熊谷千寿のレビュー一覧
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各方面で絶賛されているとおり、クライムノヴェルでロードノヴェルでかつ、少年の成長モノで、意外な展開が新鮮な感じだった。
状況についても、登場人物それぞれについても、もっと書き込めそうなのに最小限の情報しか書かないで想像させる、といった感じで、全体的にハードボイルドな、無駄を極力省いたタイトな文章。饒舌な語り好きなわたしとしては、もっともっと書き込んでくれてもよかったかなあと。なんでローティーンの主人公と弟がこういう人間になったのか、とかもっと詳細に読みたかったような。。。
とにかくハードな状況なのでけっこう読むのがつらかった。いつ「成長モノ」っぽさが出てくるのかと待っていたら、ラスト三分の一くらいでやっとそれっぽくなって、その部分がいちばん好きだった。でも、暮らしている町近辺からたぶん外に出たことすらない主人公からしたら、州外に出て、気候も違う土地に行くってだけでも成長なんだろう。
ラストがさわやかな印象で救われた。 -
Posted by ブクログ
読み出してしばらくはなかなか流れに乗れず、最後まで読めないかもと思った。ロサンゼルスの暗黒街で育った少年が、人を殺すよう指示されて仲間と共に西へ向かう。その道行の始まりからまもなく、最初のトラブルが起きるあたりで、俄然話に引きつけられ、あとは息を詰めて成り行きを見守ることとなった。
文章に独特のクセがあり、好みが分かれるだろうが、危うさに満ち、崩壊の予感を抱かせながら進む物語に、この文体はぴったりはまっている。少年の孤独がひたひたと胸に迫ってくる。ドラッグ売買の見張りをすること以外、何も教えられたことのない少年が、ギリギリの所で保っている倫理観は、何に根ざすものなのか。深い余韻を残す一冊だと思う。
何よりいいと思ったのは、どの登場人物にもリアルな奥行きがあることだ。主要な顔ぶれだけでなく、ちらっと出るだけの電話交換手とかガソリンスタンドのお姉さんにまで物語がありそうだ。続篇があるようだが、「少年のその後」といったストレートなものではないかも。 -
Posted by ブクログ
ネタバレハードボイルトとはいえ、渋いおじ様が主人公ではなく、ハイティーンの少年、それも黒人の男(の子?)が主人公という異色作。
ロスの犯罪エリアで生きる少年たちに下された指令は、組織の審理に不利な判定を下すであろう判事の殺害。少年4人は車に乗り、はるか東の果てへ向かう…。
少年4人のロードムービータッチの小説(ロードノベル)でありながらも、常にメンバーの不協和音が奏でられ、暴力と10代の無軌道な行動がせめぎあい、徐々に悪夢を帯びていくクライムノベルでもある
やがて、単純なストーリーの様であったクライムノベルが、実は少年の自立と再出発の物語と変わる。
どこまでも孤独ながらそれを当然のこととして受け入れ、淡々と生きる主人公の姿が切ないと同時に力強い。 -
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キム・フィルビー、アンソニーブランド、ガイ・バージェス、ドナルド・
マクリーン、ジョン・ケアンクロス。イギリスの名門・ケンブリッジ
大学に在籍した5人は、卒業後、外務省やMI5などに職を得た。
イギリス政府の為に働くのは表の顔。実は大学在学中にソ連の
情報機関にリクルートされ、祖国とその同盟国の情報をソ連に
流していた。
1950年代に彼らのスパイ活動が露見すると、イギリスには大きな
衝撃が走った。と、ここまでは実際にあった出来事。
後に「ケンブリッジ・ファイブ」と呼ばれるようになる5人に劣らぬ
スパイ活動をしていた第6の男がいたというのが本書の導入部。
主人公は財政厳しい歴史学者のギャディス。ロシア東欧の専門家
だ。本を書いて一発当てないと、別れた妻とスペインに住む娘の
学費も払えなくなる。税金も滞納しているし、さぁ、どうしたものか。
そんなギャディスに持ち込まれたのが親友である女性ジャーナリスト、
シャーロットからの共同執筆の提案。第6の男の話を書いてみないか?
ギャディスにとっては渡りに船。だが、彼女は直後に急死してしまう。
ひとりで調査を試みることになったギャディスだが、生前にシャーロット
が第6の男の件で接触した情報提供者や、何かしらの情報を持って
いると思われる人物が次々と死んで行く。
そして、第6の男の存在を探るうち、厳重に封印されたロシア大統領
の秘密に辿り着き、自身の命どころか愛娘の命さえ脅かされそうに
なる。世界が引っくり返るような秘密とはなんなのか。
という訳で、途中から第6の男からロシア大統領の秘密に主題が
切り替わってしまうのだが、最後の2ページでにんまりしちゃった。
展開が早く、ギャディスがどうなるのか気になって物語に引き込まれ
る。ただ、ころころと話の視点が変わるので混乱したこともしばしば。
そして、本書に出て来るロシア大統領がまるっきりプーチン閣下なの
である。KGBの出身、批判的なジャーナリストの暗殺、強いロシアの
再建。本書では「プラトフ」という名前なのだが、「プーチン」に置き換え
て読んでしまった。
スパイ小説と呼ぶには主人公がスパイじゃないので少々苦しいが、
スパイ絡みのサスペンスならいいかも。
あ、ロシア大統領の最大の秘密と言っても、プーチン閣下が暗殺を
指示した証拠ではありません。念の為。
フォーサイスやル・カレには及ばないけれど、それなりに楽しめた。
映画にしたら面白んじゃないかな。 -
Posted by ブクログ
キム・フィルビーら5人のケンブリッジ大学卒業生がソ連のスパイだったことが発覚し、英国は大打撃を受けた。だが彼らのほかに、もうひとり同時期に暗躍していたスパイがいたという。歴史学者のギャディスは親友の女性ジャーナリストからこの人物に関する本の共同執筆を提案されるが、その女性が急死し、彼は後を継いで調査を開始する。が、やがて国際情勢を左右する事実が明らかに! 巧妙に構築されたスパイ小説の力作。「二人の巨匠ジョン・ル・カレとグレアム・グリーンに比肩する作家だ」(ワシントン・ポスト)
強力なバックアップがあるとは言え、素人スパイの行動にはハラハラさせられた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最近では珍しい、冷戦期のスパイ、それに続く現在のイギリス諜報部(SIS)とソ連との確執をそれに巻き込まれていく作家でもある教授を中心に描く。
キム・フィルビーらケンブリッジの著名なスパイ以外に6人目がいた、という掴みが面白いし、その正体が中盤で分かってからもロシア大統領の秘密に話がスムースに移行して最後まで読める。ただ、実在の人物も多く会話中に登場するがエスピオナージュの世界に詳しくないと全くわからないのが残念だし、話が次々に動くのは良いが最後まで主人公の曖昧なキャラがドラマの流れを阻害している。あまりにも被害者として巻き込まれていく主人公の主観が長すぎてだれてしまうし、他の人物(彼女やSISの女性オフィサー)との関わりも中途半端。
多彩な人物を配して読みごたえがあるが、もう少し整理しても良かったのでは?しかしこれだけストレートなエスピーナージュ物は久々で総じて楽しめたし次回作が翻訳されることに期待。 -
Posted by ブクログ
物語終盤のスピード感あふれる展開には、思わず手に汗を握った。次に次に明らかになる事実と、複雑に作りこまれた複雑な罠、そしてそれを回避する手段。
刻一刻とリミットが近づく中、敵を打ち負かすことができるのかできないのか。終盤でも大どんでん返しの連続で、非常に面白かった。
上巻で散りばめられた数々の伏線が、徐々に関連付けられていく様は、ダ・ヴィンチ・コードや天使と悪魔にも見られるダン・ブラウンの腕の見せ所と言える。
情報化社会となった今でこそ取っ付き易い題材だが、これが15年も前に著された作品であることに、ダン・ブラウンの先見の明を見出だせると思う。
これだけ緻密に物語を練り込むには、相当な下調べが必要そうだ。感服。 -
Posted by ブクログ
ダン・ブラウンのデヴュー作であるが、この時すでに読者を罠にかける手練手管は、完成している。暗号は紀元前から存在していた技術であるが、コンピュータというとてつもなく速く演算をする道具を手にして暗号は進化していくことになった。解析と進化のいたちごっこである。 NSA(国家安全保障局)は、スーパーコンピューターにて、全てのメールによる情報を解読し、平和を維持している。このことの善悪が本書のテーマである。すなわち、私文書のプライバシーはどこまで守られるべきか? 私文書のプライバシーは守られるべきと考え、NSAを去った一人の天才プログラマーが壮大なリベンジをNSAのプロジェクト責任者と彼のつくったスーパーコンピューターに仕掛ける。 今回この謎解きの冒険をするのが、美人暗号解読課の主任スーザン・フレッチャーとその恋人の大学教授ディビット・ベッカー息もつかせぬ謎解きの旅が始まる。