熊谷千寿のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2021年刊行。
米国と中国の軍事衝突をテーマとした小説。
著者のひとりのエリオット・アッカーマンは、過去に8年間海兵隊特殊部台に従軍していた経験をもつ。もうひとりの著者、ジェイムズ・スタヴリディスはアメリカ海軍の重鎮であり、NATO連合軍最高司令官を務めた人物。
本書は、二人がその専門知識と実体験を交えて書いた小説であり、現段階の世界のパワーバランスに即したシナリオとなっている。
役職や国籍が違う複数の人々の視点を切り替えながらストーリーが進行する構成となっている。
米海軍駆逐艦隊司令官のサラ・ハント大佐、米海軍パイロットのミッチェル少佐、米国家安全保障担当大統領補佐官のチョードリ、在米中国大使館国防部官の林保、イラン革命防衛軍のファルシャッド准将、ロシア海軍のコルチャーク少佐など、米中戦争に関連する多くの人物が登場し、それぞれの思いと考えが語られる。
登場人物が多く、専門用語が多用されるので、集中して読まないと話の流れを見失ってしまう。
ただ、なるべく分かりやすく書こうという著者らの意図は伝わった。不必要なごちゃつきはあまりない。
あまりこのタイプの小説は読み慣れていなかったので、その意味での読みにくさはあったものの、ストーリーはよく練られていて、面白かった。
現在のアメリカの迷走と、中国の堅調さを見ていると、本書で描かれるストーリーの蓋然性は高いように感じる。
資本主義の行き着く先が、今日のアメリカにおける不可逆な分断とそれに伴う民主主義の機能不全なのだとしたら、我々が信奉するシステムは既に破綻しているのかもしれない。
国民ひとりひとりの安全や自由を無視して、単に国家としての運営や経済だけを重視するなら、中国共産党のやり方が最も効率が良いということは最早疑いようがないだろう。
作中で中国の軍司令官が語る「我が国の強みは、賢明な忍耐力だ。アメリカ人は辛抱強く振る舞うことができない。片手で数えられる年数を超えて耐えうる国際戦略を打ち出すことができない。」という台詞は、とても刺さった。
そして、米中の戦争のエスカレーションを止められる可能性があるのはインドであるというのも示唆深い。
ロシアとイラクがそれぞれの「国益」を目指して飛び回るのも、日本と欧州各国の影の薄さも、妥当性が高いと思った。
私は本作に人類が乗り越えるべき「キャズム」、いかに恒久的な平和を維持する仕組みを構築するかという命題を見た。
非常に難しい課題ではある。
だが、利権、資本、情報をグローバルな関係に依存させるというのが、このひとつの解になり得るのではないかと考える。
国家間の分断、戦争がこの最たるものだ、が多くのステークホルダーにとって極めて損なものにしてしまうことが重要であると思う。
利害の不均衡を戦争の抑止力として使うのだ。
世界が再びきな臭くなってきている。
アメリカの癇癪をきっかけにホルムズ海峡が封鎖されて半年が経った今、我々は真剣にこの問題を考えるべきではないか。 -
Posted by ブクログ
指輪をなんとか探し当てたディヴィット。しかし今度は命を狙われ、スペインの街を逃げ惑う。間一髪、相手を返り討ちにする事で自分は助かる。
また、スーザンの方は、真犯人と思わしき人が二転三転すると同時にトランスレーターが実はウイルスにかかっているだけで、解読不能暗号など無かったことに気づく。全ては、起死回生を図った副長官がウイルスソフトを回避したがために感染したのだった。熱暴走するトランスレーターは爆発を引き起こし、各人を暗殺しようとした真犯人の副長官も巻き込む。
スーザンは助かり、メインバンクにしかけられたワームを止めるため、暗号解読に力を注ぐ。
暗号とは?みたいな話が多く、難しかった…
そして、私には理解しがたいカタカナ語が多く、巨大パソコン施設を想像しにくい…
暗号解読も最後だけで、なんだかとっても付けた感じ。ただ、疾走感は素晴らしく、最後はサクサク読めた。これは、映像で見るのが一番だな。 -
Posted by ブクログ
米中戦争が近未来で起こるとしたというシミュレーションとして読みました。
作者の一人は米国海軍の重鎮で、小説という形にしたのは、警告の物語として強く記憶に残ると思ったからと述べている。
米中双方の偉い人達は相手の取るであろう行為を推測できるので、結果として全面戦争の抑止力が働くはずという核抑止力の論理は簡単に破られる。「目には目を」というポピュリズムに押される政権は、全面核戦争へエスカレートする道を簡単に選んでしまいそうです。ポピュリズムに負けない、やられてもやり返さない理性的な政権を選ぶ必要あります。ことし選ばれる新米大統領は大丈夫でしょうか?
通常兵器の戦争での負け戦が戦術核を使う理由になるという本ストーリーは現在進んでいる戦闘を考えると畏怖を感じる。ロシアもイスラエルの政権も、通常兵器で大敗したら、民衆の目を戦術核を使ってきそうです。攻撃の応酬のエスカレートを止める手段が、本小説のようにあるとは思えない。背筋が寒くなります。