清水晶子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書は、世界のフェミニズムの歴史を簡潔に整理しながら、「フェミニズムとは何か」を項目ごとに丁寧に解説しており、とても読みやすく、かつ示唆に富んだ一冊でした。フェミニズムに馴染みのない人でも理解しやすい構成だと感じます。
女性である私は、本書を通して、自分がいかに家父長制的な価値観を無意識のうちに内面化し、「女性としての役割や義務」を疑うことなく引き受けてきたのかに気づかされました。それが個人の選択ではなく、社会制度や文化の中で作られてきたものだという視点は大きな学びでした。
婚姻制度や戸籍制度、嫡出子/非嫡出子の問題についても、これまで十分に理解していなかったことが多く、社会の仕組みそのものを問い直すきっかけになりました。日常では見えにくい制度の歪みを、フェミニズムの視点から可視化してくれる点も本書の魅力です。
現在イギリスに在住していますが、こちらではジェンダー平等やマイノリティ、LGBTQに関する取り組みが進んでいる一方で、理念としては理解できても、必ずしもすべてに同意できるわけではないと感じる場面もあります。マイノリティへの配慮が強調されることで、かえってマジョリティの無関心や分断を生んでいる現実もあるように思います。
そうした違和感について、李琴峰さんとの対談では、まさに自分が言語化できずにいた考えを代弁してくれており、深く共感しました。本書はフェミニズムを一つの「正解」として提示するのではなく、考え続けるための視点を与えてくれる一冊だと思います。 -
Posted by ブクログ
「グノーシセアウトン」(汝自身を知れ)
古代ギリシャ語のこの言葉から始まる、「思考する人生」への賛歌のような哲学入門書。
現代の「女性」哲学者20人による執筆であることはもちろん、翻訳者も全て「女性」哲学者、その数13人!
白人男性主体の西洋哲学にあって、白人のみならずアジア系アフリカ系であったりする女性哲学者達が、20の項目それぞれについて、確固たる哲学の知識とともに、もともと「男の子用」だった世界に「男の子用」ではない場所を作るために、全ての人に開かれるべき門を作ってくれている。タイトルには女の子とあるが、もちろん全ての人に、だ。
ただやはり、女性として、白人以外として、抑圧された経験があるからこその、エンパワメントされる内容ではあり。
ある時代のある場所に於いては、白人の奴隷であって、男性の為に尽くす存在であって、中絶などもってのほか、学問など必要無く、黙って言うことを聞くものであった側、自分の本心をひた隠す側だった者達。
考えることを放棄しなければ生きられない、そもそもそれをおかしいと思うこともない、そんな時代にあっても、考え、実行した人は居た。ボーヴォワールをはじめ、フリーダ・カーロ、ハンナ・アーレント、マーガレット・アトウッド、ジュディス・バトラー、、、この本で初めて知ったアンナ・モランディという解剖学者、「闇の左手」のアーシュラ・K・ルグウィン、ラディカル・フェミニズム運動の成果として「コンシャスネス・レイジング」を興したシュラミス・ファイアストーン、、みんなそれぞれの仕方で、思考し、表現した。
様々な実在する/した女性と、物語や映画のなかの女性を例に挙げながら、アイデンティティ、自己知、論理学、科学、人種、ジェンダー、怒りなどについて、回り道を敢えて選ぶようなやり方、つまり哲学していくことが、どんどんと内部に潜っていく感覚の思考実験のようであり、とても深く苦しく心地良かった。
例えば「言語」の章。実際には全ての人に当てはまるにも関わらず、ステレオタイプ的に女性に用いられることが多い言葉について。
「がさつabrasive」「感情的emotional」「小うるさいstrident」などなど、それら記述と評価を混ぜこぜにする言葉のことを「厚い語」と呼ぶ。これを会話に使用することで、反論する為の労力が二倍にも三倍にもなりまた、正確に反論することが難しいそうだ。「そんな意味で言ったんじゃないよ」で済まされてしまう。
「技術」の章ではフランケンシュタインを例にとり、技術と倫理哲学について深く考察している。chatGPTや画像生成、生活が便利になり人によっては楽しめるこのような技術の無邪気な害について、アルゴリズムによる相対的な結論を客観的とみなしてしまうような倫理観の欠如について、考えるべき点があまりに多いなと感じた。
「吟味のある人生を生きたい。」
今はこのように言葉にして表すことができるが、若い女であった頃、どうしたいかわからないが、ただ楽しいだけで良いというのは違う、という感覚が常にあって、そうすると「生意気」「否定的」「和を乱す」などネガティブなイメージがついて回り、好き好んでそう思われたいわけではもちろんないのでイヤな気持ちになることもあった。
歳を重ねて、フェミニズムに出会い(自分の考え方に名前がついたような気持ち)、ハイデガーの「存在と時間」で決定的に哲学の世界に落ちて、深く潜るように思考を巡らせることが自分が「生きている」感覚なのだとわかった。
本のなかに何度となく出てくる「批判的に思考する」ことは、決してマイナスではないのだと改めて勇気を貰えた気がした。
ボーヴォワール、読まねば。読みたい本がたくさん増えた!
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Posted by ブクログ
ネット言論でのパニックめいたトランスヘイトに左右されないため、まずはトランスジェンダーの人々がどのような状況にあるかを知るべきだろう。英国の事例が中心ではあるが、解説や訳者解題まで読むことで、日本の状況についてもある程度の理解を得られる。右派のトラスフォビアは今に始まったことではないが、驚くべきはマイノリティ側から社会変革を求める左派にもトランス排除の言説に取り込まれる層がいるということだ。そこにあるのは、かつて白人フェミニズムが犯してきたような権利獲得の力学であり、つまるところ更なる弱者を維持しようとするシステムである。ある程度 フェミニズムを理解したと考えている層にこそ、次なる連帯のために読んでほしい一冊。訳者である高井ゆと里氏の注釈も細かいところまで目が行き届いており、安心して読むことができる。丁寧な仕事に感謝したい。
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Posted by ブクログ
「フェミニズムとは女性たちの尊厳や権利や安全を軽んじる文化を変革し、女性たちの生の可能性を広げようとするもの」という言葉だけでも励まされた気持ちになる。女性たちの生が多様であるために、具体的に何をするのかということになるとフェミニストたちの意見は簡単に一致しないが、この本ではひとつの正解を提示することは目的とせず、これまでの主張や行動について紹介している。さまざまなトピックについてわかりやすく書かれているので、これまでに聞き齧ったことを整理して考えることができた。特に興味深かったのはスポーツにおけるセクシズムについての対談。スポーツにおけるジェンダーの問題は根深いということがわかった。
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ネタバレフェミニズムについての本。タイトルの疑問に、これ! という「居心地のいい/スッキリする」答えが返ってくることはないが、いま私が知る限りにてはもっともフェミニズムのことをしっかり捉えて疑問に答えてくれる本だった。明快な答えがないのは当然のこと、「女性」の生も性も、それによって生ずる悩みも多種多様なのだから、というような。
とくにためになったことを3つ挙げると、「インターセクショナリティ」、性産業のこと、ケアというものの本質かなと。ぜひ手に取って頭を抱えながら考え考え読んでほしい。
私はほぼ頷いて、時々膝に手を打って読んでいたけれど、最後にそうなって、やっと自分なりに落としどころをみつけたところだ。例示しておく。
私の、他人の、もしかしたら多数派の、嫌悪するところであっても、「いまここでそうして生きている」ひとは存在して、それを安易に否定はできない。 -
Posted by ブクログ
連続読書会に参加したことで、ようやく読み終えることができました。タイトルにある「女の子のための」という言葉が印象的で、あえてそう名付けられていることに深い意味があるように感じました。
読んでみると、正直わたしには難しく感じる部分も多かったです。でも、女性哲学者の視点から語られる哲学は、これまでの「哲学」のイメージとは違って、実体験に根ざしたものが多く、心に残る言葉がたくさんありました。
知らなかった学問分野や考え方が散りばめられていて、「わたしが知らないだけだったんだ」と気づかされる場面も。自分が何かを「思い込まされている」ことに気づくこと、そしてそこから一歩踏み出して行動することの大切さを教えてくれる一冊でした。
哲学って、もっと遠い世界の話だと思っていたけれど、実はすごく身近で、自分自身の生き方にもつながっているんだなと感じました。
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Posted by ブクログ
ある日、何かと強い意見がある同僚が、トランスジェンダーへの配慮が行き過ぎているのでは、と言った。オールジェンダートイレとかはやりすぎ。彼らは心の中でだけ思っておけばいい、そこまでは何も批判しない、という。ほとんどマジョリティの要素ばかりの彼のそのえらっそうな言い草に心底腹がたって反論したが、ずっとこれまで遠慮して我慢してきたのに、それはあんまりなのでは、というようなぼんやりしたことしか言えなかった。その時思い浮かんだのは1人トランスの知り合いのことだった。まだトランジションの途中で、ぱっと見て男性だったことがすぐ分かる容姿だった。海外で買い物に付き合ってくれた時、モールのトイレには行けないから家まで我慢する、と悲しそうに微笑んでいた顔が忘れられない。
同僚と議論する時間もなかったし、議論できるほどトランスジェンダーについてよく知らないと思い本書を手にとった。
詳しく英国の状況が説明されていてよく理解できたが、学術的な文体を忠実に訳したからなのか、読みやすいとは言えなくて、五分の四まで読んでいったん休憩。
古代ローマでも女装をし、女帝として女性の代名詞で呼ぶように命令していた皇帝が居た、という部分は、やっぱりずっと一定数人間の中には存在するジェンダーなんだなと得心した。
機械みたいに2つにキレイに分かれるわけではないのだから、そう生まれついた人たちが同じように幸せになれるよう考えて社会のあり方を工夫して直していくことの何が行き過ぎなのか分からない。
そうやって少しずつ社会は前進し続けてきたのだし。
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Posted by ブクログ
タイトルと前書きから、女の子向けにわかりやすく哲学を解説する本と理解し、
500ページ以上の分厚いページをめくり始めた。
最初のうちは確かに哲学の定義?お話で、文字が目の前を通り過ぎた。
ページをめくる手も速くなる。
しかしだんだんわかるようになってきた。
まず先日読んだばかりのフランケンシュタインの著者メアリー・シェリーが出てきた。
これでめくるスピードが戻った。
そしてさらに、テーマが差別になってきた。
差別には敏感。
女性差別を中心に、さまざまな差別について述べられている。
差別は哲学のテーマになりうるんだ、、と理解。
内容は、これまで学んできた内容から真新しいものはなかったが、
再確認にはなった。
しかし、、、
これがタイトルの「女の子のための西洋哲学入門」なのか、違和感は残る。
ましてまえがきで書かれていたことと、、、
通勤と昼休みと整形外科の待合室。1日でこの本に目を通したが、
ちょっと中途半端、消化不良だった。
監訳者まえがき
謝辞
プロローグ ペルセポネー──あなたへの招待状 メリッサ・M・シュー/西條玲奈訳
はじめに メリッサ・M・シュー&キンバリー・K・ガーチャー/三木那由他訳
第Ⅰ部 自己
第1章 アイデンティティ(同一性)──世界内存在と生成 ミーナ・ダンダ/酒井麻依子訳
第2章 自律──自分に正直でいること セレン・J・カダー/筒井晴香訳
第3章 プライド──徳と悪徳の複雑さ クラウディア・ミルズ/飯塚理恵訳
第4章 問い──哲学の核心 メリッサ・M・シュー/横田祐美子訳
第5章 自己知──反省の重要性 カレン・ストール/安倍里美訳
第Ⅱ部 知ること
第6章 論理学──フェミニストアプローチ ジリアン・ラッセル/山森真衣子訳
第7章 疑い──認識と懐疑主義 ジュリアン・チャン/村上祐子訳
第8章 科学──客観性の正体を暴く サブリナ・E・スミス/村上祐子訳
第9章 技術──経験と媒介された現実 ロビン・L・ゼブロフスキー/西條玲奈訳
第10章 芸術──見ること、考えること、制作すること パトリシア・M・ロック/青田麻未訳
第Ⅲ部 社会構造と権力関係
第11章 信用性──疑いに抵抗し、知識を捉え直す モニカ・C・プール/木下頌子訳
第12章 言語──コミュニケーションでの集中攻撃パワープレイ エリザベス・キャンプ/三木那由他訳
第13章 人種──「人間」という概念に見られる存在論上の危険性 シャノン・ウィナブスト/権瞳訳
第14章 ジェンダー──二分法とその先に向けて シャーロット・ウィット/清水晶子訳
第15章 承認──クィア・エイリアン・ミックスの意識を生きる シャンティ・チュウ/清水晶子訳
第Ⅳ部 現実の中で考える
第16章 怒り──抵抗の身振りとしてメドゥーサ話法を利用する ミーシャ・チェリー/西條玲奈訳
第17章 コンシャスネス・レイジング(意識高揚)──社会集団と社会変革 タバサ・レゲット/木下頌子訳
第18章 ツェデク──なすべきことをする デヴォラ・シャピロ/鬼頭葉子訳
第19章 共感──人間と人間以外の動物との絡み合う関係性 ローリー・グルーエン/鬼頭葉子訳
第20章 勇気──作動する改善説 キンバリー・K・ガーチャー/酒井麻依子訳
監訳者あとがき
著者紹介
訳者紹介
索引