逸木裕のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いやー、おもしろい。
尻上がりにおもしろかった。
序盤は知識不足から手が止まってしまうことも。
でも第一章の結末から第二章
ページを捲る手が止まらなかった。
音楽って素晴らしい!
自分に無いものを素直に心から尊敬して
手を取り合えることも素晴らしい!
パイプオルガンの音を聞く機会が、今までの私の人生の中にはなかったけれど
チャンスがあればぜひとも聞きたい。
コンサートに行きたくなったし
森の中も歩きたくなった。
海沿いの防風林の中を散歩するのが大好きな私。
風の音、波音、鳥の声、自分の足音。
いろんな音が混ざって、でも不快ではなくて。
寧ろすべてが溶け合って、心地よい癒される音なのだか -
Posted by ブクログ
ネタバレネグレクトされていた幼少時代に誘拐された経験のある17歳の少女、藍葉の元に、ある人から探偵と称する女性、みどりが100万円を携えやってくる。
藍葉とみどり、二人の主人公目線で物語は進む。100万円は誰が用意したものなのか?藍葉を誘拐したのは誰なのか?
ミステリーとして謎解き部分も十分だが、この小説の核心部は、藍葉がもともと持っていた色覚に対する才能がさらに鋭く開花成長していく様と、探偵みどりの破滅的ともいえる破天荒な行動っぷり。
それ以外の脇を固めるキャラクターもいい。解説で似鳥鶏が記しているように、逸木裕のキャラクター作り込みがしっかりしているからこそ、そこに寄って立つことで小説に熱が -
Posted by ブクログ
宗教団体のコミューンに捨てられた5人の子供達を団体のトップである石黒望が殺人の英才教育を施し、「祝祭」と称し信者30数名を殺害させた事件。未成年者であり洗脳されていたという事も含め罪に問われることはなく、しかし子供たちは「生存者」と呼ばれ15年ちかく世間から迫害されて生きてきた。ある日SNSで5人の名前と住所が公開される。それを機に石黒の遺体が発見され刺客が5人を襲う。石黒はなぜ子供たちを洗脳してまで集団殺人を行ったのか。死してなお生存者を脅かすのか、刺客の正体とは。その真実にたどり着くことができるのか。
よく読む手が止まらないというのを聞きますが、久々にその言葉を実感しました。ミステリー・サ -
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14年前山梨県の宗教団体が<祝祭>という暴力による大量殺人事件を執り行い33名の犠牲者が出ました。
やったのは石黒望という女性の首謀者とコミューンに捨てられていて、石黒が育て上げた12歳の夏目わかばら5人の子どもたちでした。
わかばたち5人の子どもは<生存者>と呼ばれ、まだ、子どもだったので罪に問われることはなく、でも世間の目には晒されながら逃げるように生きていました。
そしてとある事件をきっかけに5人が再会します。
後藤睦巳は光太という母親のない子どもを連れていました。
逆井将文は事件を逆手に取ってユーチューバーとして暮らし、川端伸一(旧名・長治)と斎藤彩香(旧名・弥生)は共同生活を送 -
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面白さはもちろんのこと、著者である逸木さんの、人工知能への視点、人間への視点に感銘を受けた一冊でもありました。人工知能が労働を奪う、とささやかれる現代だからこそ、よりこの作品の世界観や主人公の心情がリアルに、そして切迫感をもって伝わってきた気がします。そういう意味ではSF要素がありながらも、社会派的な作品なのかもしれない。
AIアプリが音楽を作曲する近未来を舞台に、元作曲家が自分の友人であった天才音楽家の自殺の謎を追うミステリー。
作品に登場する音楽家たちの心情がリアルで、切迫感を伴って伝わってくるのがとてもよかった。自分の創るものは人工知能でも作れる、なんなら人工知能の作る作品の方が優れ -
Posted by ブクログ
多少強引で粗削りな部分も感じてしまうものの、それでもそれも含めてその強い想いに共感と感動を覚えた。冒頭に提示される魅力的な謎を追究、発展させていくストーリー展開はめちゃめちゃ上手だと思う。たちまちのうちに引き込まれ、続きが気になってしょうがなかった。人工知能という舞台設定も興味深かった。水科晴、雨、そして工藤。時に性的に、時に狂気的に、暴走の気配も見せる小説だけれども、いやまてよ、恋は盲目、常識的な見境がなくなってしまうのも確かに恋の一面だったはずだ。
打算的だったはずの男が落ちた狂おしいほどの初恋とその悲劇的な終焉。これは良し悪しを超えてその強い想いが伝わってくる新時代のラブストーリーの傑作 -
Posted by ブクログ
この小説を読んだとき「ギアチェンジがスゴい」小説だと思いました。自分が強く感じたのは小説の半分ほどでまず一回、そして終盤にもう一回。ギアを変えたときの振動で、頭を車の天井にぶつけそうになりました(笑)
一人の人格を完璧に再現する人工知能を作ることになり、そのモデルケースで既に亡くなっている女性が選ばれるのですが、その人工知能を作ることになったプログラマーが主人公のミステリ。
この亡くなった女性が、かなり個性的というか、とにかく強烈。彼女の自殺方法、生前の生活の様子は、まさに天才や異才の雰囲気を感じさせます。
以前、北村薫さんは宮部みゆきさんの『火車』を恋愛小説としても読める、と評したそうで -
Posted by ブクログ
前作の感想で「探偵は職業ではない、生き方だ」を引用したが、やはり本作の主人公・森田みどりに最も相応しい言葉だと思えた。
たとえみどりが職業探偵になっていなかったとしても、真実を求めるその生き方は変えられないだろう。
彼女自身はそんな自身の在り方を“人を傷つけてしまう良くないもの”とやましさを感じているようだが、部下の要視点で語られるみどりは“簡単に答えを出す人にならない”、“確信ができてもさらにその先を考える”ことを芯に据えた人間であって、いたずらに他者の秘密を覗き暴くことを喜ぶ人間ではない。
確かに真実はときに人を傷つけてしまうこともあるが、真実に正面から向き合ってこそ初めて前を向い