「○.5」とナンバリングされた巻は期と期を結ぶ短編集であり、普段は特別試験に追われる学生達にとって休憩となる時期。それだけに、本来はコメディや気の抜けたエピソードを入れ易い筈なのに、今巻はコメディっぽい描写を時折挟みつつ何処か緊張感も忘れていない巻となったような
特に恋愛面での進展が非常に大きかったと思えるよ
前巻にて軽井沢とは微妙な雰囲気となり、一之瀬は綾小路を手に入れる為に本気となった。特に軽井沢の件は綾小路のこれからへ向けた思惑を考えれば、このまま破局しても可怪しくない。だからここで一気に一之瀬が前に出ても可怪しくないだろうに彼女は彼女で堅実に、それでも確実な一手を打ってくるんだねぇ…
綾小路とのツーショットを撮る為に掛けた労力は絶対に見合ってないのだけど、だからこそ人から疑われない一手でも有る。一之瀬の底知れなさを改めて感じたよ
また、坂柳があのような告白をしたのは意外だったな
1年生編の終盤辺りから感じさせるものがある少女だったけど、Aクラスリーダーとして、そして綾小路を打ち倒す者としての矜持で感情を制御出来ているように思えた
だからこそ、綾小路がデートジョークを察してくれなかった時に怒った姿やケーキを食べられなかった綾小路の為にケーキを調達する姿をらしくないものと思えた
でも、その極みとして告白へと至るなら納得できるよ
恋に溺れるわけではない。かといって恋に左右されないわけでもない。恋を引き金にして更に綾小路を壊し愛したいと思えた彼女は強い
坂柳と一之瀬には共通項が見えるね
恋を知る事で弱みとするのではなく、更に自分を高める為の土台とする
だとすれば、綾小路への恋愛感情によって依存が強まり更に脆くなったとの印象を受ける軽井沢とこの二人は対極であると理解できてしまうよ…
あと、実際に恋愛展開に発展するかは何とも言えないけど、山村やひよりとの交流がこれからどうなっていくか気になってしまったり
いずれ訪れるだろう軽井沢との破局の時、それが綾小路に想いを寄せる幾人もの少女にどのような影響を与えるか見ものだよ
そうした恋愛面とは別方面で進展するのが綾小路への疑念か
むしろああした余波が起きるのが遅かったと言える程。一度やニ度程度なら、かつて掘北が言い訳した隠し玉として秘密にしたとの言も通る。けど、クラスそのものへの影響も大きくなり、各クラスのリーダー格からも注目されていると知られるようになった。そんな人物を「普通」とか「冴えない」なんて表現出来ないわけで
かといって前園達のように普通の生徒から見て奇妙だと感じる程度なら綾小路がどのような人間かなんて読めないわけで
前園達だけではなく、綾小路を注目しているが為に彼を尾行したり質問したりと彼が何者か迫ろうとする者は山村や森下が代表格としてこの巻では描かれた。でも彼ら彼女らはまだ訝しむだけの段階
坂柳の思惑を超えて綾小路を引き抜こうとした橋本が最も頭の良さを兼ねつつ綾小路の底知れなさを評価していると言える
また、この誘いはきっと綾小路にとって悪いものではない筈だし
ただ、その誘いが意味を持つのは坂柳クラスが変わらずにAクラスで居た場合のみ
まだ全体像は見えないものの2年3学期はかつて無い試練が訪れるのではないかと思えた冬休み。誰も彼もが3学期の終わりまでに勝負を決着させるつもりで居る
誰が学校に残っているのか?去る者は誰か?その時、各クラスの内実はどうなっているのか?綾小路はどこまで自分の底知れなさを披露するのか?
全ての局面がどのような彩りを持ってくるのかもう楽しみで仕方ないよ