カミュのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「きょう、ママンが死んだ」という有名な冒頭から始まる本作。主人公は友人のトラブルに巻き込まれて人を殺し、その動機を「太陽のせい」と答える。母を悼むこともなく、理解不能な態度のせいで死刑判決を受けてしまう。
彼は社会的な「心の証明」や「物語化」に価値を置かず、ただ事実を受け入れる。
母の死を悼まなくても、生前に交わした時間は揺るがない。殺人の動機が太陽であろうと憎しみであろうと、起きた事実に変わりはない。しかし、その答弁が冷徹で心が欠落した人物に映り、話の通じない異邦人のように見えてしまう。
その思想が鮮やかに露わになるのが、ラスト近くの司祭との対峙。
司祭に「心が盲いているから生を諦めてい -
Posted by ブクログ
デフォーのペストの後に拝読。
デフォーのそれがドキュメンタリー的に語られるのに対し、カミュのそれは観念的で、なかなか入り込みにくい感じがした。
カミュのペストが出たのは1947年。第二次世界大戦後の荒廃からどう生きるか模索されていた時期であり、そういう社会情勢を鑑みれば、観念的であるのは当然と言えるだろう。
カミュといえばキリスト教ともコミュニズムからも距離をとった異邦人的な「第三の立場」を思い浮かべるが、その思想がいかんなく表現されている。
現代の私たちはコロナ禍でもネットがあり、コミュニケーションは取れるし、いくらでもエンターテイメントがあったので、多少息苦しさは紛れたが、100 -
Posted by ブクログ
主人公のムルソーが殺人を犯し、死刑に至るまでを描いた物語。
「太陽のせい」というセリフで有名なアルベールカミュの作品。カミュは以前コロナ禍の間に「ペスト」を読んで地獄を味わったのですが、こちらはどんな話なのか全然知らなかったので挑戦してみた。文庫で150ページほどなのでいけるだろうと思ったけどやっぱり難解で飲み込むのに時間がかかった。
ムルソーは淡々としていて何を考えているのかわからない男だなと思ったけど、よくよく読んでみると、罪の減免のために真実を捻じ曲げた証言をすることを良しとせず、最後まで神を拒み続け、一貫して自分の信念を貫いた人物だとわかった。弁護士や牧師からしたらムルソーは自分た -
Posted by ブクログ
ネタバレペストという不条理に対して、医師、キリスト教者や新聞記者など、さまざまな立場に置かれた人々がそれぞれの善を求めて奮闘する様が描かれている。各人が不条理に立ち上がるその動機が、ただ人が死んでいくからというような簡単なものではなく、それぞれの信念を汲んだ納得のできるものであるところに、分断された社会に生きる我々が希望を感じ得る要素があるのだと思う。限りなく装飾のない現実を反映した文体が、それを可能にしている。
感情的な部分を削ぎ落とした文体で書かれたペストの記録であり、キリスト教者や不条理人などの身近でない考えを持った人がたくさん出てくるので、とっつきにくく感じた。しかしその装飾のない文体の中に