あらすじ
YOASOBIのAyaseや米津玄師など「ボカロP」出身者がヒットチャートを席巻し、Adoなどの「歌い手」、すとぷりなどの「Vチューバー」が顔を隠したまま紅白出場――。エンタメ界に巻き起こっている革命的変化は、何を意味しているのか? 日本の創作文化が切り拓いた「何か違う時代」の全貌を解き明かし、Z世代後の日本社会を分析する。
僕たちは、歌って踊って、世界を変えていく。
今、新しい記号表現を生み出しているのは、Z世代のエンタメ行動である。生まれながらのデジタルネイティブとして“ウソの世界”と“本当の世界”を自在に行き来する手段を得たZ世代は、旧世代とはまるで違う行動原理を持つ。近年のエンタメヒットのビジネスモデルや作品傾向を理解することは、目の前にある世代分断を理解するために非常に有効な手段になるだろう。(「はじめに」より)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
中山淳雄の本は「オタク経済圏創世記」以来。それが2019年でした。それからコロナ禍を経ての本書です。間に「エンタメビジネス全史」も買って積読状態なのですが「エンタメ通じZ世代分析」という書評を見て先にこの「クリエイターワンダーランド」を読んでしまいました。5年前になんとなく頭で理解した気分になっていたものが、今回はなんかものすごく腹落ちした気分になりました。状況がどんどん進展したのか、著者の視野が拡がったのか、読者である自分の理解力が上がったのか…今、コンテンツ界隈で起こっているこのの完璧な解説書に思えました。いっぱいフレーズ欄に書き込みました。「オタク経済圏」といったまだ知る人ぞ知る的なエコシステムから「クリエイターワンダーランド」というメインステージに不可逆に進む進化のスピード、半端ないです。ほんと自分の中のモノサシを作り替えなくてななりませんね。今のところ今年度、納得したで賞No.1!
Posted by ブクログ
エンタメ社会学者の、丹念な取材・独自の観点が相変わらず冴えわたる他の追従を許さない著作。歴史的背景から変遷プロセスを含め、最新の動向までがエビデンスベースできちんと記されている。各項目における筆者の評価・所感の表現が刺さること多数で、ズキズキワクワクしながら物語を読むかのような感覚にも浸ることができる。日本のクリエイターたちのインサイトに寄り添った筆者のやさしい眼差しが温かくて熱い。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白い。
エンタメを享受する側が、
受動的だったのが能動的になっている話が納得すぎる。
音楽で言えばニコ動、小説でいえばなろうなど二次創作文化が日本にはあるが、それは日本があらゆるものを二次創作してきた背景があるからこそ蔓延したものであり、「構想力」よりも「解釈力」という二次創作者のインサイトも面白かった。
Posted by ブクログ
著者の別の作品(エンタメ全史)を読み、文体や著者自身が本を書き上げるために数百以上の参考文献や専門家へのインタビューを通して平等な視点から文章を記しているスタイルに共感し、本作も読みました。
本作の中でキーワードとなる中心となるコンセプトがダイナミックアイデンティティ。画一的な価値観にまとまりがちな日本において、決められたパーテーションにとらわれない世界観の創作と、消費のスタイルが始まっているという主張を多くの事例を通して紹介いただきました。
また、2項対立になりがちな、男女、大人と子供、生産者と消費者、クリエイターとユーザなどが現在はあらゆるエンタメを通して境目が曖昧になり、2項では表現出来ない事象も分かりやすく解説されています。
vチューバなどがなぜ今、流行しているのかを歴史的な変遷と共に書かれており今起きている事象の整理にもつながりました。
記載されるテーマの中心であるyoutubeや、小説家になろう、ボーカロイドなどインターネット2.0時代のものから2020年代から始まっている新たなテーマまだ幅広く取り扱われており、この一冊でテレビやエンタメなどの状況を整理する事ができると思います。