逸木裕のレビュー一覧
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煌びやかな音楽を奏でる芸術家たちの厳しい現実と卑しさ… チェロに向き合う天才と凡才の物語 #四重奏
■あらすじ
主人公である若き青年はチェリスト、実力はあったがオーケストラの正会員ではなく生活ができていなかった。ある日彼は、チェロを自由奔放に演奏する女性に出会い、すっかり魅了されてしまう。しかし彼女は、本人のスタイルとは合わない楽団に入団し、その後彼を離れていってしまったのだ。数年後、彼女は自宅の火事で亡くなってしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
芸術で食べていくのは、ほんと難しいですよね。アウトプットされるものは華やかなのに、何故生み出している人間はこれほどに薄暗い生活をしなければい -
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ネタバレ先が気になって一気読み。
中学生の二人がどうにもならない現実でもがくさま。大人の存在がまだ必要で一人で生きていくには難しい年齢。自分の正直な気持ちを言えない、自分は人を傷つけてしまうかもしれないという強迫観念、絶対に人には見せられないものを抱えて苦しむ理子。兄の疑惑、母親の存在、学校での出来事、抱えるものが多い。唯一安らいでいた場所でさえも…。
薫、マキの言葉、優しい視線に素直にうなずけない、見られない。
「困難があったら、正攻法で乗り越えればいい。そんな風に考える人間が、嫌いなんです」
「反対から考えると、正攻法で乗りきれる程度の壁しか、あの人たちの人生にはないんだと思います。」
「外 -
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ネタバレ6月の合同サイン会のサイン本の一つ。
若き天才的ゲームクリエイターの女性が,自分の作ったゲームと現実をリンクさせる仕掛けをして,ゲームに自分を殺させるという特殊な自殺を諮った。
晴というその女性は伝説化し多くのファンを生んだ。AIの研究者である主人公・工藤はAIのキャラクターと人間とのように会話できるシステムの開発者の一人だが,その発展形として死者をAIとして蘇らせるプロジェクトに携わることになる。プロトタイプとして蘇らせる対象となったのが晴である。有名人でもあったが謎の多かった晴を蘇らせるためのデータ収集は難航するが,工藤は次第にのめり込んでいく。工藤が最終的にたどり着いたのは...。という -
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ネタバレ自殺という重いテーマであるが故に「面白かった」と「心に澱が残った」が半々の読後感。フィクションとは言え、しっかり向き合うべき問題だからこそ、読むのがしんどくもありました。ただ、この手の話では絶対悪にされがちな「ゲーム」という存在を肯定的に扱っているのは印象的だったかも。
主要人物たちがなんとなくギクシャクした雰囲気のまま物語が幕を閉じてしまったので、今後彼らがうまくやっていけるようになるといいなぁ。
自殺の話とは直接関係ないけれど、主人公の「友達にかけるような言葉を自分にかけてごらん」という台詞が、すごく心に染みました。真面目で優しくて他人思いで、自分を責めがちな人にこそ、そう思って欲 -
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ごく短くまとめれば、壁にぶつかってもがく主人公が、様々な出会いの果てに新たな価値観を手に入れて再出発する物語なんだけれど、その過程がとってもリアルで、心に響いた。作者が音楽をやっている人かどうかはわからないけれど、いかにも音楽をやっている人たちが感じそうな悩みばかりだった。自己中な芸術至上主義の人たちの迷惑ぶりや、技術を身につけても魅力的な個性を見つけられずに悩む姿など、もきっととても丁寧に関係者に取材したのではないかと感じられた。
音楽をやっていない人でも、何かにずっと打ち込んできて、限界にぶつかった経験のある人には、きっと感じるものがあるのではないかと思う。
でてくる人たちも、「いい人」「 -
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ネタバレ読んでる途中で感じたのは「好きを仕事にしたらダメなのかな」だった。岡部も益子も理沙もみんなみんな好きだったから音楽で生きていて、そのせいで絶望を味わった。でも最後はやっぱり音楽で希望があった。「好き」はずっとずっと大切にしていきたい。それが絶望をもたらしたとしても最後はきっと自分の支えになるから。
AIが音楽を作る話はちょうど今起こっているAI絵師問題と酷似していて興味深かった。世界は日々進歩していて、人にAIが勝る(技能的に)ことはどんどん難しくなるだろうと思う。物語の中でもAIを利用して作った作品はその人の作品と言えるのか?という問いがあったけど、今後その線引きをどうするのかによって創作の -
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『〝クジラ〟強調月間始めました!』13
第13回は、逸木裕さんの『電気じかけのクジラは歌う』です。
今後十数年で、現在の職業の半分がAIに代替されると予測される未来は、理想社会なのでしょうか?
本書で描かれる世界は、AIで駆逐される音楽業界、とりわけ作曲家の苦悩が主軸です。ここに、天才作曲家の自殺に伴う謎が絡むミステリー仕立てになっています。
『Jing』というAI作曲アプリ。中国語で「鯨」の意。創業社会長は霜野鯨。生態系の中心に君臨し、海域の食物を大量に食す鯨は、全てを取り込んでしまうのか…。ドキドキとヒリヒリが続くドラマを観ているようです。
音楽に携わる者の葛藤が見事に描かれ -
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若林さんがガンガン踏み込んで面白い話を引き出してくださるので楽しかった。「こうではないですか?」と斬り込んで「そうじゃないですね」と返される場面も多かったけど、それはまあご愛嬌。
印象に残っているのはこの辺▼
・円居さんの「推理漫画よりも早く展開する頭脳バトルやギャンブル漫画のテンポが求められていると感じている」という話や、FGO他ノベライズの裏話。
・SFミステリと特殊設定ミステリの違いと阿津川さん・逸木さん・方丈さんのスタンスの違い。
・澤村さんの「ジャンルの書き手でないからこそジャンルあるあるなシチュやキャラに頼りたくない」スタンスはそういう考えもあるんだと新鮮だった。
・呉さん