約束って?多様性って?不幸って?不運って?
    頭ん中も、心の中もゴチャ混ぜになるけれど、読み終えた後は清々しく幸せを感じる。

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    2026年03月28日
  • 急に具合が悪くなる

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    衝撃的な重さの本だった。哲学者の癌が悪化したところから始まる、哲学者と人類学者の往復書簡。後半でモルヒネも効かないくらいに病状が悪化するあたりから、お互いの言葉が魂から発せられるように感じて、読んでいて苦しいくらいだった。強烈なラブレターを読んでいるような気になった。死の間際にあっても言葉を紡いだ宮野さんと、それを全て受け止め、時には鋭過ぎると感じるような言葉も投げる細野さん、2人の逃げない覚悟に圧倒された。

    「不運に見舞われても、自分の人生を手放さなければ不幸ではない」
    「時間とは、物理的時間と、その人が残した踏み跡の深さを掛け合わせたものの厚み」

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    2026年02月16日
  • ダイエット幻想 ──やせること、愛されること

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    ルッキズムに囚われすぎてる私にとって、とても刺さった作品でした。
    なぜ痩せたいと思うのか考えたら、まわりが細いからとしか言いようがないもん。
    日本人女性は細すぎ!男はそれを正当化しすぎ!

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    2026年02月10日
  • 急に具合が悪くなる

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    巻頭の方は、「磯野さん、もう少し思いやりのある言葉選びをしてあげて」と思ったり、「宮野さん、そこまで強くなくていいのでは」と思ったり、学者同士が病気を語ると、こんなにも俯瞰な眼差しになるのか…とやや遠巻きに見ていたが、ページが進むにつれ病が進行し、2人の文体も研ぎ澄まされ魂の語りのようになっていくのが圧巻だ。以下、宮野さんの言葉。「たしかに私はガンを患っています。でも、それは私という人間のすべてではないのです。ガンになった不運に怒りつつ、なんとかその不運から自分の人生を取り返し、自分の人生を形作ろうともがいている。制限があっても、不運に見舞われていても、自分の人生を手放していないという意味で私

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    2026年01月07日
  • 急に具合が悪くなる

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    ネタバレ

    タイトルから、自律神経の乱れに悩んでる方々の対談なのかと思っていたら、それどころの話ではなかった…。

    こんなにも生きることに対して貪欲で、切実な心情がリアルタイムで綴られた著作はなかなかないと思う。何より、手紙での交流という形式が要。自己分析だけでは出てこなかったであろうテーマや、互いに目を背けたり隠してしまっていた気持ちに話が移っていく過程が生々しくて、命を感じた。

    後半は磯野さんの熱いエールに胸が熱くなると同時に、それだけ宮野さんに死が迫ってきていることがひしひしと伝わってきて、怖かった。

    最後まで自分の仕事や生き方、そして友人に誠実だった宮野さんは凄い方。ご冥福をお祈りします。

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    2025年11月23日
  • 急に具合が悪くなる

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    読み進め、残りのページが減っていくたびに「宮野が死んでしまう」と思った。
    そわそわした気持ちになりながら、読み進めた。

    6便から、宮野の病状は明らかに悪くなってきている。
    モルヒネを使用するようになった。
    ただし、文章の明晰さは最終便である10便まで変わらなかった。
    むしろ彼女の思考はより自由により世界の真理に近づいているように思う。
    普通、モルヒネを使わざるを得なくなるような終末期には、頭が回らなくなると思うんだけどなあと不思議で仕方ない。

    そもそもこの本を手に取ったのは、ふたりの著者が文系研究者で、死について興味があったわたしは「研究者が自分の死について語る様子を見てみたい」と思ったか

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    2026年05月23日
  • 急に具合が悪くなる

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    激しい痛みを伴う死の間際でこんな生き方ができるのか。最期まで自分(問うこと、関係すること)を手放さないで生ききる。それを可能にしたのは著者のそれまでの生き方によるものだろうが、最終コーナーの伴走者(ボクシングのセコンドという例えの方が適当か)である磯野の存在が言うまでもなく大きい。互いに剛速球を投げ込み合い、己の身も心も賭けて哲学を実践している。二人が死の間際の「いま、ここ」をつきつめて行く中、二人のやりとりは図らずも「あしたのジョー」のようなドラマ性をも帯びていく。ものすごい熱量に触れた感覚が読後も強く残った。

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    2025年11月24日
  • コロナ禍と出会い直す 不要不急の人類学ノート

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    すっかり日常を取り戻し、コロナ禍のことは既に遠い記憶となりつつある今日この頃。あらためて思い出してみると、色々と奇妙なことが起こっていたように思う。この本は、文化人類学というツールを使いながら、あのとき何が起きていたかを丁寧に検証し、同じ過ちを繰り返さないようにと警鐘を鳴らす大変有意義な本だ。ただ正直なところ、またパンデミックが起きたら日本人は同じことを繰り返すんだろうなという落胆も禁じ得ない。

    たびたび発せられる「気の緩み」という言葉に着目したり、専門家=医療従事者の目線だけで「不要不急」が決められていることに疑問を持ったり、文化人類学という視点は非常に面白い。県境を跨いだ移動にあれほどま

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    2025年10月26日
  • コロナ禍と出会い直す 不要不急の人類学ノート

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    ・パーティション
    2021/4 飲食店に向けての第三者認証制度のなかで必須項目の1つとなる
    2021/8/19ニューヨーク・タイムズ記事、パーティションのエアロゾル滞留が感染リスクを高めるという内容
    2022/7/14 感染拡大防止のための効果的な換気について、パーティションは空気の流れを阻害しないように設置されなければならない
    効果に疑問符がつけられたにもかかわらずパーティション設置要項は変更なし
    5類移行後に徐々に姿を消していく
    ・新型コロナと出会い直す 武漢肺炎
    実際に掛かる前に情報によって知る、直接経験を書いたまま情報経験のみが圧倒的に先行
    福井新聞に掲載された感染者相関図の人気、社会

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    2025年07月26日
  • ダイエット幻想 ──やせること、愛されること

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    ネタバレ

    現代社会の1つの当たり前として「あなたらしさ」や「人それぞれ」の賞賛が挙げられるが、それらを拠り所にできる前提として他者からの承認が必要である。自らが他者に呼びかけられることで始まることを認めつつ、他者からの声だけで満たされないようにするためには、自らの存在を点ではなく線としてとらえる見方が必要。

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    2024年12月12日
  • 医療者が語る答えなき世界 ──「いのちの守り人」の人類学

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    医療者として医療を少し外から当事者を見る機会がないので、客観と主観の間で読める一冊であった。自身の心が科学などに盲信してしまい辛いことも見なくなってしまうのも実際で、それがそれぞれの登場人物により言語化され、再度自身の信念を新たに強固に立て直せるような、そんな気持ちにさせてくれる一冊である。医療者として勧めたい本である。

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    2024年10月27日
  • ダイエット幻想 ──やせること、愛されること

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    タイトルはダイエットだけれど、文化人類学の視点で「痩せ願望」について書かれている一冊。痩せたいの根本にある「愛されたい」という誰しもが抱く感情に触れながら進んでいく。
    他人との関係性、社会的立場、可愛いの定義など、生きていく上で他者との関わりが必要だということが学べます。
    「食=生きる=他人」と関わるという「タグ付けされた世界」を我々は生きてるのだな。

    自己肯定感=社会的自尊心にばかり目が向けられて、他人ファーストの人が増えている現代にうってつけ。自己肯定感は基本的自尊心が土台にあるから成り立ってるんだよ!と伝えたい。主語が常に「あの子」の人は、比較対象が私ではなく他人にいってしまいます。(

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    2024年11月22日
  • 他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学

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    情報経験が体験を上回る現代の問題を考えさせられた。特にコロナ対策における、自分の思いを事実のように語る姿勢には違和感があった。また、人生は長さよりも質や深さが大事であり、最短距離を目指すのではなく、多様な経験を積むことで豊かになるという視点を得た。人は個人ではなく、他者との関係性の中で形成されるという「分人」という考え方にも共感した。

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    2024年09月22日