あらすじ
「すべてのエンタメプロデューサーが、今を知るためにまずは読むべき、唯一の教科書」
――佐渡島庸平氏
「メガヒットのルールが変わった。新しいリテラシーを得た者が、地殻変動後の覇権を握る」
――尾原和啓氏
鬼滅、ウマ娘、Fortnite、荒野行動、半沢…
ゲーム、アニメ、動画の経済圏を支配するのは、
世界が絶賛する日本の「オタク経済圏」か、
攻勢を強める米中の「ハリウッド経済圏」か?
◎目次
第1章 メガヒットの裏側で進む地殻変動
第2章 「萌え」から「推し」へ、ファンの変化からみる「風の時代」
第3章 エンタメの地政学
第4章 推しエコノミーの確立へ
「推す」は希少な時間資源の投下によって行われる。基本的には、未来永劫それが続く前提で、有限な時間資源を投じていきたい。『推しが武道館いってくれたら死ぬ』というアニメもあるが、実は推しが武道館にいくことを避けたいと思うファン心理も同時に存在する。(中略)安パイなコンテンツを求める人が増えると、新奇なものが展開されづらくなる。ある程度ブランドがあり、約束されたコンテンツに人々は群がるようになる。大ヒットがさらに大ヒットするという現象は今後さらに強くなるだろう。(中略)浮動ユーザーを味方につけるためにファンが必要であり、インフルエンサーが必要になる。「このコンテンツは安パイだよ。時間を費やしても、その体験は無駄にはならないよ」という信号をブランドとして送る必要がある。(第2章より)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて手にしたが、エンタメ業界の構造変化から日本の目指すべき方向性への示唆などに富み、非常に面白かった。解説のみならず、文化圏や社会観と紐付けてエンタメを掘り下げていく内容であり、一冊を通おして楽しめた。
日本のアニメコンテンツは、放送・配信を収益化ポイントとしてではなくユーザ認知のための手段として捉え、放送局や流通にこだわらない「脱テレビ化」の傾向にあり、版権ビジネスによるキャラクター経済圏として確立させることが成功の鍵となっている。また、ユーザー側のコンテンツへの関わり方としては、内的な感情による「萌え」から、「推し」という外的体験による表現へ変化し、ユーザーにとって趣味趣向は「消費財」ではなく「表現財」としていかに自分を「関与させていくか」という対象になった。インターネットにより地理的な距離がゼロになった現代において、キャラクターの死とは人々の間で共有されなくなることであり、キャラクターは思考(言語・文化・概念)の距離を埋める「交換財」としての機能を果たす。
Posted by ブクログ
著者の中山淳雄さんにお話をききました
ききて:深水英一郎
——前回の著作「オタク経済圏創世記」と今回の「推しエコノミー」の違いや共通点ってありますか?
【中山さん】
共通しているのは「ライブコンテンツ化」という語り口です。これまではとにかく良いものを創って知ってもらって購入してもらうという「リーチ型」のマーケティングでした。
それがいまは一度SNSでもイベントでもファンとの結びつきができた状態から数少ないコアファンがコミュニティをリードしながらちょっとずつ関与度合いを上げていって、結果として購入という行動もその「推し」の表れとして出来上がってくる「リール型」のマーケティングに変わってきている。
まるで劇場の中を運営するかのように、着席してくれたファンが興味をなくさないように継続的な関係性のなかで、ライブコンテンツとして「運営をしていくこと」が大事になる、ということを語っております。
その範囲がゲーム・アニメ・マンガだけでなく、テレビや音楽、スポーツまで含んで伝えたことで、かなり多くの業界の方がこの本のファンになっていただいて、とても嬉しいです。
Posted by ブクログ
鬼滅の刃やフォートナイトといった身近な題材からその経済圏のカラクリを図表なども使いながらわかりやすく解説している。
SNSや動画配信などの新しいテクノロジーにより、その産業構造自体が刻々と変化しているのは肌感覚で分かっているつもりであったが、ちゃんとした数字で説明されることで腑に落ちたり、新しい発見があった。
名著。
Posted by ブクログ
エンタメコンテンツの変化についての洞察と今後の日本のあり方についての意見。
お金をかけて大規模なものではなく、少数の人でニッチな形で低コストな生産をする。
Posted by ブクログ
エンタメビジネスは、その「本質」が非常に分かりづらい特徴があると思っている。
形として実態が見えづらく、価値が計りづらい。
法律上は知的財産権の一種となるから、目に見えない財産的価値を持っていることになっている。
しかしながら「果たしてその価値はいくらに相当するのか?」と問われれば、おそらく答えは人によって様々なものとなるだろう。
有名な原作を映像化したものであっても、出演者によっては、原作ファンが離れてしまう場合もある。
そして、出演者の人気は、そもそも水物である。
広く認知されているから、その人が出演すれば必ずヒットするという類のものでもない。
例え認知は狭くても、熱心なファンが一定数いることで、出演している作品が必ず買われるということもあり得る。
「原作」そのものも、その価値を正確に計るのは、非常に難しい。
日本が原作大国であることは、間違いない。
小説であっても、マンガであっても、これだけ層が厚い国は、他に類がないのではないか。
大量の作品が生み出される背景として、その作品を消費するだけの需要があるということ。
子供の頃から様々な原作に触れ、やがてその中から、将来のクリエイターが生まれていく。
世代を超えて、クリエイターを生み出すための循環が、自然と出来上がっている。
これだけの壮大な仕組みを、意図的に作り出すのは容易ではない。
日本という特殊な文化的背景が作り上げた、圧倒的な優位性だと思っている。
今までは国内のみで生産消費がされていたが、いよいよ世界に輸出され、成果を出し始めている。
日本製アニメについては、輸出の歴史が古いが、ようやくドラマ・音楽など他ジャンルにおいても認知が広がり始めている。
アニメの輸出の歴史が古いと言っても、今に至るまで相当な紆余曲折がある。
20年以上前から海外でも一部のファンに受け入れられてきたのは間違いないが、そこまで大きく跳ねることはなかった。
そもそも日本では子供も大人も、マンガ・アニメを普通に見るものだが、海外では大人は見ないことが常識である。
ターニングポイントとしては、大体2010年代後半以降となるが、動画配信プラットフォームが全世界にほぼ行き渡ったことが大きな要因だと思う。
簡単にアニメを見られる環境が、世界中で整ったこと。
動画配信では、字幕・吹き替えなどを豊富に揃えることで、外国語である日本語に触れるハードルを下げたこと。
内容的に日本文化を理解できない部分はあるとしても、徐々に受容されるようになったのだと思う。
ドラマ・音楽であれば、韓国が世界で成功した先駆者であるが、日本も韓国の先例を研究し、今はこちらも効果を出し始めている。
もちろん日本発アニメが世界でヒットすれば、主題歌のヒットにも繋がるし、同じ原作の実写ドラマも見られる、という相乗効果にもなっている。
世界的にも、エンタメの背景が大きく変化しているのは間違いない。
「優れたコンテンツ」を「世界に販売する」という、単純な図式だったコンテンツビジネスが、ファンを巻き込んだものに進化しているため、ビジネスとしては複雑化している一方で、盛り上がると一気に大きなムーブメントになるという面白さも生まれてきている。
まさにエンタテインメントの醍醐味と言えるが、益々「本質」が分かりづらく、価値が計りづらくなっている。
これらを上手くコントロールしているのが、優秀なプロデューサーということになるが、そこに辿り着くまでが大変だ。
様々な試行錯誤を繰り返して今に至っているのだが、これらは理屈ではなく、プロデューサーの才覚に頼っている部分が大きい。
今後は、さらにテクノロジーが進化していく中で、人々の行動心理を理解して、プロデューサー自身も思考をアップデートし続けなくてはいけない。
一朝一夕にはいかない難しい職業である一方で、非常にやりがいのある仕事である。
作品を生み出すプロデューサーが、どういうファンを獲得して、どういうコミュニティを作り上げていきたいのか。
ここまで思考を巡らせながら、作品作りを並行して行うのだから、クリエイティブな能力以上の才能が必要なのは、言うまでもない。
特に、コミュニティ作りは、非常に難しい。
本書内にも記載があるが、まさに「運営」とファンとの距離感づくりである。
当然、プロデュースサイドである「運営」の考え方ひとつで、ファンの信頼を勝ち得るか、離れてしまうかが決まってしまう。
世界中が総クリエイターになっている時代、さらに生成AIを使って無尽蔵にコンテンツを生み出せる時代に、群雄割拠の中からアタマ一つ抜け出すために何が必要なのか。
その差別化の一つが「推し」であることは、非常に説得力がある。
確かに、あの人にとっての「推し」は、他人にとっては興味がない存在だったりするかもしれない。
非常にニッチかもしれないが、推しのファンがいることで、そのコミュニティは確実に存在価値がある。
「コンテンツビジネス」→「エンタメビジネス」に移行し、さらに「推しエコノミー」に進化している点は、非常に納得感がある考察だ。
これが世界的にも同一現象なのか、日本特有のものなのか。
インターネットによって世界中が繋がってから約30年が経過している。
国の文化はそれぞれあるかもしれないが、「推し」という独特の感覚は、日本ならではと思えてしまう。
海外でもアーティストの追っかけはいるかもしれないが、何となく「推し」とは違う気がする。
日本の「推し活」は、外側から見ると控え目に見えるのだが、内なる情熱はすごいものを感じる。
宝塚などは、典型的だと思う。
ファン同士ここまで規律が取れていて、1人の推しをみんなで愛でる文化は、特殊としか言いようがない。
本書内で面白いと思った点は、「キャラクターは貨幣と同じ」ということ。
推しとは、まさに作られたキャラクターである。
その存在に当然金銭的価値が生まれるのだが、その価値をタンス預金のように溜めていても意味がない。
キャラクターを流通させ、動かすことで、価値を生み出す。
推しはもちろん実物の人間である必要がない。
アニメのキャラクターでも成立する訳で、数々の日本の有名なキャラクターが推されて、活き活きと活動をしている。
この感覚は非常に不思議だ。
ある意味で、日本人が元々もっている文化的背景があるからこそ、成立した考え方のような気がしてしまう。
自然のあらゆるものを神様と見立てる、「八百万の神々」という感覚が、キャラクターに人格があることを肯定しているような気がする。
これが更に進化して、「2.5次元舞台」なるものを生み出したのだから、日本人の想像力は群を抜いている。
もはや俳優なのか、キャラクターなのか紙一重であるが、そんな様子もファンは楽しんで推し活に励んでいる。
ある意味では「想像力が豊か」と言えるが、ある意味では「何でもあり」。
そんな節操のなさも、日本から新しい作品が生み出される原動力になっているのだと思う。
とにかくエンタメビジネスは「推しエコノミー」へと進化し、これからも発展していくことは間違いない。
この業界に身を置いて長くなるが、今後の進化が楽しみである。
日本発の秀逸な作品が、これからも生まれ続けることを期待している。
(2025/7/13日)
Posted by ブクログ
エンタメ業界で本格的に働き始めて一年。
職場で課題図書的に受け取った一冊。
エンタメ業界の起きている変革と来たる未来を説いてくれる、業界教育本です。
正直業界での日が浅いため、コロナ前後の変化があまり身にしみていないのですが、エンタメの歴史として非常に勉強になりました。
イチ消費者として接していたコンテンツをビジネス側から見ると全く違う景色が広がっていて大変興味深く読みました。
日本のエンタメが巨大ハリウッドや中国相手にどうやって生き抜くのか、その術も警鐘と共に記されていて、仕事をする上で頭に刷り込んでおきたいと思います。厳しいが未来は決して暗くないと思わせてくれました。
Posted by ブクログ
アニメやキャラクター、ゲームなどを含むエンタメ産業について、これまでの歴史を辿りながら、ユーザーにとってのニーズの変化、業界の変遷から、今後の課題について包括的に語られている本。トピックに合わせたのかピンク色のカバーが安っぽいイメージを抱かせているが、中身はこれでもかという分析が社会学や経営学、心理学など様々な視点から書かれている硬派な内容となっている。
現代のエンタメ市場は、ユーザーの行動はこれまでの「萌え」から本書のタイトルにもある「推し」に変化しているという。萌は内的な体験であるのに対して、推しは自己表現を伴う外的体験である。宝塚やジャニーズのファンに見られた「推し」という行動は、今やアニメやゲームの世界にも広がっている。
現代においては差別化の道具は陳腐化しているという。学歴や会社の肩書などという差別化はおしゃれではなく、ビジュアルの差別化は美女やイケメンだけに許された特権である。金持ち自慢やリア自慢は非難の対象となる。そのような社会の中で、2次元作品を介した自分の趣味嗜好の顕示は、自分自身の能力を問われない安全な自己表現となっているのである。
そして、エンタメ産業においてはアメリカの存在が市場としても供給側としても圧倒的な存在であり続けている中、そこに割って入ってきているのが中国である。巨大な市場を背景とした資本の大量投入による力技は、到底日本のエンタメ産業には及ばない。
但し、著者は米国や中国のやり方がベストであるという立場ではない。生物に例えると、米中は身体の大きい恒温動物であり生命維持の為に大量のエネルギーの取得を必要とする。一方、日本は小型の変温動物であり、活動量は少ないがエネルギーも少なくても済むと例えている。生き延びるための戦略は生物でも様々であり、必ずしも米中を真似る必要はないという。
世界第二位の経済大国などという過去の栄光やプライドにしがみつきがちな日本であるが、フランス、スイス、イタリアなどの国などは得意な分野に特化した生き方をしている事を指摘しており、日本もそこから学べることは多いと思われる。ビジネススクールの戦略論の世界でも規模の経済を背景とした競争戦略は既に過去のものとなっている。
- メモ -
サイバーエージェント傘下のサイゲームスが運営する「ウマ娘」は2021年2月にリリースされ、初月の売上が驚愕の130億円を達成したという。
アプリゲームの市場規模は1.2兆円となり、売上TOP3はパズドラ(Gung Ho)、モンスト(Mixi)、Fate Grand Order(FGO、アニプレックス)が長く占めてきたという。そこに突如割って入ったのがウマ娘であり、唯一世界のゲームアプリでTOP10に入っている。
Posted by ブクログ
現代、現在のエンタメと社会現象を整理した論文書!
論文と言ってしまうと堅苦しく感じるかもしれませんが、取り上げているコンテンツが身近なものばかりで難しい説明もなく明快痛快で読みやすい。
普段触れているゲーム、マンガ、アニメ、ドラマなどのエンタメビジネスの持続可能な究極はIPビジネスだとよくわかります。そのゼロ→イチをどう生み出すか?
この本には書かれてないのと、飛躍しすぎてる発言ですがキリストやブッダはまさにIPの元祖かもしれません。(それ以上の発言控えます)
人は偶像に惹かれる生き物なんだなーということを読書しながら考えていました。
まあとにかくエンタメとビジネスに関する紐解きに頷きっぱなしになるのと、日本人であることが誇らしく思えてきます。
エンタメ経済圏にまつわる中山淳雄さんの考察オススメです!
Posted by ブクログ
タイトルから勝手に「推し活」についての本かと思い手に取ったが、まじめにアニメや漫画を中心に映画や音楽ビジネスなども含めた「エンタメビジネス」について書かれていた。著者はそこを伝えたかったわけではないと思うが、現代において「売上を立てる」ためにどんな工夫が行われているか、ぼんやりとしていたものがハッキリして、自分の仕事にも役立ちそうだ。
Posted by ブクログ
●アニメは年間300作品の8〜9割は赤字
●週刊少年ジャンプの定期視聴者層が2020年までは20代が主であったが、2020年4月以降から子供が視聴してるのに影響されて年齢層が上がり、大人買いするユーザーが増えてる
●人々はより、時間に対してセンシティブになってきている
推しとは、と言うより、メディアとは何かについての記載が多かった
鬼滅が多く例に挙げられていた
Posted by ブクログ
最近のヒットコンテンツをもとにエンタメの消費、流通などの変化を解説の上グローバルなエンタメの歴史、日本の特徴等、幅広くエンタメ業界の今が分かる本。社会学や経営学の視座からの補助線もあり、素人(消費者)でも楽しめる。
読者の私はギリギリZ世代に分類される人間として推し概念やJOMO概念、サブカルを介したコミュニケーション(受信→発信)など、実感として腹落ちする説明が多い。また、消費者がコンテンツを選ぶ基準なんかも痛いほど共感できた…。
参考文献も随所に引かれており読みを広げたい人も楽しめる。
グイグイと読めて楽しかった。
Posted by ブクログ
エンターテイメントビジネスの最前線で事業を営んでいた著者自らが、ビジネスの経験をベースにアカデミックな視点も交えて今後のエンターテイメントビジネスの地殻変動を説明する良書。
白眉は第2章の『「萌え」から「推し」へ、ファンの変化からみる「風の時代」』である。本書のタイトルにもなっている「推し」という現象をビジネスの観点から眺めた考察に富んでいる。「推し」とは一言でまとめれば、そのコンテンツに対して自らの有限な時間資源を投下することに対して、なるべくそのコンテンツを享受できる時間を最大化させる、というコンテンツ提供者・受益者の双方の暗黙の同意に基づくコンテンツのやり取りである、と自身は理解をした。そうした「推し」原理でのコンテンツビジネスを最大化させるためには、このコンテンツは未来永劫に続く(と思わせる)という安心感をファンに与えつつ、長く楽しんでもらえるための”運営”(ソシャゲで使われる意味合いが最も近い)によるLTVの最大化がビジネスへの要請となる。
余談であるが冒頭に収められた製作委員会のカネの流れの模式図は非常に良くできていると思う。以前にアニメの政策委員会の仕組みを把握すべく業界エキスパートに相当なインタビューを行ったことがあるが、そこから苦心して得られた全体像の理解と非常に近似したモデルが説明されており、「この本がその当時にあったら・・・」という思いを持った。そういう点でも、エンタメビジネスの人にとって色々学べるところは多い一冊であると思う。
Posted by ブクログ
アニメ・マンガ・ゲームを中心に、日本と世界のエンタメ産業を取り巻く経済について書いた本。特におもしろかったのは、オタクカルチャーが「萌え」から「推し」へどのように変化していったのかを解説している第2章。今や推し活はアイデンティティの表明だという話、何かを推すことは消費ではなく表現だという話、だからこそ発信リテラシーが問われるという話は本当にその通りだなぁ。オタクの行動を経済の観点から客観視できて新鮮だったし、ライブコンテンツの「運営」についても考えることができた。
【読んだ目的・理由】エンタメ産業に興味があったから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.0
【一番好きな表現】個人的な趣味活動であるはずのエンタメは、SNS社会を通して互いに非政治的に(見えるが実は政治的な)アイデンティティを表明しあう、アナログとデジタルの良さを両にらみで味わい続ける、社会的な消費活動・参加活動なのである。(本文から引用)
Posted by ブクログ
2021年刊行、コロナ禍を含めた現在のエンタメがどうなっているか?を様々なデータを元に解説。具体的な数字とともに作品ごとの経済圏が知れたり、フォートナイトなどバトルロワイヤル系ゲームの流行など、自分があまり詳しくない分野の話も知れて興味深かった。
一方、「推し」文化の考察や、タムパ重視で動くユーザーや必死になってコンテンツを追う層の話などは自身の実感とは離れているなと感じたが、出資する側から数字としてのユーザーを掴もうとするとそういった解釈になるのだろうか。
また、「米中エンタメ覇権競争と日本唯一の挑戦者ソニー」の項も面白く読んだ。ソニーとパナソニック、そんな風に命運が分かれていたとは。ソニーについては金融事業が好調なことしか知らなかったため、2020年前後でゲーム・映画・音楽の事業も伸びたとは知らず、このまま頑張ってほしいと思った。
しかしながら日本が米中のように大きな資本を投下してひたすら拡張路線を突き進むのは難しいだろうというのには筆者に同意するところ。資源のない日本においてキャラクターIPが優良な資産であることは間違いないので、大切に育てていくことが大事だと思った。
Posted by ブクログ
タイトルから推し活ブームなどの潮流を解説する本かと思ったが、エンタメビジネスの動向を紹介する本。
タイトルと内容が合ってないような気がするが、エンタメビジネスについて理解するにはとても良い内容だったように思いました。
Posted by ブクログ
所々難しいところもありつつ、最も印象的なのは
「萌え」→「推し」に世の中が変わっているということ
昔は
恋愛→結婚→性愛→出産の流れがあった中で、
現代は約束された流れが破綻し
恋愛/性愛/結婚/出産と分断されている。
自分のためにお金を使うようになり、
恋愛、性愛、結婚、出産に内包されるしがらみや自分の自我から、代わりに頑張っている「推し」を応援することで、理想の人生を「生き直し」しているという論理展開が印象的だった。
Posted by ブクログ
エンタメに精通した著者が鬼滅の刃や半沢直樹などここ数年でブームとなったものから日本と海外のエンタメの違いから推すという行動から生まれる経済を様々な角度から解説した一冊。
鬼滅の刃や呪術廻戦といったアニメやウマ娘やといったゲーム、半沢直樹といったドラマなどそれぞれのブームになった背景からSNSなどここ数年で流行ったものから拡散していったことや主体的に発信するものに変わりつつあることやタムパを重視した効率的な動画視聴法やオンラインゲームの双方向Twitterを使った祭りの演出など体験と物語にお金を使っていく現代のブームの姿を本書で知ることができました。
そんな本書の中でもアニメ映画の日米中の興行収入の違いやアニメを作る際の効率の違いなどは興味深いものでした。
エンタメ業界の今のブームの背景やスマホの普及などで変革が求められていることを本書で知ることができました。
素晴らしい技術を持つ日本のエンタメの目線を変えた商品を運営する戦略が世界を代表するこれからの未来を担っていく産業になり得るのではないかと感じた一冊でした。