中山淳雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
借りたもの。
Z世代のエンタメ行動が、他の世代と何が違うのか?
デジタルネイティブであることもさることながら、マスメディア(大衆媒体/社会が)ではなくソーシャルメディア(SNS/自分が)での“共感”が支持される事を指摘する。
特に著者は、日本における二次創作文化、そこから派生して現在、エンタメ業界を席巻している事を注目している。
米津玄師、YOASOBIのAyaseなどのボカロP出身者、顔を出さずに紅白出演を果たすAdoなどの歌い手……
この、アイデンティティをリアル世界において自身が置かれているもの(性別、出身地、属する学校、会社など)に縛られず、“アイデンティティをダイナミックに変える”こと、現実の社会的な画一化に捕らわれず個人の在り方を主張できるためだと指摘する。
それには、日本特有の部分も指摘している。
SNSの複数アカウント持ち、匿名ハンドルネーム、匿名Vチューバーやメタバースでのバ美肉……といった実名ではない(本名を隠す)アカウントは日本がダントツに多いとの事。
複数のアイデンティティを使い分けている。
そういう意味では、日本以外ではどうなっているのだろう?とも思った。
世界的に見ても、世代別でアプリのインデックスするジャンルが異なると言うが、世代が違う(年齢が異なる)故のライフスタイルや求められる分野、責任が異なるためでは?と思わなくもない。
さて。二次創作文化。
まず、Z世代が「アップロードカルチャー」――それまでの世代がマスメディアから発信されるコンテンツを受け身で享受するのがメインの「ダウンロードカルチャー」であることと異なる――であること。
Z世代はエンターテインメント(IP)を消費・享受する際、「作品を自分なりに解釈し、それを他者と共有・共感することで楽しさを倍増させる行動」を根幹としていることを指摘。
単に作品を観て楽しむだけでなく、ファン同士が独自の解釈(「考察」や「二次創作」)を重ね、その世界観を共創するプロセスに重きを置いている。
「歌ってみた」や「踊ってみた」といった、自分自身が「これいいね!」と思ったものそのものだけでなく、カバーして共有することで、同じように「これいいね!」と共感する人々繋がる(口コミ的?)。
これはカラオケで歌われることとはまた異なる点が興味深いとも思う。狭い空間で「皆で歌う」「皆に聞いてもらう」が求められていた(同町圧力とか、マスメディアで「流行っているから」という動機、社交辞令とは違う)気がする。
二次創作はオリジナルのクリエイティブとは異なるけれども、二次創作が推し活であることとも関連する。
また、クリエイティブ分野における、プロとアマの境界の融解を指摘。
後半には今までのメディア……マスメディアの歴史とそれが生み出した一元的アイデンティティの話、そして「動画を放送できる唯一のメディア」であること(それ自体に価値があったのだけど)に胡坐をかいていたテレビが、ネットインフラと動画視聴可能な回線の普及によって、大多数の受動的視聴者を奪われていることを指摘。
重要なのはコンテンツの質。 -
Posted by ブクログ
エンタメビジネスは、その「本質」が非常に分かりづらい特徴があると思っている。
形として実態が見えづらく、価値が計りづらい。
法律上は知的財産権の一種となるから、目に見えない財産的価値を持っていることになっている。
しかしながら「果たしてその価値はいくらに相当するのか?」と問われれば、おそらく答えは人によって様々なものとなるだろう。
有名な原作を映像化したものであっても、出演者によっては、原作ファンが離れてしまう場合もある。
そして、出演者の人気は、そもそも水物である。
広く認知されているから、その人が出演すれば必ずヒットするという類のものでもない。
例え認知は狭くても、熱心なファンが一定数いることで、出演している作品が必ず買われるということもあり得る。
「原作」そのものも、その価値を正確に計るのは、非常に難しい。
日本が原作大国であることは、間違いない。
小説であっても、マンガであっても、これだけ層が厚い国は、他に類がないのではないか。
大量の作品が生み出される背景として、その作品を消費するだけの需要があるということ。
子供の頃から様々な原作に触れ、やがてその中から、将来のクリエイターが生まれていく。
世代を超えて、クリエイターを生み出すための循環が、自然と出来上がっている。
これだけの壮大な仕組みを、意図的に作り出すのは容易ではない。
日本という特殊な文化的背景が作り上げた、圧倒的な優位性だと思っている。
今までは国内のみで生産消費がされていたが、いよいよ世界に輸出され、成果を出し始めている。
日本製アニメについては、輸出の歴史が古いが、ようやくドラマ・音楽など他ジャンルにおいても認知が広がり始めている。
アニメの輸出の歴史が古いと言っても、今に至るまで相当な紆余曲折がある。
20年以上前から海外でも一部のファンに受け入れられてきたのは間違いないが、そこまで大きく跳ねることはなかった。
そもそも日本では子供も大人も、マンガ・アニメを普通に見るものだが、海外では大人は見ないことが常識である。
ターニングポイントとしては、大体2010年代後半以降となるが、動画配信プラットフォームが全世界にほぼ行き渡ったことが大きな要因だと思う。
簡単にアニメを見られる環境が、世界中で整ったこと。
動画配信では、字幕・吹き替えなどを豊富に揃えることで、外国語である日本語に触れるハードルを下げたこと。
内容的に日本文化を理解できない部分はあるとしても、徐々に受容されるようになったのだと思う。
ドラマ・音楽であれば、韓国が世界で成功した先駆者であるが、日本も韓国の先例を研究し、今はこちらも効果を出し始めている。
もちろん日本発アニメが世界でヒットすれば、主題歌のヒットにも繋がるし、同じ原作の実写ドラマも見られる、という相乗効果にもなっている。
世界的にも、エンタメの背景が大きく変化しているのは間違いない。
「優れたコンテンツ」を「世界に販売する」という、単純な図式だったコンテンツビジネスが、ファンを巻き込んだものに進化しているため、ビジネスとしては複雑化している一方で、盛り上がると一気に大きなムーブメントになるという面白さも生まれてきている。
まさにエンタテインメントの醍醐味と言えるが、益々「本質」が分かりづらく、価値が計りづらくなっている。
これらを上手くコントロールしているのが、優秀なプロデューサーということになるが、そこに辿り着くまでが大変だ。
様々な試行錯誤を繰り返して今に至っているのだが、これらは理屈ではなく、プロデューサーの才覚に頼っている部分が大きい。
今後は、さらにテクノロジーが進化していく中で、人々の行動心理を理解して、プロデューサー自身も思考をアップデートし続けなくてはいけない。
一朝一夕にはいかない難しい職業である一方で、非常にやりがいのある仕事である。
作品を生み出すプロデューサーが、どういうファンを獲得して、どういうコミュニティを作り上げていきたいのか。
ここまで思考を巡らせながら、作品作りを並行して行うのだから、クリエイティブな能力以上の才能が必要なのは、言うまでもない。
特に、コミュニティ作りは、非常に難しい。
本書内にも記載があるが、まさに「運営」とファンとの距離感づくりである。
当然、プロデュースサイドである「運営」の考え方ひとつで、ファンの信頼を勝ち得るか、離れてしまうかが決まってしまう。
世界中が総クリエイターになっている時代、さらに生成AIを使って無尽蔵にコンテンツを生み出せる時代に、群雄割拠の中からアタマ一つ抜け出すために何が必要なのか。
その差別化の一つが「推し」であることは、非常に説得力がある。
確かに、あの人にとっての「推し」は、他人にとっては興味がない存在だったりするかもしれない。
非常にニッチかもしれないが、推しのファンがいることで、そのコミュニティは確実に存在価値がある。
「コンテンツビジネス」→「エンタメビジネス」に移行し、さらに「推しエコノミー」に進化している点は、非常に納得感がある考察だ。
これが世界的にも同一現象なのか、日本特有のものなのか。
インターネットによって世界中が繋がってから約30年が経過している。
国の文化はそれぞれあるかもしれないが、「推し」という独特の感覚は、日本ならではと思えてしまう。
海外でもアーティストの追っかけはいるかもしれないが、何となく「推し」とは違う気がする。
日本の「推し活」は、外側から見ると控え目に見えるのだが、内なる情熱はすごいものを感じる。
宝塚などは、典型的だと思う。
ファン同士ここまで規律が取れていて、1人の推しをみんなで愛でる文化は、特殊としか言いようがない。
本書内で面白いと思った点は、「キャラクターは貨幣と同じ」ということ。
推しとは、まさに作られたキャラクターである。
その存在に当然金銭的価値が生まれるのだが、その価値をタンス預金のように溜めていても意味がない。
キャラクターを流通させ、動かすことで、価値を生み出す。
推しはもちろん実物の人間である必要がない。
アニメのキャラクターでも成立する訳で、数々の日本の有名なキャラクターが推されて、活き活きと活動をしている。
この感覚は非常に不思議だ。
ある意味で、日本人が元々もっている文化的背景があるからこそ、成立した考え方のような気がしてしまう。
自然のあらゆるものを神様と見立てる、「八百万の神々」という感覚が、キャラクターに人格があることを肯定しているような気がする。
これが更に進化して、「2.5次元舞台」なるものを生み出したのだから、日本人の想像力は群を抜いている。
もはや俳優なのか、キャラクターなのか紙一重であるが、そんな様子もファンは楽しんで推し活に励んでいる。
ある意味では「想像力が豊か」と言えるが、ある意味では「何でもあり」。
そんな節操のなさも、日本から新しい作品が生み出される原動力になっているのだと思う。
とにかくエンタメビジネスは「推しエコノミー」へと進化し、これからも発展していくことは間違いない。
この業界に身を置いて長くなるが、今後の進化が楽しみである。
日本発の秀逸な作品が、これからも生まれ続けることを期待している。
(2025/7/13日) -
Posted by ブクログ
エンタメ業界で本格的に働き始めて一年。
職場で課題図書的に受け取った一冊。
エンタメ業界の起きている変革と来たる未来を説いてくれる、業界教育本です。
正直業界での日が浅いため、コロナ前後の変化があまり身にしみていないのですが、エンタメの歴史として非常に勉強になりました。
イチ消費者として接していたコンテンツをビジネス側から見ると全く違う景色が広がっていて大変興味深く読みました。
日本のエンタメが巨大ハリウッドや中国相手にどうやって生き抜くのか、その術も警鐘と共に記されていて、仕事をする上で頭に刷り込んでおきたいと思います。厳しいが未来は決して暗くないと思わせてくれました。 -
Posted by ブクログ
エンタメの仕事に興味ある人は読むべき!
幅広い分野かつ歴史も学べる,内容がわかりやすい。
以下、読書メモ。
⭐️興行
一度きりの瞬間を売る期待値商売
作り手と観客のノリが神回を生む
人と空間、能や歌舞伎、演劇も漫才もスポーツも。
源流は奈良時代の伎楽になる、現存する演劇で最古のものは能。600年続くエンタメ。
日本の興行モデルを作り上げた東宝、松竹、吉本。
松竹の歴史、ヤクザを排除。
弱きものが作り上げた、東宝の宝塚と、吉本せいがはじめた漫才。
ハコを乗り換える興行コンテンツ
劇場・テレビからYouTubeへ
2005年にYouTube設立
2011年にヒカキン
2013年にスマホ浸透
2020年にコロナ
YouTube 広告は年間約500億円
テレビは1.7兆円
まだまだこれから。
⭐️映画
・いまは2600億円ほど。観客動員は60年の10億人をピークに、いまは1.7億人くらい。
冬の時代を乗り切って回復傾向にはある。
ハリウッドに移った時はベンチャーからはじまる、パラマウントもユニバーサルもコロンビアもワーナーも。
日本は1897年に最初の映画が撮影されてる。
・戦後は大手5社が強いわ土地の価値を高めるために映画を客寄せとして展開する。60年代をピークにテレビが原因で衰退していった映画会社。東宝はマーケティングにこだわって成功して今の地位にいる。
・中国は法規制でなんとか自国映画を盛り上げているが、日本はそるがないのに自国映画もクリエイティブされている、育まれている、映画大国の一角である。
⭐️音楽
・幾度となくつぶれてきた音楽業界。
そもこも権利という概念を獲得し、印税などのビジネスモデルを確立したことで業界として成り立った。メディアが大転換するたびに危機となるが,乗り換えて生き延びている。
・つい最近までJ-POPは鎖国し、ガラパゴス化してしまった部分は大きい。
⭐️出版
・3割を超えるマンガの売り上げ
・マンガは日本独自の発展過程である
浮世絵や紙芝居の絵師が漫画家へ転身したなどの歴史
⭐️テレビ
なぜこんなに強い?
地方局は生き残れる構造、東京で作られたものを流すハコ。
今後はYouTubeやTikTokにお客を奪われる -
Posted by ブクログ
アニメやキャラクター、ゲームなどを含むエンタメ産業について、これまでの歴史を辿りながら、ユーザーにとってのニーズの変化、業界の変遷から、今後の課題について包括的に語られている本。トピックに合わせたのかピンク色のカバーが安っぽいイメージを抱かせているが、中身はこれでもかという分析が社会学や経営学、心理学など様々な視点から書かれている硬派な内容となっている。
現代のエンタメ市場は、ユーザーの行動はこれまでの「萌え」から本書のタイトルにもある「推し」に変化しているという。萌は内的な体験であるのに対して、推しは自己表現を伴う外的体験である。宝塚やジャニーズのファンに見られた「推し」という行動は、今やアニメやゲームの世界にも広がっている。
現代においては差別化の道具は陳腐化しているという。学歴や会社の肩書などという差別化はおしゃれではなく、ビジュアルの差別化は美女やイケメンだけに許された特権である。金持ち自慢やリア自慢は非難の対象となる。そのような社会の中で、2次元作品を介した自分の趣味嗜好の顕示は、自分自身の能力を問われない安全な自己表現となっているのである。
そして、エンタメ産業においてはアメリカの存在が市場としても供給側としても圧倒的な存在であり続けている中、そこに割って入ってきているのが中国である。巨大な市場を背景とした資本の大量投入による力技は、到底日本のエンタメ産業には及ばない。
但し、著者は米国や中国のやり方がベストであるという立場ではない。生物に例えると、米中は身体の大きい恒温動物であり生命維持の為に大量のエネルギーの取得を必要とする。一方、日本は小型の変温動物であり、活動量は少ないがエネルギーも少なくても済むと例えている。生き延びるための戦略は生物でも様々であり、必ずしも米中を真似る必要はないという。
世界第二位の経済大国などという過去の栄光やプライドにしがみつきがちな日本であるが、フランス、スイス、イタリアなどの国などは得意な分野に特化した生き方をしている事を指摘しており、日本もそこから学べることは多いと思われる。ビジネススクールの戦略論の世界でも規模の経済を背景とした競争戦略は既に過去のものとなっている。
- メモ -
サイバーエージェント傘下のサイゲームスが運営する「ウマ娘」は2021年2月にリリースされ、初月の売上が驚愕の130億円を達成したという。
アプリゲームの市場規模は1.2兆円となり、売上TOP3はパズドラ(Gung Ho)、モンスト(Mixi)、Fate Grand Order(FGO、アニプレックス)が長く占めてきたという。そこに突如割って入ったのがウマ娘であり、唯一世界のゲームアプリでTOP10に入っている。 -
Posted by ブクログ
現代、現在のエンタメと社会現象を整理した論文書!
論文と言ってしまうと堅苦しく感じるかもしれませんが、取り上げているコンテンツが身近なものばかりで難しい説明もなく明快痛快で読みやすい。
普段触れているゲーム、マンガ、アニメ、ドラマなどのエンタメビジネスの持続可能な究極はIPビジネスだとよくわかります。そのゼロ→イチをどう生み出すか?
この本には書かれてないのと、飛躍しすぎてる発言ですがキリストやブッダはまさにIPの元祖かもしれません。(それ以上の発言控えます)
人は偶像に惹かれる生き物なんだなーということを読書しながら考えていました。
まあとにかくエンタメとビジネスに関する紐解きに頷きっぱなしになるのと、日本人であることが誇らしく思えてきます。
エンタメ経済圏にまつわる中山淳雄さんの考察オススメです!